大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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81話 Everlasting Love

 

──13F ジムフロア

 

チン♪

 

エレベーターの扉が開く。

こっそりと様子を伺うが、そこは不気味なほど静まり返っていた。先程のような大立ち回りはとりあえず必要ないらしい。

 

 

「ふう……ようやく一息つけますぅ……」

 

 

エレベーターから出てお行儀悪く、その辺に座り込む。短い時間に色々あり過ぎて精神的に疲れていた。

 

 

「でも……これからどうしよう……」

 

 

ホテル再建に関わったルイージは知っている。このホテルに階段は一階近辺にしかない。エレベーターで降りるしかないが、ボタンの使える一階や地下にはボディがいる。

13階から窓を割るのは流石に危険だ。脱出するためには危険を承知で降りなければならないが、降りたとしてあのロビーの出入り口を開けなければどうにもならない。

 

 

「カーテンとか繋いで縄でもつくる?」

 

「……いえ、このホテルをまわるわ!」

 

「え、でも危ないし……」

 

「そうですよ、またさっきのそっくりさん達がどこにいるかわかりませんし!」

 

 

ルイージは控えめに否定するも、デイジーは聞く耳持たずだ。後ろ向きな彼を引っ張るように彼女は強気な女性である。

 

 

「エレベーターのボタンを引っこ抜くなんて明らかに誰かが閉じ込めるためにやったことよ! そして、必ずここのどこかにいるはずだわ! とっ捕まえて吐かせるのよ!」

 

「あ、あの〜、できれば穏便に……」

 

「な・に・よ」

 

「なんでもないです……」

 

「ルイージさん! 尻に敷かれっぱなしですよ!」

 

 

デイジーの頭の中では、ホテルからオバケ達を追い出した犯人=閉じ込めた犯人になっている模様。すなわち貴重なフリータイムを邪魔した元凶なのだ。穏便にする理由なんてない。

 

 

「さ、行くわよ! 地下から屋上まで全部回るわ! どこに隠れても見つけ出してやるわよ!」

 

「ひー……」

 

 

虚空を指差し、決意を固める。

男連中は振り回されっぱなしだった。

 

 

「それで、13階って何があるんですか?」

 

「ジムフロアだよ、ダンベルとかバーベルとか……」

 

「体も鍛えられるのね、けっこう設備揃ってるわね〜」

 

「あはは……」

 

 

まだジムやコンサートホールはあってもおかしくないだろう。だがこのホテルには、他のホテルにはないどころか、おおよそ建物内にあってはならないようなものが存在するのだ──

 

 

「じゃあ、次にあるのはカウンターかしら」

 

 

なんの警戒もなく、そして周りが警戒する間もなくデイジーが扉を開け放つ。止める声も出ず2人振り向く。キノピオ隊長のヘルメットのライトが丁度扉の先を照らした。

 

 

「「ぎゃああああああああ!!?」」

 

 

堀の深い顔面がライトに当たり、ホラー感が増したガノンドロフのボディが現れる。

 

 

『……ッ!?』

 

「邪魔!!」

 

「「えええええええええええ!!?」」

 

 

咄嗟に蹴り上げたヒールが脛にクリティカルヒット!

ガノンドロフ?は倒れた!

 

抱き合って悲鳴を上げる2人も、驚きへと変化していった。一撃で倒し、溶けていくボディをしっかりと現認したのだ。

 

 

「さすがにおてんばだね……」

 

「サラサランド、怖いよぉ……」

 

「……ん?」

 

 

震え上がっているところ、幾分か冷静になったルイージ。やっぱり一撃なのはおかしいのでは?

 

 

「デイジー、もしかしてだけどさ……僕が見てない間に鍛えたりしてた?」

 

「そうよっ、って言いたい所だけど、流石に一撃なのはおかしいわね……」

 

 

本人もまた疑問に思っているようで、元気溌剌な眉を少し下げた。

ボディは溶けて消えてしまったので、直接調べることはできないが、考えられることはボディそのものが弱体化したか、誰かがボディと戦っていたか。

 

前者の可能性は薄い。あまり戦っていないから断言はできないが、一階のボディはそんな様子は見られなかった。となると。

 

 

「この階、誰かいる」

 

 

それに気づいたルイージは先頭に回る。できれば相手より先に相手を見つけたい。それには、部屋の配置を知っているルイージが適任だった。

 

そっと扉を開けてロビーを確認する。

先程、ボディ出てきたと思えないくらいには整頓されており、荒らされた形跡はない。別の部屋で戦っていたのだろうか。

 

 

「…………ゴクリ」

 

 

唾を飲み込み、内部へ侵入する。

ここからはプールに続く部屋と、ロッカールームがある。心を沈めて聞いてみると、ロッカールームの方から微かに物音が聞こえた。

 

 

「(……! あっちだ!)」

 

 

そして、すぐ後ろからも物音。

ギギギギという効果音と共に首を回すと、青の混じった平面人間。

 

 

「うわあっ!!」

 

 

平面なのを活かして身を潜めていた敵は、イスを振り回してルイージをぶっ飛ばした。正面のガラスをぶち破り、プールに勢いよく着水する。

 

 

「キノピオ! じっくり照らしておきなさい!」

 

「は、はい!」

 

 

異常を聞き取ったデイジーが飛び出して、ボディとの戦闘に入る。噴霧器を蹴り飛ばして意趣返しにと、テニスラケットで奴を弾き飛ばした。

 

 

「うわ、こっちにもいる!!」

 

 

プールに着水したルイージは慌てて上がる。

周りにボディがいる。エントランスで会った時ほどではないが、4体ほどに囲まれている状況は好ましくないのだ。

 

 

「しつこいよ!!」

 

 

とりあえず近くのボディに対して、懐中電灯で目眩しを行い、オバキュームを振り回す。怯んだ隙に飛び蹴りでシャワールームの扉まで蹴り飛ばした。

 

途端にガチャっという音が聞こえる。シャワールームの扉が開かれた。

 

 

「うおお!?」

 

 

打ち返すように跳ね返ったボディ。

そうしたのは、緑のグローブ。タオルを首にかけ、汗を流した男。

 

 

「ん? ルイージにデイジー」

 

「ええ!? マック!? なんでここに!?」

 

 

違う世界には基本不可侵であるはずなのに、どうして彼がここにいるのだ。

プールまで来た理由はわかる。ガラスを破った音が聞こえてきたのだろう。ロッカールーム方面の物音は恐らく彼だ。

 

 

「後でいいわよ、まったく!!」

 

 

囲まれているルイージの方へ向かい、ボディを足で引っ掛けてプールに落下させる。浮かんだ頭を数発フライパンでぶん殴った。

リトル・マックも参戦し、まっすぐなストレートの一撃が壁にめり込ませる。そうして異界の友人と並び立った。

 

 

「いやー、おつかれっす、デートっすか?」

 

「あ、いやあの」

 

「デート……」

 

 

リトル・マックが無自覚にデイジーの琴線に触れた。悪い方の線だ。不協和音が鳴り響き、

 

 

「本当だったらそうなってたのよぉ!!」

 

 

完全に切れた。色んな意味で。

 

 

「「「ヒィイイイイ!?」」」

 

 

鬼女房に尻に轢かれる系の男が増えた。

いや、これは相手が悪いのか? 下手したらオバケやボディよりも怖そうなサラサランドのお姫様。雰囲気に似合わないオレンジの服を身にまとい、群がるボディを殲滅する。

残りの1人もプールに叩き落とし、ヒールで沈めて溺れさせた。良い子は真似しちゃいけないヤツである。

 

 

「で、なんでアンタはここにいるの?」

 

「う、うっす! アネゴ!」

 

「アネゴはやめてよ」





○タイトル
みんな大好き塊魂の楽曲。レースのステージでの印象が作者は強い。
タイトルだけ見るとしっとりした恋愛ソングみたいなイメージですが、実際にはかなり爽やか。接続詞をあまり使わない歌詞が特徴。


○階層
原作では順番に階を上がっていくことが多かったが、今作ではバラバラ。順番がわからない方が楽しいですし。


○作者の気まぐれコメント
ゼルダコラボフェス、始動……だと……?
ミステリーゾーンじゃなかった、トリカラバトルのステージ早く遊びてえええええ
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