大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「えっ!? ここアンタらの世界なんすか!?」
「声が大きいわよ!」
「(デイジーもね……)」
口には出さない。ボディの二の舞はゴメンなのだ。なんか怒りのせいか、いつもより短気になっているように感じる。
「いやいや、じゃあなんで俺、この世界にいるんすか」
「こっちが聞きたいわよ……寝ぼけて迷い込んだんじゃないの?」
「俺、大乱闘の世界に行こうとしただけっす」
「じゃあそこで寝ぼけたんだわ」
「そんなピンポイントで寝ぼけねえ!!」
大乱闘の世界に戻るつもりが、ラストリゾートにいた……ということだろうか。
だが、そんな前例は聞いたことがない。異なる世界のファイターが同じ世界で戦えるのは、大乱闘の世界の、マスターハンドのおかげである。
その介入を許さずに違う世界を繋げる力を持つ者がここにはいるということなのか。
「あっちでも何かあったのかな……」
「あっちって、大乱闘の世界のことですか?」
「うん、冷静に考えたらボディだってあっちの敵だったし、何か起きてるならあっちかなって」
「ここで起きてることと何か関係あるかもですね!」
デイジーの、ここにいるはずの元凶を探す方針は間違ってはいなかった。ここで探索を続けることで大乱闘の世界に戻った時に優位に動けるのであれば。
「もっと探そう。何かあるだろうし」
「でもどこ探す? 危険を承知で地下行く?」
「う……」
「どうしたんすか?」
「エレベーターのスイッチがなくてあんまり動けないんです……」
「スイッチ……」
何か心当たりがあるのか、グローブの中から何かを取り出した。
「ちょ……!? どこから出してるのよ!」
「臭い! 汗臭い!!」
「仕方ねえだろ!? しまうとこなかったんす!」
「これ……」
リトル・マックが持っていたのは、まごうことなく3階のスイッチだった。
──3F ショッピングエリア
4つの出店を2階とエスカレーターが区分けをしている。このショッピングエリアのメインである。トランプの記号、スートがモチーフとなっているお店。
お土産探しでぶらりと歩く宿泊客がごった返しているはずのこの場所も、不気味なほどに静まりかえっていた。誰もいないはずなのにエスカレーターだけが動いている。客どころか店員もいないこの場所では、時が止まったかのような感覚に陥らせる。
はずであったのだが。
「ガハハハハハッ! なんだおまえら、こんなごちゃごちゃしたところに何の用だ!」
「チェンジで」
「なんだおまえ、照れ隠しか? 意外と可愛いところあるじゃねえか!」
「コイツじゃあ、本気で迷い込んだのか巻き込まれたのかわからないじゃない」
同じ世界の人間では、正当にこの建物に入った可能性もあるのだ。
ワリオは美容室の一角にいた。鏡の前で服やらヘルメットの角度を調整していたのだ。店員がいないのでカットはできない。居たとしても、当然お金は払わない。
「で、はい」
「あ?」
デイジーが手を差し出す。何かを要求する手だった。
「やるもんは何もないぞー? 屁ならやれる!」
「いらないわよ、そうじゃなくてスイッチ」
「ああ、ワリオさんここにいたんですから探索だってしてるはずですからね!」
「はあ? してねえよ、ずっとオレさまの美貌に惚れてたぞ」
「コイツ朝、顔洗うたびにこんなことしてるんか?」
「アホかリトル・マック、そんなことしねえよ!」
「……そんなことってどっちっすか!?」
「落ち着いてみんな……」
結論から言うと、ワリオはエレベーターのスイッチを持っていないということだ。
リトル・マックが持っていただけで、迷い込んだ後に探索しようとするかはまったく別の話ということだ。
「えっと、スイッチがないなら探してみよう。もしかしたらこの階にあるのかもしれないし」
ルイージは積極的に動きたいと考えていた。ここの地理をよく知っているのは、どこにいるかもわからないオバ犬を除いて自分だけなのだ。
デイジーがオセオセタイプなので、自分が動く前に動かれるだけなのだ。
「他のお店とか……管理室とか他にも部屋あるし」
「それなら管理室っすかね? そっちの方がらしいっす」
「それで、管理室ってどこよ」
「へー、なんか大変そうだな」
他人事のように、スタイリングチェアにどっかり座りながら鼻をほじるワリオ。顔をしかめたデイジーがその頭をはたいた。
「何言ってんのよ、当然アンタも来るのよ」
「はあ? なんでオレさまが?」
ワリオが住んでいる世界はここなので、別に異変を解決しなければ帰れないなんてことはない。このホテルだけで完結している出来事なので、外にさえ出てしまえばワリオには本当に関係ないことである。
「今、玄関閉じてるのよ、出られないの」
「何!? オレさまの才能はこんなところで腐らせておくものじゃないぞ!」
「あれ、でも確か地下の駐車場に」
ルイージの顔面に平手打ち。
「だ、か、ら、閉じ込めてる奴を懲らしめて、入り口を開かせないといけないの」
「そうか! がんばれよ!!」
「アンタも頑張んなさい!!」
「うおおおおい!?」
デイジーがワリオをエスカレーターまで放り投げる。ルイージが顔をさすり、デイジーが両手を叩く中、エスカレーターがただの坂になる。
「ぶぼぼぼぼぼぼ!!」
「あ、そんな仕掛けあったのね。役にたったじゃない」
「こんなのあったの知ってたんですかね?」ボソボソ
「知ってなくてもあんな危ない場所に人を放り捨てられる根性がわかんねえっす……」ボソボソ
ずり落ちてきたワリオを眺めながら、一同微妙な顔をするしかなかった。こういう時どんな顔をすればいいのかわからない。
「えっと……ん?」
どうにかこの空気を壊そうと口を開いたルイージは、2階のお店の前を通り過ぎていくオバ犬を見た。エレベーターに戻っていく? いや、おそらく向かうのは、
「警備員室……!」
直感したルイージはエスカレーターに足をかけた。坂状になって強かに顔面を打ち付ける。
「ぐばっ」
「同じ罠見てんだから心の準備くらいできるでしょ……」
「ワン!!」
「すいませーん、誰かいませんかー」
バッテンじるしの絆創膏をつけたまま、警備員室の扉をノックする。ブラインドが下まで降りており、中の様子は窺い知れなかった。
少しだけ扉を開く。連結した2つの部屋は綺麗に整頓されているが、少しだけ机に埃が積もっていた。
「誰もいないみたいですね……」
「うん、あんまり出入りした痕跡もないけど、一応調べとこうか」
ボディがいる気配もしないので、全員が中に入り込む。どこにあるのかなと周りを見渡した。
「ブワア!」
「「わーーーーー!!??」」
背後からの脅かしにリトル・マックとキノピオ隊長の2人が大声を出す。他は反射的にそちらへ向いた。赤色のオバケ。
「なんだ、ただのオバケか……どうしたの?」
「ただのっておい……」
リアクションの大きい2人に上機嫌なオバケはルイージの姿を認めると半べそをかいて近づいてきた。何かを訴えるが、喋っている内容は理解できない。
「よくわからないけど……何かあったのは間違いないかな……」
オバケの足を猫じゃらしのように遊ぶオバ犬は、
他はオバケに集中していて気がついていない。
「うわっ!? なんだこれ!?」
人混みの中央に机が叩き落とされて、咄嗟に後ろへ下がった。動揺しながらも戦士の体は動いていたために実害はない。
「物がどんどん浮かんでるわ……!」
「ポルターガイストっすよ!」
机だけではない。
椅子や棚や机上照明ロッカー水鉄砲鍵懐中電灯脚立バケツダンボール夜食用の箸……
物という物が次々と浮かんでいく。
「まさか……」
冷や汗、ひとつ、流れて。
「逃げろおおおおおおお!!!」
どんどん投げつけられる物の雨嵐に、ファイター達は転がるように警備員室の外へ出た。
○タイトル
みなさんご存知初代ポケモンのホラースポット。
何より曲が怖くて。心霊現象が起こったとかいう都市伝説も。
白い手とかラッタ死亡説とかさらにホラー要素を出してくるのが心臓に悪い。
○随所で出てくるオバ犬
所々で登場する。重要な場面だったりそうでもなかったり。
ようは気まぐれワンコ。
○作者の気まぐれコメント
気まぐれと言いつつほぼ毎回あるのは内緒。
それはさておき、ゼノブレイドォ!
再びシュルクとかレックスを使えるとはなぁ!
しかし、レックスの声優さんあんな渋めの声も出せるとは……