大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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84話 鷲獅子たちの蒼穹

 

──6F キャッスルフロア

 

 

「なにこれ」

 

「闘技場」

 

「な〜んかホテルっぽくないのよね」

 

「ここ以外もそんなものなんだよね……」

 

 

エレベーターを降りて少し進むと、砦のような、柵と石壁、そして門でできた仕切り。それは名前通り中世洋風の城のようだった。

しかし、そこは闘技場であり古典的なコロシアムだ。地下まで徹底的に再現されたそれは世界に没頭するようで面白いが、ホテルにあるようなものではない。

 

 

「確かに鎧飾ってたわね」

 

「雰囲気はあるっす」

 

 

あまり深く考えず前のホテルと同じ構造に立て直していたが、元々こういう雰囲気を楽しむコンセプトのホテルなのかもしれない。

おそらく剣やらの危険なものはパウダネス・コナー達が手を加えたものなのだろう。

そういった考えを思案していたルイージは内部に入り、並んで飾られている鎧を見上げた。

見栄えこそ本物のような光沢を持っているが、軽めの防具に防御力はない。万が一倒れても怪我をしないようにという配慮だ。

 

 

「(僕たちを積極的に襲いたければ、危ないものをばら撒いてると思うけど……なんで偽物のままなんだろう……?)」

 

「なに黙ってるっすか?」

 

「ちょっとさっきのこと考えてて……さっきと言えば、ごめんね囮にしちゃって」

 

「いいんすよ、俺から言い出したことだし。こんな不気味な部屋にしたのもボディを放ってるのもあのピーチ擬きの仕業っす!」

 

「そうかそうか! 次こそとっ捕まえるぞ!!」

 

「(……ん?)」

 

 

ルイージは何か取っ掛かりを感じたのだが、それは疑問として形になるまで昇華しない。

 

 

『…………!』

 

「ん……えっ、ボディ!?」

 

 

そしてこちらへ向かってくるボディが目に入り、それは霧散してしまった。

くるならこいと構えるが、彼らに目もくれず通り過ぎていく。

 

 

「うおっ」

 

「なんですか……?」

 

 

一戦も交えず、コロシアム内部へ向かうボディ。言葉を交わす必要もなくファイター達は追うことに決めた。

 

 

 

 

 

観客席が円状に取り囲む戦場。

確かに聞こえる戦闘音。

席には隙間なくボディが座り、無言で戦いを見守っている。そこには歓声も闘志もなく、コロシアムとして異端なそれだけがファイター達を威圧させた。観客席ごと一望できる特等席で見る景色に悪い意味で圧倒された。

 

 

「うりゃあああ!? なんだこれ!?」

 

「気持ち悪っ!? なによこれ!」

 

 

今まで戦ってきたキーラやダーズの僕でしかなかったボディが自分達と戦うこともせず、無言無表情で一点だけを見ている。そんな自分や仲間の姿だけど自分や仲間じゃない何者か。凄まじい嫌悪感を抱くのも当然だった。

 

 

「あっ! あれ、見てください!」

 

 

キノピオ隊長の指差した先、闘技場の中央でボディが戦っている。

数体まとめて正面から襲ってくる敵を回し蹴りで蹴り飛ばす。ブラスターの射撃により闘士が消滅したのを確認すると、客席から十体ほどのボディが場内に降り立つ。

 

 

「見せもんじゃねえぞ! 暇してんなら参加しろ!」

 

「あ、ファルコ!」

 

 

戦っていたのはファルコだった。なにがどうなったか知らないが、おそらくここに迷い込んで戦っていたのだろう。

よく見れば、ボディともファイターとも違う何者かもいた。ファルコと共に戦っていた。

 

 

「あっ、またスマッシュブラザーズの……」

 

「なんだぁ? あのヘルメット、どこかで見たような……」

 

 

青くて、ゴツい服。大剣を両手で握って戦う少年。いや、戦っている姿までは見たことがない。ただ、仲間の仲間で。友達の友達で。

 

 

「あ、ホムラとヒカリの彼氏じゃない!」

 

「か、か、か、か、か、彼氏!?」

 

「色恋にうつつを抜かす時間ねえぞ!」

 

 

レックスが赤面で思わず剣を取りこぼした。隙を突く形のボディを代わりにファルコが蹴り飛ばした。

 

 

「あ、ごめ……」

 

「いいから戦えって!」

 

「あたし達もいくわよ!」

 

 

ファイター達は飛び降りて、戦場へ向かう。

残ったのはワリオとキノピオ隊長だけ。

 

 

「頑張ってくださ〜い!! ってワリオさん、なんで行ってないんですか?」

 

「俺1人いなくたってなんとかなるだろ! ガハハハハ!!」

 

『…………』

 

 

2人の背後に、立つボディ。

 

 

「あっ……」

 

「よう……」

 

『…………』

 

 

首根っこを掴まれる2人。

 

 

「ぎゃあああああ!? やめてくださいワタシ、戦えないんで()ぅう!」

 

「オレさまもオレさまも! めんどくさくて腕と足が動かないんだぁあ!」

 

『…………』

 

 

立ち見の客は許さないと2人一緒に戦場へ放り込まれた。

 

 

「「ああああああああ!!」」

 

「どうしていつも来ないんっすかこいつら!」

 

「ファルコも元気そうでよかったよ!」

 

「無駄口を挟む暇があったら戦え(やれ)って言ってんだろ!!」

 

 

軽口を叩きながら狙いを定める。懐中電灯のフラッシュ、ストロボを当てて目が眩んだ隙にリトル・マックが殴り飛ばし、デイジーがフライパンのフルスイング。

倒された途端に客席から新たなボディが臨戦体勢を取ってくる。

 

 

「くっそ、全員倒すまで逃さねえってか!」

 

「逃げたいけど……地下に行っても挟み撃ちにされるし……」

 

「はあ? なんで出てくる奴からいちいち相手しなきゃいけねえんだ? 座って待ってる奴ら叩けばいいじゃねえか」

 

「え、それは……いいのかな?」

 

 

逃げ回り、リュックを振り回すキノピオ隊長を見て、レックスが敵を一刀両断して助ける。ホムラもヒカリもいない今、持っているのは市販の大剣だ。

 

 

「でもそうね、わざわざ付き合ってやる必要なんかないわ!」

 

 

ジャンプして客席まで乗り込んだデイジーがボディを蹴っ飛ばす。ヒールの威力は凄まじい。

席に座ったままのボディはデイジーが側に近づいても尚、微動だにしないどころか視線をやることすらしない。無抵抗のままぶっ飛ばされていく。

 

 

「なんなんだよコイツら……」

 

「えっと、僕たちとそっくりなんだけど別物で……」

 

「そこじゃなくて、なんで無抵抗なんだってことだって!」

 

「うわあああああ!!」

 

「え? キノピオ隊長?」

 

「敵の方だって!!」

 

 

なにもしない。指示や命令に愚鈍なまでに忠実な人形。命に頓着せずあくまで客に徹する様相は本能的な恐怖を与える。

 

 

「まあ、結局、客席のやつも倒せばいいってことだよな」

 

「あんたもそっち行っとけよ、俺は下で戦うっす」

 

「は、はいぃ〜……」

 

 

慌てて壁を登ろうとするキノピオ隊長。

それを尻目にリトル・マックは3体のボディのパンチをかわし、連続でストレートを叩き込む。

ルイージはオバキュームでボディを吸い、スラムによる叩きつけで観客席ごと攻撃する。

 

 

「あー!! ホテル壊してますよ!」

 

「うっ、い、今は考えない!」

 

 

ただしホテルの施設も含めて破壊することになる。ルイージは言葉に詰まったが、ホテルはまた作り直せばいい。

 

 

「! そうかそうか、言質とったぞルイージ!」

 

「あっ、余計なこと言っちゃったわね……」

 

「えっ、なにが?」

 

 

頭を抱えるデイジーに少し遅れてファルコが気づいた。顔の強張った、嫌な顔である。

 

 

「おい待て! このままでもどうにかなるぞ! 時間はかかるが、確実に全滅まで持っていける! だから早まるんじゃねえ!!!

 

「なんだその言いぐさはぁ? オレさまは1番に金が! 次にめんどくさくない方が! その次に手っ取り早い方が好みなんだよ!」

 

「え? なに? なんでそんなに慌ててるんだ?」

 

 

心当たりすらないレックスは戸惑うしかない。動揺と熱意の差が激しく、話にも入る余地がないのだ。

 

 

「ほおらいくぞー!!」

 

「あっ……」

 

 

急速に膨らむワリオの腹部。服の下からでできたでべそ。ようやくルイージは気づいた。短く無意識に出た言葉はなんの力も持たない。

 

 

「くらえーーー!!」

 

「「やめっ……!!」」

 

 

ファルコとリトル・マックが強く静止をかけるが、今更効果はない。尻をボディへ向けたワリオが力む。

 

 

ドゴオォンッ!!!

 

 

──まるで屍のように沈んだ彼らの近くにエレベーターのスイッチが転がる。

──だが、それに反応できるようになったのはかなり時間が経った後の話である。

 





◯タイトル
ファイアーエムブレム風花雪月のBGM。
学級対抗戦である鷲獅子戦の章ではじめてながれる(確か)。
いわゆる行事のため、ロストしない代わりに教団関係者等一部のキャラが出撃不可。作者はワープや飛行系を駆使して中央の弓砲台を速攻で取りに行っています。第一部が一括りし、今までの経験を試す行事を彩る荘厳さを表している。なお第二部。


◯レックス
ゼノブレイド2の主人公。「オレが参戦するんじゃないの!?」という名言を残し、第二のクロムの道を歩む少年。
本作においては、ホムラもヒカリもいないため大半のアーツが使えない。ただ別にブレイドがいなければ戦えない訳でもないため、市販の剣でも使えるアーツやアンカーショット等の小手先で頑張る。
新たな未来でホムヒカの剣を双剣兼両手剣として使っているが、まあ今回はエンディングからそんなに時間経ってないので……


◯作風
レックスが登場したので少しだけゼノブレイド2よりの作風に。
詳しく言えば、ギャグ系よりに。カメキチのくだり好き。というかジークが好き。


◯ダイナマイトオナラ
Xの初期トレーラーであったイメージで。
ホテル大丈夫なのか……?


◯作者の気まぐれコメント
マリオ映画見ました。やべえぞコレ……
ありとあらゆるマリオシリーズから小ネタを仕込んでやがる……
そこまでマリオシリーズに詳しくない私でもかなりわかりましたし、初代からやってるみたいな人にはたまらないなこれ。しかし、よろずやチコになにがあったんだろう……
気が向いたら活動報告にネタバレ込みの感想貼っちゃうかもしれません。
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