大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「うっ……」
「無理……もう無理……」
締め切ったエレベーターの中に、服に染みついた異臭が漂う。まだ階層のスイッチは押されておらず、扉は開いたままだ。
閉め切っていないのに、呼吸をしたくないほどに臭う。
「このまま先に行くの無理よ……せめて洗濯とシャワー浴びさせて……」
「うん……地下行こう地下……シャワーは兎も角洗濯機、あったから……」
地下にはボディがいることはわかっていたのだが、それでも悪臭に耐えられなかったのだ。
本当はゲストルームが使えれば1番なのだが、階層のスイッチが抜けている。手に入れることができた新たなスイッチは後回しだ。
「シャワーはねえのか……?」
「……あっ! ジムフロアにあったっす!」
流石に参っているファルコが珍しく弱々しい声で聞く。天啓を受けたリトル・マックは大声で答えた。大きく息を吸ってしまい咽せる。
「わっかんねえけど大変そうだな〜」
「「「(誰のせいだと……)」」」
完全に他人事状態で鼻をほじるワリオに、皆の心が一致した。涙目で呼吸を抑えた鼻声なのは相応の理由があるのだ。
「とりあえず先に洗濯……着替えあったかな……」
ルイージが地下1階のスイッチを押そうとする。
が、その指を引いたのは異質な存在を感じ取ったからだ。
「ボディ! まだ残ってたんだ!?」
「しゃーねーな、オレさまがもう1発……」
「やめろッ!」
思わずファルコがワリオを蹴り飛ばした。バウンドして跳ねた頭部がエレベーターのボタンにぶち当たった。
静止する目的で加減もなく振るわれた足は、ボタンや周りの器具を破壊する。火花を散らした様子にみんなの顔を青ざめさせた。
「嘘でしょ……」
思わずこぼしたデイジーの言葉。気分はどん底まで落ちていった。自重が支えられなくなったのか、後を追うように落下していくエレベーター。
「いやあああああ!」
「ファルコのアホォオオ! とりあたまぁああ!」
「だれがトリあたまだあああああああ!」
「うわあああああああああ!?」
落ちていく。落ちて、落ちて、おちて。
──B2F メンテナンスフロア
ドゴオオオォンッ!!!
「いってて……」
「ホントさいあっく……」
「いたい……」
扉が開いたまま、煙を吐くエレベーター。最下層まで落ちてきたところから、完全に壊れていた。
「どうしてくれんすか、お前らァ!」
「待て待て待て! オレさまなにもしてねえぞ!」
「またやらかそうとしたこいつが悪い!」
「連帯責任だボケェ!!」
同時に顔面を殴った。なんの躊躇もなく。
暴力による禊をレックスは茫然としながら見ていた。
「それでアンタの名前なによ」
「今更!?」
「それどころじゃなかったから……」
負傷と疲弊した身体を休めながら、自分たちの名前と状況、そして情報を交換した。
「その女の人がオレたちを閉じ込めてる犯人なのか?」
「なんとも言えねえっすけど、多分そうっす」
「とっ捕まえられればいいんだがな」
しかし、追い詰められるとなにをしでかすかわからない敵を相手にこの状態で捕縛するのは辛いものがある。
勢いのままワリオに責任転嫁してしまったが、エレベーターを壊したのは自分だ。罪悪感から、その先は口に出せなかった。
「ここは……確か物置がある。遠くないからそこで色々探そう?」
地下2階、メンテナンスフロアは大半を水道関係の設備が占めている。それらを管理するための掃除用具等が押し込まれている場所だ。8人が入ると手狭だが、この際文句は言わない。
「助かったぁ……なんか処置するだけでも全然気分が違うや」
「体を拭くぐらいならできたし、まあまだ少し臭うけどだいぶマシになったっす」
備蓄である医療セットを拝借し、彼らは処置を済ませた。急激に変わりはしないが、心持ちに余裕ができる。
「それで、この後どうしよう。階段があるのは地下1階から2階だけなんだ」
「道具はありそうだけど、直せるかどうかは別だよな……」
水道を辿っていければどこかの階に着くだろうか。しかし、人が通れるかどこの階に着くかを考えるとその方法は取れない。それならば、最終手段を取るしかない。
「天井に穴開けるしかないか……」
「……悪い」
渋々といった顔に、ファルコの素直な謝罪が出た。短気な性格のせいで、いつも状況を悪く傾ける。
「ハシゴかなんか必要だろ。オレが探す」
「ファルコなんか珍しくない? 地味なことやらないでしょ」
「うるせえ、お前らはここで寝てろ」
ガンとうるさく戸を閉める。
自分がやらかしたことは自分で責任を取る。こんな場所なら脚立のひとつぐらい必ずあるはずだ。
「チッ」
薄暗い場所だ。懐中電灯を(無断で)借りてきて正解だ。奥に進むにつれ、水路の面積が大きくなっており、よりファルコに向いていない環境となっていく。それに合わせて、ファルコの進みも遅くなっていった。
ジャポン
「……!」
水音が聞こえて気配を消すが、懐中電灯がついている以上無意味だ。かといって消すのは鳥目のせいで自殺行為。明かりとブラスターを構えた。だが、その心配は無用であった。
「ッコウ」
「なんだよ、ゲッコウガかよ」
水路を泳いでいるゲッコウガ。
おそらく自分と同じようにここに迷い込んだのだろう。ボディ達にもみくちゃにされて闘技場まで連行、戦ってる最中にレックスが来てルイージ達が来て……
「おまえエレベーター直せたり……できねえよな」
「クゥ……」
カエル違いである。
くだらないことを考えるぐらいには疲れてる。
「なら、ハシゴとか脚立とか……登れるもの見てねえか? 天井に穴開けるからよ」
「コゥ!」
ハンドロポンプで上に併設されている歩行通路に上がる。誘導するように先に進む。そのままファルコも着いて行った。
しかし、明かりがあっても暗がりだ。見落としは起きるものである。
「がっ……!」
水路に押し込み、首元を掴む誰か。どう考えても味方ではない。懐中電灯を取り落とし、沈む体、視界が最悪まで落ちる。
「(クソッ!)」
呼吸の音と、わずかな揺らぎを頼りに手探りでブラスターを撃つ。手ごたえがあるかもわからない。
「ガァッ!」
声からしてゲッコウガが降りてきた。ボディをふみつけ、ハイドロポンプで吹き飛ばした。
「プハッ! 舐めた真似しやがって……!」
その隙に水面から顔を出す。
少し冷静になった頭で考えると、相手はゲッコウガのような水中戦に長けたボディではない。暗がりでなければ互角に戦えたはずだ。
「チッ……!」
「クゥ……?」
自分が足を引っ張っている。名誉挽回を謳っておきながら、ゲッコウガに助けられていた。
「……なんでもねえ。それより案内を頼む」
それ以上、表に出すことはしなかった。
だが、心の内では自分への不甲斐なさがグルグルと回っていた。
マスターハンドの不信感、ソラへの憐み、今回の事件の黒幕やボディの嫌悪感。そして、現状の自分。考えることが多すぎて処理しきれていなかったのだ。
ひとつひとつに集中すれば、割り切ることもいつかはできるかもしれない。しかし、早さが問題ではないとわかっていながら、パパッと解決しては、結果がどうでも納得しきれないような気がするのだ。
「コゥ」
そして、ゲッコウガにはそれに気づきながらも知らない振りをする聡明さがあった。
ここから脚立を取って、ルイージ達の場所まで戻るまで、変わったことはなにも起こらなかった。
しかし、ビショビショのままの体を支配する心のモヤモヤはファルコの中に巣喰い続けていた。
◯タイトル
DQ10のBGM。洞窟系のダンジョンであったり、遺跡、はたまたパーティ同盟系の場所で流れている曲。だが、1番印象が強いのは魔法の迷宮だろう。レベル上げにコインボスなど多くのプレイヤーが耳にする。
はたして、オフライン版では魔法の迷宮はあるのだろうか。
◯やらかすファルコ
航空技術はファックスより高いのに原作ではしょっちゅう後ろを取られる系そうめん。おそらく性格的な問題。
◯鳥目
スマブラXのイベント戦で、暗闇状態で戦うものありましたよね。
イベント戦、結構好きだったんですけどね。
◯水ポチャ
プププランドでは、水に強いボディが待ち伏せしていたのにここではそんなこともなし。指揮官の差ですね。
◯作者の気まぐれコメント
ティア! キン!
組み合わせて色々作るだけで数時間遊べそうなこの作品。とんでもねえです……
ちなみにスプラのフェスはボコボコでした。あれ、部門の2位3位にも点数を与えればいい勝負できると思うんですけどね。