大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
ザブーンと波打ち際で聞く涼しげな音。
砂浜と桟橋、岩場には麗しき人魚の石像……
「いや何でだよ!?」
ボロボロの心許ない橋、片腕のもげた石像。だが重要なのはそこではない。
ホテルという室内、それも高層なタワーの内部に、うっかりすると水平線が見えてきそうな大海原があるのか。
外に出たのではないかと錯覚してしまうような海はおおよそホテルに存在していいものではない。
「もうホテルじゃねえなここ……」
「えっとえっと、他にも砂漠とかあるらしいですよ」
「世界万博かなんかかよ、イカレてんな」
「こいつらがイカレてる言うとか相当だぞ」
喧嘩になるのはわかっているので聞こえないようにボソッと呟く。ワリオもガンナも一般とはほど遠い感性を持ち合わせているため、そんな二人が自身でも共感できることを呟いているのが少なからず衝撃だったらしい。
「あっ、でもよく見たらハリボテ見えるわよ。ワープとかせずしっかり室内なのね、ね、ルイージ」
「待って……今ようやく千鳥足じゃなくなってきたから……」
「オレもやっと息戻ってきた……」
酸欠と混乱から復帰しかけていた二人。デイジーが指差した先は空ではなく壁。繋ぎ目が見えるため、月も雲も空も壁に映し出された映像かなにかだろう。
「ミャアアアア!?」
「え、何!?」
「あっ!? 船の上です!」
ボロボロのいかにも幽霊船と呼ばれる元海賊船の欄干で、悲鳴を上げながら身を隠している少女、ピーチのボディ。それは先ほど出会った敵の首魁と思われる少女だった。悲鳴が上がりながら海の水や木片が浮かび上がっていく。
「先手必勝!」
「また! ってはやっ!?」
念力のような力に驚くよりはやく、ガンナのフレイムピラーが少女めがけて飛ばされる。躊躇なし、例え悲鳴が上がっていようと。
「きゃあああ!」
「なっ……!?」
しかし、フレイムピラーは少女の元に届く前に爆散した。何かに撃ち抜かれたように少し光りそして爆発したのだ。その力に少し動揺したものの、ならばと近距離攻撃だとガンナだけでなくファルコも船上へ跳び上がる。
「ギャー!! 来ないでぇ!!」
「逃がすかァ!」
「僕達も行かないと! どうにか話を聞かないと!」
少し遅れてルイージ達も船の上へ跳び上がっていく。
「くっそ! オレじゃこんな跳べねえ!」
「ごめんなさ~い! ワタシも連れてってくださ~い!」
一人置いていかれたリトル・マック。意を決してグローブを咥え、背中にキノピオ隊長を背負い、素手で船壁を登り始めた。
「ヒャ……!」
「待って! 話を聞いて!」
「ああん?」
向かいの欄干まで逃げていった少女に対して、そしてどうにか攻撃を加えようとするファルコ、ガンナに対しても制止の声をかける。
「僕はルイージ。この建物、もう少し綺麗だったと思うんだ。何があったか知ってるかな?」
「えっと……」
怖がらせないように、敵意を相手に感じさせないように。慎重に言葉を選んでいく。
彼女は過敏な猫のような状態なのだ。詳しくはわからないが、彼女自身もいろいろなことがあってキャパオーバーといった印象だった。
いっぱいいっぱいな彼女の立場に自分がいたらどういった言葉をかけてほしいのか。考えて穏やかな口調を心がけて、どうにかようやく会話らしいことができそうだ。
「こ、怖い……! こんな人たちの仲間が穏やかな人のわけないし……!!」
「ええ!? どんな理由!?」
「責任取りなさい! 突貫ブラザーズ!」
「オレとコイツを一括りにするんじゃねえ!」
「ま、説得なんかよりこっちの方がわかりやすくていいな」
「そういうところじゃないのか!?」
どうやら先手必勝が足を引っ張ってたようだ。知り合ったばかりのレックスすらわかってきた二人の性格。瓦礫と木片と海水の洗礼がファイター達に襲いかかる。
「出てってよ! 私をほおっておいてぇ!!」
「くっそ!! どこから襲ってくるのかわかんねえぞ!」
「感情的になってるから逆に攻撃が読みづれえ……!」
海竜がうねるように海水が襲い、船から剥がされた木片がその隙間を通るように襲いかかる。それはタックルや銃撃で迎撃できるが、実体が液体の海水は避けるしかない。
「どうしよう……話をする暇もないよ……」
「もうそれどころじゃないでしょ!!」
まだ対話を諦めていないルイージをデイジーが一喝する。確かにガンナが先手必勝をした時点で手遅れのような気もするが、やっぱり弱い物いじめをしているようで嫌だった。
「(どうにか突破口を見つける! とりあえずとにかく攻撃だ!)」
とりあえず効かなくても、なにかを掴めればととにかくブラスターを撃つ。方向を変えて緩急をつけて。涙を溜ながらも、まっすぐにこちらを見据えてくる少女は光弾を発火させて爆発させる。反撃として、マストをへし折って横向きになぎ払う。
「で!! まだ説得の余地があるわけ!?」
「う~……あんまり傷つけないように……」
しゃがんで避けた二人の会話。容赦のない反撃にルイージも完全に穏便にすますことは不可能だと察した。覚悟が鈍る前に決着をつけようと拳を握りしめた刹那、大蛇のごとき水流がルイージを襲い、空中に投げ出される。こちらへ振り向く焦ったデイジーを揺れる視界に入れながら落ちた彼は、手首を捕まれて事なきを得た。
「
「大丈夫ですか?」
「うん、ごめん!」
船壁を登り中だったリトル・マックに助けられた。グラブを咥えたままで言葉が不鮮明なのは置いとくとして。
「チッ!」
「ああっ!? やられた!」
ガンナがアームで殴りかかるが、それは木の板で阻まれ避ける時間を作られる。アンカーも、古びた紐に絡まれて封じられる。
「もうしつこいよ……私は静かに暮らしたいだけなのに……」
ぼそぼそと呟くその内容は誰に聞かせるためのものではないだろう。しかしその呟きに少なからず意識を割いていた少女は自身が操っていた水流の中に異物が混じっていることに気づかなかった。
「クウゥ!」
「わああああァ!!!?」
背後から襲いかかるゲッコウガ。水に適した生態である彼は操る水流の中を自在に泳げる。背中に手を押しつけ、床に押さえ込む。彼もできる限りの平和的解決を諦めたわけじゃない。
「んー!!」
押さえ込まれる少女がうめき声を上げる。その声に呼応するように船首がへし折られ、まっすぐゲッコウガに飛んでくる。後ろに飛んでかわしたところで空中で炎が現れる。軽いやけどを負ったゲッコウガは海に墜落した。
「火ィ!? 嘘でしょそんなことまで!?」
「私の爆弾が途中で爆発したのもそれかよ……」
使い勝手のいい飛び道具も、接近するための機動力もないデイジーが攻めあぐねている中、武器の不調を怪しむ出来事に理由が通った。
しかし、真にやっかいなのは空中の、なにもないところから意思一つで炎を生みだしたことだ。つまり、少女の意思ひとつで拘束しようがなんだろうがいつでもどこでも攻撃できるということ。そこが一番てごわい。
それでも、唯一の手がかりだ。ごめんなさいさようならでは終わらせない。
「らああ! 海やら空やらが何だア! 人間なら陸地で勝負だア!」
「ワアアアアッ!?」
オバキュームの先に張り付いたまま、上へほおり投げてもらったリトル・マック、堂々の遅刻参戦。船の甲板を真っ二つにして、フィールドをめちゃめちゃにする。
「コウオッ!!」
「アバアアアアア!?」
足下が不安定になったところに海からゲッコウガ。みずタイプなのだから、海に落ちたところでなんの問題もない。2枚分はなったみずしゅりけんは少女の念力のような力で軌道を逸らされる。
「あいつ、なんであんなビビってんだよ、あんな色々できんのによ」
「ビビる……それにさっきのみずしゅりけんだって爆弾みたいに打ち消せば……ああ、そういうことか」
ニヤリとちょっと凶悪そうに笑うガンナ。ワリオの言葉で見つけた突破口。
「もー!!! 変なしゃべらない奴らといい!あなたたちといい! もうなんなの!!?」
「えっ……!?」
そして、ルイージがその言葉の意味を理解するのには、数瞬の時間を用いた。
◯タイトル
ゼルダの伝説 風のタクトのBGM。
森の島クリア~プロロ島再訪までの限定的な航海中のBGM。
最初は普通に大海原(通常時の航海BGM)にしようとも思ったが、なんかそのまま過ぎるのでこちらに。
タイトルにBGMを使おうとすると、結構な確率で率直なタイトルなのて困る。
◯少女
悲鳴が珍妙かつ、バリエーション豊かなので書いてて楽しい。
それはさておき、先に話しちゃいますが彼女のモチーフはポルターガイストです。色々物が飛んでくるのは有名ですが、発火や発光などもするのだとか。