大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「いい加減にしてよ……私は! 静かに! 穏やかに暮らしていきたいだけなの!」
少女は空中を滑るように移動し、水上まで動く。水面に足先がつき静かに揺れていく。
一週回って静かに感情を揺らし始めた少女の周りに、砕かれた海賊船の全てが浮かんでいく。先ほどのような木片ではない。船を構成していた全てが襲いかかってきたのだ。
「待って! もしかしてキミはボディとは関係ないんじゃ……!」
「はあ!? あぶっ……!」
全ての前提をひっくり返すまさかの事実に狼狽した結果、飛んでくる錨に対応できなかった。ガンナのアーム部分に鎖が絡まり、海中まで連れて行かれる。
「クッソ!」
「クウゥ!」
反射的にファルコが飛び込み、海中にいたゲッコウガが救出に動く。錨と共に沈むしかないガンナは溺れるほかない。他も動こうとするが、攻撃の対処にそれどころではない。
「どっか行って……!」
「ウギャアア!!」
今度は海を使った攻撃、それも大蛇のように操る海流ではなく、まるで津波のような巨大な面での攻撃。思わず悲鳴を上げるのも無理はない。全員で苦手な海での戦いを余儀なくされる。
「好き勝手にしすぎだぞッ!」
「……!」
「うっそ、アイツあんなことできたの!? でも……」
咄嗟にその辺りの木板をサーフィン代わりに使うワリオ。だったが、足下の波をうねるように動かされる。この足下もおぼつかず、即座に動けもしない中自力で接近しなければならない。
「たいちょー!! アイテムなーい!!?」
「あっても取り出せないです~!!」
「踏ん張れねえからパンチも……!」
「もーう!! どうしろってんのよー!!」
「どうすればいいかって!? 教えてやるさ、実技でね!!」
「あなた……!」
水中から出てきたガンナが少女に組み付きにかかる。真下から泳いできた彼女にアームは装備されていなかった。鎖ごと外したのだ。
「飛び道具も海も! あんたの意思のままなら認識外からやるか、さばききれないほど攻撃すりゃいい!」
「もう……!」
装備を外したガンナは思った以上に身軽だった。振り払おうと、彼女に向かって飛ばす柱を少女から手を離さぬままにかわしていく。
「やっちまえ、メット!」
「っ!!」
足下からガンナの足にアンカーをくくりつける。海中から引っ張られる少女。作り物の海は散々沈んできた雲海と要領が似ていてレックスがそこそこ動けていた。
「コゥ!」
そしてゲッコウガも動けない訳がない。辺りの木片をクナイで切り落とし、蹴り飛ばす。飛ばしてきた木片は水中でスピードが殺されているものの、少女はガンナにかかりきりで対処もできない。
「(なら……!)」
周囲の水を持ち上げて、空中に水球をつくる。それごとまとめてガンナと少女を持ち上げる。周囲に嵐のように木片をまとわせて目くらましにかかる。
「長引かせて呼吸を切らせちまえば……」
「アホ! ガンナが先に溺れちゃうわよ!!」
銃のような精密に狙える飛び道具がないデイジーやワリオは遠くで様子を見るばかり。そんな二人の間の海中から何かが飛び出す。
「やっちまえェ!!」
ファルコだった。狙うのはガンナの足に巻き付いたままのはずのアンカー。その先。
印として狙い、持ち上げたのはブラスターではない。ガンナのキャノンアームだ。錨ごと切り捨てたはずのそれ。ガトリングでアンカーの先を撃ち抜いた。綺麗に命中したのか、水球が破裂し、手を離したガンナが頭から着水する。
「バッハァ!? テメエ、いつの間に操作方法覚えてんだトリ頭の癖に!!」
「テメエが言うほどトリ頭じゃねえってことだ暴力女!」
同郷のフォックスやウルフを除けば、多く戦っているのがこの女だ。スマッシュブラザーズとしては後輩であるのに、よく喧嘩の延長で大乱闘を繰り広げているために数がかさんでいっている。何度戦っていると思っているのだ。軽く操作方法は知っている。絶対に口にも態度にも出してやらないが。
「フーフー……! ……ッ!!」
肩を押さえながら荒い息をなんとか治めようとする少女。振るった腕は海の全体を揺るがし、みなを岩場にたたきつけた。それだけにとどまらず、大津波が巻き起こり、ドクロの岩壁を砕きレストラン部までたたき出された。
「ブフゥ!? マジかよ!!」
びしょ濡れの服のまま岩肌の地面から身体を起こす。喉の奥まで入った水を吐き出す暇も存在しない。戦場が移り変わった結果、物の種類が増えた。それはつまり相手にとっての弾が増えたということ。
「どうしよう……海じゃなくなったから戦いやすくなったのはいいけど……」
水中から不意をつく方法はもう使えない。それにこの場所も少女の武器となる物が多い。
「そうだ! ぶつかってもダメージを受けないぐらいに細切れにしちゃえば……!」
「ぐおっ」
アンカーを外すことを忘れて駆けだしたせいでガンナに関節技を決められるレックスを背後に、動きを封じられて鬱憤が溜まっていたのか、ワリオがショルダータックルを仕掛けていく。
「このっ……!」
「ガッハハハ!効くか、んなもの!」
「ブエ!? 食べたぁ!?」
真っ正面からテーブルを飛ばしたというのに、ワリオはそれを喰らってしまった。それには少女も目を丸くして驚いた。最初の方の珍妙な悲鳴を上げていた頃に一瞬戻っていた。
「アイタタタタタ!? ゴメンってェ!!」
「テメエ、そんなフツーの剣で細切れにして間に合うと思ってんのか、メットォ!」
ガンガンと力任せに剣を地面に叩くことでフツーを強調する。恨み辛みも込められているようだ。
「いや、間違ってないかも! 斬れなくても燃やすなりして物をなくしちゃえば!」
ただレックスの考えとワリオの行動がヒントになったのか、デイジーが具体的な案を生みだした。形を失わせてしまえば、もう飛ばせない。
「燃やす燃やす……ファイアーフラワーは……」
「ないです!」
「ああ、そう……」
ゴロ岩キノコを持っていたのだから、とキノピオ隊長に聞いてみるが持っていない模様。
「あれ?」
「ワン!」
がっくりと肩を落としたルイージの足下には白い姿の相棒がいた。ブーツをペロペロとなめるオバ犬。ルイージが気づくと、オバ犬は入り口の方へ戻っていく。少し振り向いては吠え、また振り向いては吠え。誘導をしているように。
「そっちに何かあるの?」
「ワワン!」
レストランの外まででると、ある壁の前で立ち止まる。そこには大きなコンセントがついていた。通常のものとは違う、特製のコンセント。そうしてルイージの頭に電流が走る。
「ああ! そうだね、さっすがだよ!」
「ワフ~ン♪」
手短ながらもなでまわされ、オバ犬はご機嫌である。オバキュームの後ろとコンセントを電流でつなげると、とろけた顔のままルイージの後ろへ回った。
「みんな! なんでもいいからしっかり捕まってて!」
「バベッ!?」
オバキュームの先からは今までとは比較にならないほどの吸引力を感じる。目に見えてわかるほどの威力。フライパンやお玉などの調理器具をぶつけ続ける少女は完全に固まった。
「いっけえええええー!!」
ハイパーバキューム、全力全開。道具、床、地面、装飾、光源、水、配管この場にあるありとあらゆる物を吸い込み始めた。
「フギャアアアアアアアアアアッ!!」
重力に囚われない少女も空中でなんとか耐えようとしているが、それでも少しずつ動いている。
「ルイージの奴、派手にやりやがって! オレ達ごとかよ!?」
「もーう! 私まで巻き込むなんて! 後で覚えときなさーい!!」
「リュックが飛んでいっちゃう~!」
「ま、そういうの嫌いじゃねえけどな!」
「悪かったからまた首がああ!!」
配管にしがみついたり、メットや服にしがみついたり。なんとかやり過ごそうとするファイター達。結果的に抵抗する術を持たない物体だけが吸い込まれていく。
「……! 駄目……! させない!」
それに焦った少女は全力で火炎放射のような炎をルイージに向けて放つ。
「クウガァ!」
「あっ……!」
勝利を阻む壁を打ち消したのは、この台風以上の風の中で器用に直立しているゲッコウガだった。吸い込まれる故の軌道もまた計算にいれていた彼は炎の中心を的確に射貫く。
「はあ……はあ……」
すさまじい威力のオバキュームを支えていたことで精力尽きたと言わんばかりにしゃがみ込む。もうしばらくは動ける気がしなかった。
「あっ……」
戦う術をほとんど失って逃げ出す少女をゲッコウガは逃がさない。クナイを首にあてがわれた時点で少女は白旗を上げるしかなかった。
◯タイトル
スーパーマリオギャラクシーに登場するギャラクシー名。
オバケマリオの初登場ステージであり、マリギャラのルイージ初登場ステージであったような気がします(うろ覚え)
PCゲームにほぼ同名のゲームがあるが、あっちはSF系。
◯ 「やっちまえ、メット!」「やっちまえェ!!」
似た物同士。
ちなみにガンナを追って真っ先に海に飛び込んだのはファルコ。
◯ハイパーバキューム
オバキューム(3仕様)の強化装備。
専用のコンセントが必要だが、吸引力が格段に上がる。
ただ、本作品みたいに何もないほどは吸い込まない。多分オヤ・マー博士の仕業です。
◯作者の気まぐれコメント
あっぶねえ! ビックランしてて投稿間に合わないところでした。
ですが、154という上位5%を狙えそうなスコア出せましたよ!
ちなみにそのリザルトを見たら、一回ハコビヤ混じってたとはいえ全オオモノ討伐してました。上位勢すげー……完全に味方頼りです。本当にありがとうございました。