大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「オラ、まず名前吐け」
「……リール」
「ええと、さっきと同じ質問するけど、君はボディとは関係ないよね?」
「はあ!? 無駄足かぁ!?」
「ボディ……?」
怪訝な顔。ボディを知らないようだ。
「ええと多分、その身体ってキミの本来の物じゃないよね?」
「えっと、ここのホテルに勝手に住み着いてたら、こんなのとそっくりなのが辺りにうじゃうじゃしてて……この身体は動かなかったから乗り移ってみたら意外に心地よくて……」
「なんでコイツ臆病なのに好奇心無駄に高いんだよ」
ファルコは完全に呆れている。うるさいほど珍妙な悲鳴を上げていたほど臆病であったのに、自分に手を出さないだろうものに対しては案外アグレッシブなのは面倒な性格をしていると思う。
「つまり……無関係?」
「マジで無駄足っすか……」
レックスの要約にリトル・マックが深いため息を吐く。ルイージがそれをほのめかしていたが、本当に無関係だったとは。
「はああ~、いらん時間過ごしたー」
「アホ頭でっかち、閉じ込められてたってミドリのヒゲが言ってたこと忘れたかよ。それ実行したのはボディだろうけど、そのボディをここに解放したのは? コイツに遠回しに身体を与えたのは? こんなぼろ臭いホテルにしたのは誰よ」
「追い出そうとしてるのになんで閉じ込めなきゃいけないのよ……」
ただ、まったくの無関係でもなかった。リールという少女はどうやら自分達と戦わせるように仕向けられたのだ。落ち着いた今では敵対心もなく……正論をかました相手、ワリオがギロリと睨み、今までで一番の速度でルイージの背後に隠れた。
「あのさ、ボディがどこから来たとか知らない?多分そのボディ達がいた世界に行かなきゃいけないんだ」
「それでそのボディって……動くこの体とかのこと?」
「うん」
「外……」
外とはこのホテルの外か。外から押し寄せたボディがリールを残したままオバケ達を追い出したのだろう。ならば行くしかない。
「悪いようにはしないから、案内してくれないかな? ボク達、その世界に行かなきゃいけないんだ」
「はあ?それオレさまも入ってんのかよ?」
「安心しろ、当然強制労働だ」
「勝手に使うなよ~……」
「な、テメエ!?」
ガンナがレックスのアンカーを勝手に使ってワリオを縛り上げていた。強制連行の構えである。
「あ……あと……」
「ん?」
「ホテルの外装を変えたのは私……こっちの方が可愛いかなって……」
「かわ……いい……?」
やはり変なところでアグレッシブだ。
──1F メインロビー
チン♪
もはや聞き慣れた軽快な音が鳴り響く。外に出ようと1階まで降りたファイター達を出迎えたのは勢揃いしたボディの大群。今までのようなちぐはぐさはない。完全に臨戦状態だった。
「待ち構えてるぅ!?」
「あー……地下から出た方がよかったのかな?」
呑気な反省の声が周りを無自覚に煽るが、今言っても仕方ないことだ。
「ぐる゛う゛う゛!! ビャアアアアアアアア!」
「ギャー!!」
「うるっせえなコイツら!」
この戦闘の開幕の音は悲鳴のデュオが務めたのだった。
狭いエレベーターの中で圧殺してやろうと数で迫るボディ達。背後からファイターの隙間を縫って飛び出すリトル・マック。彼はこの中では一番の動体視力と俊敏性だ。
「さっきはぜっんぜん活躍できなかったけど、今度はそうはいかねえっす!」
ストレートパンチをかわすように体を斜めにかがませ、潜り込んだ懐に連打をたたき込む。正面の銃撃も首を傾けて最小限の動きで回避した。なんの工夫もなく正面から放つだけの攻撃にはそうそうあたらない。
「もう! 活躍できてないのなんてアタシも同じよ、置いてかないでよね!」
一発ヒールで蹴り飛ばし、テニスラケットをさすまたのように使って距離を作る。それだけで十分だ。後は他がいいように動く。
「フンッ」
踏み込めるだけの場所を手に入れたファルコは狭い場所から高く飛び上がり、体をひねりながらブラスター2丁を撃ち続ける。真下にいる多くのボディが体勢を崩した。
「……クゥ……!」
その隙を的確に狩っていくのは影の仕事人ゲッコウガ。怯んだ相手を的確かつ最小限に仕留めていく。なんとか立て直し反撃しようとするボディをみがわりでやり過ごし、壁掛けの照明器具の上に立つ。
「どりゃああああ!」
多くのボディがゲッコウガに視線を向ける中、真っ向からタックルで蹴散らしていく。空中へ散っていくぶっ飛ばされたボディが的確に射貫かれ、落下していくボディを再びアッパーで打ち上げた。
「ふぅー……」
溜めていた空気を吐き出すガンナ。ファルコから
「よっし! ホムラとヒカリのことも気になるし、急がなきゃな!」
ボディの剣撃を一撃、二撃、三撃と受けきりパワーで弾き飛ばす。そのまま攻撃に移る。腹部を一直線に切りつけ、距離を作ろうとしたボディをアンカーショットで引き寄せて無理矢理射程に入れる。
「隊長、リールをお願い、なんとか突破口を作ってみせるから」
「はーい! わかりました!」
「えっと……」
ぐっと拳を握り、気合いを入れる隊長。鼻息を荒くやる気満々な隊長の背後で不安げな顔でまごまごするリール。どうしていいのかわからないという顔だ。
「えっと……このままでいいのかな」
「大丈夫ですよ! 皆さん強いので!」
「あっ、それは知ってる」
「ふぎゃ」
先ほどまで戦っていたのだから実力のことは知ってる。別にそれを心配している訳ではないのだ。
そう、気持ちの問題なのだ。自分は後ろにいるままでもいいのだろうか……
「私は……ここにいたい。そう、追い出されたくないし……」
「それなら! ルイージさんに頼めばいいじゃないですか!」
「頼む……うん、確かにそれなら……!」
うつむいていた顔が正面に向いてリールが前にでた。どうするつもりなのかキノピオ隊長が着いていくようにエレベーターを出ると、リールがエレベーターの方を振り返る。そして睨むように目を細めた。
ドガンッ
「え?」
ドガッ、バキキッ!
「ええええ~!?」
何か大きな音がしたと思ったら、エレベーターを引っこ抜いてしまったのだ。他の者達も大きな音にぎょっとしてそちらを見た。念力で動かしてボディを潰してしまう。そうしてエレベーターを振り回し始めた。
「うわっ!? 巻き込まれるっす~!!」
「ねえ! ルイージってあなたなんだよね!」
「え!? ああうん!!」
「手伝うからここに住まわせて! 外に出たいんだよね!」
エレベーターをハンマーのように乱雑に振り回しつつも、スマッシュブラザーズには当てないように操作する。慣性をなくしたように急停止したりかと思えばハイスピードで防御の構えも正面から打ち破ったり。
「ひえ……戦い方がワイルドじゃねえかよ……」
「ああ、周り海だったのが悪かっただけなのね、場所がよかったらもっと……」
これ以上をデイジーはしゃべらなかった。もちろん相手の問題もあるだろうが。
完全に手が止まっていた二人の背後で、ドガンと大きな音がして振り向くと、背後にエレベーターが着地していた。
「乗って!」
「乗ってって……え?」
「いいから、他の人たちも!」
少し強い口調で言われ、扉をくぐり乗り込んでいく。最後のルイージが跳び蹴りでボディを飛ばしながらエレベーターに飛び込むと、衝突によって歪んだ扉がつっかえながら閉じていった。
「よし」
エレベーターを浮かせると、助走をつけるように距離をつくる。エントランスの扉にめがけてハイスピードで正面衝突していった。
「ぎゃああ!?」
「ひぎぃぃぃっ!?」
「びゃあああ!!」
悲鳴の阿鼻叫喚。密室に閉じ込められた理解不能の塊達にはシートもシートベルトもなく、慣性によって壁に叩きつけられた塊達は、無理矢理された施錠をぶち破っていく。
念力の枷から外れたエレベーターはゴロゴロと転がっていき、中のみんなも同じように転がっていく。停止したときには全員、壁だった床にひっくり返っていた。
「……いたい」
「ワッフ~ン」
すり抜けてきたオバ犬が呑気にルイージの顔をペロペロ舐めていた。
◯タイトル
1994年に発売されたノベルゲーム。
雪山のペンションを舞台に起こる殺人事件の謎を解く、クローズドサークル。
◯リール
ようは無関係のただのポルターガイストです。普通にマリオブラザーズ世界の生まれです。え? 作風が浮いてる? 知らんな。
当然黒幕達は彼女のことを知りませんが、彼女に体を持たせるように誘導したのは誰なのでしょう。
念力により物を手に触れずに動かす能力、発火能力の他、発光能力も使えますが、本編では未使用です。後者2つは執筆中に上方修正されました。臆病に見えて意外といい性格してます。
◯今章の裏話
変更点が印象的な章でございます。
具体的には地下2階の話と2階の話を入れ替えたり、リールとの初遭遇の位置をずらしたり。
階ごとに話を作る都合上、プロットの変更をしやすかったですね。
無念なのはオバ犬以外のゲストキャラの扱いです。
隊長は初期案では飛び道具扱いをする予定でしたが、流石に可哀想なので自重。その上戦闘もできないので活躍させてあげられなかったのです。ゴロ岩キノコの所持が1番の活躍かな。
レックスは、ポケモン剣盾の章でダブルがやった状態共有の暗喩として登場させたのですが、何も知らない側なので描写も難しく。その上、上記が理由なので参戦した瞬間から役目が終了したようなものなのです。
まあホムヒカがいないにしては、戦闘面での個性は出せてた方かな。
物語的には今章の存在意義が薄いのが余計に際立たせている気がします。神トラの章とはまた別の理由で課題の残る章となりました。
別に今章の反省というわけではないのですが、次章ではゲストキャラは最小限。その分ファイター達多めで回していきます。