大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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92話 水面にゆれる。秘密をまとった、その魅惑。

 

「さあ、ついに我々ネッシー捜索隊はネッシーが生息しているという湖にやってきました! あ、ちょっとこどもリンク、カメラ低いよ」

 

「トゥーンいるからぼく要らないよね?」

 

「カメラは多い方がかっこいいの!」

 

「レポーター風だな……」

 

 

ロックマンのなりきりに付き合うトゥーンリンク、付き合わされるこどもリンク。写し絵の箱では映像は撮れないのだが、俗に言う雰囲気というものだ。

 

湖は特に変わった特徴のない湖だった。なんとか全体を一望できる程度の大きさで、辺りは森で囲まれていた。なんというか、ネッシーのような未確認生命体がいそうな神秘さも特異さも感じられない。

 

 

「むっ? あれは……何かの跡か?」

 

 

芝が一直線薄くなっている。まるで昔、何かのせいで剥がれたような。

 

 

「ああ、あそこはワガハイが乗っ取ったハルバードが墜としたアーウィンの不時着現場だな!」

 

「え」

 

 

そう、そこはアーウィンが不時着して炎上した場所だった。正確にはクッパ一人ではなく亜空軍全体が起こしたことの結果なのだが。

完全な悪事をこんな堂々と言える神経がよくわからない。

 

 

「それでフォックス……」

 

 

ここのことを知っていたんだろうな。口には出さなかったが。

ようはクッパの、クッパ達のせいで。

 

 

「う~ん、一応顔を出してたりはしねえみたいだな」

 

「そんな簡単見つかっても面白くないよ! ね、こどもリンク!」

 

「さっさと見つけてさっさと帰りたい」

 

「もー! 夢がないなぁ!」

 

 

付き合わされているこどもリンクは現実志向である。そういう性格だと理解していたため、少しの憤りのまま話し相手をむらびとに移した。

 

 

「むらびとも色々冒険した方がかっこいいでしょ!」

 

「冒険記も売れるかな……」

 

 

まったく別口の話をしているようで、一応肯定はした。

 

 

「それで、結局どうやってネッシーを見つけるんですか?」

 

「あ、そうだったそうだった。もちろん考えてあるから」

 

「(おっ)」

 

 

逸れてきていた会話をロゼッタが戻した。隊長ネスも忘れかけていたようだ。ネッシー捜索をする前に日没……なんてことにならないための考えであることに気づいたのは、この中ではテリーだけだった。

 

 

「ふふん、僕は隊長だからね。もちろん考えてあるよ」

 

 

腕組みをしながら威厳たっぷりに振る舞うネス。その作戦とは……

 

 

「ロックマン、」

 

「ん?」

 

「ビリビリ」

 

「結局力技かい!」

 

 

ツッコミながらも、スパークショックを湖に叩き込む。

呆れながらの行動、しかしこのタイミングでロックマンは大きな違和感を感じた。それが何かを把握しきることができなかったのだが。

 

 

「ん、あれ?」

 

「どうかした?」

 

「なんか出力がおかしいような……気のせいかな?」

 

「そう? 全然わかんないけど……今はネッシーかな」

 

 

そしてネスと一緒に問題を後回しにした。

せっかくの大冒険に水を差されたくなかったというのもあり、深く考えるのをやめたのだ。

 

 

「それならPKサンダーも合わせていってみよう! リュカもね! えいっ!」

 

「わわ、うん」

 

 

ロックマンの排熱と再びの電撃に合わせて二人もPKサンダーを撃つ。

しかし効果があるように見えない。事態を見守っていたジョーカーもたまらずテリーに耳打ちする。

 

 

「なあ……これじゃ、いつまで経っても進まないぞ」

 

「わかってねえな、こういうのは口を挟まない方がいいんだよ。仲間内でああでもないこうでもないと工夫しあうのがいいんだよ」

 

「そういう……ものか……」

 

「そういうものだ」

 

 

保護司であった佐倉惣治郎は確かに怪盗団だとバレても、最初は激昂したし、その後も少しお小言も言われたが、最終的に無理に止めたりはしなかった。

 

 

「惣治郎も、そういった考えだったのか?」

 

「ゴシュジンが? うーん、ゴシュジンの場合はオマエらを信じてただけなんじゃないか? 怪盗団と子供の遊びじゃ、全然違うだろ」

 

 

クッパJr.やトゥーンリンクも合流して、ああすればこうすればと話し合う。そこから一歩引いた立ち位置のこどもリンクから目が離せない。

 

 

「放任ってヤツと信じるってヤツは全然違うだろ。ま、オマエも親になればわかるときが来るんじゃないのか?」

 

「(信じる……俺の何を?)」

 

 

モヤモヤする悩みは消えるどころか余計に増えていく。その心象を表現するかのように、急に白い深い霧が辺りに立ちこめていた。

 

 

「急に霧が……湖に落ちたら危険ですね」

 

 

そういうとロゼッタは子供達の元に向かう。湖から離れるように、そう警告するつもりであった。一部の者だけが感じた、大きな気配がその足を止めたのだ。

 

 

「チッ!」

 

 

巨大な一つの水球をこどもリンクは切りつける。一刀両断。半球の形を残し落下した水はその形を忘れていった。

 

 

「誰だ、キサマ!」

 

 

クッパが吠える。文字通り息子の大冒険に水を差してきた下手人。湖から先ほどのそれより巨大な水球。その中に人影が見える。

 

 

「ああん? 誰だはこっちの台詞なんだが? ったく、任されていた仕事サボって住処で昼寝してたらいきなり電流飛んできてよ、誰のせいだコラア!」

 

「え、あ、ゴメン。」

 

 

思わず素に戻って謝るネス。確かにやったことだけ見ればこっちが悪い。まさか、湖の中で寝ている人がいるとはおもわなんだ。でも、だからこそ気になっていたことを聞く。

 

 

「あのさ! 君がネッシー?」

 

「いや、違うでしょ。ネッシーあんな人間みたいなのじゃないし……」

 

「ほ~う? いいねえ、俺もようやく人気取り戻してきたか!」

 

「そうなの!?」

 

 

ロックマンの驚きを尻目に、ばしゃあと水球を破裂させ、登場した中身。

それはみながよく知るカムイ。水色の服と服装をした彼は竜の角と尾を常に変化させていた。

 

 

「つー訳で、おめえ等の探していたネッシー、もといプレシアだ。オラ、恐れおののけ!」

 

「ええええ!?」

 

 

傲慢に大胆に胸を張るプレシア。その表情にはこれほどない自信に溢れていた。

 

 

「ちょっと! そんな格好じゃただのコスプレじゃん! こんなの撮ったってなんの価値もないよ!」

 

「それどころじゃねえだろ!?」

 

「ンだよ、存在否定されてんのが嫌で、せっかくこんな体手に入れたのによ、元の方が好みか?」

 

「こんな体……? カムイさんに何かしたのですか」

 

「いや、多分本人じゃないよ。おそらくコイツ、ボディみたいなコピーだと思う」

 

「みたいじゃなくて実際ボディだぞ」

 

 

聞き逃せない言葉に穏やかながら言い訳を許さないロゼッタの圧。しかし、本質をこどもリンクは見抜いていた。

 

 

「贋作と本物の違いぐらいわかるよ。何しに来たの君? キーラを討った僕達への復讐? それともダーズ?」

 

「一緒にすんなよあんな奴らと……いやな、せっかく新しい体を手に入れたのによ、このままだとフィギュア化されて追い出されるかもっていうからよ」

 

 

ばしっと、拳を片方の掌に叩きつける。整った綺麗なあの顔に似つかわしくない、歪んだ笑み。

 

 

「創造神、探してんだわ」

 

「このっ!!」

 

 

咄嗟にジョーカーが選んだのは銃による先制攻撃だった。

彼の背後にどんな背景があるか、どんな人間なのかもわからない。だが、今まで見てきた腐った大人と同じ、人を人としてみていないような、自分が世界の中心であるような、そう考えている匂いがした。

大して知りもしていないのに、彼の心は咄嗟に攻撃を選択していたのだ。

 

 

カチッ

 

「なっ!?」

 

「おい、蓮! ペルソナ使えてねえぞ!!」

 

 

しかし、モデルガンからは軽い音しか出なかった。認知の歪みがない世界。銃に認知の弾丸はなく、ナイフに罪を映す鋭さもない。そして、今の彼はその本質(ペルソナ)もなかった。

 

 

「あっ! 僕も使えてない!」

 

 

大乱闘と同じように戦えない。むらびともまた持ち込んでいなかった木の苗を取り出すことができなかった。

 

 

「よそ見してんなよ!」

 

「くそ!」

 

 

ロックマンが咄嗟にロックバスターを撃つが、突然の攻撃に威力はほとんどない。敵の行動を阻害することもできず、プレシアが片腕を振るった。

 

 

Caspian(キャスピオン)!」

 

「なっぐ……!!」

 

 

洪水のような大津波が湖から現われる。辺り一帯を埋め尽くす大洪水。全員がまとめて流されていく。突然太平洋の真ん中にほおりだされたような感覚で頭まで水に飲まれ、方向感覚すらなくしていく。

 

仲間のものだと思われる悲鳴と叫び、攻撃を視認できても避けることすらできなかった無力感。ペルソナさえ使えていれば。

 

 

「(くそ……!)」

 

 

現状を嘆く声は誰に届くことなく泡となって消えていく。絶望の海に囚われながら、ジョーカー、雨宮蓮の意識は闇に閉ざされた。





◯タイトル
スプラトゥーン3 ヒーローモード、サイト5-13のステージ名。
ラインマーカーでスイッチやボム風船を起動していくステージ。
1、2のステージ名は新聞見出しみたいで、オクトはネタ系。3のステージ名はシンプルにカッコいいしオシャレですよね。


◯写し絵の箱
ゼルダの伝説シリーズにて、風のタクトとムジュラの仮面で登場するアイテム。風のタクトではモノクロだったり撮った写し絵からフィギュアが作れたりする。リンク三人衆は写し絵トリオでもあるのです。


◯アーウィン
ただでさえ80年ローンなのに負債が積み上がっていく。
あれから時間も経っているので、炎上に巻き込まれた自然も少しは回復している。


◯プレシア
世間でネッシーと呼ばれるものと同一の存在。詳しくは不明だが、水を操り生み出す力を持っている。
使用しているボディは5Pカラーのカムイ。ただし、尻尾と頭部の角を常に竜化させている。夜刀神は置いてきているため、剣術はできない。
サボって昼寝をしていたために、モンハンの世界では敵らしい敵が出てこなかったのである。ルネさんシフト調整のために入れませんかね……?


◯モルガナ
怪盗団のマスコット的立ち位置で、パレス関係に詳しいために原作初期は色々とジョーカー達を導いていた。猫と呼ばれると怒る。
性能的には、メインヒーラーで、風の術とクリティカルを狙いやすい攻撃で隙を見つけてダウンを狙う。ただ、回復は他キャラもある程度できるので、もっと尖った性能をしているパーティキャラに遅れを取ることも。
本作では、黒猫のままの姿な上に戦えないので、ジョーカーのメンタルコントロールと賑やかし要因です。
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