大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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94話 霧中の叛乱

 

 

「えと、あの、ケガとか……」

 

「オマエ、よく無事だったな! コイツよりずっと流されそうな見た目だったが」

 

「モルガナ……」

 

「えっと、海で流されたことがあるので慣れてたのかもしれない、です」

 

「真面目に答えなくていいから……」

 

 

モルガナの軽口に対して、真剣な顔で返したリュカ。海で流された経験に関しては突っ込まない方がいいと感じた。

スマッシュブラザーズに対して、そういうことにいちいち聞いていたらキリがない。少々弱々しい口調で言う蓮の怪我にリュカが気づいた。

 

 

「あっ……! あわあわあわわ……ケガ、ケガが……えっと、治療……でもそんな暇が……」

 

「ああ、すぐにどうこうなるほどのケガじゃない。オマエしか頼れねえからまずは倒すなり逃げるなりする方が先だ」

 

「は、はい」

 

 

少し萎縮しながらも、ぼうっきれを構えて臨戦状態だ。大丈夫。臆病で人見知りは簡単に治らないだろうけど、もう誰かを見捨てて逃げる自分はいない。

 

 

「できるだけ距離をとれ。リーチに入らないように遠くから攻撃を続けるんだ」

 

「リー……?」

 

「あ、間合いって意味だ。とにかく剣とか危ないから近付くなよ」

 

「はい、」

 

 

PKサンダーを3体にそろってぶつけ、続いてPKフリーズで足を奪う。モルガナの後方からの指示により堅実に戦うことができていた。

 

 

「右方向から来てるぞ! 飛べ!」

 

「っ!」

 

 

ふわりとジャンプして格闘技のラッシュを避け、蹴りつけて背後へ飛んだ後はPSIの力をぶつける。さらに体を振り回してぼうっきれで叩く。遠心力を加えた攻撃はクリティカルに入った感覚を受けるが、まだ致命傷にはなり得ていない。とても困った顔をしながらリュカは蓮の前方まで戻ってくる。

 

 

「うっ……時間かかりそう……」

 

「安心しろ、ちゃんと考えてるさ。とりあえず一カ所にまとめるんだ」

 

「はい……」

 

 

3体のボディをどうにかしなければならないのに、1体でも手応えがない。数の不利を覆すほどのパワーはリュカにはない。モルガナに策ありとのことで信じてみるが、自分の自信のなさも覆せなかった。

 

 

「(……っ!)」

 

 

そして後方で蓮もまた何もできない自分に歯がゆい思いをしていた。自分よりも幼い子供にかばわれるしかない自分に。

戦闘が続くうちに離脱しようとも考えたが、この霧だ。一度はぐれたらもう一度合流するのは困難だろう。戦う力もなく手負いの自分が孤立したら一環の終わりだ。ボディだってあの3体が最後な訳がない。せめて微力でも支援できたらとは考えられるのに、それ以上は頭が回らなかった。もっと酷い怪我をしていた時でもここまで思考が停止することはなかった。

 

 

「よし、あの足が凍っているヤツを中心にして残る2体をまとめるぞ」

 

「わ、わかりました」

 

 

PKサンダーで1人を追い立てて誘導する。さらにPKフリーズを足下にぶつけてさらに近くに寄せた。

 

 

「フニャッ!」

 

 

もう1体は完全に死角からモルガナが蹴りつけることで無理矢理すっころばせる。ぶつかって3体全員が横に転がる。

 

 

「今だ! 最初にやった炎を喰らわせてやれ!」

 

「えっ、あっ、はい! PKファイ、わああっ!?」

 

 

リュカの放つPKファイアーは今まで撃った中で最大の火力、を通り越して爆発を引き起こした。

自分が引き起こした火力に呆然としていると、モルガナが足を押してせかしてきた。

 

 

「ボーッとしてる場合じゃねえぞ、とっととここから離れるんだ!」

 

「は、はい! ジョーカーさん!」

 

「いやだから……今はいいか」

 

 

怪我をしたままの蓮を引き連れてどこでもいい、できるだけ遠くへ。敵がどれほどの手傷を負っているかも確認する暇もなくとにかく走る走る。

 

 

「さっきの、なんで……」

 

「……水蒸気爆発か」

 

 

視界に多大な妨害を与えるこの濃霧は室内ですらないのに、急激に暖められて大爆発を起こした。はじめリュカがやってきたときの威力をしっかり確認していたのだろう。

 

 

「ああ、怪盗ってのはクレバーにいくもんだ。まあ、今は怪盗じゃねえけど」

 

 

ヘソを曲げながらモルガナは走る。少し顔を歪めながらついてくる蓮をチラリチラリと振り返りながらリュカは二番目に走る。

ボディ達がなんとか立て直した時には、彼らの姿は霧の中に消えていた。

 

 

 

 

 

 

ある程度進んだところでようやく立ち止まった。木や茂みが多く、敵を見つけるより敵から身を隠すことを重視する。敵であるプレシアが生みだした霧だが、隠密に行動する彼らの行動を結果的に支援していた。

 

 

「あんまり動かさないでください……ライフアップ」

 

「これは……」

 

 

ざっくりと切り裂かれた腕に優しい光がともると、逆再生でもするように傷が塞がっていった。体ごと切り裂かれた服や、飛び散った血の跡はそのままだが、逆にそれは幻ではない怪我を治療したリュカの手腕を証明することになった。

 

 

「オマエ、治療もできるのか! この状況じゃあ最高の助っ人だな!」

 

「いや、あの……えへへ……」

 

 

ストレートなモルガナの褒め言葉に照れと嬉しさが最高潮になり、顔を赤らめながらモジモジする。しばらく拳を握ったり開いたり、腕を動かして具合を確認していた蓮もにこりと笑って礼を言った。

 

 

「流石だな、モナよりも丁寧だぞ」

 

「う~……そんな僕なんて……」

 

「そんな悲観することないぞ、実際ワガハイ達は助けられたし……っておい、ワガハイよりもってなんだ!」

 

 

怪我も治り、少し軽口を叩く余裕が出てきた。敵から離れて頭が回るようになってくると、自分以外のことにも気が回るようになってくる。

 

 

「他のみんなはどこにいるんだろうか……」

 

「リュカみたいに孤立してたらと考えると戦えようが危険なのは変わりないな。どうにか合流できればいいが……」

 

「敵を見つけるのも難しいなら味方を見つけるのも大変だよな」

 

 

リュカは2人の作戦会議に入れずにオロオロしている。でも、黙ってばかりなのも悪い。散った仲間と合流するのが優先なのはわかったため、控えめに発言をした。

 

 

「……と、とりあえず歩き回って探してみますか?」

 

「見つかる危険はあるが、リュカしか戦えない状態でいつまでも身を隠すわけにもいかないな。それでいこう」

 

「ボディがどれだけいるかもわかりませんからね……」

 

 

敵の数は不明だ。人海戦術で探されればジリ貧になる。この霧が相手の出したモノならばなおさらだ。霧が消されてしまえば、隠密の難易度は上がるのだから。

 

 

「ん? ボディってさっき襲いかかってきた奴らのことか?」

 

「は、はい。あっ、そうですよね……キーラのことは知りませんよね……」

 

 

リュカをゆっくりと説明し出す。仲間の存在を狩りだすように霧の中に忍び寄るボディ達。意思なき目が光る中、スマッシュブラザーズはどこにいるのだろうか。

 

 

 

 

「みんなのこと、見つけなきゃ! 僕は隊長なんだからっ!」

 

 

 

「どうして戦えなかったんだろう……せっかくのお金もうけの機会もなくなったのにこれじゃ反撃もできない……」

 

 

 

「うー……ジメジメする……嵐でもよんでふきとばしちゃう? でも隠れてたりしたら困るよな……」

 

 

 

「パパー! パパー! ネスー! リュカー! むらびとー! トゥーン、ロックマーン! 空飛んで探すか!」

 

 

 

「このボディ達……ぼく達のことを探してるみたいだ。押し流しておいて……それにこの霧、なんか嫌な予感がする」

 

 

 

「もーうー、錆びたらどうするんだよ。あのプレシアっていうの倒したら霧も止むかな? でも1人じゃ難しいよね。誰かいないかな~」

 

 

 

「ジュニアアアア! ジュニアアー!! おのれあの偽者男め! 絶対とっちめてやる!」

 

 

 

「これは……孤立しているのは危険ですね。あの子達とも合流しないと」

 

 

 

「ったく、せっかくの子供の遊びに茶々入れやがって。グッととっちめてやるぜ……!」

 

 

 

個々の考えや思考が交差したりしなかったりする中、ひっそりと進行していく霧の中の陰謀。

 

 

 

「どっこ行ったんだかな~、せいぜい俺のこと楽しませてみろよ」

 

水のしたたる森の中、未確認の怪異がニヤリと、心底楽しそうに笑った。

 





◯タイトル
ファイアーエムブレム風花雪月 白雲の章 花冠の節のタイトル。
あのロナート卿が叛乱を起こす章です。楽しい学園生活のはずの第一部がこの章から怪しくなっていく。


◯海で流されたリュカ
あのタネヒネリ島の直前。トラウマのせいで場慣れしてしまったのでは……


◯ナビゲーター、モルガナ
そういえば真が加入するまでは彼がナビ担当でしたね。
状態異常になってると可愛い。


◯水蒸気爆発
文系の人間なので、霧で水蒸気爆発なんか起こるわけねーだろバーカ!的なコメントはやめてくださいしんでしまいます


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