大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「うおおお! やっと見つけたぜぇ!」
「あっ、テリー!!」
トゥーンリンクをぶっ飛ばさないように気をつけながら飛びついて抱きしめるテリー。しかし数瞬の沈黙を得たのち、両手で逃れられた。
「ビチャビチャ……気持ち悪い!」
「気持ち悪いって……これが反抗期か……」
※違います
おぞましいほどの湿気にやられて湿った服に押し付けられるのは嫌だったらしい。微妙に嫌そうな顔も離れればすぐに戻った。
「だいじょうぶか〜? ピーピー泣いてなかっただろうな?」
「泣かないよ! こう見えてもお兄ちゃんなんだし!」
「おっ? 初耳だな、弟?妹?」
「妹! ボクはアリルを助けるために冒険に出たんだからね! ……この暑苦しい服で……」
「ストップストップ、ひっでー霧だから余計ベタベタする話は中止。まあこの辺はまだマシか?」
2人は森の隅の方まで流されたようで、森の突入時に見た景色が周りに広がっている。
プレシアとかいう敵からかなり離れたところにいるというのは、嬉しい一点だが、こうしたのもプレシア本人なので複雑な気分だ。
「一旦どっかしらに引いて、誰かに助けを求めるのもありだぞ。さて、どうするか……」
「もちろんみんなを探す! 助けを呼んだってむらびとみたいに戦えなくなっちゃってたら意味ないし! 急いでみんなと合流した方がいい!」
「OK、オレもそう思ってたぜ! 作戦名ガンガンいこうぜッ!」
「おー!」
彼なりのテリーの真似か、シャドーボクシングで気合い十分のトゥーンリンク。さあ、前進だ。
「ちょっと待てー!」
「うわわわわっ!?」
と思ったらまさかの上空からの声によって静止させられた。プロペラの音が近づき、降りてくるクッパJr.。
「ジュニアー! 近くで飛んでたならもっと早くきてよー!」
「今気づいたばっかりだ! 空から誰かいないか探してたんだけどな、木ばっかでわかんなかったんだ」
小さな体で抱きしめ合う様子を微笑ましく眺めていたテリー。これで3人だ。戦えないジョーカーでもむらびとでもないが、それは贅沢だ。
運でどうしようもなければ、自分達の手でなんとかするまで。
「うし、この調子で他のみんなも探すぞ!」
「「おー!!」」
ネッシー捜索隊は壊滅したが、仲間救助隊が結成される。霧のせいか曇ってきた天に突き上げた拳。それは天候も変えるほどの圧倒的な力に対する叛逆の灯火。絶望という霧を払う希望という名の戦士。その力は誰かの光となるために。
「……アァ……! ……」
「なにか聞こえるな……」
誰かの声をいち早くモルガナが察知、蓮とリュカも素早く茂みに隠れる。
プレシアが手駒として操っているのが、討たれたはずのキーラとダーズの残党。スマッシュブラザーズをベースに造られた虚なる虚像。
数の利で負けており、一部は戦う力のない戦士。早急な合流が求められる。
が、焦って見つかっては全てが終わりだ。叫ぶような唸るような声に3人の緊張感はマックスまで跳ね上がる。
ボディではなさそうだが、ぶっちゃけボディではない方が問題だ。喋る敵など、散り散りにした張本人しかいないのだ。
やり過ごすか、抜けるか、気づかれない間に別の道へ行くか。それを思案する前にドダドダと重い足音が鳴る。こっちに近づいてきているのだ。
「……(ゴクリ……)」
唾を飲み込む。どう動かれても対応できるように。周りの空気に敏感になれ。殺気や敵意だけでない、あらゆる感情に適応できるように。
ドダドダドダドダドダドダッ!!
「ジュニアアアアアアアアアァァァァァァッ!!」
「オマエかよっ!!」
流石に親子の愛情は予想外であった。状況も気にせず返しの言葉も大声である。
思わず茂みから飛び出してツッコミを入れる。モルガナの猫爪にはたかれても、クッパは歯牙にもかけないのはまあともかく。
「……あんまり大声を出すと見つかりますよ……」
「ふんっ、見つかったところでワガハイが蹴散らしてやればいい! なんの問題もないわッ!」
「問題だらけだよ……」
クッパはそれでいいのかもしれないが、蓮やモルガナが戦えない時点で敵を呼び集めることは十分に自殺行為なのだ。そうでなくてもクッパのその自信が根拠になり続けるとは限らない。
「とりあえず誰か見つかったのはいいか……あ、そうだ、クッパは普通に戦えるのか?」
「ワガハイを誰かと誰だと思っている? いつも通り最強だ! ガッハッハ!」
仁王立ちをしながら自身の能力は万全だと証明する。しかし、そのために火を吐いてしまったので、霧のせいで再び水蒸気爆発を起こした。
「ゴッホゴッホッ! わかったわかった……だから火はやめてくれ頼む」
「ラ、ライフアップは……」
「いいよ、無制限に使えるものじゃないだろう? ……こんなことで使われるの嫌だし……」
こんなしょうもないことで使っておいていざというときに使えませんはありえない。
炎も攻撃のためじゃなかったのでさほど威力がなかったこともあり、動きに支障があるほどの負傷ではない。ただ今後火を使うタイミングは気をつけた方がいいだろう。
「もうここを離れよう。敵が寄ってくるぞ」
大声に爆発音に。目立ちすぎてしまったのだ。遠からず敵が集まってくる。今すぐにでも離れた方が良さそうだ。だが、
「おとうさーん!」
「ジュニアッ!」
「えっ、いるの!?」
遠くの小さな小さな声を正確に聞き取っていたクッパが機敏に反応する。ドダドダと走り出すと森の木々の間から縫ってでたクラウンに搭乗する息子の姿。互いに走り寄ってギュッと抱きしめる。それを追ってきたテリーとトゥーンリンク。
「なあなあ、オレの時もこんな風に長い時間ギューってしてくれても良かったんじゃないか?」
「テリーはボクの父さんじゃないでしょ」
ハグを拒否した理由はベタベタの服なのだ。脱いでからやれ、というのは言えなかったが。というか本気にしそうで困る。本気でしそうで困る。
「あっ、トゥーン」
「やっほー! リュカー! 怪我とかしてない?無事でよかった!」
亀親子の横をすり抜けて、トゥーンリンクが駆け寄っていく。友達とまた会えて満面の笑みだ。
「よう、れ……ジョーカー! くたばってなかったんだな!」
「やっぱりその呼び方わざとなんだな……」
おちょくられている。アメリカ暮らしだから呼び方に慣れていないだけだと思っていたが、明らかに言い直していた。
「ジュニア、怪我はないか!? あのニセモノに襲われていないか!」
「心配しすぎだって! お父さんの子供なんだからこのぐらいなんともない!」
和やかに親子の再会を喜ぶ横でおちょくってくるテリーの言葉を半分聞き逃していた。完全に受け流すほどの余裕がなかったのだ。
「たたかえな~い! ってピーピー泣いてなかったか? テリーさん、助けて~って」
「泣いてない……」
「ん?どうした?」
ちょっとムキになっている返答を怪訝に思うテリー。そこまで戦えないことを気にしているのか。本当なら周りを気にしながら考えることではないのだろう。
あまりにもそれに心を奪われているのか、唐突に質問をしてきた。心配そうなモルガナが見上げているのも視界に入っていないらしい。
「……なあ、テリーは自分に今みたいな力がもしなかったら、とか考えたことはないか?」
「う~ん……考えたことはないけど……まあそうだとしても、今とそんな変わらねえと思うぞ」
「変わらない……」
「そ、オレはオレ!」
もし、自分にはじめからペルソナの力がなかったら。裏の顔すら何でもなく、世界に押しつぶされていただろう。過去のたらればを言ってもしょうがないことだろうが。
「(俺がやれることは……戦えない俺が今できることは……)」
サポート。他のみなが戦いやすいようにそれ以外の雑務や作戦の立案だ。
「とりあえずここから離れよう。味方が集まれば、後は敵も寄ってくるぞ」
「それもそうだね。湖の近くなら誰かいるかな?」
味方が集められたということは敵も集まるだろう。まずは、そうなるまでに一刻も早くここから離れなければ。
◯タイトル
スプラトゥーン2ヒーローモード、2-6のステージ名。
ブキチリクエストで最初にチャージャーが登場することもあり、チャージャー使い以外は結構苦戦するだろうステージ。
しかし、チャージキープ、引き寄せるライト、ハイパープレッサーなど、大胆なショートカットができる奥の深いステージでもある。
◯暑苦しい服
風のタクトでは12歳の誕生日のお祝いで、あの緑の服を着る習わしがある。ただ暑苦しそうとのことでトゥーンリンクはすごく嫌そうな顔をしている。お前、伝説だぞ……
とはいえ夢幻の砂時計になっても着続けたので、実際にはそんなこともなかったか、機能性は高かったかのどちらかだろう。
◯作者の気まぐれコメント
ようやくスプラ3のフェスで勝てた……ってそんなことはどうでもいいんです。
ピクミン4やりたいので今回かなり手抜きです。
やろやろやろやろはやくやろー!