大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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98話 地殻の下の嫉妬心

 

「……っ」

 

 

打撲のように打った左腕を庇いながら、それでも心は屈せずに前を見る。熱さは少し残しながらも、冷静さは見失わない。

 

 

「ど、どうしよう……」

 

「…………」

 

 

手早く終わらせたはずの戦闘でも、少なからず他の敵を誘き寄せていた。応急処置を終えたばかりのむらびとを庇いながら、ジリジリと後ろへ下がっていく。敵の数は大きく増えて5体。

 

 

「(泣きっ面にハチってヤツだよ……痛いじゃ済まないじゃん……)」

 

 

何かできないか、むらびとはずっと考えていた。でもやっぱり、パチンコしか思いつかない。

 

 

「(でもだからって、このままいられるか! もう一度考えてみよう!)」

 

 

それでも、このまま守られるだけを良しとしなかったむらびとはボディ達への警戒をしながら今持っているものを再確認した。

 

大体いつも持っているものとして、 むしとりあみ、つりざお、パチンコ、スコップ、じょうろの便利ツール。ネッシーを探すとのことで、つりざおは2本持っている。

他にはきのぼう、カブなどか。

遊ぶ用のものとして適当に持ってきたはなび、ふうせんにシャボン玉やタイマー。

ネッシー探索用として、オノや借りてきたカメラ。

捕獲用の大きめのネットやロープ。あと替えの服。

 

 

「(えっーと、えっと、重いものは大体置いてきちゃったんだよな……)」

 

 

歩き回るのが前提だというのに、ボウリングの球や植木鉢は持ち歩けない。大乱闘のつもりではなかったのだ。どうやっても威力だけは出せないが、それでもただ倒すだけができることではないはず。

 

 

「ハッ……!」

 

 

スターピースのショットをただひたすら撃ち続ける。決定打にはならない。ただ決してこっちに近付かれないように。

 

 

「恐れないで、諦めないで戦い続ければいつかチャンスが回ってきます」

 

「ロゼッタ……」

 

 

後手と守備に回らずを得ないが、その目は諦めてもいなければ焦ってもいなかった。ひたすら前を見据えてまっすぐに。

冷静に焦りをなくした頭は回っていく。機転と小回りのきく、ファイターむらびとへ。

 

 

「うん、これなら……いける!!」

 

 

笑顔も生まれたむらびとは、ロゼッタの背後ではなく隣へ。つりざおを構えながら同じように敵を睨む。それを見て、ロゼッタは柔らかく笑った。スターピースのショットをさらに威力を高める。

 

 

「しずえさんがやってるのと同じように……こうっ!」

 

 

ぐわんと竿をしならせ、針の部分を敵の方へ。

その針についていたのは替えの服だ。敵の顔に叩きつけて視界を封じる。

 

 

『……ッ!?』

 

「ただの目くらましじゃないからね!」

 

 

叩きつけられた敵が目を押さえてうずくまる。服にシャボン玉用の液を浸けていたのだ。一時的な妨害ではなく、敵の行動すら封じる一手。むらびとが今回初めて有効打を与えられた瞬間だった。

 

 

「流石ですね……!」

 

 

均衡が崩れたことをきっかけにロゼッタが瞬間移動で切り込んでいく。まずは1人、足払いで転ばせ、むらびとの妨害にあっているもう1人を魔法で弾き飛ばす。破れかぶれの反撃はバリアで防がれ、その反動でのけぞった。

勢いはまだ止まらない。背中を押し続ける誰かが来る。

 

 

「あれ、なんかきいろいのが……」

 

「ママー!!」

 

「うぇっ!? チコだった!」

 

「あら」

 

 

上空からロゼッタの胸に飛び込んできた黄色い星の子。ロゼッタと共に戦い、彼女を母と慕う子。

普段の大乱闘では共に戦っているのだが、プライベートでも常に一緒にいるわけではない。今回もそうだったらしいが、異変を察知したのかとんできたようだ。

 

そして、

 

 

「見つけたァ! おまえらァ!」

 

 

いたいけな少年とそれを守る女性に無慈悲に襲いかかるボディへ勢いのままショルダータックルをしかけるテリー。狼もまた遅れて推参する。

 

 

「テリー!」

 

「よっ! へばってないか? 無傷では……なさそうだが、無事でなによりだぜ!」

 

 

足に巻かれた包帯に、一瞬動揺が走るもののそれを顔に出すことはせず、カラリと明るい笑顔を見せた。

 

 

「うん、なんとかがんばってる!」

 

 

虫取り網にタイマー、じょうろと、硬いものを入れてぶつけるむらびと。近付いた敵にこうやって攻撃しては距離を取るヒットアンドウェイ。怪我した足では動きも悪いため、深追いだけはしないように気をつけていく。

 

 

「テリーさん、他の方の行方をご存じですか?」

 

「ネスとロックマンとこどもリンク以外はな。チコちゃんが見えて走ってきたんだ!」

 

 

チコを追って走ってきた結果、ロゼッタとむらびとを見つけたということだろう。

しかし、大半の味方の行方を知っていながら、現状は1人なのはどういうことだろうか。何かが起きてはぐれてしまったのだろうか。

 

 

「1人で?」

 

「んー、あー、何かあると思って先に行くってリョウショウ取って……」

 

「嘘つけ!? 一方的に言って何も聞かないまま勝手に行っただろ!」

 

「アウッ!」

 

 

テリーが行方を知る者全員が後から登場した。バックの中のモルガナが大きくツッコミを入れた。アシカみたいな鳴き声のオーバーリアクション。

 

 

「むらびとー!! 怪我してるー! リュカ、リュカー!」

 

「あわわわ……だい、だいじょうぶ?」

 

「ごめんね。今てもちが……」

 

「いらないって……」

 

 

仲のいい友人と再会したことでフリーダムなマイペースさを取り戻すむらびと。にこにこと年相応の顔を取り戻す。

他がボディと戦いはじめる中、雨宮蓮もまた、彼に近付いていた。

 

 

「怪我は無事なのか?」

 

「無理はするなよ、」

 

「まあ、歩きにくいけど大丈夫」

 

「トゥーン、オマエは戦っとけ、今のコイツでも背負って動くぐらいできる」

 

「うん、わかった!」

 

 

実際の状況を見て安心したのか、にこやかに進む。クッパとつばぜり合いをするボディの背後を斬りつける。

 

 

「後3人か……」

 

「はい、でもネスは頼りになるし、ロックマンもしっかりしてるし……」

 

「こどもリンクは?」

 

「……えっと……トゥーンが信頼してるから大丈夫かと……」

 

「急に雑になるなよ……」

 

 

残る3人もきっと大丈夫だと、そう言っている内にリュカの治療が終了する。

ゆっくりと包帯を外していくと、そこには傷痕すら残っていない綺麗な足があった。怪我の痕跡は穴が開いたままの靴下だけだ。

 

 

「よし、これでまた戦える!」

 

「えっ、おい、オマエは……」

 

 

疑問を解消せぬままに、構えたつりざおを振り回してシャボン液服を顔面にぶつける。怯んだ敵ならばチコのインファイトでも十分倒せる。

背後から襲ってきたボディの目の前に打ち上げ花火を設置。ビクッとボディが反応するが、何も起きない。気にしすぎたと無視して剣を振りかざそうとすると、

 

 

バドーンッ!!

 

「わっ!?」

 

 

霧で湿気た花火だが、大きな音を鳴らすことはできた。ハッと我に返ったリュカの超能力でダメージを負う。

 

 

「ひえ~、アイツたくましいな蓮……蓮?」

 

 

固まった蓮。その後怪訝に思うモルガナにちゃんと返答をしたはずだが、全然覚えていない。戦いを終えた他の仲間に対してなんていたわったかも。

 

 

ただ雨宮蓮の胸中には、感じたことのない感情が湧き上がっていた。

 





◯タイトル
東方地霊殿、二面ボス水橋パルスィの二つ名。
地殻の下は旧地獄、嫉妬心はそのままパルスィのことだろう。

今回の場合は、地殻というよりは知覚という字が正しいかもしれない。つまりそういうことである。


◯ゲーム内で登場しないアイテムについて
別に持っていてもおかしくないような便利アイテムについては、特に言及もなく持たせております。
救急セットやら、ロープなんかもそうですね。今までもシュルクかレンチを持ってたり、アイクラが登山用品を持っていたりはしたでしょう。
使う機会がなかっただけで……


◯むらびとが持っていたアイテム
一部以外はあつ森をベースに持っていそうなものをチョイスしています。ツール系統は私も持ち歩いています。
ステッキ系統ですが、オシャレとか気にしてないだろうこのむらびとは、持ち歩いてないと判断して勝手に省かせていただいています。
カブ? ほら、持ってないと腐るまで忘れるやん……



◯チコ
遅れて参戦、というかロゼッタの戦法に幅が欲しかったので急遽参戦。
ちなみに大乱闘ほど耐久は低くないです。マリオで踏んでた方、手上げて〜ノ

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