仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 デュオル×ビャクア ユニゾンウォー   作:マフ30

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エピソード12 白刃装士オトギパラディーン/いま二つの力を重ね響かせて

 

 デュオル・オトギパラディーンの背中にあるイオンブースターがまるで竜が吼えるような轟音を上げて噴き上がる。瞬間、デュオルは殺人的な加速でシザーマンメタローの懐に肉薄した。

 

『ヌゥウ……オオオリャア!!』  

 

 本人すらもこれほどまでに速いのかと驚愕のリアクションをする高速移動だ。

 シザーマンズメタローも新たに得た一本一本が処刑道具のような鋭利な武器腕を動かす間もなくデュオルのドロップキックを食らって絶句する。

 

『クーさん! 沙夜! 俺が暴れてる間に儀式を起こしてる石灯籠の始末は任せたぞ』

 

 じゃじゃ馬なスペックのブースターの加減に苦笑しながらデュオルは仲間たちにこの世界をパニックに陥らせている原因の除去を託すとシザーマンメタローをドームの場外へと押し返す。

 絶体絶命を覆す新たな力を得たデュオルは意気揚々と外へと飛び出すがそこに広がる光景を見て思わず驚愕の息を漏らした。

 

『なんてこった……俺が巻き込まれた百鬼夜行とやらの比じゃないな。全速力で仕事しないと不味いみたいだ』

 

 青空を侵食する血煙のような真紅。

 下水の汚泥のような不快感を醸し出す黒い瘴気がじわじわと確実にこのドームを起点に浸食が進んでいた。

 そして、地上には有象無象の化神の幼体が跋扈している。

 成長が進み、幾らかの獣性を育んだと思われる彼らはデュオルの姿を見ると一斉に敵意を剥き出しに襲い掛かってくる。

 

『キッシシシシ! 原型が無くなるまで微塵切りにして殺してやるぞライダァァァアア!!』

『やれるもんならやってみな! 片っ端から八つ裂きにしてやるよ!!』

 

 化神たちを扇動するように無数の武器腕をしならせて先陣を切るシザーマンメタローに啖呵を切ってデュオルは駆け出した。

 

【ドラグカッター】

 

 両籠手に刻印された竜面のクレストから電子音声が発せられると袖口から直剣が飛び出して冷やかに煌めく。

 

『だあっしゃあああ!』

『ギィ……ッ!?』

 

 剣閃が暴風雨のように駆け廻る。

 デュオルが荒々しく双腕を振るえば振るうほど、籠手から伸びた白刃はまるで草刈りのような勢いで犇めく化神たちを切り裂いていく。

 

『ハッ! 剣だの刀だのは棒切れみたいに軽くて性に合わないがこういうのは大歓迎だ!』

 

 逆水平チョップを繰り出す要領で左腕を横一閃に振り抜けば眼前の化神たちが数体まとめてバッサリと切り伏せられる。

 続けてデュオルは右腕を突き立てて敵陣に突っ込むと攻めてくる怪人たちを次々に串刺しにしていくと力を込めて斬り上げる。

 刀剣の類は不得手と公言するデュオルだがその真意は並みの得物は軽くて手に馴染まないという理由であり、刃物の扱いが苦手というわけではない。

 

『ソロキャンと喫茶店のキッチン担当で磨いた刃物捌きを存分に味わいやがれお前ら!』

 

 剣鬼と形容しても言いすぎではなかったツルギの特性を自分好みにアレンジしてくれたライダーメモリアに感謝しながらデュオルは群がる化神たちを斬り捨てて、大将首であるシザーマンメタローに真っ向から突撃する。

 

『デュウウオォオオオルゥウウウウウ!!』

『待たせたな! いますぐ鉄クズの不燃ゴミにしてやるぜ!!』

 

 鋏や剃刀、鎌と様々な形状の刃が先端に取り付けられた武器腕が代わる代わるデュオルを目掛けて突き放たれていく。

 アスファルトを抉り、コンクリートを障子紙のように容易く切り裂く刃の猛襲をデュオルは両籠手の二刀で打ち払い、あるいは身を翻して回避する。

 致命傷になりうる攻撃は全て切り払っているが武器腕と打ち合うたびにデュオルの腕を痺れさせるほどの凄まじい衝撃が襲う。

 

『ヤァッハッハッハッハ! 臓腑を引き摺り出してやるぅう!』

『ちっ。流石に融合強化されてるだけの地力はあるか……なら!』

 

 刃と刃がぶつかり合い、氷がカチ割れるような独特の音色が響き渡る。

 グロテスクで威圧感のある外見に違わず、純粋なパワーが底上げされたシザーマンメタローの斬撃はデュオルをジリジリと追い込んでいく。

 だが、デュオルはそんな戦力差などで戦意を喪失するような男ではない。

 シザーマンメタローの攻撃が来るタイミングを見計らい、武器腕が数秒前に自分がいた地面を刺し貫いた瞬間にその上に飛び乗った。

 

『伸び放題のその物騒な腕ぇ根元からさっぱり剪定してやるよ!』

『アッヒャヒャッ……マヌケめ』

 

 敵が反撃に移る前に懐に飛び込もうとデュオルが激走しようと踏み込んだ矢先――ガコン!と奇妙な音が鳴ると共に彼が足場にしていたシザーマンメタローの腕がパージされてしまった。

 ゆっくりと降下していくデュオルの視線の右端から別のシザーマンメタローの武器腕が飛び込んでくる。一際巨大な出刃包丁のような凶器だ。

 

『死ねエエエエェ! キャッキャッキャッキャッキャ!!』

 

 不意の罠に無防備になって、成す術もなく落下していくデュオルを曇り一つない鏡のように鋭利な刃が無慈悲に薙いだ。勝利を確信したシザーマンズメタローは恍惚と奇声染みた笑い声を上げるがやがて、人体を真っ二つにしたにしては余りにも軽い手応えと在るべきものがない異変に気付く。

 

『イッ!? ナ……イ? 無いナイないッ!?』

 

 死体は何処だ?

 怨敵を斬り殺したはずなのに二つに両断したであろうデュオルの死体がない。

 熟れたトマトが潰れたような血溜まりも臓腑の欠片も見当たらなかったのだ。

 

『何処だ!? どこに……!?』

『なにか探し物かい?』

 

 シザーマンメタローが落ち着きなく周囲を見渡していた時だった。

 その背後に転がっていた一台の廃車。その鏡のように周囲の景色やメタローを映し出している窓ガラスからなんとデュオルが飛び出してきたのだ。

 

『デュオッ……!?』

『おりゃ!』

 

 あり得ない場所から飛び出してきたデュオルに完全に虚をつかれて狼狽するメタロー。

 デュオルは絶好の機会を逃すことなく、ドラグカッターの切っ先で敵の右目を深々と刺突する。シザーマンメタローは考えもしなかっただろう。デュオルが武器腕の刃の腹から鏡の世界に潜り込んでいたのだ。

 

『いぃぎゃあああああぁぁぁっ!?』

『便利なもんだぜ。これがあったら忍者や暗殺者が軒並み無職になっちまう』

 

 シザーマンメタローが激痛に悶え叫ぶのを尻目にデュオルは跳躍と同時に刃を引き抜きながら苦笑した。

 驚くべきことではない。

 仮面ライダーツルギのメモリアを使用しているこのオトギパラディーンは当然ながらツルギの世界の仮面ライダーたちと同様にミラーワールドへの移動能力を有している。

 かの世界のライダー達のどれだけがこの能力を現実世界にのみに絞った戦闘で撹乱に使用した際にどれだけの効果を発揮するのかを熟知しているのか定かではないがデュオルはこうして見事に敵の一手先を行ってみせた。

 更にシザーマンメタローの頭上に舞いあがったデュオルの攻勢は止らない。

 

【リュウノハウチワ】

 

『景気良くいこうか……バルカンリッパァアアアアア!』

 

 右手に召喚されたるは幾枚もの刃で作られた羽団扇ならぬ白銀の刃団扇。

 空を切ってデュオルが刃団扇を敵に向ければ光の召喚陣が出現して鋭利なナイフ同然の鋼の羽根が怒涛の如く撃ち放たれる。

 

『イギッ……ガ、ガガ、ガガガァアア!?』

 

 まるで短剣が豪雨のように降りしきるような集中砲火はシザーマンズメタローの全身をハリネズミのようにするだけでは留まらず、腕を一本また一本と削り穿っていく。  

 デュオルが機関銃の射撃さながらの鈍色をした羽根吹雪を止めた頃にはシザーマンズメタローはネズミが食い散らかしたチーズのようになっていた。

 

『さっさと片付ける!』

 

【ドラグザンバー】

 

 双腕に刻まれた竜のライダークレストが輝くとリュウノハウチワが形を変えていく。

 柄は槍のように長く、そして逆巻く羽根吹雪が集まってやがて鏡のように澄み渡る長大な鋼の刀身を形成する。

 

『退魔! 覆滅技法ってなあ!』

 

【FULL SPURT! READY!!】

 

 ドライバーの銃爪を弾き、大剣を片手で肩に担いで構えたデュオルは背中のイオンブースターを最大出力で吹かして猛然と疾駆した。

 

『白獣一文字ィイイイイイ――――!!』

 

 烈風を纏って驀進する竜のような、鴉のような。

 あるいはその両者を兼ね合わせた獰猛果敢さを宿して。

 まさしく、荒ぶる白い獣の如き勢いでデュオルは逆手に持ったドラグザンバーを殴り抜くように横一閃の斬撃を叩き込んだ。

 

『アアァ……アアア、ガァアアアァ!?』

 

 二者が交錯した瞬間に巻き起こった突風が止み、訪れる静寂。

 咄嗟に敵の姿を追おうと振り向こうとしたシザーマンメタローの上半身がゆっくりと崩れ落ちていく。巨体、無数の腕、恐るべき刃をより集めた自慢の肉体があっさりと一刀両断された現実を思い知らされながらメタローは大爆発を起こして果てた。

 

『まず一丁上がり……さて』

 

 融合強化されたメタローを新たなフォームで見事撃破したデュオルは特に喜びや安堵を表に出さずに周囲への警戒を解こうとはしなかった。

 自分がDマーダーとシザーマンメタローを撃破して、ビャクアがあのアロンダイトを退けたというのならば必ず相手は向こうの方から来ると踏んでいたのだ。

 

『……どっからでも掛ってきやがれ』

 

 最後の敵にして、今回の事件の首謀者――デュオルの期待に応えるためか、ただの偶然か気まぐれか、ついにそれは来た。

 

『ほほぅ! ならば、大人げなく我が庭先から失礼』

『なっ!? ぬぅ……うおおおおお!?』

 

 老獪な声が遥か空の果てから聞こえてきたかと思えば瞬く間にデュオルの真横を何かが飛び抜け去っていく気配。一拍の間を置いて彼の周囲はまるで大空の一部が落ちてきたのではないかと錯覚するような突風と衝撃で押し潰されそうになる。

 

『くっ……来たか。待ちかねたぞツバメジジイ! お前を倒して一件落着にさせてもらうぜ!』

 

 巨人の踏みつけのような風圧から辛くも逃れたデュオルは降り立った相手を睨んで吼えた。その視線の先には両翼を優雅に折り畳んで佇むバケヒエンがいた。

 

『こうして直接顔を合わせるのはあの夜以来だが活きの良い小童ぶりが健在でなによりだよ仮面ライダーデュオル』

『バケヒエンだったか? あんたも相変わらず不意打ち好きだねえ。無駄に長生きしていると性根が知恵の輪みたくねじ曲がるみたいだな。見習いたくはないぜ』

『フフ。挑発のつもりかな? 青いねえ』

 

 デュオルとバケヒエンはお互いに冷やかな視線で睨みを利かせ合いながら嫌味と皮肉の応戦を演じる。デュオルは軽薄な態度でまるで世間話でもするようにバケヒエンを煽りながら気取られないように距離を詰めようとする。

 

『悪いが死闘を演じるつもりはないよ。これでもやることが多い身だ。君に馳走するのは一方的な蹂躙だ』

『この世の中、簡単に思い通りになると思うなよなぁ害鳥ジジイが! 不細工な剝製にでもして埃っぽい郷土資料館みたいなところに飾ってやるよ』

 

 しかし、デュオルの思惑は看破されていた。

 ゆっくりと仕込杖を抜きながらバケヒエンは翼を羽ばたかせ始める。

 

『まずはその不敬な口でも斬り落そうか』

『チィッ……!』

 

 百戦錬磨の剣閃を織り交ぜた暴力的な飛行がデュオルを襲う。

 突撃、斬撃、爆風――この三つが内包された恐るべき速度の攻撃をデュオルは懸命に迎撃して競り合うが被弾と疲労ばかりが蓄積されていく。

 

『経験した修羅場の数も質も違うのだよ。長く生きるとはそういうことだ』

『ぬおあ!?』

 

 動体視力や他の気配を探る直感を最大限に集中させて食い下がるデュオルだがバケヒエンの桁外れの飛行能力と優れた剣腕の前に全身に刀傷が増えていく。

 少しずつ、ダメージによってふらつく動作も見えてきたデュオルに追い討ちを掛けるように背中に鋭い痛みが走る。

 

『青二才が身の程を知れ!』

『ピーピー囀るんじゃねえクソツバメが!』

『ご、ぁっ!?』

 

 

 ついに膝を付いて苦悶するデュオルにバケヒエンが致命の刃を突き放った時だった。

 唐突に動きに精彩が戻ったデュオルは咄嗟に仕込杖の切っ先に自分の掌を刺しに行かせた。血迷ったかとバケヒエンが僅かに戸惑ったのも運が無かった。

 何故ならデュオルはバケヒエンの手を仕込杖ごと掴み取り逃げられなくしたのだ。そのままデュオルは大地を蹴って強烈な頭突きをバケヒエンの鳩尾にぶちかました。

 

『くっ……この、やりおって!』

『うお、おおお……っぐ!?』

 

 よろめくバケヒエン。

 デュオルはこのまま一気に畳みかけたかったがバケヒエンも化神の意地があると相手を蹴り飛ばして拘束を解く。

 

『君を斬首で処理するのは忍びない。もっと派手で惨めなものに変えてあげよう』

『がっ!? は、なせえ……!!』

 

 瞬く間に数度切りつけて怯ませたデュオルの首を握り締めたバケヒエンはそのまま空へ飛び立つと一気に急上昇。無防備なデュオルにはまるで生身でミサイルかロケットに縛りつけられたような尋常ではない衝撃に襲われる。

 

『っあ……――』

『ようやく落ちたか。全くしぶといものだ……地平線が丸くなりだしているではないか』

 

 薄まる酸素と絶えず襲い掛かるGの洗礼についにデュオルの意識がブラックアウトする。変身しているとはいえ相変わらず怪物も青ざめるようなタフさを見せる彼に舌を巻きながらバケヒエンはしたり顔を浮かべるとデュオルを掴んでいた手を離した。

 

『さらばだ。例え途中で意識を取り戻しても無事に着地することは不可能だろう』

 

 勝ち誇るバケヒエンの独白が終わるころには既に落下するデュオルは小さく見えていた。不格好にグルグルと重力に遊ばれるように回転しながら地上へと墜落していく。

 100000、50000、10000、1000、9000、4000、1500、8000、2000、700――……。

 ゆっくりと、早々と、止ることなく落ちていく。

 死は決して動かず地上で待っている。

 落ちてくるデュオルを怖いほど静かに待ち構えている。

 300、140、110、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7――……。

 

『ムゲェエエエエエン!』

『ぐっへえ!?』

 

 縺れたような姿勢で今まさに地上に激突寸前のデュオルを羽団扇から出でた突風が吹き上げた。落下の勢いが削がれた瞬間を狙ってハヤテチェイサーを駆るビャクアが間一髪でデュオルをキャッチする。

 

『ムゲン生きてますか! 私のこと分かりますか!』

『ぜーはー……助かったぁ、ありがとうな沙夜!』

『こちらこそ、お待たせしました。お陰で石灯籠は全部壊しました。百鬼夜行は直に消滅するはずです』

『よし、残るはあいつだけだな。おわっ……上から来るぞ!!』

 

 意識を取り戻したデュオルが周囲を見渡すと先程まで地上を侵食していた瘴気やおぞましい赤空が霧散を始めていた。

 山積みだった問題がまた一つ解決したことに安堵を思えるのも束の間、上空から飛来する無数の影に気付いて慌ててビャクアに呼びかける。

 デュオルの声に呼応してビャクアがハヤテチェイサーを走らせると一拍の間も置かず、二人と一台がいた場所には何本もの漆黒の杭のようなものが突き刺さり爆発を起こした。

 

『ほう、君がビャクアか。私はバケヒエン、若き御伽装士よ死ぬまでの僅かな間がどうぞよろしく』

 

 爆風に晒されながらどうにか避け切った二人の前に強者の風格を醸し出しながらバケヒエンが戻って来た。そして、最早交わす言葉はいらないとばかりに攻撃を再開する。

 両翼を羽ばたかせ、舞い散った黒い羽根が先程の黒杭に変わるとミサイルのようにデュオルとビャクアに目掛けて撃ち出されていく。

 

『あぁっ!?』

『ぬおっ!?』

 

 直撃を許せば串刺しは必死の黒杭をなんとか切り払い、あるいは弾く二人だが厄介なことに黒杭は手榴弾のように僅かな刺激に反応をして次々に爆発。激しい爆炎が容赦なく二人を呑み込んで苦しめる。

 

『我が友アロンダイトを退けた武勇は素晴らしいものだ。しかし、その力は気安く再使用は出来るものではなかろう? デュオルにしてもその付け焼刃の姿で戦うのがやっと……積みということを理解したまえ』

 

 激戦に次ぐ激戦でボロボロの二人の前に悠然と構えてバケヒエンは憐れみすら感じながら冷笑する。けれど、黒煙と炎が渦巻く中でデュオルとビャクアの膝も心も決して折れず、漆黒の魔燕を睨んでいた。

 

『やりやがって……沙夜、まだやれるよな!』

『当然です! 永春くんが、クーさんもカナタさんもハルカさんも、みんなが尽力して私たちを支えてくれた。ならば、仮面ライダー(私たち)は勝たなければいけません』

『やれやれ、これが若さか? 反吐が出る。蛮勇と勇気を履き違えてはいけないぞ? それとも何かな? 君たちはまだこのバケヒエンに勝てると思っているのかい?』

 

 何度痛めつけても立ち上がるデュオルとビャクアに鬱陶しさと苛立ちを隠すことなく愚弄するバケヒエン。デュオルもビャクアにも敵の言葉は理解できていた。この化神は確かに強い。恐らく正攻法では、自分一人では、例え万全の状態でも至難の難敵だと。

 

『思っていますよ。だって、それが私たちだと信じている。信じてくれる人たちがいます!』

『どんな不可能も絶望もひっくり返してみせるのが仮面ライダーってやつなんだろうさ!』

 

 けれど、自分たちの身の程と実力差を痛烈に教え込まれながらも二人は嘲笑うバケヒエンの問いに吼え返す。

 仮面の奥で瞳を見合わせ頷くとデュオルとビャクアは駆け出した。

 自然と呼吸は揃う。

 そう。二人は自ずと悟っていた。

 この絶体絶命を乗り越える手段はちゃんと存在していると。

 

『いくぞ、ビャクア!』

『いきますよ、デュオル!』

 

『『ゴング鳴らせええ! ライダアァァァッ!!』』

 

 二人の拳がカチ合って、最大の闘志が発火する。

 一人の力で足りないのならば、その拳を重ね合わせればいい。

 そのために、あの夜に共に錬磨して互いに心の裡に抱えていた本音だって曝け出し合ったのだ。

 いまこそ、その時だ!

 二つの力を重ね響かせ戦う(ユニゾンウォー)の時が来た――!!

 

『退魔七つ道具が其の肆、海砕きの無双籠手! デュオルこれをあなたに!』

『合点だぁあああ!』

 

 ビャクアの退魔道具を双腕に纏ったデュオルは無慈悲に連射されるバケヒエンの黒杭と爆炎を真っ向から受け止めながら重戦車のように突き進む。

 鋼鉄の城壁のような防御力を誇る分厚い鉄籠手を駆使してついにバケヒエンを射程範囲内に捉えたデュオルはビャクアよりも速い振りで渾身の拳打を浴びせていく。

 

『フン! そんな愚鈍な攻撃が当たる私だとでも?』

『当てて見せますよ……どれか一つぐらい!』

『おっと?』

 

 拳圧で突風を吹かせながら乱れ飛ぶデュオルの鉄拳。

 しかし、両翼を広げたバケヒエンは僅かに浮遊した状態でそれらを全て避けていく。

 余裕の笑みを浮かべるバケヒエンをお次はこうだとデュオルの背後に控えていたビャクアが大鎌を携えて急襲する。

 

『重火器とて完全回避して見せる自負がある私に刀だ鎌だと野蛮なものが今更掠りもせんよ!』

『この――!』

 

 大鎌の重さなど感じさせない回転を練り込んだ軽やかな体捌きで斬りかかるビャクア。迎え撃つバケヒエンは仕込杖で最小限に打ち合いながらもこの攻撃も難なく連続回避をやってのける。それに対して、ビャクアは意表をついて得物を突然投げつけるが狙いを間違えたのか大鎌は高速回転したまま明後日の方向へと飛んで行ってしまう。

 

『ハハッ! やる気が空回りしたようだねえ、愚かな!』

『させねえぜ!』

 

 丸腰になったビャクアの首を刎ねようと仕込杖を振りかぶるバケヒエンを横からデュオルが体当たりを仕掛けて妨害する。

 冷静に大きく背後に後退したバケヒエンが攻撃に移る前に先手を打って快刀で斬りかかり鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

『フフフ。二刀で私の刃を絡み捕らえるか……本当にこれが利口な手だと思っているのかい? こちらは翼を自由に動かせるんだよ?』

 

 器用に二振りの快刀を仕込杖に絡ませて簡単に脱け出せないように鍔迫り合いを演じるビャクアをバケヒエンは心底小馬鹿にしたように口元を歪めると両翼をまるで彼女を包むように広げる。このまま羽根から黒杭を生成して飛ばせばビャクアは死ぬ――その確信があった。

 

『ムゲン、いまです!』

『よしきたぁああ!』

 

 けれど、ライダーたちが動く方が速かった。

 ビャクアの合図にデュオルがすぐさま彼女の腰を抱えて大きく振り回す。

 そうすれば自然、お互いの武器同士で連結しているような状態のバケヒエンもあらぬ方向へと無理やりに動かされる。

 

『なんだと!? うっ……ぎぃ、うぉおおおおお!?』

 

 まるで槍で突かれて空に掲げられたように想定外の位置に動かされたバケヒエンは間髪入れずに両翼に走った激痛に絶叫した。

 不発してどこかに転がっていたと思われていたビャクアの大鎌はなんとブーメランのように旋回してバケヒエンの自慢の翼を根元から切り裂いたのだ。無論、これは偶然の産物ではない。ビャクアとデュオルが仕込んだ起死回生の逆転の作戦だった。

 

『ま……まだだ!』

 

 主の肉体から切り離されて枯れ葉のように宙を舞う二枚の翼。

 だがバケヒエンは気力を振り絞り思念のような力で両翼を遠隔操作。撃てるだけの黒杭でビャクアたちをハチの巣にしようとする。

 

『やらせるわけねえだろ!』

 

 千切れた翼に生え揃った黒羽根がぞわりと毛羽立つがデュオルは咄嗟に両手から外した無双籠手を投げつけてバケヒエンの悪足掻きを防ぐ。

 

『待たせたな畜生ツバメ! ぶちかますぜええ!!』

『ハイヤァアアア!!』

『ぐぁああ、っぬあああ!?』

 

 最大の武器でもあった翼をもがれたバケヒエンにダブルライダーの猛攻撃が炸裂する。

 右から、左から縦横無尽の波状攻撃が瞬く間にバケヒエンを追い詰める。

 ビャクアの鋭いハイキックで顔面を歪まされたと思えば、右腕を踵落としと膝蹴りを同時に決めるような動きのデュオルの挟み蹴りで砕かれる。

 

『お、おのれ……人間風情が群れたところで調子に乗るな!』

『人間だから群れるのさ。たまにはな』

『私たちは例えどんなに強くなれても、寄り添ってもらえること……支えてもらえることの意味も心強さも忘れたりはしない。だから、もっと成長できる』

 

『『こんな風に――!!』

 

 一糸乱れる動きで放たれた二撃のナックルアロー、そして円月を描くように繰り出された踵落としがバケヒエンを地に墜とす。

 

『ぐっ、ぬぅ……! 終わらんぞ! このバケヒエン、伊達に戦国の世から現代まで生き永らえてきたわけではない!』

 

 しかし、バケヒエンも簡単に散るつもりなど毛頭ない。

 翼を失おうと数え切れない数の命を奪い、血を吸わせ続けていた愛刀の仕込杖を振るいデュオルとビャクアに徹底抗戦する。

 

『ドラグカッター・スピイィィィン! おおおおりゃあ!!』

『馬鹿なぁっ!?』

 

 寄らば切ると振り乱れる老練な剣閃の雨霰。

 ならばとデュオルは右腕の籠手の左右から刃を展開させるとプロペラのように高速回転させる。風を巻き起こして回転鋸のように唸る竜の刃が真っ向からバケヒエンの仕込杖を粉々に破壊する。

 

『せぇえええいッ!』

『ごっぶう!?』

『そぉるらぁああ!』

 

 嵐のように激しく、そよ風のように繊細な同時一斉攻撃の勢いは止まらない。

 ビャクアが重ねた諸手で斧を思わせる重い手刀を横っ腹に叩き込み、悶絶するバケヒエンの顎下をデュオルが豪快なアッパーカットで打ち抜くと相手は案山子のように棒立ちになって朦朧とする。

 

『おっしゃあ! アレやるぞ沙夜ぁ!』

『いいですよ、畳みかけましょう!』

『な、なにを……さ、させん! やられっぱなしなどぉ!』

 

 あっという間に劣勢を強いられることになったバケヒエン。

 まだ意識が定まらない隙を狙ってデュオルはその背後に回り込むとジャーマンスープレックスを決めようとバケヒエンをひっこ抜こうとする。

 

『往生……しなさい!!』

『がっ!?』

『『エクスキューション・スープレックス!!』』

『あ、ああ……ぁ――!?』

 

 デュオルの意図を察して慌てて踏ん張るバケヒエンであったがダメ押しとばかりにビャクアがレッグラリアートでその喉を蹴り抜いた。

 バケヒエンは二人の連携技でまるで断頭台にかけられたように後ろ向きに叩きつけられて上半身と首に大ダメージを受けて悶え苦しむ。

 

『終わらせるぞ!』

『はい! 退魔七つ道具が其の漆! 韋駄天の鎧下駄!!』

 

 いまが絶好の好機を見た二人はこの長く厳しかった戦いに幕を下ろそうと最後の奥義開放に踏み切った。

 

【FULL SPURT! READY!!】

『オン・カルラ・カン・カンラ! いざ! いざ! いざッ!!』

 

 風を、光を、凄まじい力を纏い、大地を蹴ってデュオルとビャクアは大空へと躍動する。

 

『ドラグーンザッパァアアア!!』

『退魔覆滅技法! 乱鴉一陣!!』

 

 白き竜と鴉のオーラを纏った二条の極光がバケヒエンを貫いた。

 必殺のダブルライダーキックの直撃を受けた恐るべき魔燕は黒い瘴気を血のように噴き出しながら呆然と崩れ落ちていく。

 

『こんなところが我が旅の終着とは……口惜しい限りだ……ぐぁああああああ!!』

 

 無念に塗れた断末魔を残して、バケヒエンは巨大な爆発を起こすとやがて跡形もなく消え去った。

 全ての悪の脅威が潰えた世界にほどなくして他世界からの侵略という傷を修正する光る風が吹き抜ける。

 破壊された街も、襲われた人々も、混乱に陥った秩序も全てが無かったことに戻される。

 こうして、魔人教団と化神の暗躍によって引き起こされた一連の事件は終わりを告げたのだった。

 

 




『オトギパラディーン(ツルギ×ビャクア)』

■パンチ力:15t
■キック力:30t
■ジャンプ力:60m
■走力:100m6.0秒

 デュオルのユニゾンアップフォームの一つ。
 仮面ライダーツルギと仮面ライダービャクアの特徴が組み合わさった意匠をしている。
 ツルギとビャクアの能力の断片を継承しており、両籠手の『ドラグカッター』を筆頭に『リュウノハウチワ』『ドラグザンバー』といった刀剣武器を駆使して戦う。
 ツルギの影響が色濃く反映されており、遠距離攻撃手段に至るまで斬撃・刃物による攻撃であることに特化している。
 背中のイオンブースターによる爆発的な加速で一気に間合いを詰めて斬り伏せる戦法と得意としている。またツルギの世界の仮面ライダーたちと同様にミラーワールドへの移動能力も備えている。

 必殺技はドラグーンザッパーと白獣一文字。

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