仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 デュオル×ビャクア ユニゾンウォー   作:マフ30

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エピソード13 NEVER SAY GOODBYE

 

 

 名古屋の繁華街は何事も無く賑わいを見せていた。

 まさかほんの数時間前まで空が赤く染まり、この世の物とは思えない怪物が跋扈する地獄絵図と化していたことを知る現地民は皆無だ。

 それで良い。

 それがあるべきこの世界の姿。

 世界は人知れず、仮面ライダーとその仲間たちの手で守られた。

 その事実があるだけで十分だ。

 

 

 

 

「ごちそうさーん! いやぁ~満足! これで名古屋に当面未練はないな」

 

 そして、世界を救った立役者たちはというとぞろぞろと一軒のラーメン屋で打ち上げ代わりの食事を済ませて店から出てきたところだった。

 看板の銘はスガキヤラーメン。

 和風とんこつスープが売りの東海地方では馴染み深いご当地ラーメンのチェーン店だ。

 

「ふーむ……私は折角だしひつまぶしとかも食べたかったかもだね」

「それは財布と相談しながらオレたちの世界に戻ってからの楽しみにしといたらカナねえ?」

「むむっ? もしやこの地にはまだまだ美味しい地元の食べ物があるのですか? ぜひぜひご教授お願いしますとも!」

「いいですけど、うなぎは高いよ?クーさん」

「フッ、安くてうまいの極致を体現したようなスガキヤの良さよりもお高いうなぎを選ぶとはカナタもまだまだお子だな」

 

 ムゲンがどうしても食べたいと強請って選んだ店だったのだが双子の反応はイマイチな様子だが提案者はそんな親友をやれやれと謎の上から目線で鼻で笑っている。

 そんな普段のやり取りを繰り広げるカフェ・メリッサを保護者のように見守っていた永春と沙夜だったがいくつか気になることがあった。

 

「にしてもムゲン、よくスガキヤラーメンのこと知ってたね」

「ええ、この地方以外はお店どころかインスタントでもそんなに出回っていないと思っていたのでビックリしました」

「そりゃあ、俺は中学までは生まれも育ちも岐阜だからな。カップうどんも関西風じゃないとダメだ」

「「はあ!?」」

 

 ちょっとした好奇心からした質問から思いがけない返答が返ってきたことに永春と沙夜は目を丸くして驚いた。

 

「懐かしいねー! うどんであんなに血相変えた人間初めてみるってぐらい焦ってたもんねあの日のムゲン」

「よせよせぇ! 人様の黒歴史を掘り返すなよぉ」

 

 そんな二人の驚愕に気付かず当のムゲンはカナタにからかわれて気恥ずかしそうにケタケタと笑っていた。

 

「沙夜さんって確か」

「……うそですよね。私、これと同郷?」

「これってなんだ!? というか沙夜も岐阜生まれかよ! 奇遇だな!」

「あーどうりで食の好みとか似てたんだね。二人とも」

 

 前髪の奥の瞳を激しく泳がせて動転する沙夜とこんな近くに出身地が被っていた人間がいたことに妙にハイテンションになるムゲンをみて永春はなんとなく似通った部分を持っていた二人の数奇な繋がりに納得した。

 

「なんというか、世界ってのは広くて狭いな」

「なんですかそれ? 言っていることが矛盾だらけですよムゲン……けど、分かります」

 

 ふと歩調を緩めて、何の変哲もない街と人々の様子を眺めながらしみじみと二人は言葉を交わすと自然と笑みが浮かぶ。そして、頼れる仲間たちを見渡す。

 

「お前や若に会えてよかった。それから、今回は本当に助けられたよ」

「私もムゲンとそのご友人たちと知り合えたこと嬉しく思います」

「ああ。それじゃあ、なんだ……そろそろ帰るわな」

「――はい」

 

 どこかぎこちなく、その言葉はムゲンの方から切り出された。

 戦いが終わり、怪人たちの悪事も潰えたいま、彼らには別れの時が迫っていたのだ。

 

 

 

 

 夕暮れ空に一番星が瞬き始めた頃、人気のない路地裏に移動した六人はホッピングジャーニーを操作してそれぞれの世界に戻る準備を進めるクーを中心に輪になって待っていた。

 

「元の世界に帰ればたった一人で魔人教団と戦う日々が再開されるんですよね? どうか、武運を」

「大したことじゃないさ。それに最前列で体を張るのだ俺ってだけで最高の仲間がいつだって一緒だ。ぽっと出の二番手が人間として面倒臭かったり、頑固者でライダー同士で争うみたいな厄介事が無くてむしろ助かるってもんだ」

 

 真摯な声色で自分を激励する沙夜にムゲンは不敵な笑顔と彼らしい軽口を叩いて返した。

 

「そっちも気をつけてな。倒しても倒しても全滅しない連中相手に戦い続けるってことは気の毒な話だろうかもしれないが……なんかあったら、いつでも頼りな」

「ご心配なく。これでも仮面ライダーとしてのキャリアはムゲンよりもずっと先輩なので。……お気遣いありがとうございます。それと、御守衆を甘く見ないでくださいと言っておきます」

 

 照れ臭そうにお節介根性を見せるムゲンに沙夜はしゃんと背筋を伸ばし、清廉で澄んだ眼差しと気丈な言葉で返答する。

 

「お待たせしました! 皆々さま、それでは元の世界へ帰りますのでしっかりと手を繋いでいて下さいよ」

 

 そして、ついにその時がやって来た。

 眩い光が六人をゆっくりと包んで更に輝きを増していく。

 

「お元気で」

「またな」

 

 閃光が収まるとついさっきまでそこにいたはずの六人はその世界から忽然と消え去っていた。そして、この世界にも夜が来る。また新しい明日を始めるために。

 

 

 

 

「沙夜さん」

「っ……永春くん!」

 

 彼の声にハッと意識が鮮明に戻る。

 僅かに警戒して周囲を見渡すとそこは自分がよく知る六角モータース近くのあぜ道。

 奇しくも彼と自分が両想いとして結ばれた思い出の場所だった。

 

「無事に戻って来たみたいだね。それにムゲンたちもどこにもいない」

「彼らは彼らのあるべき世界に帰ったんでしょうね。こんなにも唐突に終わると少し寂しいですけど」

 

 正直なところ、まだこの数日間のことが現実のことだったのかと別れを経験したいまだからこそ夢のような気分になる。疲れや痛み、それに隣にいる最愛の少年のぬくもりを近くに感じて全てが本当のことだったと頭では理解しているはずなのに。

 

「帰ろうか、光姫さんたちが待ってるはずだし」

「そうですね。一応上司ですし、報告もしなくちゃです」

 

 木枯らしに吹かれて、小さなくしゃみをしながら優しい笑みを作る彼と並んで歩き出す。ようやく正常に働き出した思考回路がせわしなく今日が終わる前にやるべきことは多いぞと発破を掛ける。

 ぽつりぽつりと他愛のないお喋りをしながら彼と一緒に家路に就く。

 ふと、昼間の彼の勇姿が脳内に蘇る。

 慌ただしくなる前に。

 二人っきりでいる間に。

 この思い出がまだ私だけの特別な宝物である間に。

 言うべきこと、言わなければ。

 伝えるべきこと、全部伝えなければ。

 

「永春くん」

「うん? どうしたの沙夜さん?」

「昼間の永春くん、すごく……すごく、恰好良かったですよ」

 

 誰かを殴ることに慣れていない、慣れて欲しくない彼の手をぎゅっと握り締めて、似合わないかもしれないけど自分なりのとびきりの笑顔で感謝を伝える。

 

「へ? あ、わっ……いや、そんな。ど、どういたしまして?」

「はい。これからも頼りにさせてもらいます。永春くん」

 

 あっという間にりんごのように顔を真っ赤にして、慌てながら、謙虚そうにちょっと頭を下げてはにかむ彼がとても愛おしい。

 愛おしいから密かに誓う。

 そんな貴方が懸命に助けてくれ献身に応えるためにも私はまだ強くなる。

 そんな大好きな貴方が見せてくれた勇気に負けないように私はもっと強くなる。

 ありがとう、そしてこれからもよろしくです。

 大好きな永春くん。

 

「そうだ! 永春くん、明日のお昼はなにも用意しないで学校に行ってくれますか」

「え? なんでまた!?」

「お弁当、沙夜が作ってきますので。ムゲンのよりもずっと美味しくて永春くん好みのものを……必ず」

「さ、沙夜さんちょっと目が怖いよ?」

「見ていて下さいよ。すごいのをご用意して見せますので!」

 

 こんな言葉を贈るのは変かもしれませんが……。

 ありがとう、ムゲン。

 どこまでも強いあなたと一緒に戦えたことを私は宝に、糧にして励もうと思います。

 あなたの戦いの旅路にも幸あれ。

 

 

 数奇な運命で交わり重なった二つの物語の軌跡は再び別れ、またそれぞれの色彩と音色を響かせる。

 

 

仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 

デュオル×ビャクア ユニゾンウォー 

THE END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

 どこかの世界の、どこかの酒場のカウンター席の隅っこで人間体のアロンダイトは独りで酒杯を傾けていた。

 隣の空席にも琥珀色の液体が注がれたグラスが一杯。

 死闘の果てに散ったバケヒエンへの追悼と手向けの酒だった。

 

「可愛そうなアロンダイト。元気だして、レヴァンが慰めてあげる」

 

 大きな背中を小さく丸めて酒を煽るアロンダイトの頭を優しく撫でる白く幼い手が伸びる。それは鮮やかなピンクの髪を揺らす可憐な花の精のような少女――死奏剣の一人、レーヴァテインのものだった。

 

「お友だちがやられちゃったんだね……レヴァンの胸の中で泣いてもいいんだよ」

「なあ、レーヴァテイン。お前、死なない人間ってのを見たことあるか?」

「――アロンダイト、あなたナニを見たの?」

 

 重く怪訝な呟きを漏らしたアロンダイトにレーヴァテインの佇まいが変わった。

 正しくは彼女の本性が剥き出しになったというべきか。

 

「俺ちゃんとライダーの戦いに割り込んできた妙がガキがいたんだよ。そいつ非力で脆弱で確かにただの人間のはずなのによ心臓に風穴あけてやったのに一瞬で元に戻ってやがった」

 

 アロンダイトは何十、何百回とあの戦いを脳内で反芻したがどうしても永春のことが解せなかった。攻撃の手応えも、噴き出した血の滴りも香りも確かに本物を感じたはずだった。なのにあの人間は生きていた。それどころか何事も無かったかのように戦っていた。

 それが不可思議で仕方なく、アロンダイトの思考の隅にこべりついて離れなかった。

 

「ふーん……つまり、不死身の生き物がいるかもしれないって、アロンダイトはそう思ってるんだよね?」

「おう。最初はギギの民の女のまやかしかと思ったがやっぱり俺ちゃんは俺ちゃんの直感を信じる。確かにあの時、あのガキの心臓はブッ潰れて致命傷を負っていたはずだ」

「ねえ、その子の特徴をレヴァンにもよぉく教えてちょうだい。新しい遊び道具になるかもしれない♪」

「またろくでもないこと企んでやがるなレーヴァテイン? いいさ、面白そうだし派手に遊んでやれ! ガキは名前は確か永春とか言われてたかなぁ?」

 

暗闇の奥底で魔人たちの笑顔は止まない。 

 





ここまでお読みいただきありがとうございました。
ユニゾンウォーこれにて完結でございます。
ハーメルンジェネレーションズは各作者さんたちの手でこれからもますます展開していくことかと思いますのでそちらもどうぞよろしくお願いします。
それではまたどこかで!
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