仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 デュオル×ビャクア ユニゾンウォー 作:マフ30
バケヒエンの根城である海辺の洋館では張り詰めた空気が漂っていた。
原因は勿論メタローと化神、総勢五体から成るビャクア討伐部隊の敗戦である。更にはDマーダーとの戦闘後、消息不明とされていたデュオルの出現も複数の世界を股にかけて策謀を巡らせていた彼らにとっては由々しき報せだった。
「フゥム……近頃の若い衆は気骨がないねえ。まさか五人がかりで一人も碌に仕留められなかったとは。おっと、当世ではいまの私のような物言いは老害と揶揄されるのだったかな?」
『我らは共に人類を越えた存在。人の価値観に貴殿を押し込めること自体がナンセンスだ』
「お堅いことだ。ではいまのところは敵方が天晴れだったと言うことにしておこう」
帰還したDマーダーが回収した瀕死のシザーハンズメタローを見下しておどけた口調で語る人間体のバケヒエン。しかし、好々爺を演じるこの老体から醸し出される殺気は仮にその場に他の生命体がいれば容易く気絶させるほどに凄まじい。
「気遣いは無用だぜバケヒエン。単にこいつらが弱かった。それだけの結果だ」
『ウ……ァ、グアア……アロンダイト……様』
「ちょっと見ない間に男前になったじゃねえかシザーハンズ? おっと、いまは
普段の陽気さはなりを潜め、仁王像のように厳めしい雰囲気でアロンダイトは腕の鋏を叩き折られ、不細工な針金アートのようにボコボコにされたシザーハンズメタローの前に対面した。
「選ばせてやるよ。ここで俺ちゃんに処分されるか、戦って死ぬか。お前はどっちだ?」
ずいっとシザーハンズメタローの眼前に差し出されたアロンダイトの掌には極彩色の火の玉がふわふわと浮いていた。
これなるは彼らと同じ魔人教団に属する別個体のメタローである。ただし、発言や思考の一切を禁じられたそれは様々な理由で教団の活動に追従することが出来なくなった脱落者と蔑まれる個体だ。
そして、そんな別個体の同胞を差し出されたその意味をシザーハンズメタローは即座に理解して、己の末路の迷わず選択する。
『戦いを! どうかこの俺に再び戦える力を授けてくれ! 大戦士アロンダイトよ! 我ら魔人教団が誇る死奏剣……貴方に誓い、そして願おう! 俺は死ぬぞ! 戦って、戦って、一つでも多くの破壊を! 一つでも多くの暴威を振るい華々しく死んで見せよう! そのための力をくれ!!』
「よく吼えた!! 受けとれいッ!!」
『オオオ! オオ……ッギャアアア……アアアアァ!!』
崩れかかる肉体で狂ったような剣幕で宣誓するシザーハンズメタローへとアロンダイトはその戦意を称えるかのように極彩色の火の玉を注ぎ込んだ。
激しい光が放たれる中で二つの高次元生命体が混ざり合い始める。
融合強化――生身の肉体を捨て去った彼らだからこそ出来る生命の合体。
強力な力を得ることも可能な反面、自我の崩壊も起こしかねない諸刃の刃の手段を選んだメタローの絶叫が洋館に響き渡る。
「一切の躊躇なく戦って死ぬことを選ぶか。魔人教団の矜持、感嘆の限りだ」
止むことのない絶叫をまるでクラッシック音楽でも聴くような様子でバケヒエンはシザーハンズメタローの覚悟に拍手を送る。
そして、しばしの熟考を経て盟友に怜悧な視線を合わせた。
「アロンダイト、君に任せてある計画の準備はどこまで進んでいるのだね?」
「ざっと九割ってところか。テストは済ませたとはいえ、本番は規模も距離の遠さも段違いだ。我ながら大嫌いな細かい調整ってのもしなくちゃいけねえだろうしよ」
「よろしい。ならば、私も現地へ赴こう。二人ならばすぐに実行まで漕ぎ付けられるだろう」
「急にどうした? もっと物見遊山気分でやるんじゃなかったのかお前?」
突然にやる気を出し始めたバケヒエンにアロンダイトは平常時の佇まいに戻って首を傾げた。
「なに、君の同胞が折角こうして意地を見せてくれたんだ。返礼に最高の舞台を用意してあげても罰は当たらないと思ってね」
「そいつはありがてえ!」
「多少のアクシデントも考慮しているが……フフッ、大きな祭りをやるのなら不備の一つや二つ楽しむぐらいで望むのが粋だろう?」
皺の多い手で軽快にステッキをくるりと回してバケヒエンは微笑んだ。
笑いながら老紳士は化ける。
あるべき異形に、あるべき恐怖の具現へ、それこそが百戦錬磨の有翼の古兵バケヒエン。
「一人ではしゃぎ過ぎて招待状を忘れてやるなよ?」
『勿論だとも。全てが後の祭りでは彼らもやりきれないだろうからねえ』
「カーッ! どこ口でほざきやがるんだ……悪趣味にも程がある計画建てておいてよ、この畜生燕め!! うわっははははは!!」
「照れるじゃないか、いやさ。今回のは我ながら自信作だ褒め給え。そして、この謀りが成就することを願おうじゃないか」
魔人が嗤い、化神は謳う。
老獪な魔性が秘密裏に綴ってきた悪夢のシナリオが静かに実行へと移されようとしていた。
※
ほぼ同時刻。
六角モータースからの道中で夕食の買い物を済ませたムゲンたちが永春の案内で笛吹荘に到着していた。
「お静さん、ただいまー」
「はじめまして、お邪魔します」
「同じくでーす!」
買い物袋片手に大家のお静に挨拶を済ませたムゲンたち。
一度、夕飯の食材を笛吹荘の調理場に置かせてもらうとムゲンとハルカは永春の部屋に、カナタとクーはたびたび沙夜が使わせてもらっている部屋へと別れて通された。
「いいところ住んでんじゃん若ぁ! 広いし、畳みだし、羨ましいわぁ」
「そうだね、普通に一人暮らしすることを思えばアットホームだしいいところだよ」
「だろうなぁ。俺も元の世界に帰ったらシスターの家に居候させてもらおうかな?」
「ムゲンそれもう三回ぐらい断られてるヤツだろ? あきらめろ、シスターの私生活はブラックボックスみたいなもんだ」
簡単に笛吹荘の間取りを教えられながら永春の部屋へやってきて、自分の我が家事情の今後を検討するムゲンに横からハルカがやれやれと苦笑する。
「それよりも早いところ夕食の準備をしにいくぞ」
「欲言えばもうちょいのんびりしたかったが下ごしらえとかしていると鍋もけっこう手間暇かかるしな」
僅かな手荷物を荷降ろしさせてもらい時間を有効に使おうと行動を促すハルカにムゲンは名残惜しそうにその後ろをついていく。
「鍋がいいって最初に候補に挙げたの誰だっけ?」
「ハルカも鍋派だったじゃん」
「カナねえがアヒージョ作るとか言いだしたからだよ。あんな油浸しの何が良いんだ」
「昨今のオシャレ料理の代表格だぜ? それに好き嫌いはいかんよハルカくん」
「カリフラワー満足に食べられないヤツがなんか言ってる」
「ブロッコリー食べられるからあんなもん食えなくても別に俺の人生そんなに損はしないさ」
「大袈裟」
冷やかに、愉快に、大真面目にころころと声調を変えながら小気味の良い会話を弾ませて階段を下りていく二人。しかし、ふと視線を感じて揃って後ろを振り返り、部屋の主の顔を見た。
「どうした若?」
「もしかして、常若はアヒージョ食べたかったりした?」
「え? あー……そうじゃなくて、ムゲンとハルカって本当に仲の良い友達なんだなって」
まるで事前に台本でも用意していたのかと疑いたくなる流れるような会話と気心知れた二人の間柄をまざまざと見せつけられた永春はほんの数時間前まで自分が知っていたムゲンという少年の人物像とのギャップもあって困ったように笑ってからそう答えた。
「違いない」
「だな。けど、若や沙夜ともこれからまだまだ仲良くなりたいもんだよ」
「へえ、オレとカナねえ以外にもそんなこと思えるようになるとは……ちょっと会わない間に大人になったな。感激だよ」
「大袈裟ぁ!」
「あ、うん……仲良いっていうかなんというか、濃いね君たち」
口にはしないが友人関係を褒められてちょっと得意げになり軽口も多くなるムゲンとハルカにまだ戸惑いの方が多い永春は早くもこの二人と一晩過ごすのかと若干の不安を禁じえなかった。
その後、永春は部屋着に着替えたかったので二人を先に調理場へと行かせた。
手早く脱いだ上着をハンガーラックに掛けた時のことだ。彼の足元に上着から一枚のカードが零れ落ちた。
「なんだこれ? どうしてビャクアが写ってるんだ? 御守衆の備品とか?」
紙ではないが薄く丈夫な素材で出来た何故かビャクアが写っているカードを怪訝な表情で拾い上げると様々な憶測を巡らせる。
けれど、いまはムゲン達を待たせていることもあって永春は深く考えることはやめ、時間のある時に沙夜に尋ねてみればいいとカードをとりあえず上着のポケットに戻して部屋を出ていった。
そのカードが仮面ライダービャクアを識る彼自身の記憶と想いから生まれたライダーメモリアだと認知するのはもうしばらく先の話である。
※
その日の笛吹荘の食堂はいつも以上に賑やかだった。
単に大人数ということもあるが鍋の準備に始まって、主にカフェ・メリッサ一同が良く喋るのでとにかく騒がしい。
騒がしくもそこは喫茶店スタッフの本領発揮と四人とも準備の手が止ることなくスムーズなのだから、普段穏やかでどちらかというとのどかな雰囲気を纏って暮らす沙夜と永春は何度か唖然としたことは内緒である。
結局、泊めてもらうお礼と夕食作りの殆どをカナタたちが行い永春と沙夜はほぼ据え膳状態だった。
「よーし! つみれもいい感じだからみんなドンドン食べていってね!」
「あはー冷えた身体に沁みますね。カナタさんとムゲンさんが作るこの肉団子絶品ですとも! 沙夜さんと永春さんもバンバン食べてみてください! もうジャンジャンと!」
「あ、ありがとうございます」
「あふふっ! 大変です永春くん。本当にすごくおいしいです。お箸が止りません」
「そ、そう。沙夜さん今日はいっぱい頑張ったからたくさん食べたらいいんじゃない?」
自然と鍋奉行となっていたカナタが慣れた様子であれこれとみんなに食べごろの具材を教えながら彼らはもくもくと湯気が立つ夕食に舌鼓を打つ。
わんこそばのように空になったお椀に次々と追加をぶっ込んでくるクーに困惑する永春とは対照的に食欲旺盛な沙夜の方は一歩早く彼らの空気に適応したのか鍋の美味しさにご満悦のようだった。
「やっぱ大勢で鍋やると格別だな! たーのしー!!」
「メガネ曇ってるのによく器用に鍋の具すいすいとよそえるな」
「適当だぞ! いま俺なに食べてもうまいからな」
「さて、みんなざっと腹六分くらい食べた頃だし……ちょっと真面目なお話してもいいかな?」
空腹を満たして全員に余裕が生まれた頃を見計らってカナタが鋭い眼差しで告げた。
「当然、敵との戦いのことですね?」
「そう。所感なんだけど、今回の魔人教団の目的がどうにも読めなくてね」
「というと?」
「私たちの世界での彼らは俗に言うと心に闇を持ったような人間に寄生して怪人体のスペックの底上げをした上で暴れていたの。というのもそもそも私たちの世界は仮面ライダーっていう存在の概念がなかったから、一度に大勢のメタローが活動できないっていう制約があったからなんだけど」
「今回、魔人教団は君たちの世界にいる化神と結託して多くの駒を手に入れることができた。それに百鬼夜行だっけ? 一気に大量の尖兵を生み出せる儀式まで一応成功したのにムゲンが消えた後は何も目立った動きを見せなかったんだ。最大の好機だったろうに」
橋を進めるペースを少し落として、カナタとハルカが交互に此度の敵の動きに見え隠れする違和感を挙げだした。
「私もいくつか疑問が……ムゲンたちの世界で百鬼夜行を起こそうとして、どうして今度は急にこちらの世界で暗躍を始めたのか不可解なんです」
「うん、その点は私たちも御守衆さんや沙夜さんたち御伽装士の詳細を聞いて釈然としなかったんだよね」
食べごろの鱈を頬張りながらカナタは続ける。
「ムゲンしかいないこっちと違って、この世界にはライダーが何人もいる。それを支援する組織も存在しているここはどちらかと言えば攻め難い世界だと思うんだよね」
「先に面倒な世界を叩くって言う方向性も捨てきれないけどそれならもっと大掛かりな暴れ方をしていてもおかしくないからな」
「うーむ……なんか今回の魔人教団はまだ何か隠している気がしますねえ。幸い今度はわたしたちもそれなりに準備してきたので今後は御守衆さんと協力して本格的に連中の動向を探れるとは思いますけど」
「頼りにしてますよ、クーさん」
更に話を深めようとしたところ永春が遠慮しがちに手を上げてそれ以前に気になっていた疑問を尋ねる。
「少しごめんね。昼に他にも御伽装士……じゃなかった仮面ライダーがいるみたいな話を聞いていたけど、いなかったりする場合もあるの?」
「ご質問についてはわたしが簡単にお答えします。わたしが各世界を旅してまわって確認した限り三つの世界があるのです。一つはこちらの世界のように仮面ライダーが現実に存在する世界。二つ目が仮面ライダーの概念はありますがそれらは全てTV番組など空想の作り物として存在する世界。そして三つ目にお三方が暮らしていた仮面ライダーの概念さえなかった世界」
「クーさんのお話を聞いて、ムゲンという私たち御伽装士以外の仮面の戦士を目の当たりにしてもやっぱり理解が追いつかないスケールのお話ですね」
沙夜の言葉に同意するように永春は何度も強く頷いた。
その様子にムゲン達からはかつての自分たちを見ているようで思わず苦笑いが零れる。
「無理もないさ若。俺たちの場合はその表向きには空想の産物ってことになっている歴代の
「そういえばムゲンの戦う姿はつど二種類のカードをベルトに挿入して変わっていましたね。あのカードに他の仮面ライダーと呼ばれる戦士たちの力が宿っていると?」
「おう。大体あってる。俺がメモリアって形で力借りてるのは八人分だけど、まだまだ沢山いるらしい……ってのを小さなライダー博士からたっぷりと教えてもらったよ。いや、愛好家って言った方があの子にとっては名誉になるかな?」
「は、はあ?」
「ムゲンはね、この世界の前に迷い込んだ別の世界があるんだよ。ちなみにそこは仮面ライダーがTV番組になってる世界でよかったかな?」
「ああ、おもちゃ屋の前に大先輩の人形が並んでたの見た時は心臓止まるかと思ったよ」
やや説明不足な自分の話に的確な補足を入れてくれたカナタに感謝しつつ、ムゲンは当時の心境を回顧して懐かしそうに呟いた。忘れ難い初めての邂逅と共闘を経験した思い出の世界だったのだから無理はない。
「そこで俺は初めて自分以外のライダーに出会ったんだ。仮面ライダーツルギ……すごい奴だった。刃毀れなんて知らない名刀みたいな気高くて、立派な奴だった」
「前から思っていたけど、ムゲンってばやけにそのツルギってライダーのことべた褒めするよね。」
「そりゃあするさ。きっと仮面ライダーのお手本ってのはああいう真面目なやつのことを指すんだろうってね。俺とは大違いだ」
「あの、ムゲン? 少し、自分を卑下しすぎではないですか?」
「冗談、足りないぐらいだ。なにせ俺はその別の世界の戦いで
緩んでいた口元を引き締めて、ムゲンは粛々と告げた。
まるで自分自身を戒めるように吐き捨てられた言葉にあたたかだった食事の席がピシャリト凍りつく。
「え……ちょっ、ムゲンそれはどういう?」
「言葉の通りだ。魔人教団相手にツルギと戦って、強敵にボコボコにされて……俺はその世界やそこに暮らす人たちを守ることを匙投げかけたのさ。幻滅したか?」
耳を疑い困惑する永春にムゲンは躊躇うことなくかつてバンブーメタローに苦戦した際の心境を打ち明ける。
「それは本当のことなんですか?」
「こんな空気で嘘言う奴がいるかよ。あの時俺は間違いなく、別に自分の世界じゃないし、困らないだろうってその世界を見捨てかけた。借り物の力で戦う模造品にしては頑張っただろうって自分を甘やかして、俺にしか守れない沢山の命を手放しかけた。全部本当のことさ」
自然と不甲斐なさと後悔で握る拳に力が入った。
脳裏に蘇るのはあの日の醜態とそして自分の隣で決して折れずに煌めいた清廉な白い護り刀のような少年の姿だ。
「だけど、そんな俺をツルギが引き止めてくれた。みんなを守るって呆れるぐらい真っ直ぐな目で戦う姿が情けないにもほどがある俺をもう一度奮い立たせてくれたんだ」
まるで断頭台の前に立ち自分の過ちと向き合う罪人のように据わった眼差しでムゲンは対面にいる沙夜を見た。
以前からこの話を聞かされていたカナタたちも黙って静観している。これは仮面ライダーではない自分たちが助け船を出してはいけないムゲンだけの問題だと理解していたから。
「だけど! 今日のムゲンはあきらめてないだろ? 記憶なくして、ただの人間同然の状態でも、沙夜さんのために身体を張ってくれた」
沈黙を破ったのは永春だった。
「死ぬかもしれなかったのに、危ない目に遭う謂れもなにもなかったのに、ただの一般人として避難しても許される立場だったのにムゲンは逃げずに戻ってきて頑張ってくれた。だったら……いいじゃない?」
「若ぁ……俺の話まだ続きがあったんだが」
「え? そうだったの!? な、なんかごめん」
「いや、まあ……なんだ。ツルギっていう見習わなきゃいけない戦友に会って俺も二度とあきらめたりはしねえぞ!って心に堅く誓ったってオチなんだけど」
「な、なるほどね。ムゲンならきっと大丈夫だよ。うん…………変な空気にしちゃってホントみんなごめん!」
最後の最後で若干締まらない感じになってしまったムゲンの思い出話とライダーとしての誓い。ずっと張り詰めていた場の空気だったが急に照れ臭くなって再びメガネを曇らせて顔を隠すムゲンと思わず先走って熱い気持ちをぶちまけてテンパる永春の姿に誰からともなく笑いが漏れだして元の明るいものへと修正されていった。
「だぁー恥ずかしっ! ツルギすげえってだけ言っとけばよかったのに余計な恥の上塗りしちまったよ」
「そんなことないと思いますよ。弱み辛みを誰かに話せるのはすごいことです」
「だと助かるけどな。沙夜も俺はこんなんだから、あんまりアテにするなよ」
元々どこかで言うつもりではいたが完全にタイミングや段取りを間違えたとごまかし笑いが絶えないムゲンに沙夜は面白がりながらもお返しにと口を開く。
「誰だって、後悔するような間違えや失敗はありますよ。私もすごい失態を犯して大変なことになりました。たくさんの人に迷惑をかけて、なにより永春くんを傷つけてしまいました。それでも……こうしてなんとかやれてます
「そうか。どこの世界もなかなか思い通りにいかないな」
「ええ、全くです。だから、頑張るしかないって感じです」
ムゲンの懺悔を起点に少しずつおっかなびっくり距離を測りながら彼ら六人は本音を打ち明け合いながらお互いを知り、交流を深めていった。
食事を終えた六人はその後身体を休めることを大前提に三方に別れて行動することになった。
ムゲンと沙夜は戦いにおける連携の練度やまだまだ二人で繰り出す合体技を編み出せる余地があると夜の自主トレーニングに近くの空き地へ。
カナタとクーは永春のPCを借りてSNSなどからの情報収集。
そして、残ったハルカと永春はというと……。
「は、はは……はぁ。ボクも何か沙夜さんたちの役に立つことしたかったんだけどな」
「これも立派な手助けだ。常若がこの下宿の一番の先輩なんだから適材適所だと思うぞ」
永春のため息と蛇口から流れる水の音が不釣り合いな二重装を奏でていた。
流し台に少年二人が並んでせっせと皿洗いに励んでいた。
とどのつまり、この二人は夕食の後片付け係である。
「えと、ハルカはいいのかい? そのこんなことしていて気が気じゃなかったりとか?」
「全然。なにより、アポなしで泊めてもらう身としては家事を肩代わりするのは大事な務めだ」
「ま、まあそういう捉え方もありかもだけど」
「そもそも今日の内にできることなんて限られているし、その手を尽くしておくべきこともカナねえとクーさんに任せておけばまず大丈夫だろう」
「双子なんだっけ? 信頼してるんだね、お姉さんのこと」
「当然だろ。オレのカナねえだ……下手な正義の秘密組織なんかの百倍頼れる。今回のオレはそうだな……ムゲンのメンタルケアと緊急時の使いっ走りぐらいの余裕で構えるぐらいか」
慣れた手つきで食器を洗い、隣で布巾を持つ永春に手渡しながらハルカは涼しい口調で答えた。同い年とは思えないクールな佇まいに驚かされながら、永春はぽつりと自分と同じ立場だと思われるハルカに誰にも言えなかった胸の裡を打ち明け始めた。
「さっきのムゲンの話を聞いておいてこんなことを言うのはふざけてると思うかもしれないけど……ボクはちょっとムゲンが羨ましいよ。怪人と戦える力を持ってるアイツが」
「
「うぇっ!? い、いや! なんていうかその……そう。当たりだよ」
沙夜との関係をあっさりと見抜かれてうろたえながら永春は頷いた。
憧れか、嫉妬かはさておき心のどこかで永春はビャクアとして戦う沙夜を直接的に手助けすることができるムゲンのことを羨んでいた。
「気持ちは分かるつもりだ。オレも一時はそうだった。同時になんでオレじゃないんだとも思ったからな」
「え?」
「だってそうだろう? 大事な友達がたった一人で命張って自分たちの世界を守るために戦わなきゃならなくなったんだ。そんな筋書き考えたやつに腹が立ったし、代わってやりたいって普通は思うだろ? 常若が彼女の力になりたいって同じ仮面ライダーの力を羨むのは別におかしいことなんて一つもない……オレはそう思う」
第一印象から冷静で口数少ない優等生と思っていたハルカの口から滔々と溢れる熱い友情と後ろめたいと感じていた自分を肯定してくれる言葉。
意図せずに欲しかったことを言ってもらえたのにあまりのイメージとのギャップに永春はしばらくきょとんとしたまま固まってしまいそうだった。
「常若、オレの話聞こえてる?」
「はっ……うん! 大丈夫、聞いてます!」
「だから別に羨ましい気持ちは羨ましいまま腹に抱えててもいいんじゃないか」
「……そういうものかな」
「強いて経験談を言わせてもらうなら変わらないただの恋人、ただの友達っていう日常の象徴でいることも立派な助けになる。少なくともムゲンは何よりもオレにそれを求めてくれた」
「良いこと教えてくれてありがとうハルカ。うん、いまはボクに出来ることをやれるだけやってみるよ……身の程を弁えて」
「精々がんばれ。そんなに慕ってもらえるなんて彼女は幸せ者じゃないか」
励ますわけでも、諭すわけでもなく、まるで独り言を言うような変わらない淡々とした口調でハルカは答えた。そこには彼なりの矜持とムゲンへの絶対の友情を感じられたようだった。
仮面ライダーとして並び立てずとも、同じ困難を乗り越えていく戦友にはなれる。
そう信じて、最高の相棒たちはいま出来る手助けに邁進した。
※
その頃、一足先に部屋に戻っていたカナタは借り受けたPCやスマートフォンと睨めっこしてここ数日のオカルトめいた奇妙な目撃情報をSNSなどを軸に虱潰しに収集していた。
「ふーむ……基本、化神の悪事は御守衆の人たちが目撃者の記憶を消して秘密裏にしているって言うし、メタローも退治すればリセットされるから有力な情報は期待できないかな?」
首と肩をほぐしながらカナタが一息いれていると六角モータースの光姫と連絡を取っていたクーが戻ってきた。予想はしていたが流石にまだ魔人教団の企みに繋がるような情報は入っていなかった。
「果報は寝て待てじゃないですけど、今日のところはここで打ち切りですね。気持ち切り替えてのんびり休んで明日に備えましょう」
「そうですねー! カナタさんはここのお風呂場見せてもらいましたか? ムゲンさんに以前連れて行ってもらった銭湯みたいで最高に癒されそうでしたよ!」
「元は民宿屋さんって話でしたからね。沙夜さんが戻ってきたら三人で浸かりにいきましょう。まだまだ色々とお話ししてみたいですしね」
「……あのですね、カナタさん。わたしが気にし過ぎかもしれないのですが~」
「うん?」
普段通りの涼しげなニコニコ顔を浮かべるカナタだったがクーにはやはりその笑顔に寒気のような違和感を感じていた。そして、まだハルカたちは下の階にいる気配を確認すると神妙な面持ちでずいっとカナタの前に詰め寄る。
「もしかして、お昼の頃からずっと仮面ライダーとしての沙夜さんの弱点や御守衆さんの弱みとか聞き出そうとしてませんよね?」
「クス。クーさんすごいですねえ……短い付き合いなのに私のことよく理解するようになったじゃないですか。はい。そうですよ♪」
悪びれるどころか清々しいまでの黒い笑顔でカナタが答えるものなのでクーには顔を引き攣らせることしか出来なかった。
公園での戦いが終わってからハルカと揃ってやけに沙夜にフレンドリーな接し方をしていたカナタはなんとビャクアが敵に回った時のことを想定して望月沙夜にまるわる情報を可能な限り聞き出そうと強かに動いていたのだ。
「うえっへえええ!? あ、あのですね、カナタさん……」
「なんでまた?という野暮な質問はやめてくださいね。理由は簡単です。私とハルくんはムゲンの味方であって、別に
彼女は悪びれもなく自分たちのスタンスをクーに打ち明けた。
元来、双子の弟であるハルカと世界で唯一の親友と言って憚らないムゲン以外に心を開くつもりも友情を結ぶ気もなく過ごしていたと口にするカナタの在り方を本人から聞かされたことのあるクーはこの展開を予想しつつもやはり驚きを隠せなかった。
魔人教団と戦う日々の中で幼少期の経験からなる歪な気質にも軟化がみられていたのだが別世界へと飛び出すに際してそれが復活していたのだ。
「クーさんには気苦労をおかけすることは承知ですがもしも今後、他の世界のライダーとも出会うことが多々あって、それらと意見が合わなかった場合……我が道を押し通るための切り札は持っていなきゃダメでしょう?」
徐に自分のスマートフォンをチラつかせるカナタ。
そこには光姫や沙夜、果ては六角モータースにいた杉たちからも僅かな時間で聞き出した情報から御守衆の組織構造や御伽装士の特性などを纏めたデータが写っていた。
更には手に入れた情報からカナタが独自に考察・推測した弱点になり得る要素まであるオマケつきである。
「ムゲン曰く、仮面ライダーツルギの世界ではライダーたちが自分たちの願いを叶えるために最期の一人になるまで争い合うデスゲームなんてやっているそうじゃないですか。必ずしも仮面ライダーが人類や世界を守る守護者というわけでないのなら備えあれば患いなしということです。御守衆の皆さんに無用でも今後いくらでも応用出来ますしね」
まるで毒の茨を可憐な花びらで偽り隠すように優しく冷ややかにほくそ笑むカナタ。思っていたよりも過激な魂胆を秘めていた彼女にクーは堪らず眩暈を覚えた。
けれど、何を思ったのかカナタはひとしきりデータファイルとクーに見せると突然それを消去してしまった。
「おやや? あの、カナタさん?」
「なんて、普段の私ならやってましたけど今回はやめておきますよ」
「ほっ。しかしながら、どういった心境の変化で?」
「ふーむ……彼女、沙夜さんが思ってたよりも普通だったからですね」
一安心と胸を撫で下ろしていたクーにカナタは珍しく気落ちしたような複雑な顔色を浮かべた。そうして、初めて出会ったムゲンとは別の仮面ライダーに思いを馳せる。
「クーさんはお夕飯の時の彼女の顔見ました? 私たちが作ったお鍋を無邪気にパクパクと美味しそうに食べちゃって……それでなんというか拍子抜けしちゃいましたよ」
「は、はあ?」
「六角光姫って人の話では何年も人里離れた山奥で修行して、ライダーとして活動するようになってもう数年になる立派な戦士。ほんの数か月前に偶然仮面ライダーになったムゲンと比べて一体どんな
友好的に振る舞いながらずっと見えない仮面で目的を隠して
「無垢というか、垢抜けてないというか……ええ、ビックリするぐらい私と変わらない。むしろ、純朴すぎてなんだか危なっかしい……そんなただの女の子が怪人たちと命張って戦ってるんです。そして、胡散臭さ全開の私たちを当然のように信じてくれた」
そんなことは自分には出来ない芸当だとカナタは認識する。
鉄火場で立ち回る度胸も知恵も多少備えていると自負するカナタではあるがだからこそ、直接的な荒事は不得手と自覚している彼女にとって日常の裏側で化神と戦う日々を送る沙夜の生き方は自分には出来ないものだと痛感する。
「だから、彼女の信頼には下心なんて捨てて応えるのが筋ってもんでしょうと思ったわけです」
得意げに口角を吊り上げる彼女にはいつもの魔人教団相手にも大胆不敵に時に泥臭くとも知恵を絞って会心の策を
「ふいぃぃぃ! 安心しましたともカナタさん! それでこそ我らのカナタさん! 流石頼れる腹黒コマンダー!」
「クックック♪ 誉め言葉として受け取っておきましょう。それに」
「はい?」
「今回は身内に心を砕かないとマズい予感がしますしね」
大型犬のように自分に抱き着いて安堵するクーを満更でもない顔で抱き返しながら、カナタは一抹の不安を抱えつつ、窓から見える月を眺めた。
※
「今夜のところはこんなもんか?」
「そうですね。お昼の戦いよりはもう少し練度が上げられたと思います」
夜のささやかな特訓を行っていたムゲンと沙夜はある程度の成果が見えたところで動きを止めた。
「敵がこっちの狙った通りの動きをしてくれるとは思いませんがそこはアドリブでなんとか出来るでしょう」
「いくつか連携技も発明できたし、上々だな」
「大半が実戦的とは思えない気もしますけど……」
「なんだよぉ、沙夜も結構ノリノリで一緒に作ったじゃねかよ」
「そこは……否定しませんけど。御伽装士は基本ソロ活動なのでちょっとはその、楽しかったというか」
「若たちも心配するし、早いとこ帰ろうや」
「その前に一つ良いですか?」
確かな手応えを実感しつつ、笛吹荘へと帰り支度をするムゲンに沙夜は神妙な面持ちで声を掛けた。
記憶を失っていた頃のあの夜の対話。そして先程の別の世界のライダーとの共闘と後悔の独白を聞いて、沙夜はムゲンに問わなければならないことがあった。
「さっきの話で気になっていたことがあります。件の戦いで貴方が別の世界を守るのをあきらめかけた理由……それは多くの人がくだらないろくでなしだとムゲンに映っていたからですか?」
「いや、違うね」
ムゲンの心の奥底にある厭世的で仄暗い一面を垣間見た沙夜は当時のムゲンがただ敵の強さに心折れただけにはどうしても思えなかった。夜風に前髪が揺れ、真柴の澄んだ彼女の瞳に映る少年はあっさりと沙夜の憶測を否定する。
「前の戦いで俺が些事投げかけたのは単純にカナタとハルカがいない世界だったからだ」
「は……い?」
「そもそも俺は一度だって、人類の自由だとか平和だとかのために戦った覚えはねえ。基本人間嫌いだしな」
安心したのも束の間、ムゲンの口から告げられた更に信じられない返事に彼女の顔には思わず冷や汗が浮かんだ。
「本気で言っているんですか、それ?」
「おう。詳しくは省くけど、これでも元いじめられっ子でね。弱い者いじめされてる奴を庇ったら、標的が俺に移ったふざけた話だけど、暴力も嫌がらせも無視もなんでもされたよ。ついでに主犯が地元の名家の生まれだったもんだから、めでたく村八分同然の四面楚歌さ。ハッ、クソ田舎万歳だ」
やさぐれて半笑いになりながらで自分の過去を語るムゲン。
閉鎖的な田舎町だったことも災いして受けた怨嗟。更には自分の仕事や地位の方が大切でネグレクト同然に我が子を人柱のように明け渡した心無い父親。
何よりもそんな唯一の肉親と和解したいとも微塵も思わず、降りかかる理不尽に対して怒り狂った獣のように暴力で反抗した自分自身――かつてカナタたちには躊躇っていた自分の過去をムゲンは沙夜にあっさりと話して教えた。
「……っ」
沙夜は何も言えなかった。
慰めも、同情も当然反論も何も言えなかった。
きっと、辛い過去を抱えているとは思っていた。だけど、こんなにも悲惨な境遇だとは思ってもいなかった。
「どうよ? 俺が人間そんなに好きじゃないってのが戯言じゃないって分かってくれたかい?」
「なんで……どうしてそんな辛いことをムゲンは笑って話せるんですか? 私には分かりません!」
あたかも他人事のように自分の過去についてコメントを求めるムゲンに沙夜は柄にもなく声を震わせた。
「もっと怒っていいはずです! もっと悲しんで……それから……それから」
「代わりに憤ってもらえるのはことで三回目だな。ありがとよ、でもいいんだよ。なんせ俺はもう救われた側だ」
肩を小刻みに震わせて、荒ぶる感情で顔を赤くさせて沙夜は叫んだ。
けれど、そこからの言葉が続かない。
もっと何かを言いたいはずなのに。もっとムゲンに訴えたいのに上手い言葉が思い浮かばない。
長い間、人付き合いを疎んで誰とも目を合わせずに我が身を化神退治の道具のように振る舞ってきた故に露呈してしまった沙夜の対人能力の稚拙さ。
不甲斐ない自分を悔しがるそんな沙夜にムゲンは嬉しそうに声を掛ける。
「確かに俺は人並みの人生のドン底まで落ちたんだろう。でも、今は昔の話だ……カナタとハルカに出会って友達になって、俺は助けてもらえた。だから俺の話はもうめでたしめでたしなんだよ」
「……ムゲン」
「俺が戦う理由はそれだけだ。魔人教団だろうと化神だろうとどこのどいつだろうと俺の大事な友達に舐めた真似する奴と俺は全力で戦うだけだ」
どこまでも真っすぐで強靭でエゴに塗れた戦う理由その芯をムゲンは胸を張って沙夜に教える。
かつて自分が後ろめたくと感じてしまったほど敬意を持った仮面ライダーツルギ/御剣燐にもついぞ打ち明けなかった本音を沙夜には語った。
「なあ、沙夜……お前はどうして戦ってるんだ?」
「私はなりたくてなったわけじゃありません。ただ死ぬのが怖かったから……それから怨面が使える者になってしまったからその責任感だったと思います」
幼い頃の恐怖体験を回顧しながら沙夜は自嘲気味にけれど、偽りなくビャクアになった経緯を話した。
別に高潔な決意や気高い勇気が切っ掛けではなかったけれど、あの日、白鴉に問われ選んだ答えはその後の歳月の中で何度も不安や間違いだったと惑いながらそれでもあの日の自分が心のままに決めたものだったから。
「上等な理由じゃないか! 俺なら嫌なこったって駄々こねてるぞ」
壮絶な過去の持ち主だったムゲンまだ少し気まずくて直視できないでいる沙夜。そんな沙夜と小さな子供の頃の沙夜が死が迫る中で選んだ過酷な道とその理由をムゲンは力強く肯定した。
「正直なところ俺は何で仮面ライダーになったのかまだ分からない。こんな不良紛いの俗物みたいな奴がなんでまたって……だから探してる」
「ムゲン……」
「ただ一つだけ、沙夜や燐くん……ああ、ツルギの中の人な。自分以外のライダーに出会えて確信したことがある」
「なんですか?」
「別に無理して品行方正なライダーにならなくてもいいかなってよぉ。そういうのはお前や燐くんみたいな生真面目な連中に任せるわ」
「はあ!?」
先程までの真剣で重苦しい雰囲気は何処へやら。
砕けた調子でのたまうムゲンに流石に沙夜も拍子抜けした声を上げた。
「人類の自由のためとか、平和と正義を守るとか……俺には似合わねえ。カナタたちに救われたからって人間嫌いが治ったわけじゃないしな。寧ろ、俺はそう言うの自慢じゃないが根に持つ方だしな」
「すごいです。本当に自慢になりません」
「知ってるよ。まあ……だから、俺は正義の味方にゃなれない代わりに外道共にとっての最高の天敵になってるやるさ」
「ちょっと何を言っているのか分かりかねるんですけど」
「そうだな。正直俺も実のところまだイメージとしてはかなり朧気だ。でも、そういうライダーが一人二人いても悪くはないだろう?」
無駄に自信に満ち溢れた様子のムゲンに沙夜は少し呆れながらも「二人は多すぎです」と苦笑した。
だが、心のままに我が道を駆けるようなその在り方をどこかで眩しくも思った。
そして同時に正反対な彼に出会ったことで皮肉なことにもひたむきに影に潜んで人々を守り続けてきた自分のこれまでの戦いに誇りのようなものを得ることも出来た。
化神の悪事に巻き込まれた多くの人たち。他人も友人も関係なく彼らの記憶を消しゴムをかけるように消して、ときに幽霊のようだと揶揄されながらも人に隠れて、人を守り続けてきた毎日がとても意味のあるものだったと実感した。
「全く……仕方ないですね。そこまで言うなら任されましたと言っておきますよ」
「お、流石に叱られると思ったけど結構話が分かるじゃないか?」
「お互いに切磋琢磨した方が有意義だと考えただけですよ。私、白状すると人付き合い得意じゃないので相当感謝してくださいよ?」
「そいつは大感謝するしかないな。やっぱり頼りになるよお前」
晴れた夜空の下、強さも弱さも曝け出し合ってムゲンと沙夜もまた仮面ライダーとしての信頼を深めていった。
生まれた世界も性格も何もかもがバラバラな六人はこうして絆を深めていく。
そして、決戦の朝が来る。