仕事のミス(泣)
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ミスを訂正(歓喜)
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新年度(白目)
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新人教育(胃痛)
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わけわかめな仕事追加(泣)
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GWってなーにー?(廃)…今ここ
◇
バハルス帝国帝都アーウィンタールの中央に存在する一際大きく圧倒的存在感を放つ皇城。その中の絢爛豪華な一室にて、意匠による装飾が施された椅子に腰掛けながら1人の男性が薄笑を浮かべながら一枚の羊皮紙を眺めていた。
「フッ、面白いな」
彼はバハルス帝国の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。臣民からは歴代最高の皇帝と謳われる一方、多くの貴族を無慈悲に粛清した経緯から『鮮血帝』の異名で近隣諸国から恐れられている。
「なるほど。確かに爺の言う通り、コレは厄介ごとだな」
ジルクニフは向かいの椅子に座る長い髭を蓄えた老人に声を掛けた。老人は少し唸った。
「アベリオン丘陵に突如として出現した1万にも及ぶアンデッドの大群勢。そして、それをたった一人で打ち破ったとされる冒険者モモンと彼が使ったマジックアイテム。もし後者の2つが事実だとするならばモモンなる御仁は英雄の領域に匹敵する実力者、マジックアイテムは国宝級のシロモノと言えるでしょうな」
老人は自身の身長の半分程はある長い白髭を撫でながら答えた。この老人こそバハルス帝国が誇る最高戦力にして英雄の領域を超えた逸脱者。主席宮廷魔術師フールーダ・パラダインである。
「しかし、残念ですな。もう少し帝国に近ければ私自らが調査に赴く事が出来たと言うのに…」
「仕方無いさ。流石に場所が悪過ぎる」
心底無念そうに唸るフールーダをジルクニフは諌めるように苦笑いを浮かべた。
今回の事件が起きたアベリオン丘陵という場所は帝国のほぼ真西に存在している。地理的な問題により調査隊をおいそれと派遣する事は難しい。しかし、最もその調査を困難たらしめる原因は、アベリオン丘陵のすぐ隣にあるスレイン法国なる国という存在に他ならない。
彼の国は帝国や王国、聖王国と同じく人間を主体とする国家だが、その実態は謎に包まれており、ジルクニフでさえ法国の実態を掴めきれずにいる。一連の騒動は法国の隣にある丘陵地帯で起きたのだから何もしないわけがない。
(余計な詮索をしたり首を突っ込まなければ、さしたる問題とはならないだろう。だが、アベリオン丘陵の一件を満足に調査出来ない、と言うのは歯痒いな)
だが当然の事ながら一か八かの危険な橋を渡るような事案ではない。ならば態々法国を不快にさせるような真似は控えるべきだろう。だが、もし彼の国から調査の協力願いがあった時を踏まえ準備だけはしておくべきだろう。
ジルクニフはもう1人の危険人物に釘を刺しておく。
「余計な事はするなよ、爺」
「無論、承知しております、陛下」
やや厳しめな口調のジルクニフにフールーダは恭しく頭を下げた。
フールーダは非常に優秀な人物だが魔法に対し異常なほどの執着心を持っており、その為ならば何でもする程の狂人である。酷い時ではまともな会話すら出来ない程に興奮する事もある為、その時と比べれば今はまだ会話が出来る分マシと言うものだ。
異常な魔法狂いを除けば替えの利かない人物である。
だがそれ以上にジルクニフの好奇心を引いたのは、聖王国で一躍時の人となったモモンという名の新米冒険者である。彼については南方からの放浪騎士である事以外の素性は不明のままだ。しかし、1万にも及ぶアンデッドを単独で相手取り、更には国宝級の強力なマジックアイテムを以て殲滅した。今では彼は聖王国の英雄となり、銅級からオリハルコン級へ大躍進した人物だ。もし彼の功績が事実であれば聖王国に置いておくのは余りにも
(モモンという新たな英雄の誕生は、今の聖王国の情勢を考えれば非常に大きな意味を持つ。おいそれと彼を遠方へ行かせるような事は、聖王国の冒険者組合は勿論、聖王国自身が許さないだろう)
だが、それは聖王国に限ってのこと。帝国は未だに深刻な人材不足が悩みの種となっている。1人でも多くの優秀な人材が欲しい。ジルクニフは少しでもモモンに関する情報収集を行い、本当に有能な人物であれば穏便にこちらへ引き入れる方法を探る。
フールーダも彼が持つマジックアイテムに興味がある手前、要望以上の調査をしてくれる事だろう。
「一番良いのは、彼が自分の意志で帝国まで足を運んできてくれる事だが……」
◇
スレイン法国の最奥。神聖不可侵のこの部屋には最高神官長と6つの宗派の神官長の計7人が集い円卓に座っている。法国最高会議である神官長会議がこれから始まろうとしていたのだ。
「ではこれより会議を始める。最初の議題は…言わずもがな土の神殿の大儀式の間にて起きた謎の大爆発の件だ。土の巫女姫を始め、優秀な神官たち数名も巻き込まれたあの事件…」
司会進行役を務める土の神官長のレイモン・ザーグ・ローランサンは深刻な面持ちだった。それは彼だけに限った事ではない。他の神官長たちも同様に眉間に皺を寄せながら唸った。
「新たな巫女姫候補の選任は申すに及ばず。土の神殿の復興工事も同様にだ。しかし、やはり解せんな。
陽光聖典隊長ニグンに与えた『魔封じの水晶』は法国が有する貴重なマジックアイテムの1つであり、封じ込められているのは最高位天使である
それに陽光聖典の隊員は皆厳選された精鋭であり、それを指揮する隊長のニグンも例外ではない。彼は英雄の領域こそ至ってはいないが、それに近い実力を有している。そんな彼が指揮する部隊が全滅に危機に瀕した場合にのみ使用を許可している魔封じの水晶を使ったのだ。ただならぬ事態故に、最高位天使が解放されれば本国にもそれが察知できる仕組みになっている。
魔封じの水晶の使用を確認した法国は直ぐ様、土の神殿にて大儀式魔法〈
その時、大儀式の間に居た者達は絶句した。
大地を埋め尽くさんばかりの夥しい数のアンデッド。そして、極めつけは陽光聖典の隊員達をまるで虫ケラの様に惨殺する伝説のアンデッド、
1体で一国の軍隊に匹敵するデスナイト。目撃事例は極めて少ないが、その危険性は法国も重々理解している。最近確認した目撃情報によると、何年か前、カッツェ平野に1体デスナイトが現れたらしいが、かの帝国の逸脱者とその弟子達により討伐もしくは捕獲されているらしい。
「デスナイト…かの伝説のアンデッドが5体も…それも我が国の隣に位置するアベリオン丘陵に出現するとは」
「あれだけのアンデッドが居れば、デスナイトが発生するのも納得はいく。確かアベリオン丘陵でのアンデッドの大群騒動は『ズーラーノーン』によるものだとか?」
「それについては目下調査中だが、ズーラーノーンであれば確かに納得は出来る」
「イカれた死霊使いどもめ…いつか必ず報いを受けさせねばなるまい」
アベリオン丘陵で発生した、秘密結社ズーラーノーンが主犯のアンデッド騒動については話が進む。その様子を静かに見ていたレイモンは小さく溜息を吐いた後、軽く手を叩き皆の視線を集めた。
「各々方。確かにアベリオン丘陵で発生したアンデッド騒動も懸念すべき事態ではあるが、今上げている議題からは些かズレてしまっている。話を戻しましょう」
進行役の土の神官長の言葉は尤もだ。数人の神官長達は軽く頭を下げて謝罪した後、議題へと話は戻った。
「1度目の大儀式魔法による監視は問題なく発動出来ていた。当時、私はその場にいたからそれは分かる。巫女姫や神官達、魔法陣にも不審な点は何ひとつ見られなかった」
レイモンの言葉に他の神官長達は頷く。
大儀式の間で例の光景を目の当たりにしたレイモンは事態の深刻さを瞬時に理解した。そして、国家非常事態を最高神官長へ申告。アベリオン丘陵に隣接する国境付近へ軍の展開を指示した。また、最悪の事態に備え、『漆黒聖典』の何名かに出撃待機命令も下していたのだ。
しかし、常時監視する事は出来なかった。大儀式魔法とは言え、発動しているのは人間なのだ。それは叡者の額冠の適合者である巫女姫も例外ではない。一度、大儀式魔法を中断させて魔力の回復を待つ必要があったのだ。
その後、再び大儀式魔法による監視を始めた時に悲劇は起こった。
「残念ながら大儀式の間に居た者で生存者は確認されず、巫女達の死体も原形すら分からぬほど損傷が激しかった為、蘇生も叶いませんでした」
「むぅ、やはり事故と捉えるのは無理があるな」
「しかし、大儀式の間にズーラーノーンの刺客が潜り込める隙などある筈がない。仮に画策していたとしても時間が無さすぎる」
「では、あの爆発事故もズーラーノーンが仕掛けたとは考え難いか」
「…やはり
───破滅の竜王。
誰かが呟いた言葉に場が一気に静まり返る。
漆黒聖典が1人〝占星千里〟の『世界を滅ぼせる力を持つ存在が現れる』という予言を受けた法国は復活に備え、神器『ケイ・セケ・コゥク』の警備を他の漆黒聖典の隊員たちに当たらせていた。しかし、土の巫女姫は例の爆発事故により死亡してしまった。
神官長達は「破滅の竜王が復活したのではないか」と言う可能性を考え、漆黒聖典に「『ケイ・セケ・コゥク』を使い破滅の竜王を支配下に置く」よう出撃を命じた。
「現場がアンデッドで犇めいていた事も考慮すれば、
「しかし、両竜とも既に滅んでいる」
「両竜ともアンデッドの竜王だ。本当に滅んでいるかどうか怪しいものだ」
「…やはり今は漆黒聖典からの報告を待つしかなさそうですね。具体的な報告が上がるまでは、アベリオン丘陵との国境線の警備強化、また大儀式魔法も発動を控える、と言う事で宜しいでしょうか?」
レイモンの言葉に他の神官長らは頷いた。ここで更に巫女姫や貴重なマジックアイテムを失うことは断じて許容できるものではない。
「しかし、そのアンデッドの大群勢も今は1匹もいなくなっている状況。いや、正確には『消滅』か」
「俄には信じ難いが…」
「だが事実消えているのだ。それも壮絶な戦いの痕跡を残してな。あれほどのアンデッドを相手取り、尚且つ一掃出来るほどのマジックアイテムを行使した人物…確か、モモンだったか?」
聖王国に突如現れた新米冒険者モモン。
情報によるとアベリオン丘陵に発生したアンデッドを貴重なマジックアイテムを使い消滅させ、残った数千体のアンデッドも単身で討伐したと言う。
お陰で彼は一躍聖王国の英雄として祭り上げられている。
「モモンなる人物は一体何者だ?」
「彼について分かっている事は、南方出身の放浪騎士であるという事ぐらいだな。例の貴重なマジックアイテムは、旅の道中で偶然立ち寄った遺跡から見つけた物らしいが」
「それほど強力なマジックアイテムが眠っている遺跡であれば、単独での探索は困難のはず」
「マジックアイテムを無しにしても、数千体のアンデッド相手に単身で殲滅したのだ。英雄の領域に近い…もしくは到達している人物やも知れぬ」
モモンについて皆が思う意見や情報を出し合う中、レイモンも彼に於ける自身の見解を述べる。
「聖王国とその民を救う為、国の依頼を受注せずに行動する……そのモモンと言う男は『善』なる者と見て良いでしょう」
最高神官長含め皆が彼の意見に同意の頷きを返す。新たな英雄の誕生。それも人類の守り手となり得る人物が聖王国から生まれたのだ。『人類の守護と繁栄』を国是とする法国からしてみれば、非常に好ましい人物と言える。
皆の脳裏に共通した考えが過ぎった。
彼をより相応しい環境と居場所に招待する。
詰まるところヘッドハンティングである。
「彼に関する情報に嘘偽りが無ければ、冒険者モモンには是非とも人類の守護と繁栄の為、法国に居を移してもらいたいものだ」
「だが、既にべサーレス聖王女が彼に対して公的に褒賞を渡し、大祝典を挙げてしまっている」
皆が「うーむ」と唸る。
国も、国民も彼の偉業を祝福し讃えているとなれば下手に彼を聖王国から引き抜こうと言う行為は彼の国からの印象を著しく損う可能性が非常に高い。
ローブル聖王国は宗教色の濃い国という特性上、鎖国的な法国ともそれなりに良好な関係を築いている。実際、聖王国という第三国経由で諸外国からの品々の輸入を頼っている場面も少なくない。
法国も『人類最後の砦』という責務を自称している特性上、あらゆる事態を想定した体制作りに抜かりは無く、万が一聖王国とのパイプを失ったとしても深刻なダメージになる事は無い。しかし、人類同士が争い合い、禍根を残す様な事が起きては本末転倒である。
そのような事態は避けるべきだ。
また、下手な小細工を弄する事なく素直に聖王国へ伝えると言う手もあるが、レイモンはすぐにその考えを捨てた。
法国としてはマジックアイテムの更なる融通と資金面の援助をカードに話を持ち掛けるつもりだが、聖王国から求めてくるモノは十中八九予想出来る。
(対亜人部族に於ける援軍の派遣要請……だが今の法国にその余裕は無い)
アベリオン丘陵に住まう亜人部族達とまともに戦えるほどの正規軍を揃えるとなれば、北方の敵対国であるアーグランド評議国が動き出す可能性が高い。六色聖典の何れかを派遣するにしても、火滅聖典はエルフの国で手一杯、陽光聖典は既に全滅、切り札である漆黒聖典は論外。それに法国は一度、聖王国からの援軍要請を事実上断っている。
それだけではない。
聖王国はモモンと言う存在に2つの意味で救われたのだ。
1つは言わずもがなアンデッドの大群勢の件だ。国家存亡の危機は彼の義侠心によって救われている。肝心なのがもう1つ…国内情勢の安定化に貢献していると言う点だ。
昨今の聖王国の内情は酷く不安定だ。
アベリオン丘陵の亜人部族との度重なる衝突。それによって年々増え続ける徴兵。徴兵が増えれば働き手も減り、作物の収穫や商業に少なくない悪影響を及ぼす。そして、戦争孤児の増加に人攫い、治安の悪化だ。国民は確実に疲弊しており、『聖女』と謳われる聖王女の美貌の威光も徐々に陰りつつある。
故にモモンという存在は今の聖王国には必要不可欠だ。下手に奪うような動きを見せれば聖王女は兎も角、聖王国の民達が黙ってはいないだろう。何より歴代最強の聖騎士団団長である『白』がどう動くか…想像に難くない。
(禍根を残すような真似はするべきではないな。ここは一先ず情報収集に力を注ぐべきだろう)
そう考えたレイモンは皆に向けて話を始めた。
「やはり諸々の事情を考えますと、ここは静観するのが一番かと思いますがどうでしょうか?」
他の神官長たちは近くにいた者同士で軽く耳打ちをするが、その後は皆特に異論も無くレイモンへ視線を戻して頷いた。
「彼が真に善性の英雄で我が国へ迎える事が出来たのならば、あの人格破綻者…第九席次の後釜でも良いと考えていたのだが仕方あるまい」
「うむ。右に同じく」
「ありがとうございます。加えてもう一つ皆様にお伺いしたい議が御座います。漆黒聖典に今回の任務を終えた後、そのまま数名を聖王国へ潜伏させたいと考えております」
突然、レイモンから提言された内容に皆は理解し難いと言った訝しい反応が現れる。一呼吸置いた後、最高神官長が口を開いた。
「……ローランサン、それは先の発言と大きく矛盾しているのではないか? 今しがたお主は“静観する”と申したばかりではないか?」
最高神官長の言っている事は尤もだ。
しかし、レイモンとて呆けたワケではない。
「最高神官長が申し上げた通り“静観“と確かに私は申し上げました。しかし、“何もしない”と言う意味ではありません」
「ほぅ」
「今やモモンは時の人。彼の偉業は遅かれ早かれ周辺諸国へ知れ渡るのは必定です。故に聖王国の高官や貴族達は勿論、聡い国であれば彼を探ろうと動き出す事でしょう」
そこまで話した所で神官長達は彼の狙いを理解出来た。
「なるほど。他国に彼の周囲を下手に彷徨かれれば探り難く、最悪先手を取られかねない。だが我々は地理的に有利であり。これを活かし聖王国は勿論、他国を出し抜き1つでも多くの情報を手に入れる、と。つまりはこう言うわけか」
「ご推察の通りです。あわよくば弱味を握る事が出来れば儲けもの。しかし、飽くまで目的は情報収集のみ。下手な接触は出来る限り避けようかと」
「良いんじゃないかしら? 彼の言う通り、風花や水明聖典では、土の巫女姫の二の舞になりかねない。下手に大儀式魔法も使えないとなれば、ここは漆黒聖典に任せるべきよ」
「だが、今彼らは重要な任務に就いている最中だ。更に神器『ケイ・セケ・コゥク』を唯一扱えるカイレ殿も同伴している。そのまま聖王国へカイレ殿を送るのは危険だ」
「無論です。現在行っている任務を終えた後、カイレ殿は数名の隊員を護衛にあたらせて帰国させます」
「分かっているとは思うが、優先すべきは破滅の竜王復活の予兆が本当か否かの調査、そして、万が一復活していた場合、神器を用いて支配下に置く事であるぞ」
「ご安心ください。それも重々承知です。少しでも任務に支障をきたす様であれば帰国撤退を最優先させます」
そうであればと皆がレイモンの提案に同意の頷きを見せる。
「そうなると、情報収集と隠密活動に優れた『天上天下』は外せんな」
「後者は兎も角、前者には護衛となる人物が必要だろう。『人間最強』と『一人師団』はどうだ?」
「ふむ。神人を除けば片方は『個』として最強、もう片方は『群』として最強…問題は無かろう」
その後も神官長会議は粛々と進行した。
会議が終わったのは深夜遅くで、会議室から出た瞬間、皆から疲労の溜息が一斉に溢れ出た。
まだまだやるべき事は盛り沢山だ。
人類の守り手たる責務は代え難い使命感があると同時に、非常に安月給でツライのだ。
え?あんだけ待たせといてコレだけ?
言いたい事は分かります
なるべく続きは早めに投稿します