Holy Kingdom Story   作:ゲソポタミア文明

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第21話 亜人襲来

 野営地から少し離れた丘陵沿いの小丘で鈴木悟──モモンとパベルは語り合っていた。いや、『語り合って』いたは些か語弊があるかも知れない。正確にはパベルの一方的な語りである。

 

 

「……ってな事があってだな。ネイアは私に匹敵、いやそれ以上に野伏(レンジャー)の素質があると思ってるんだ」

 

「なるほど。それは確かに自慢ですね」 

 

「おぉ! やはりサ…モモン殿は理解してくれるか! だが、当の本人は聖騎士になる事を目標にしていてだな。あっ、ネイアが聖騎士に憧れたキッカケなんだが、実は私の妻が元聖騎士で─」

 

 

 まるで子供のように嬉々として話す彼だが、その話の内容は自分の家族自慢…特に娘のネイアに関わるものばかりである。これが知る人ぞ知るパベルの娘の自慢話である。喋り出したら中々止まらず、適当に聞き流すものなら「じゃあもう一度」と相手がキチンと理解するまで何度も話を繰り返してしまう。

 

 ここ最近は、娘の父離れが顕著になってしまったが為に話の長さが一層エスカレートしており、彼の娘自慢に付き合わされた相手は半分ノイローゼ気味になると言われている。余程の卓越者でなければ彼の話を乗り切るのは困難を極める…のだが─

 

 

「……ふぅむ。話を聞く限りだと、お嬢さんは父であるパベル殿の野伏(レンジャー)職を色濃く受け継いでる様子ですね。ならばやはり、パベル殿と同じく弓矢や野伏(レンジャー)職に関する訓練に重点を置いた方が良いように思えるのですが…」

 

「やはりモモン殿も同意見ですか。私も再三に亘り忠告はしている…つもりではあるのですがなんとも」

 

「確かに必要最低限の近接戦闘術を習得する意味では剣を用いた訓練も無駄とは言えませんが、やはり彼女には彼女に適した職業をキチンと教えるべきかと思います。仮に聖騎士になれたとしても、不適合な職を得てしまったが為にいざ実戦となれば他の聖騎士の方々に一歩も二歩も後れを取るのは必然です。そうなれば戦場に命を落とすリスクもまた高くなります」

 

 

 パベルの表情が一層険しくなる。別にモモンの言動で気分を害したのではなく、キチンと諭さなければ愛娘が命を落としてしまうと言う状況を改めて理解したからだ。

 

 

「それにしても、パベル殿とお嬢さんは本当に目がそっくりですね」

 

「えぇ、そうでしょうとも‼︎ まぁ当の本人にとってはありがた迷惑のようですが…それでも可愛いでしょう? 本当に自慢の娘なのですよ!」

 

「そ、そうですね…」

 

「おぉぉ! やはりモモン殿はよく分かっていらっしゃる‼︎」

 

 

 あの凶悪な視線で嬉しそうに語ってくる姿は絶妙に悍ましいモノではあったが、彼の心情も理解出来る。彼にとって娘のネイアはかけがえの無い自慢の宝物同然なのだ。自分が心底大事にしているモノを誰かに自慢したいと言う気持ちは、モモン──鈴木悟がかつての仲間達と共に築き上げた『ギルド:アインズ・ウール・ゴウン』を誰かに自慢にする事と同じなのだと思った。

 

 つい自慢したくなって、つい嬉しくなって、つい夢中になってしまう。そんなパベルに共感してしまっていたのだ。

 

 

(もしこの世界にナザリックがあったら、俺はきっとこの人みたいにかつての仲間達と築き上げたあの居城を自慢しまくるんだろうな)

  

 

 しかし、そのナザリックは…ギルド:アインズ・ウール・ゴウンは此処には無い。かつての自分の生き甲斐であり、青春であり、生きた証そのものである思い出の居場所は何処にもないのだ。

 しんみりとした気分が沸々と湧き上がり、思わず視線をパベルから逸らしてしまう。自慢するモノがある彼が少しだけ羨ましく思えてしまった。

 

 そんな自分勝手な傷心を、パベルは何を思ったのか話を中断し心配そうに声を掛けてきた。

 

 

「い、如何されましたか?」

 

「あ、いえ…。お嬢さんは幸せ者ですね。こんなに愛してくれる親を持って」

 

「い、いや、そんな……」

 

 

 モモンとしては話題を戻したつもりだったが、パベルは何か勘違いしてしまったようで何処かバツが悪い…気まずそうに苦笑いを浮かべていた。何故そのような反応をするのか分からず、モモンは首を傾げる。

 

 

「あのォ…」

 

 

 モモンが声をかけようとした瞬間、パベルは急に立ち上がり背後へ体を向け始めた。何事かと思ったモモンだったが、彼の表情が真剣そのものであった事から緊急事態なのだと瞬時に理解する。

 

 

「モモン殿…此方へ近付いてくる足音が多数。踏み込み具合から察するに亜人でしょう。少なくとも二足歩行型です」

 

 

 モモンも立ち上がり背中の2本の大剣を引き抜いた。

 

 

「パベル殿、どんな亜人か分かりますか?」

 

 

 しゃがみ込んだパベルは自らの片耳を地面へ当てて、此方に接近して来る亜人達に探りを入れる。

 

 

「……蹄の足音、恐らく山羊人(バフォルク)でしょう」

 

「なるほど。貴方と初めて出逢った時に遭遇した連中と同じですね」

 

「しかし、数はあの時の比ではありません」

 

 

 あの時は15体だったが今回はそれよりも多い数らしい。しかし、モモンにとって山羊人は脅威となり得ない存在だ。レベルはせいぜい12前後で何か特別な特殊技術(スキル)を持っているワケでも、魔力量が低レベルに反して高いワケでも無い。

 

 それでも亜人は身体能力が人間よりも優れている為、現地人から見れば十分脅威と言える存在である事に違いはない。

 

 

(お出ましか……ん?)

 

 

 暫くした後に武装した50体ほどの山羊人達が2人の前へぞろぞろと現れた。以前出会った時と変わらない簡素な装備ばかり身に付けていたが、モモンはその中で違和感を覚える個体を1体見つけた。

 

 その個体を視認したパベルは警戒のレベルを一気に跳ね上げ、手に携えていた矢をいつでも弦に掛けられるようにする。

 

 

「〈生命の精髄(ライフ・エッセンス)〉〈魔力の精髄(マナ・エッセンス)〉」

 

 

 直ぐにその個体へ向けて体力(HP)魔力(MP)を探る情報系魔法を掛ける。横でパベルが何やら此方の行動を気にしている風だが今は気に留めない。

 

 

(体力的に見てレベルは20以上25未満ってところか。魔力は0だから魔法を使って来る心配は無し…だが、この世界には未知の能力が沢山ある)

 

 

 明らかに他の個体よりレベルが高く、図体も頭1つ分大きい。装備も他と比べてかなり充実している。鉄製の鎧を身に纏い、両の手で鈍重そうな大斧を携えており、右目は戦いか何かで負傷したのか粗末な眼帯を装着している。自信満々で堂々とした態度だ。

 

 

(まさかコイツが〝豪王〟バザーか? 『十傑』の1人の)

 

 

 その個体が進む方向に居た雑兵山羊人達が慌てて左右へ避けて道を作る。

 

 

「ほう。これはこれは、なんという僥倖」

 

 

 そいつは口元を歪ませながらそう呟いた。

 亜人の表情はイマイチ読み取り難いが、言葉の意味から察するにあれはニヤついているのだろう。

 

 

「偶然見つけた聖王国の斥候を、本隊の襲撃前にそのまま始末してやろうかと思っていたのだが……フハ、フハハハハハ! まさか聖王国九色が1人、『黒』のパベル・バラハが居るとは思わなかったぞォ‼︎」

 

 

 嬉しそうに声を上げるその強個体は確かにパベルを見ていた。他の山羊人達も下卑た笑い声を上げている。強個体が今度はモモンへ視線を向ける。

 

 

「だが、ソイツは知らんな。大層な武器や防具を身に付けているようだが……む?」

 

 

 強個体はモモンの首に下げられている冒険者プレートを見て目を細めた。

 

 

「冒険者、か? だが見たことのないプレートだ。ミスリル…とは違うな。何だ貴様は?」

 

「俺はカリンシャのオリハルコン級冒険者、『漆黒』のモモンだ」

 

「『漆黒』…モモン? …知らんな。それにオリハルコンだと? 聖王国の冒険者は最高でミスリル級と聞いていたが」

 

 

 強個体は怪訝に顔を歪めるが、直ぐに先程のニヤリと笑みらしい表情を浮かべた。

 

 

「フッハハハハ‼︎ コイツはとんでもない大金星を見つけたモノだ‼︎」

 

 

 強個体は声を上げて笑う。

 

 

「この2人を討ち取ればバザー様…いや、バザーを蹴落とし、俺が二代目〝豪王〟となるのも夢では無い‼︎ そして、新たな『十傑』の1人となり、我ら山羊人こそ最も優れた種族である事を証明してくれようぞ‼︎」

 

(ん? って事はコイツはバザーじゃ無いのか。じゃあ以前話に出てきた幹部クラスってワケか。しかし、ベラベラと喋る部下がいたもんだな)

 

 

 聞いたわけでもない情報を自ら話して来るこの幹部級の山羊人を心の中で無能認定するモモンは、チラリと横にいるパベルへ目線を向けた。彼もモモンの視線に気付いたらしく、此方に向かって小声で話しかけてきた。

 

 

「(アレは名のある山羊人の英雄ですね。バザーほどでは無いにせよ、強敵である事に変わりありません)」

 

「(……そのようですね)」

 

 

 モモンは「強敵」と言う言葉に若干疑問を感じるが、彼らからしたら十分強者なのだから仕方無いと気に留めず耳を傾ける。

 

 

「(不味いですね。幹部級に加えてこの数…それに本隊が居る野営地も危険です)」

 

「(敵の本隊、ですね)」

 

「(はい。奴の言葉が本当ならこの数よりも多い山羊人が野営地に奇襲を仕掛けて来る筈です)」

 

 

 パベルの懸念にモモンも同意する。

 今回の公道調査団は護衛隊含め150名の大所帯だ。それほどの数を相手に襲撃を仕掛けて来るとなれば、山羊人は勝てる算段を持っているという事になる。尤も連中がそんな算段もなしに攻撃を仕掛ける程の間抜けであれば話は別だが、先遣隊らしき連中で50体もいる為、恐らくそれは無いだろう。

 

 

「(いくら2人がかりでもこの数を相手するのは不利です。それに今回は幹部級もいます)」

 

(え?…あぁーそうか。あの時は15体の山羊人だけだったからか。まぁ数の暴力が侮れないのは事実だし。俺なんかよりもパベルさんの方が心配なんだけどなぁ。レベル的にはあの幹部も同じくらいだし、職業構成とか種族レベル的にみても、パベルさんの方が不利だ)

 

 

 

 モモンとしてはあの程度何の問題も無く対処出来るのだが、彼自身モモンの実力を考慮しての危惧だろう。それどころか彼らとの戦いの中でパベルがうっかり死んでしまわないかが心配なくらいだった。

 

 

「確かに、野営地にいる本隊は心配ですね。アレら全部を相手するとなれば時間は掛かりますし」

 

「え? いや、そうですが…」

 

 

 モモンは小声をやめて、本隊の方が懸念すべき事態であると伝えるが、その話を受けたパベルは目の前に居る脅威を露ほども気にしない様子に困惑していた。しかし、それは一瞬だけだった。パベルは覚悟を決めた面持ちでモモンへ話しかける。

 

 

「なら話は早いですね。モモン殿は野営地へ向かって下さい。此処は私が引き受けます」

 

「え?」

 

「そして皆にこの事態を伝えて下さい。貴方ほどの人物が居た方が、本隊が生き残る可能性は高いです。大丈夫です、そう簡単に私はやられませんよ」

 

 

 そう言って笑い掛けるパベルの凶悪な眼に迷いは無かった。正直、先ほどまで娘自慢をしていた者の発言では無い。普通、家族のことを考える者は「自分が何があっても生き残りたい」と言うのがセオリーだ。

 

 

(確かにパベルさんの言ってる事は理に適っているかも知れない)

 

 

 確かに此処から野営地までは少し距離が離れており、向こうも山羊人の軍勢が迫って来ている事に気付いていない。このまま奇襲を受ければ悲惨な被害が待っているのは想像に難く無い。最悪、全滅だってあり得るだろう。

 

 だがそれは、今此処で囮役を買って出たパベルだって同じだ。

 

 

(死を覚悟してなお前に進む人の強い意志……強い眼だ。正直…憧れるよ)

 

 

 最後に「怖いけど」と心の中で付け加えたモモンは、一つ頷いた後、パベルの側へ少しだけ寄った。

 

 

「折角ですが、パベル殿。私は貴方の意見を受け入れる事は出来ません」

 

「ッ!? なっ─」

 

「自分で言うのも何ですが、私は馬鹿な人間(・・)なもので……」

 

「しかし、サト──」

 

 

 パベルが反論するよりも前に悟は右手を伸ばし、彼の襟の部分を鷲掴んだ。

 

 

「貴方を此処で死なせる気はありません。えぇ、これは自分のワガママです…ねッ!!!」

 

「ッッ!!??」

 

 

 そう言うなりモモンは彼を片腕で豪快に後方へ投げ飛ばした。宙を舞いながら飛ばされるパベルは、天と地が逆さになり、モモンと山羊人達との距離が見る見る離れていく。

 

 

「サ……モモン殿ォォォー!!!??」

 

「此処は私が引き受けます‼︎ 私よりも貴方の方が足が速く、皆の指揮も取り易いでしょう‼︎ 直ぐに追い掛けます‼︎」

 

 

 投げ飛ばさる最中、パベルはギリリと歯噛みする。その後、地面へ転がりながら着地すると、一目散に野営地へ駆け出した。

 

 (モモン)の覚悟を無碍にしないために。

 

 

「こ、このヤロォ…‼︎ 追え、絶対に逃すな‼︎ 折角の大金星だぞ‼︎」

 

 

 山羊人幹部が慌てて部下へ命じるが、彼らの前に漆黒の全身鎧を纏う戦士が立ちはだかる。

 

 

「チィ‼︎ なら先ずは貴様からだ‼︎ 殺れェェ‼︎」

 

 

 激昂する幹部は部下の山羊人達へ向けて叫んだ。槍や剣を持つ山羊人が一斉にモモンへ襲い掛かるが、モモンは数の波をモノともせず右手に持つ大剣で横薙ぎの一閃を放つ。

 

 

「なっ!?」

 

 

 一度で5体もの山羊人がその餌食となり、周囲に赤い鮮血を撒き散らした。幹部山羊人は瞬く間に部下が肉塊へと変わる光景に瞠目する。

 

 

「さっきまでの威勢はどうした? まさか臆したのか?」

 

「このォ…人間がァァァァ!!!」

 

 

 明らかな挑発を受けた幹部山羊人は大斧を振り上げながら突っ込んできた。目の前の得体の知れない存在に対する恐怖よりも、種族としての誇りが勝ったのだ。

 

 モモンは何かしらの武技を上乗せしているであろう振り下ろされた大振りの一撃を片方の大剣で受け止める…と見せかけ、そのまま大剣で大斧の軌道を逸らし地面へ激突させた。

 

 大地が抉れ土煙が2人の周囲に舞い上がる。幹部山羊人は自身の渾身の一撃を受け流され、僅かに姿勢を崩した。モモンはその場で跳躍し、大剣を幹部山羊人の首へ向けて振り下ろす。

 

 幹部山羊人の首が胴体から切断され、赤い血飛沫を撒き散らした。

 

 

「なっ!?」

「ひぃ…!」

 

 

 自分達よりも強者である上官がいとも容易く討たれた事実に他の山羊人達は完全に怯み後退りしていた。完全に戦意は喪失している。モモンは追い込むようにジリジリと歩み寄る。

 

 

「早急に片付けさせてもらうぞ。〈絶望のオーラII〉」

 

 

 モモンは自身の種族的特殊技術(スキル)の1つ、〈絶望のオーラ〉を発動させた。

 

 〈絶望のオーラ〉は全部でレベルⅤまで存在し、レベルが上がれば上がるほど相手や周囲に対してより強いバッドステータスやペナルティ、即死効果を与える事が出来る。今回彼が発動したのはレベルⅡ。相手は“恐慌“の状態異常となり、全力で逃げ出すことを要求される。

 

 

「「ヒィィィィィ!!!」」

 

 

 〈絶望のオーラⅡ〉を受けた山羊人達は武器を捨ててその場から大慌てで逃げ出した。

 

 

「ふぅ……受け流しはコツさえ掴めれば何とかなるもんだな」

 

 

 モモンはカンパーノとの戦闘を思い出しつつ、経験値は得られずとも戦士としての経験は積む事が出来ると改めて確信する。

 

 

「…向こうも始まってるな。パベルさんは間に合ったかな?」

 

 

 野営地の方へ目を向ければ既に戦闘は始まっているらしく、此処からでも喧騒や金属同士の甲高い衝突音があちこちから聞こえて来ていた。

 

 

「あまり遅くなるワケにはいかないな」

 

 

 モモンは小丘から飛び降りた。そのまま地面へ着地し、戦闘が勃発している野営地に向けて駆け始めた。本来なら〈転移門(ゲート)〉を使いたい所だが、流石に人前で第9位階魔法を使うのは不味い。

 

 正直、此処に来たばかりの頃の自分は迂闊過ぎたと猛省している。

 

 

 

 野営地では既に公道調査団の護衛隊と山羊人達との衝突が起きていた。しかし、完全な奇襲を狙っていた山羊人達にとって、聖王国の兵士達が迎え討つ態勢を取りつつあったのは大きな誤算だった。

 お陰で奇襲はあまり意味を成さずほぼ正面からの衝突となってしまったのだ。

 

 聖王国側が混乱せずに対応出来た理由は、やはりパベルにあった。彼は慌てて野営地まで戻ると山羊人の軍勢が接近しつつある可能性が高い旨をイサンドロと神官団の代表に伝えたのた。

 

 

「怯むな‼︎ 神官団は天使を召喚し前衛の聖騎士達の援護をしろ‼︎」

「斥候部隊は弓矢で援護だ‼︎」

「負傷兵だ‼︎ 回復魔法を‼︎」

 

 

 山羊人の数は100体以上で、護衛隊の数と比べれば数は少ないが、確かに奇襲を受ければこの数の差もあっという間に覆せていただろう。しかし、当初の予定と大きく計画が狂ってしまえば、個としては高い身体能力を持っていても協調性に於いては人間種に劣っている為、優位と思っていたところから逆境に立たされると一気に瓦解してしまうのだ。

 

 

「今だ‼︎ 分断して押し進めェェ‼︎」

 

 

 天使一体に聖騎士数名を最低限心掛けた集団戦法を徹底し確実に山羊人達を追い詰めていく。同族が次々と討ち取られ、押されている戦況に山羊人達は後退を余儀なくされていた。

 

 一方でパベルも得意の弓矢を巧みに操りつつ、機動力を活かした戦法で山羊人達を次々射抜いていた。

 

 

(サトル殿はご無事だろうか…)

 

 

 彼の実力は重々承知している為、簡単にやられる事はないだろう。また恐らく彼の本職は魔法詠唱者であり、戦士としての技量が本当に無かったとしても勝算は魔法によっては充分にあるとも言えるかも知れない。

 

 最悪、逃走は出来ると信じたい。

 

 

(早く援護に向かうべきなのだろうが、敵が─)

 

「〈砂塵嵐(サンドストーム)〉」

 

 

 突如として彼の目の前に砂の壁が現れた。

 視界が一瞬で遮られたパベルは当惑し、視界に広がる砂の壁からまた別の何かが現れた。

 

 

「壁…!?」

 

 

 咄嗟に叫んだパベルだが、それが壁ではなく自身の姿なら容易に隠せるほど大きなラージシールドだった。

 

 

「〈盾突撃〉」

 

「うぐっ…‼︎」

 

 

 瞬時に身構えるが、避ける時間は無かった。

 

 ラージシールドによる強打攻撃を全身で受けたパベルは派手に吹き飛ばされてしまい、地面へ叩きつけられゴロゴロと転がる。

 

 

(ふ、不覚……)

 

 

 倒れ伏したパベルは何とか起きあがろうとするが、思っていたよりダメージは大きく、僅かに身体を動かすだけで全身に激しい痛みが駆け巡る。

 

 

「とんだ誤算だ。まさかこちらの手の内がバラされてしまうとはな…」

 

 

 聞き覚えのない声の主がゆっくりと近づいて来る。

 

 慌てて部下が駆け寄り、突如として襲ってきた敵から注意を逸らすべく天使達が援護に入る。しかし、天使達は瞬く間に消滅し、駆け寄ってきた部下達も敵の攻撃により豪快に吹き飛ばされてしまった。

 

 

「フハハハハ、だがまぁ良い。こうして『九色』の1人を討ち取る事が出来るのだからな。いや…」

 

 

 声の主は離れた場所で戦っているイサンドロへ視線を移す。彼もパベルの危機に気付いていたが、なかなかに敵が多く接近を許してくれないのだ。

 

 声の主はニヤリも笑う。

 

 

「2人、だな。これで俺は『十傑』の中で最も有力な王だと他の奴らに思い知らせる事が出来る」

 

 

 パベルは全身が悲鳴を上げる中、声の主である方向へ顔を向けた。  

 

 そして、目を見開き驚いた。

 

 他の山羊人は勿論、先ほどの小丘で見かけた強個体の山羊人よりも更に一回り大きい。銀色の体毛、ねじ曲がった大きな角、他にもマジックアイテムと思われる武器防具、装備品が多数見受けられる。

 

 

「ご、〝豪王〟バザー…‼︎」

 

 

 何とか絞り出した声で、眼前の脅威…山羊人の王、バザーを見据える。

 

 

「ふむ…貴様は我がコレクションに加えるには、ちと大き過ぎるな」

 

 

 バザーは腰に下げている人間と思われる幾つかの頭蓋骨を撫でながら呟くと、右手に持つ大剣を振り上げた。

 

 

「だが…その首は非常に価値があるぞ‼︎」

 

 

 バザーは大剣をパベル目掛け振り下ろした。

 




アニメ4期めっちゃ面白い
早く映画の新情報来ないかな…
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