Holy Kingdom Story   作:ゲソポタミア文明

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みんな(特に某ハムスター)大好きデスナイト君が主役です


第3話 デスナイト達の活躍?

 誰も居なくなったローブル聖王国東方の巨大丘陵地帯…アベリオン丘陵。緑豊かとは言えない所々荒れ果てた土地を闊歩する黒色の全身鎧を纏う騎士が5体いた。

 

 死の騎士(デス・ナイト)達である。

 

 主人()によって創造された5体のデスナイトたちは、アベリオン丘陵で特に目的も無く一塊となって彷徨い続けていた。しかし、彼らは決して悟に見捨てられた訳ではない。やむを得ず此処で待機しているのだ。

 

 悟は既にアベリオン丘陵を発ち、此処から西方に存在するローブル聖王国なる場所へ向かっている。そこは人間の国である為、残念ながら姿を隠したり変装する術を持たないデスナイト達を連れて行く事は出来なかった。

 主人の為に身命を捧げ、盾となる事こそが彼らの使命であるが故に置いて行かれる事は本意では無いが、その主人から〝待機〟の命令が出ている以上、逆らうわけにはいかない。

 

 デスナイト達が暫く丘陵を歩いていると遠目から人喰い鬼(オーガ)とゴブリンの群れが現れた。向こうも此方の存在に気付いたらしく、醜悪な顔を更に歪ませると我先にと一目散に逃げ去ってしまった。

 ゴブリン達が逃げ去る後ろ姿を見ていたデスナイト達は、思わず追撃と殺戮衝動に駆られそうになる。

 

 生者を憎み、殺戮を楽しむ…全てのアンデッドが有する本能であり、無論デスナイトも例外では無い。「グルルル…」といつでも獲物に飛び掛かる猛獣の如き唸り声を上げるものの、アンデッドの本能に抗い、決して攻撃を仕掛ける事はしなかった。

 

 ゴブリンの群れが見えなくなってからデスナイト達は行進を再開する。

 

 デスナイト達は主人より勝手な戦闘は認められていない。

 

 

─戦闘は飽くまで自己防衛(・・・・)に限る─

 

 

 亜人やモンスターばかりだが、生者との遭遇はあのゴブリンの群れで既に6度目。しかし、未だに戦闘には至らず、全員が逃げ帰ってしまっている。デスナイト達にとっては主人の命令こそが絶対である為、違反をするなどある筈がない。

 あわよくば自分たちに攻撃を仕掛けてくる絶好の獲物が現れないものかとデスナイト達は今日も仲良く行進するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異変が起きたのは主人が人間の国へ向かってから数日が経過した時だった。デスナイト達は今日も今日とてアベリオン丘陵を闊歩し続けていた。獲物は未だ一度たりとも出逢えていない。

 

 疲労が無ければ、休眠休息も必要としないアンデッドである彼らは昼も夜も関係無く歩き続けた。すると、彼らの視界に今までとは違う生者が現れたのだ。

 

 全身鎧を纏った集団と鎧ではなく金属糸で編んだ衣服鎧を着た集団が共に移動している光景を見つけた。暫くその2つの異なる服装をした集団を眺めていると、何名かが此方の存在に気付いた。

 

 何やら此方に指を差して叫んでいる。

 どうせ今までの連中と同じように逃げるのだろうと思っていたが、意外な事に2つの集団は此方に向かって来たのだ。

 

 初めて遭遇する逃げずに向かってくる存在に少し期待感を抱きながらノコノコと近づいて来るのを待ち続ける。

 全身鎧を纏った集団は剣と盾を構えながら包囲網を仕掛けてくる。もう一つの集団は遠方から同じように取り囲む陣形を取りながら此方の様子を伺っていた。

 

 

「な、何だこのバケモ…いや、アンデッドは⁉︎」

 

「こんなアンデッド…見たことないぞ?」

 

 

 何か大声で喚きながら此方の様子を伺いつつジリジリと接近してくる。決定的な火蓋が切られるのは時間の問題だ…デスナイト達は今か今かと獲物が飛び掛かるのをじっくりと待ち続ける。

 

 そこへ衣服鎧を纏った集団のリーダーらしき男が現れた。男はデスナイト達を引き攣った顔で見るや突然、片腕を挙げて命令を下す。

 

 

「やはりアレらは危険だ…絶対に野放しには出来ん‼︎ 天使達で攻撃を仕掛けろ‼︎ アレらには絶対に近づくな‼︎」

 

 

 全身鎧の集団はすぐに後退。

 衣服鎧を着た集団は次々と天使を召喚した。

 

 

 「やれェェ‼︎」

 

 

 炎を宿したロングソードを持つ翼の生えた天使達が召喚され、デスナイト達へ襲い掛かる。デスナイト達は襲い掛かる天使達の攻撃を自身の身長以上はあるタワーシールドで防いだ。

 

 命令を下した男が召喚した他の天使達よりも一回り大きい、メイスを持った全身鎧の天使が、1体のデスナイトの頭上目掛けてメイスを振り下ろした。デスナイトはその攻撃をタワーシールドで難無く受け止める。

 

 その瞬間、デスナイトは腐り掛けた顔をグニャリと歪ませた悍ましい笑みを浮かべた。他のデスナイト達も同様だった。

 

 彼らは漸く出逢えたのだ…己の全て(本能)をぶつけても良い獲物に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 スレイン法国神官長直轄特殊工作部隊『六色聖典』が一角、『陽光聖典』隊長のニグン・グリッド・ルーインは今目の前で起きている現実を受け止めきれずにいた。

 

 

「ひ、ヒィィィィィ‼︎‼︎」

 

「何だこの化けも…うぎゃあ‼︎」

 

「お、俺は、こんな場所で死んでいい人間じゃない! お前ら、時間を稼げ! 俺の盾になるんだぁ‼︎」

 

 

 蹂躙…虐殺…殺戮…

 形容する言葉が見つからないくらいの悲惨な光景が目の前に広がっている。

 

 黒い全身鎧を纏う強大なアンデッド達は瞬く間に炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)を殲滅。その後、黒霧となって消えたと思いきや、離れた場所にいた陽光聖典の隊員達や別働隊達がいるど真ん中へ移動してきたのだ。

 

 地獄はそこから始まった。

 

 赤黒いオーラを纏わせた大剣のフランベルジェを小枝のように振り回して次々と部下や別働隊の兵士たちを両断。大きなタワーシールドは防ぐだけに非ず、部下達や召喚した天使達諸共その巨躯を活かして叩き潰す。自身の召喚天使の監 視 の 権 天 使(プリンシパリティ・オブザベイション)も一対一では拮抗したものの、複数体相手となれば一気に形勢不利となり消滅してしまった。

 

 更に恐ろしいのは、ヤツによって無惨に殺された者達が次々とアンデッドに変わり果て、かつての仲間に襲い掛かっているという事である。

 

 

(何故、こんな事に……!)

 

 

 彼らが与えられた密命…周辺諸国最強の戦士で名高いリ・エスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの暗殺は、エ・ランテル周辺の村々をバハルス帝国兵に扮した別働隊に襲撃させ、ガゼフの戦士団を消耗させながら彼を誘き出し、追い込み、そして始末する。

 たった1人の男を始末する為に大勢の村の人間が犠牲になるという心情的に心苦しい任務ではあったが、それが結果的に人類の救済に繋がることを信じて、任務を全うしようと覚悟を決めていた。

 

 問題は人目を避ける為、敢えて遠回りとなるアベリオン丘陵沿いを進み、別働隊と別れようとしていた時にそれは起こった。

 今まで見た事のない刺々しい全身鎧を纏わせた恐ろしいアンデッドの群れが闊歩しているではないか。常に霧が漂うカッツェ平野ならまだしも、アンデッドの目撃情報があまり多くないアベリオン丘陵にてそのようなアンデッドが現れるのは異例の事態だった。

 

 一時は任務遂行を優先すべきという意見もあったが、アレほどのアンデッドを野放しにしていては後々の世に悪影響を及ぼすのは必定と判断。

 予定外ではあったが人類の安寧の為、討伐を決行した。

 

 その結果がコレ(・・)である。

 

 

「おかねあげまじゅ、おええええ、おだじゅけてーー‼︎」

 

 

 ニグンが呆然としている間にも多くの部下達が命を落とし、アンデッドへ変わり果てて行く。

 彼は既に本来の任務遂行は不可能と判断し、あのアンデッド討伐に全力を注ぐ事を決意すると、神官長から与えられたマジックアイテム『魔封じの水晶』を取り出した。

 

 

「くッ! 生き残りたいものは時間を稼げ‼︎ 最高位天使を召喚する‼︎」

 

 

 今なお必死に戦い何とか生き残っている隊員達から希望に溢れた歓声が湧き上がる。

 

 

「悍ましき強大なアンデッドよ、最高位天使の威光に平伏すが良い‼︎ 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)‼︎」

 

 

 魔封じの水晶から現れたのは神々しく光輝く翼の集合体のような主天使。その姿を見た召喚主のニグンも思わず感嘆の溜息を吐いてしまう。

 圧倒的絶望の中に現れた救いの神…部下達はより一層大きな歓声を上げて自らの勝利を疑わなかった。

 

 

「〈善なる極撃(ホーリー・スマイト)〉を放て‼︎」

 

 

 主天使が手に持っている笏が光の粒子となって消えた。それはやがて大きな光の奔流となってアンデッド達へ降り注ぐ。

 

 

「オォォォォォォォォォ‼︎‼︎」

 

 

 直撃を受けた強大なアンデッド達はダメージを受けて苦痛の雄叫びをあげる。断末魔の絶叫なのだろうが、それでも聞いている側としては魂が震え上がるような恐ろしさを感じる。こうして平静を装う事が出来るのも威光の主天使が存在している事によるものが大きい。

 

 

「や、やったか?」

 

 

 光の奔流は完全にアンデッド達を呑み込んだ。ゾンビへ変わり果てた部下達は当然の事ながら消滅している。土煙により良く見えないが、恐らくあの強大なアンデッド達も消滅した事だろう。

 

 ニグンは勝利を確信した。

 

 

「は、ははは‼︎ ハーッハッハッハッ‼︎ 当然の結果だ‼︎ かつて魔神をも倒したと言われる究極の一撃だ。負ける訳がない‼︎」

 

 

 だが、その希望は土煙が晴れる前…その中から聞き覚えのある唸り声が聞こえたと同時に崩れ去った。なんとあの強大なアンデッドは消滅していなかったのだ。

 それも5体全て。

 

 

「あり…えない…! 魔神さえ消滅させた威光の主天使の〈善なる極撃〉だぞ? そ、それではまるで…あの強大なアンデッド達は…か、かつての魔神さえも…り、凌駕する存在だとでも言うのか⁉︎」

 

 

 一見すれば〈善なる極撃〉を余裕で耐え切ったように見えるが実際のところは少し違う。

 

 実はこの強大なアンデッド……デスナイトの特殊能力の1つに『1回だけどんな攻撃を受けてもHP1で耐え切る』と言うものがある。

 

 威光の主天使は単純なレベル差で見てもデスナイトの上で、第七位階の弱点属性魔法をまともに受けたデスナイト達のHPは1で耐え凌いだに過ぎないのだ。つまり、どんなに弱い攻撃でも受けてしまえばデスナイトは消滅する事になる。

 だが、そんな事など知る由もないニグンを更なる絶望のドン底へ叩き落とすには充分すぎる程の衝撃を与えた。

 

 それでもニグンだけは未だに戦意を失わずに済んでいるのはまだ威光の主天使の存在があるからである。

 

 

「ま、まだだ‼︎ 威光の主天使、もう一度〈善なる極撃〉を──」

 

 

 咄嗟に追撃を命令するニグンであったが、そんな事を許すほどデスナイトは甘くはない。すかさずニグンとの距離を詰めたデスナイトの1体はフランベルジェを彼の胸元へ突き刺した。

 

 

「が…ッ⁉︎ あり…え、な…い…」

 

 

 彼の体を貫いているフランベルジェをデスナイトは横へ掻っ捌き、彼は盛大な血飛沫を撒き散らし絶命した。その恐怖一色に染まった断末魔はデスナイト達にとってこの上なく素晴らしい死体となり、召喚主を失った威光の主天使は魔封じの水晶と共に消滅した。

 

 残ったのは完全に絶望に呑まれた隊員達のみ。

 後はもうデスナイト達お得意の殺戮の時間である。

 

 

「「オオオォォォォォォォォォ‼︎‼︎」」

 

 

 法国よりガゼフ・ストロノーフ暗殺の密命を受けていた陽光聖典は、5体のデスナイト達により道中のアベリオン丘陵沿いにて全滅。

 以降、アベリオン丘陵にはデスナイトと彼らによって生み出された従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)達の集団が闊歩するようになった。

 

 そうなれば負のエネルギーが蓄積されてしまうのは当然の理と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 エ・ランテル辺境の村々は襲撃されることは無くなった。某村に住む某姉妹は今日も忙しなくも仲睦まじく、平穏の日々を過ごした。

 




召喚主が死んだら魔封じの水晶にいたモンスターはどうなるのだろう?

ご都合主義で
召喚主死亡=召喚モンスター消滅
にしました。
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