モチベーション云々ではなくシンプルに仕事がクッッッソ忙しいくてまともに執筆する暇さえなかったくらいです。忙しすぎて何度も体調崩しましたが何とかひと段落着いたので途中息抜きを挟みつつ、何とか投稿に漕ぎ着ける方が出来ました。
◇
首都の各地で突如としてその異変は起きた。
地面が不気味に波打ち、土が盛り上がる。そこから腐敗した肉片を纏った手が、骨だけの手が、次々と這い出てきた。
──アンデッドだ。
「きゃああああっ!?」
「あ、アンデッドだぁぁ!!」
広場で踊っていた人々が悲鳴を上げ、輪舞の円陣は一瞬で崩れ去った。家族連れが子供を抱えて逃げ惑い、酔客が転倒して踏みつけられる。軽快だった音楽は悲鳴と叫びに掻き消され、演奏者たちも楽器を放り投げて逃げ出した。
衛兵たちが即座に駆けつけた。
「市民を後方へ! 避難誘導を優先せよ!」
「聖騎士隊、前面に展開! 神官方は援護を!」
白銀の鎧を纏った聖騎士たちが槍と盾で壁を作り、神官たちが杖を掲げて祈りを捧げる。
「
「
眩い光の波がアンデッドの群れを薙ぎ払い、召喚された天使たちが翼を広げて上空から攻撃する。腐った肉体が灰となり、骨が砕け散る。しかし、それでもキリがない。地面は次から次へと新たな亡者を吐き出し、まるで都全体が墓場と化したかのようだった。
その時——
「ぐあっ!?」
神官の一人が胸を射抜かれて倒れた。続いて天使の翼に矢が突き刺さり、また別の兵士の喉に矢が食い込む。
「上だ! 屋根の上!」
慌てて見上げると、そこには黒いマントを羽織った
「あ、アンデッドだけじゃない……!」
兵士たちは困惑した。
祭りの夜に、突如として現れた正体不明の勢力。統一された紋章も旗もなく、ただただ効率的に、聖王国の守護者たちを狩り始めている。
さらに畳み掛けるように、民家の扉が蹴破られ、アンデッドの出てきた地面の穴からも、新たな影が躍り出た。
「いくぞ、野郎ども!!」
「「うおぉぉぉ!!!」」
戦士の風貌をした悪漢たちだ。
斧を振り回す巨漢、双剣を操る瘦身の男、棘付きの棍棒を握った女……武装に統一性はない。しかし、その動きは素人ではなかった。息の合った連携、的確な間合い、経験に裏打ちされた殺意。
余りにも慣れた戦い方に違和感を覚える聖騎士の1人が、まさかと思い目を見開く。
「ま、まさかコイツら……元冒険者か!?」
様々な職を持つ者同士と息の合った戦術は、職業軍人が使う戦法とは大きく異なる。
「ぐわっ!!」
地の利を活かした野伏達の矢が降り注ぐ。ごった返しとなっている場所では適当に射るだけで当たるような有様だ。
「天使隊で屋根の上にいる奴らを攻撃しろ!このままでは狙い撃ちだ!」
隊長格の聖騎士が馬上より指示を出す。神官達は兵士達が構える盾に守られながら天使達に命令を与える。しかし、その前に無数の飛行型アンデッドが行く手を阻み、思う様に動けずにいた。
そこへ野伏たちが一斉に天使達に矢を放つ。
一体…また一体と天使達は無数の矢、飛行型アンデッドの攻撃を受けては消滅する。
「くっ!て、撤退しろ!一旦距離を取れ!」
このままではジリ貧だと思った隊長格の聖騎士は叫ぶ。しかし、敵勢力たちは畳み掛ける機会に飛び込まず後退を始めた。
「ど、どういうことだ?」
「い、今だ!逃げる敵を追い詰めろ!!」
誘い込まれるままに、兵士たちは裏路地へと追撃を掛ける。すると、左右の建物の窓と屋根から、一斉に敵が飛び降りた。前からアンデッド、後ろから悪漢、横から野伏の矢。
完璧な包囲殲滅の罠だった。
さらに悪辣なのは、アンデッドを「捨て駒」として利用する戦術だ。敵は敢えて兵士たちを一箇所に追い込み、大量のアンデッドを壁のように押し寄せさせる。兵士たちがアンデッドに釘付けになった瞬間、屋根の上から野伏たちが巨大な投擲網を放り投げた。
「あ、網!? うわああ!」
網に絡まった聖騎士や衛兵の動きが止まる。
「お、落ち着け!網を切るんだ!」
そこへ上空から魔法詠唱者の声が響いた。
「
炎と雷と爆発が、網にかかった者たちを一気に焼き払う。悲鳴が夜空に木霊した。
聖王国の首都ホバンスは、瞬く間に地獄絵図と化していた。
祝祭の明かりが、血と炎に染まる。
歓声は絶叫に、踊りは逃走に、歌は死の呻きに変わった。永続光の街灯の下で、生きる者と死者が入り乱れ、謎の武装集団が聖王国の心臓部を食い破ろうとしていた。
「急げ! 急ぐんだ!」
「くそっ! 何故アンデッドが!?」
別の大通りでは馬に乗った聖騎士の一団が、支離滅裂と化している場所へ急行していた。様々な疑問が脳裏をよぎり、その答えを得られぬまま現場で今も必死に戦い続けている兵士たちの元へ向かう。
時折、首都の中心部から逃げて来たであろう市民達とすれ違う。中には傷を負っている者もいた。
無辜な民達を無差別に傷付ける無頼な輩たちに対する怒りが聖騎士達の胸中に湧き上がる。
少しでも早く現場へ駆け付ける為、馬に更に鞭をぶつけた。
その時、1人の聖騎士がある違和感に気付いた。
(紙…?)
自分たちが駆け抜けている左右に無数の民家が連なっている通り。その民家の壁に一定間隔で小さな紙のようなモノが貼られていたのだ。張り紙とも違うなにか。
気にはなったが、全速力で馬が通りを駆け抜けている為、それを目を凝らして見ることが出来なかった。
「『火遁爆符陣の術』」
「うわっ!?」
「ぎゃああ!!」
突如、通りの建物が爆発する。
連鎖的に発生した爆発は通りを駆け抜けていた聖騎士達を巻き込みながら建物を崩壊させ、瞬く間に通りは瓦礫によって塞がれてしまう。
別の通りでも同様の爆発が無数に発生し、市民の避難誘導や援軍の到着に深刻な影響を及ぼしていた。
その様子を黒装束を纏った集団…『イジャニーヤ』は別の家屋の屋根の上から眺めていた。
◇
首都の各地で起きた惨劇は、炎と血と絶叫の渦となって広がり続けていた。
一方、城壁から少し離れた高台の屋敷の屋根の上では、筋骨隆々でスキンヘッドの益荒男…『闘鬼』ゼロが炎に染まる街並みを眺めながら、ゆっくりと口元を歪めた。
「……期待以上だな、カジット。それに、先の大粛清で聖王国から追われた冒険者崩れどもも、存外に役に立つではないか」
彼の傍らで、六腕の残存メンバーである三名もゼロの言葉を聞いて静かに頷く。
「ペシュリアン。
「そう言うだろうと思って、ついさっき合図を出したところだ。首都の東、西の大広場付近で暴れている頃だろう」
「フッ。流石だな、ペシュリアン」
「お? 噂をすればってヤツだぜ、ボス」
首都の東大広場がある方角を見ていたマルムヴィストの言葉にゼロ達も視線を向けた。
大きな土煙と一層大きな喧騒が離れている此処まで聞こえて来る。少し遅れて西大広場付近からも同様の変化が起きていた。
「随分と派手に暴れてるじゃないのさ」
「ま、結構お預けくらってたからなぁ」
此度の報復に於いてゼロが用意した戦力の中に、警備部門の構成員達も含まれている。ただし、ただの構成員ではない、中でも特に高い戦闘能力を持つ精鋭中の精鋭揃いである。
「此度の作戦で手柄を立てた者には空席となっている『六腕』の席を、か……元々血気盛んな連中ばかりだが、中でも抜きん出ているのはやはりアイツか」
ペシュリアンの言葉にゼロはニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
「あぁ。ブレイン・アングラウスが現れるまでは
「ならば…一層気合が入るのも当然、か」
「『
「ち、ちょっ、冗談キツイって、ボス!」
あからさまに焦るマルムヴィストを無視するゼロの隣へペシュリアンが移動する。
「さて。これで王城にいる奴らがどう動くかだな」
「あぁ。暫くは此処で出方を伺う」
エドストレームがクスクスと笑う。
「御立派な未来を語る女王を護るため『白』は動けない。つまり首都の鎮圧に出向いて来るのは──」
「『漆黒の英雄』さま、てワケか」
マルムヴィストも会話に加わり、ゼロは獰猛な笑みを王城へ向けた。
「そこへ我らが動き、『漆黒』のモモンとブレイン・アングラウス両名を始末する。仮にあの猪女が出張って来るなら、今首都で暴れている配下の者達を差し向け時間稼ぎをさせれば良い。その間に我々が王城へ向かい、あの2人を始末する」
首都で起きている混乱は陽動だ。
ゼロ達は目的である報復相手のモモン、ブレインを始末する為に入念に準備した作戦である。しかし、懸念事項もあった。
「だが、『蒼の薔薇』が祝賀会に参加していたのは予想外だ」
「臆するな、ペシュリアン。元々目障りな奴らだ、ついでに始末すれば良い。待機している冒険者くずれどもをぶつければ……む」
その時、背後から漂う気配にゼロは鋭く視線を向けた。だが、その正体を確認した途端、警戒はすっと解けた。
イジャニーヤの女頭領ティラが、暗がりの影から現れたのだ。
「……目標が動いたよ。モモンとブレインは──」
その報告を受けたゼロは獰猛な笑みを浮かべる。
◇
首都の各地で発生した無数のアンデッドと謎の武装集団の出現により、先ほどまで笑顔と乾杯の声で満ちていた祝賀会場は重苦しくざわめきに包まれていた。
多くの来賓達や貴族達が顔を見合わせ、声を潜ませながらも其々の不安の声を吐露する中、聖女王カルカ・べサーレスは彼女はゆっくりと右手を挙げ、広間に響き渡るほどの凛とした声を張り上げた。
「静粛に! 皆の者、落ち着きなさい!」
その声は、まるで聖なる鐘のようにざわめきを切り裂いた。
一瞬で広間が静まり返る。
カルカは美しく澄んだ瞳に強い光を宿し、背筋を伸ばして堂々と立っていた。その佇まいは、恐怖や混乱に飲み込まれることを拒絶する、聖王国の象徴そのものだった。
「聖騎士団と神官団は既に市民の避難と敵対処に当たっています。我が聖王国は、幾度となく邪悪の脅威を退けて参りました!」
一呼吸置いた後、カルカは隣に控えるケラルトと近衛士長に素早く視線を送り、小声で指示を飛ばした後、再び皆に向かって宣言した。
「王城は聖王国が誇る聖騎士団と兵士達によって守られています。来賓の皆様は我々の指示に従い、冷静に行動してください。私、カルカ・ベサーレスは、聖王国の女王として、皆の命とこの都を必ず守り抜くことをここに誓います!」
来賓たちの間に、わずかながら安堵と決意の色が広がっていく。
「女王陛下…」
そこへ黒い帽子と軽装備の男がカルカの背後より現れた。兵士長、『黒』のパベル・バラハである。
「城内の侵入者たちは数こそ多くはありませんが、現在も城兵たちが交戦中です。それに連中が何処から侵入してきたのかも定かではありません。此処は下手に動かず、暫くは此処に避難させるのが良いかと」
「そうですか。ありがとうございます、バラハ兵士長」
パベルの存在に気付いたモモンが少し体を動かし反応する。彼は一言も発することはなく、一瞬モモンを一瞥して小さく頷く。
「ですが、此処に聖騎士や兵士達を留め続けるわけには参りません。此処には必要最低限の警備を残し、残りは首都で暴れている武装勢力の鎮圧をするのが懸命でしょう」
「し、しかし、それではカルカ様の身が…!」
「レメディオス。最も優先すべきは民達を救うことです」
静かに、しかしハッキリとした声でカルカは言い放った。その瞳は真っ直ぐレメディオスを見据えている。自身に向けられた強い意志を宿す瞳を前に、レメディオスはこれ以上の反論はできなかった。
「しかし、中途半端な戦力では却って足を掬われる可能性があります」
僅かな沈黙の間の後、再びパベルが口を開き話し始める。
「首都で暴れている武装勢力の動きは、非常に統率の取れたものでした。充実した装備に、魔法詠唱者や野伏の支援、奴らは入念に準備した上で計画的に動いてます。そして、発生しているアンデッドは彼らを襲っていないことから、連中の中に
「い、一体何者なのでしょうか…」
「そいつらの正体……分かるぜ」
ふと口にしたグスターボの言葉に対し、歩み寄りながら答えたのはブレイン・アングラウスだった。そして、その隣には『漆黒』のモモン。
「『八本指』…その中でも最強と言われてる『六腕』の連中だろう。奴らの目的は俺たちへの報復だ」
『八本指』──ブレインのその言葉に周りがざわつく。しかし、カルカはブレインの言葉にあった「俺たちへの報復」に引っ掛かりを覚えていた。
「あなた方への?……」
「あぁ、そうだ」
ブレインは頷く。
その返答にカルカは疑念を抱いた。
「ですが、大粛清を敢行したのは聖王国です。今起きてる状況を踏まえればコレは我々への──」
「それもあるでしょう」
モモンが静かに紡ぐ。
本来であれば無礼千万な行為だが聖王国の英雄たる彼にそのような考えを抱く者は1人も居なかった。
「しかし、聖王国に蔓延る『八本指』を壊滅に追い込むキッカケを与えたのは…この私です」
「……あー」
ブレインが気まずそうな表情で頭を掻く。
「ついでに俺も、一応『八本指』側だったわけだし……まぁ奴らからしたら裏切り者だな」
「なので、『六腕』の対処は我々に任せてください」
二人は顔を見合わせる。
ブレインは苦笑いを浮かべていたが、カルカ達の目にはモモンも同様の顔をしているのだろうと思っていた。
短期間でそこまで心を許し合える関係を築いている光景にカルカは羨ましさと少しだけの妬ましさを抱く。
そこへ──
「おいおい。そんな話を聞いちまったからには、黙ってるワケにはいかねぇな」
──モモンには聞き慣れない声が聞こえてきた。
モモンとブレインは声が聞こえた方へ顔を向ける。
そこにはリ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』のメンバーが勢揃いしていた。
「べサーレス聖女王陛下、そして、モモンさん。よろしければ我々もご協力します」
先頭に立っていた女性が声を出す。
先程の力強い声とは別の美しくも気高い声と風貌の女性──『蒼の薔薇』のリーダー、ラキュースに皆の視線が集まる。
思わぬ助太刀の申し出にカルカは一瞬、目を大きく見開いた。
カルカはラキュースの申し出を聞き、一瞬、言葉を詰まらせた。
『蒼の薔薇』の名をカルカはよく知っていた。
リ・エスティーゼ王国が誇る最高位のアダマンタイト級冒険者チームで、その実力は聖王国にも轟いている。特にリーダーであるラキュースの実力は、歴代最強を誇る聖騎士団長レメディオスに匹敵すると評されるほどた。
しかし、カルカの胸中に、複雑な思いが渦巻く。
「ラキュース殿……ご厚意は痛み入ります。しかし、これは我が聖王国の問題です。他国の冒険者の方々をこれ以上危険に晒すわけには参りません」
カルカの声は穏やかだが、明確な拒絶の色を帯びていた。ラキュースは静かに微笑み、しかしその瞳は揺るがなかった。金色の髪が広間の灯りに輝き、気高い佇まいが一層際立つ。
「陛下のお気持ちは痛いほど理解しております。ですが、今この瞬間、街では無辜の民が命を落としています。アダマンタイト級冒険者として、そんな惨状を前に『他国の問題だから』と見過ごすことはできません」
「その通りだぜ。この状況で『じゃあ帰ります』なんて言えるほど、俺たちは薄情じゃねぇよ」
「──同意」
「──激しく同意」
ラキュースの言葉にガガーランとティナ、ティアも同意する。
「敵の数や配置が多いことを考慮すれば、戦力は多いほど良い。私たちは戦える。ならば戦うべきだ」
画面越しに聞こえたイビルアイの言葉にラキュースは僅かに微笑む。
誰も勇ましい言葉を叫ばず、手柄を求めていない。そんな仲間達が誇らしかった。
「我々は自らの意志で戦います。どうかお許しください」
ラキュースは再びカルカへ向き直す。
その言葉に冒険者としての誇りと、強い義侠心が込められていた。
真剣で、凛とした態度でカルカは暫くラキュースを見つめていた。そして、その表情が僅かに和らぐ。
「分かりました……皆様のご厚意、感謝いたします」
カルカが小さく頷き、ラキュースは深々と頭を下げる。
(…とは言え。『八本指』の主力が、一度に姿を現す機会は滅多に無い)
聖王国での大粛清が成功した今、王国に巣食う同組織の残党も大きく動揺している。だが、それは王国には未だに残党が静かに息を顰め、再びかつての力を取り戻すために雌伏しているということ。そして今、『六腕』が姿を現している。
間違いなくまたとない好機だ。
しかし、ラキュースはその考えをすぐに自らの胸中へ押し込めた。それは口に出すもので無く、何よりも先に救うべき者達がいる。
ラキュースは胸の内に芽生えた打算を静かに押し殺し、改めて周囲を見渡した。
その時だった。
「失礼」
背後から声が掛かった。
頭を上げたラキュース達が声の聞こえた方向へ振り返る。
そこには、漆黒の全身鎧に身を包んだ大柄な戦士と、その隣には腰に刀を備えた一人の男が歩み寄ってきていた。
『漆黒』のモモン。そして、数年前に行われた王国の御前試合であのガゼフ・ストロノーフと死闘を繰り広げた剣士、ブレイン・アングラウスだった。
モモン達は『蒼の薔薇』の面々の前まで歩み寄ると足を止める。その巨体と漆黒の鎧は、間近で見ると改めて圧倒的な威圧感を放っていた。しかし、その立ち振る舞いには敵意らしきものはない。寧ろ、これから共に戦う者達へ礼を尽くそうとしているようにも見える。
モモンは僅かに頭を下げる。
「初めまして、『蒼の薔薇』の皆さん。ローブル聖王国のアダマンタイト級冒険者、『漆黒』のモモンです」
ラキュースは一瞬だけ目を瞬かせた。
ローブル聖王国に現れた英雄。
一対の大剣を軽々と振るい、単独で強大な魔物を打ち倒したという異例の実力を持つ冒険者。更には魔法詠唱者としての才覚も併せ持つ。
そして現在では、聖王国を代表する英雄として名を馳せている。
遠目からでしか見れなかった人物が、こうして自分達の目の前に立っている。
ラキュースは僅かに姿勢を正した。
「リ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者、『蒼の薔薇』。そのリーダーを務めています、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラと申します」
「同じくガガーランだ。よろしくな!」
「ティア」
「ティナ」
ラキュースに続き、それぞれが簡潔に名乗る。
最後に、少し離れた場所にいた小柄な少女へ視線が集まった。
「……イビルアイだ」
仮面越しの声が響く。
その声音には、他の者達よりも僅かな警戒心が滲んでいた。
モモンは特に気にした様子もなく、全員の顔を確認するように頷く。
その隣に立っていたブレインが、少しばかり気まずそうに頭を掻いていた。
「あー、俺も一応、自己紹介しておくか。ブレイン・アングラウスだ」
そして、一瞬だけモモンへ視線を向ける。
彼のその表情には、どこか苦笑に近いものが浮かんでいた。
「まあ……ワケあって、今はコイツと行動を共にしてる」
「ほーん、『ワケあって』、ねぇ?」
ガガーランが面白そうに眉を上げる。
「詳しく話すと長くなる。簡単に言えば、今の俺はモモンに命を預けているようなもんだ」
「……命を?」
ラキュースが僅かに驚いた。
その言葉には、単なる冒険者同士の協力関係とは違う響きがあった。
ブレインは一瞬だけモモンを見上げる。
「俺がこいつの強さを認めた。それだけじゃない。今の俺がこうして剣を握っていられるのも、コイツのおかげだ」
「大袈裟だなぁ。ただの行き当たりばったりだろ?」
「へへ、まぁ否定はしねぇな」
軽い返しをしてきたモモンの言葉に、彼は苦笑いを浮かべながら肩を竦める。
二人のやり取りを見ていたラキュースは僅かに目を細めた。
この二人の間には、短期間で築かれたとは思えないほどの信頼関係がある。立場も、生まれも、歩んできた道も大きく異なるはずなのに、互いの実力と人格を認め合っている。
(なるほど。お二人の関係について、少しだけ分かった気がするわ)
ラキュースは小さく微笑んだ。
聖王国の英雄『漆黒』と『蒼の薔薇』。
そして『八本指』から離反した剣士ブレイン・アングラウス。
彼らは数奇な出会いにより同じ戦場へ立つこととなった。
◇
状況が状況な為、作戦は短期間で決まった。
まず第一に優先されるのは現在も首都に取り残されている民間人の救出だった。
城下町では未だに戦闘が続いている。そこかしこから聞こえてくる悲鳴や怒号は途切れることがなく、時折、城壁を越えてまで黒煙が立ち昇っているのが見えた。
今もなお、逃げ場を失った民が大通りや路地裏を彷徨っていることは容易に想像できる。
「先ずは可能な限り多くの民を王城へ避難させます」
カルカがそう告げると、周囲にいた者達も一斉に頷いた。
王城は本来、王族や貴族、政府高官を守るための場所であるが、今夜ばかりはその役割を大きく変える必要がある。
城下町が戦場と化している以上、安全が確保されている数少ない場所の一つである王城へ可能な限り多くの民を移す。それが現在できる最も現実的な救命策だった。
「聖騎士と兵士達には、戦闘に参加する隊と避難誘導を行う隊に分けましょう。出来るだけ多くの民達をこちらへ運び込むことを優先させます」
「承知しました、カルカ様」
カルカの言葉にレメディオスが静かに頭を下げた。
「ただし、無理に一箇所へ集めすぎないようにしてください。避難してきた民達が混乱すれば、それだけで二次被害が発生します」
「その点については私が指揮を執ります」
答えたのはパベルだった。
彼は広間へ視線を向ける。
広さとしては申し分ない。他にも今は使用されていない部屋や廊下を確認し、避難民を受け入れるための場所を確保する必要がある。さらに負傷者と健常者を分け、治療を必要とする者を迅速に神官達の元へ運ばなければならない。
単純な避難誘導だけでも膨大な作業が必要となるのは想像に難くない。
「神官団は私が指揮します」
ケラルトが静かに口を開くと、周囲にいる神官達へ目を向ける。
「避難してきた民達の中には、アンデッドや『八本指』によって負傷した者も多いでしょう。外傷だけでなく、恐怖や混乱によって動けなくなっている者もいるはずです。神官団は城内に臨時の治療所を設置します。負傷者の治療、避難民の状態確認、必要であれば魔法による精神的なケアも行います」
「よろしくお願いします、ケラルト。では、城内の警備についてですが、避難民を受け入れる以上、王城の防衛も疎かにはできません。一定数の聖騎士と兵士は残します」
「カルカ様の言う通りです。カルカ様は勿論、避難してきた民達の護衛が必要です。城内に既に侵入者が確認されている以上、王城を完全に無防備にするわけにはいきません」
レメディオスの言い分に皆が頷く。
強制的に戦力を二分化させる状況は『六腕』が現れている以上は悪手と言わざるを得ないが、敵が何の関係もない民達に危害を加えている以上、避難所とする城内へ何もしない訳がない。故に半端な戦力ではなく、確かな実力を持つ者を残す必要がある。
しかし、頭脳は残念だが、こと有事に於いては的確な指示を出すのが聖騎士団団長のレメディオスだった。それは経験故か、或いは野生の勘とも言うべきだろうか。
「では、戦力を分ける」
レメディオスが広間にいる者達を見渡しながら、はっきりとした声で告げた。
各陣営からの意見のもと、遂に聖王国側は反撃に動き出す。
◇
一方で聖王国側に動きがあったと言う報告をイジャニーヤから受けていたゼロはニヤリと笑う。
「奴らが動き出したぞ…」
獰猛な笑みを向けた先にいる同じ『六腕』の猛者たちにゼロは淡々と告げた。
「どうやら標的は二手に分かれたようだ。城には神官団団長、聖騎士団副団長の片割れ、『蒼の薔薇』のガガーラン、ティナ……そして、ブレイン・アングラウス。城下町には聖騎士団の団長ともう1人の副団長、『蒼の薔薇』アインドラ、ティア、イビルアイ……そしてモモンだ」
「やっぱり『蒼』も出張って来たなぁ。んじゃあ、『六腕』候補勢共も総動員といくか」
「イビルアイはどうするんだい? アイツは厄介だよ」
「すでに手は打ってある。まぁ見ていれば良い……おい」
ゼロは少し離れた場所に佇むイジャニーヤたちへ視線を向けた。
「手筈通りに頼むぞ。上手くことが進めば、約束通り報酬は更に倍支払う」
その言葉を受けたイジャニーヤたちは一瞬で闇夜に溶けるようにいなくなった。
今のゼロたちの戦力は『六腕』を筆頭に、警備部門の精鋭たち、その中でも選りすぐりの実力を持つ『六腕候補』も出揃っている。更に現地で居場所を失いゴロツキと化した元冒険者たち、元ズーラーノーンの十二高弟のカジット、そして暗殺部隊イジャニーヤ。
自信と闘争心に満ち溢れたゼロたちもいよいよ動き出す。
「さて……では奴らの望み通り、我々も二手に分かれてやるか」
個人的に考察コーナー
ーーー
今回はモモンガ玉について
これはつい最近、あにまんで出したスレです
見たことある人もいるかも思います
オーバーロードはD&Dから影響を受けているので
D&Dについて大雑把に調べました。
その中で「オーブ・オブ・ドラゴンカインド」があるのを知り、コイツの効果がweb版のモモンガ玉情報含めて結構当て嵌まるような内容が多い印象を受けました。
オーブオブドラゴンカインド
…超希少なアーティファクト、広範囲内にある竜を呼び寄せて支配する力、他にも複数の能力を有しており発動には決められた量のチャージが必要、設定ではオーブ内に邪悪な竜が封じ込められてる、オーブは複数あり一つ一つに邪悪な竜が封じ込められてる(赤竜、黒竜、青竜、緑竜、白竜など)
モモンガ玉
…ワールドアイテム(二十の一つかは不明)、モモンガ専用のアイテム、モモンガが装備する事で最強になる(らしい)
、大侵攻の際に第八階層でアレらと共にモモンガ玉を使って討伐隊を撃破、無数の能力を持つ、ドラゴンに有効、能力をフルに使うとモモンガはレベルダウン(最大5レベル)
オーブそれぞれに固有効果があり
赤は炎攻撃の強化と広範囲の爆炎の嵐を発生させる
青は複数の敵を攻撃出来る電撃と素早さの強化
緑は猛毒と幻術の強化と呪い(精神系?)をふりまく
黒は腐敗と酸系の攻撃強化と広範囲の酸性雨を降らせる
白は氷結系の強化と周囲にバーサク効果を付与
各オーブに共通する効果の一つにドラゴンのブレス系攻撃の無効化もあります
モモンガ専用とあるのはオーブを手に入れる為に必要な条件(試練)がありそれを達成出来たのがギルド内でモモンガだけだったのでは?、と妄想してます
D&D主な五つのルートがあり
①古竜の討伐or略奪
②魔術の最高塔の攻略
③封印された古代遺跡の探索(謎解き)
④邪教からの奪取
⑤オーブそのものに導かれる
⑤に至っては金色のオーブのような善性の竜によるものなのでカルマ値マイナスのモモンガにはほぼ不可能かなと思ってます。D&Dだと装備すると精神の乗っ取り判定があり、失敗すると外せなくなるようですが、書籍14巻で普通な着脱可能なので装備から外されないからモモンガ専用と言うわけでは無いかもしれない。
* また「範囲内のドラゴンを支配する」もD&Dでは正確には「呼び寄せるけど操作はできない」そうで呼び寄せられたドラゴンは怒り狂ってオーブの持ち主に攻撃するという効果もある。
ここでモモンガの「エクリプス」が効果を発揮します。
D&Dだとオーブを保持する者はドラゴンを倒すor交渉or威圧することでドラゴンを完全に支配下に置くことが可能。そこでモモンガの切り札のTGOALIDで効果範囲内にいる全てのドラゴンをコロンして使役することが可能。また倒したドラゴンの魂をオーブに封印させてから呼び出すと支配下に置く方法や高レベルの死霊系魔法を行使する事でドラゴン・ゾンビ、シャドウ・ドラゴンとして復活し使役することも可能。
支配下に置かれたドラゴンはプレイヤーによってより戦略的かつ無駄の無い効率重視にコントロールすることが可能、
なおオーブの効果によって支配下に置かれたドラゴンはオーブの複数効果の恩恵を受けたり弱点を補うことも可能
例・
キュアウーンズ
…支配下ドラゴンのHPを大幅に持続回復させる
デスウォード
…支配下ドラゴンにポケモンで言う「がんじょう」を付与
飽くまで妄想の類ですので悪しからず。
ーー
暇さえあればオバロの考察(妄想)してます
こじつけもいいとこですがねw
でも今後のオバロ二次創作て誰かのタメに少しでもなってくれたらなぁ〜って僭越ながら思ってます
挿絵(AIイラスト)はあった方が……
-
良い
-
いや、いらない