仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第13話 絶望の歌は止まらない A-PART

 

 

 

 

 

サイヴァー達が追い出された戦場に、ホエールとシャークは立ち尽くしていた。

 

「ホエールなら、奴らを簡単に蹴散らしてくれると思ったんだけどね。」シャークは、声を先程の男から人間態と同じ女の声に変えた。

 

「申し訳ありません。」

 

「まあいいわ。あくまで今回は明後日の演習みたいなものだから。」そう言うとシャークはヒネノの姿に戻った。

 

「もうこの姿に変えてから4年も経つのね。最初は慣れなかったけど、今じゃ、こっちが本当の顔みたいになっちゃってるわね…。」そう言って現実世界へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…でも、これで確証はついた。ヒネノは間違いなくこの事件の鍵…或いは犯人よ…。」紬葵は、萊智の方を向いて言った。それも固く、強い確信によって。

 

「…確かに、関連はあると思いますけど、その確証はどこから?」萊智は、その根拠を聞く。

 

「夢野に最後に質問した時、私は何の特徴も言わずパープルリバーを知っているかと聞いた。でも、彼女は即座に歌い手の人物であると答えた。もちろん、彼女が元々知っていた可能性もあるかもしれないけど。」

 

「…なくはない、かもしれませんね。とにかく調べてみましょう…。」2人は、その可能性に賭けて捜査を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「そのヒネノって人が怪しいから動画で調べてくれって?久々に登場できたのに人使い荒くない?」

 

デジタルセイバーに居座っているメリアは電話の相手である紬葵に素直に文句を言った。久々の登場が何の話かはサッパリだが、人に動画を一から見てくれと言うのは無理矢理な頼みだ。

 

『そこをなんとか…』電話口で彼女の頼み込む声が聞こえてきた。

 

「…しょうがない。ツムツムがその足で頑張って調べてるわけだし、それに免じてやって上げるわ。」そう言ってメリアは電話を切った。

 

「あーあ、言っちゃった。一体、何本動画があると思ってるのよ。」

 

ヒネノの動画サイトを見ると、200以上の動画があった。その数を見た瞬間、彼女は絶叫したくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、私達はヒネノの人間関係を調べるわよ。」電話を切った彼女は萊智に言った…が。

 

「あの、そもそも誰なのか全く分かってないのに、人間関係なんてどう調べるんですか?」萊智は、ごく当たり前の事を聞いた。確かに、顔も分からない人間の普段の生活なんて、分かるわけない。

 

「…言われてみれば、そうね。」どうやら、彼女はその事を忘れていた様だ。笑いで誤魔化しながらもう一度メリアに電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

「今度は何?」

 

『ごめん、ヒネノと関わりがありそうな人も調べてくれない?ホントごめん!』

 

「虫のいい事言ってんじゃないよ!!」

 

 

 

 

と、この有様で一瞬にして電話が切られてしまった。

 

「はは、私達はそれを調べてみましょう…。」紬葵は、萊智には電話の声は聞こえてないだろうと思い足を進めたが、萊智には丸聞こえだった。表情にこそ出さなかったが、心の中では苦笑いしていた。

 

 

 

 

 

 

2人は休憩と昼食がてら入ったレストランで調査を始めた。動画内で今までヒネノとコラボしてきた配信者をリストアップし、その人達を片っ端から調べよう…そう思って始めたはいいが、その数は僅か3組。しかも全員彼女と同じ事務所だ。既に彼女から口止めが入っているかもしれない。それに、全員住所は非公開だ。デジタルセイバー権限で知る事も出来なくはないが、正直強引すぎる。

 

「この戦法で迫るのは難しそうですね。」萊智はそう口にした。

 

手詰まりか…そう思った時だった。彼女のスマホから着信音が鳴り響いた。

 

「もしもし?」

 

『言われた通り調べておいたよ。関係がありそうな人。』電話の相手は、メリアだった。どうやら動画を見ながら調べてくれた様だ。

 

『木梨って人が見たヒネノの噂を書いた人、どうやら元事務所の人みたい。今、私のネット仲間が連絡とってくれてるから、その話はまた後で。』

 

「ありがとう、そこまでしてもらって…。」

 

『後、動画の方の話だけど、10本くらいみた感じ、怪しいところはないんだけど、ちょっと引っかかるところがあってね。なんか投稿日がパープルリバーと被ってるんだよね。例えば、10月22日12時にパープルリバーが投稿したら、その42分後にヒネノが投稿してる、みたいなのがたくさんある。もしかしたら、ヒネノは始めたての頃からパープルリバーを狙ってたかもしれないよ。』メリアは、紬葵が想像していた以上に仕事の早い人間みたいで彼女は驚いた。

 

「…ありがとう、この借りは絶対返すね。」

 

『分かった、じゃあついでに利子付けとくね。』そう言ってメリアは電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ今日か…」ヒネノは、窓の外を眺めていた。いつも変わらない、電脳世界の静かなビル群を。

 

彼女の後ろには、オクトパスとホエール、そして完治したソードの姿がある。

 

「…この作戦は、我々電脳人の未来を左右する重大な作戦だ。失敗は許されない。」彼女はそう言って前科のあるソードとホエールを敢えて見た。

 

「お任せください。」オクトパスは答えた。そしてソードを連れてその場を後にした。

 

2人に入れ替わる様に、グリットがヒネノの元にやってきた。

 

「…何をする気?そろそろ教えてくれてもいいのでは?」

 

「…グリット(ファルコン)…そうね。話してあげてもいいわ。」ヒネノはホエールに下がる様促した。

 

ホエールが部屋を出たのを見届けたヒネノは彼女に問いかけた。

 

「今の私達に足りない物って何かしら?」

 

その問いかけに、グリットは「強い戦士と領土」と答えた。

 

「…まぁ、それらが無ければ話にならないわね。ただ強い戦士は鎧を誰かに『着せ変え』ればそれで良いし、領土も少しずつとはいえ増えている。そのお陰で、ソードの様な人に憑いていない戦士も人間界に行ける様になった。なら次に足りない物…それはその力を支える『奴隷』よ。その奴隷を集める…それが作戦よ。」

奴隷という言葉に、グリットは怒りの反応を見せた…。

 

「そんな物…許される訳ない。愚かな人間と同じ道を進むなど…」ヒネノは、真剣な表情を変えない…。

 

「愚か?どの界隈だってそうだ。強い者が弱い者を踏み台に世界を作る。人間に限った話ではない。私達電脳人だって、それは同じでしょ?」グリットの脳裏に、過去の記憶が脳裏に宿った。

 

自分の目の前に映るボロボロになって働く電脳人の姿を…

 

「…その愚かな道に進まない為に、あの方はこの世界を変えようとしている…その意志に反する事だ…!」

 

「…別に、人間を奴隷にするのだから、構わないでしょ?」ヒネノは、「もう行くわ」と言って部屋を後にした。

 

 

その背中をグリットは止めなかった…、これで世界が良くなるのなら…止める必要はないかもしれない…そう心の中で思い込ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、萊智と紬葵の2人は、メリアとその仲間の協力で叶った、元事務所関係者と待ち合わせする場所である公園に向かっていた。

 

「それにしても、メリアさんも、その仲間の人達も凄いですよね。限られた情報だけでここまでできるなんて。」萊智は、ここまで物事が進んだ事に驚きを感じていた。

 

「流石、特定班…と言ったところね。ネットに自分の事なんて載せる物じゃない。」紬葵は、その特定の速さと正確さに驚きより恐怖を感じていた。

 

 

 

2人がその公園に着くと噴水のモニュメント名前で誰かを待っている女性の姿があった。

 

「…もしかして…彼女が待ち合わせの…」紬葵は、声をかける為に近づこうとした。

 

「…待ってください…あの人!」しかし、萊智はその彼女を止めた。罠と感じ取ったからだ。

彼にその女性は見覚えがあった。

 

「…まさか、そっちから連絡が来るなんて想像もしていなかったわ。」女性はこちらに気づき話を始めた。

 

「…夢野さん…何故貴女がここに?」萊智は目の前に居る夢野に聞く。

 

「…何故って、貴方達が逢いたいと言ったから来たのに、それはおかしいんじゃなくって?」2人は、彼女の話を聞いても理解できなかった。

 

「…要するに、元事務所関係者を名乗ってネットに書き込み、貴方達に接触を試みた。まぁ、それ以前に貴方達が事務所に来たのは想定外だったけれど。」

 

「…騙したのね。」紬葵は、怒りを滲ませた。自分達のことを2度も騙したのだ…当然だろう。

 

「私には、やるべき事がある…それをここで果たす!」

夢野は、拳を力強く握り締め、自分の姿をホエールへと変化させた。

 

「…鯨のバグビースト…あの時の。」萊智は一昨日の戦闘を思い出した。

 

「さぁ、貴方達も早く変身しないと、町が危機に晒されるよ。」

 

「「変身!!」」

 

[Synchro UP!][Gaming Cyver!]

 

[Server connection…][Rider Pencil!]

 

ホエールは2人が変身するのが終わるタイミングで手刀から衝撃波を放った。

 

「何度も喰らってたまるか!」その衝撃波を、サイヴァーは剣を振り下ろし切り裂いた。

 

サイヴァーとペンシルは、ホエールに向かって果敢に走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別地点、紫苑達と一犀は明日行われるニッコリ感謝祭の準備で会場にやって来ていた。

 

彼女は、初めに舞台上の照明が置かれている場所に来ていた。

 

「ここからだと、会場を一望できるんだね。」彼女は言った。確かに、と一犀も心の中で言った。

 

「ここから下にロープで降りてパフォーマンスするのもいいね。」更に紫苑は妄想を膨らませていく。

 

「確かに、良いですね。」後ろで青木は言った。

 

「良いって、今更パフォーマンスは変えられないけどね。」紫苑は少し恥ずかしがりながら言った。

 

続いて、ステージに上がった。

 

「ここで明日、歌えるんだね…。」紫苑は目を輝かせていた。夢に見ていた舞台で歌う事…それがついに叶おうとしているのだ。

 

「…よかったな、紫苑。」一犀は彼女の夢の達成を祝福した。後ろにいる櫻井と富士井も彼女を応援していた。

 

しかし、ただ1人、この場には居なかった。先程まで居たのに。

 

「…青木さんは何処へ?」一犀は先程までここに居た青木の所在を聞いた。

 

「青木さんなら、先程お手洗いに…」富士井が口を開いたその時だった。

 

会場の入り口から準備していたスタッフの悲鳴が聞こえた。

 

そのスタッフの後ろには、ソードの姿があった。

 

「やはり…3人は早く逃げて!」やはり、というのは青木がバグビーストだったという事…一犀は3人に逃げるよう催促し、自分はソードに向かって走り出した。

 

「貴様は、あの時の…。」ソードは足を止め、宿敵との再会に驚いた。

 

「…そうか。何度来ようが、誰かを傷つけるなら、容赦はしない!変身!」

 

[Server connection…][Rider Sense!]

 

「…いざ、再戦の時!」センスに変身した彼をソードは電脳世界へ連れ込んだ。

 

 

その2人の様子を、青木は眺めていた。

 

「…馬鹿な奴め。」

 

 

 

 

 

 

 




仮面ライダー達と戦闘に入るホエールとソード…その目的とは。

次回、第14話 絶望の歌は止まらない B-PART
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