仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第21話 人間か、鳥の化物か

 

 

 

 

「…電脳人…貴女流に言うならバグビーストの起源はここにある…そして私やヒネノ、そして貴女は電脳人の原点(オリジン・タイプ )なのよ」

 

 

 

「私が…?」彼女は、余りにも信じられない事実に頭が一杯になった…

 

 

 

「メリー達が…僕達の先祖?」パロットはイマイチ状況は読み込めていなかったが、それだけはなんとなく理解した。

 

「端的に言えばそう言うことね」グリットは静かに答えた。

 

 

「…私は、ここでどんな生活をしてたの?」戸惑いながらも彼女は聞いた。

 

「…そうね。話してあげるわ」

 

 

 

 

今から6年前、その時には既にこの研究施設はあった。電脳世界の中心に存在しているそこは灯台の下のように暗い場所だった。

 

そこには1人の人間の男がいた。彼はその施設に引き篭もりあるものを開発していた。

 

それは『命』だった。しかし、彼は完璧な人間を一から作る事ができなかった。

 

だが、彼はその不可能をある事を足す事で可能とした。

 

人間とは別の生物の力を掛け合わせる事だった。人間と陸海空を統べる最強生物、そして鳩の遺伝子をそれぞれ掛け合わせて生物を作り出した。

 

隼の遺伝子からは私…グリットが、

 

鮫の遺伝子からはヒネノが、

 

獅子の遺伝子からは我らが王が、

 

そして鳩の遺伝子からは貴女、スカーレットが産まれた。

 

 

その男は、生命を生み出すという事に成功して狂っているかのように喜んだ。

 

その狂いは彼の知的好奇心を触発した…悪い意味で

 

私達4人は研究材料として大切に扱われた一方、私達より後に生み出されたものは皆、人間で言う奴隷のように扱われた。研究に明け暮れている彼の身辺の世話、研究残骸の処理…酷い時は電気を生み出す為のエネルギーとされた。

 

私にはそれが苦痛だった。自分達のせいで仲間が傷つく姿など見れなかった。

 

私はその胸の内を記憶をなくす前の貴女と我が王に話した。

 

そして、男の暴挙を止めるべく奮起した。

 

私達は作戦を立てた。貴女に男の気を逸らす間に私と我が王が不意打ちで倒すと言う簡単なものだが、男を倒すという目的を達成するのには充分だった。

 

 

 

 

その作戦は、半分成功した。我々は男を殺して電脳人達に自由を与えた…。

 

 

 

 

「半分…?」

 

「そう…半分だ」メリアの呟きにグリットは答えた。

 

 

半分の失敗の原因、それは彼に心酔していた電脳人が居たということだ。その電脳人達は男を殺そうとした私達に襲いかかった。

 

その乱闘の渦中、貴女は姿を消した。私達は貴女と最後に戦った電脳人を問いただした。するとそいつは貴女が高所から抵抗せず墜落したと答えた。

 

当然そんな回答に信じられなかった私達はそいつを極刑に処した。

 

 

 

 

 

「だが、それは無駄だったようだな。どう言う形であれ、貴女は生きていた」

 

回想を終わらせた彼女はメリアの肩をそっと自分に寄せると抱きしめた。

 

「生きていてよかった…同志スカーレットよ」

 

しかし、メリアはその腕を優しく退かした。

 

「…貴女にとっては私は『スカーレット』かもしれない。だけど今の私は、『鳩山メリア』という名前がある…それにその頃のことは何も覚えていない…」

 

グリットは彼女が自分の事を冷たく遇らうように感じた。記憶がないのだから仕方ないのだろう、そう飲み込もうとした。

 

「…覚えてなくて、ごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、デジタルセイバーの倉庫では紬葵が整理を行なっていた。

 

彼女はよく暗い気持ちを紛らわすために掃除をする。今日もそうだった。萊智には後から行くとは言った…だけど、メリアに合わせる顔なんてなかった。

 

「なんて顔して会えば…」そんな事を思ってると、ふと棚の奥に初めて見る段ボールの箱があった。

 

箱の側面には『在電』とだけ書いてあった。

 

「在電博の研究データかな?」彼女はそんな軽い気持ちで箱を開けた。

 

箱の中には彼の行方不明になる直前に出た論文雑誌、彼が愛用していた赤と青のマグカップ、彼が付けていたであろう結婚指輪が出てきた。彼女にとっては期待外れもいいところだ。

 

そんな中、最後にファイルが底に入っている事に気がついた。

 

「なんだこれ?」彼女は表紙をめくった。

 

そこには若かりし頃の在電の写真だった。1番最初のページには成人式と書かれた看板の隣にスーツ姿で立つ彼の姿だった。

 

その後、大学のサークルの写真、大学教授になった頃の写真などあったが、それらに殆ど気を止めなかった。何ページがめくっている彼女の手はあるページで止まった。

 

それは登山に行った時の写真だった。そこには在電と共に女性が映っていた。

 

「紅葉…隊長…?」

 

そう…そこには紛れもなく彼女達の隊長、大橋紅葉の姿があった。

 

だからこの前長官と在電の話をした時様子がおかしかったのかと彼女は納得した。

 

「…まさか…じゃあこの結婚指輪…隊長との…」紬葵はさらにページをめくった。

 

すると、更に興味深いページに辿り着いた。

 

そこには、紅葉は写っていなかったが、代わりに彼が赤ん坊を抱えていた。それも病院や家ではなく研究所で。

 

何故だろうと、彼女は写真を抜き取り、何か手がかりがないか調べた。すると写真の裏にボールペンでメモ書きがあった。

 

『人間の赤ん坊の蘇生に成功…名前は…』

 

その名前を見た瞬間、彼女の背筋が氷点下で凍りついた…

 

「そんな…なんで…」

 

 

 

どうやら、彼女はまだメリアの元には行けないようだ。それは気まずくなるというだけではなかった。それは『萊智』に関わる事であり、そしてバグビーストにも関わる事だった…

 

 

彼女は倉庫を片付けて、いつもの間に置かれたままの萊智の本から栞を抜き取り、それをスマホで写真に収めた。そして走ってデジタルセイバーを出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

メリアの相手を想う温かい感情をグリットは受け取った。そしてそれはグリットが思い描く結末を実現させる一歩に近づくのではと感じた。

 

「メリア…私達と共にもう一度戦わないか?」

 

 

「戦う…何と?」メリアは聞き返した。

 

 

「人間と…バグビーストの自由の為に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回、第22話 非二者択一
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