仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第22話 非二者択一

 

 

 

 

「メリア…私達と共にもう一度戦わないか?」

 

 

「戦う…何と?」

 

 

「人間と…バグビーストの自由の為に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萊智と一犀は、デジタルセイバーに体勢を立て直すべく、新たに作戦を立てるべく戻ってきた。

 

そこには、本部から帰還していた紅葉隊長の姿もあった。その表情はいいものではなかった。

 

「…隊長…」

 

「君達に長官からの伝言だ」彼女は2人を見た。

 

「長官?」萊智は誰なのか知らない…だが、偉い人なのだろうとは感じとった。

 

裏切り者(鳩山メリア)を『斬れ』…と」

 

たった2文字だが、3人にとっては足に錘を縛り付けられた様だった。

 

メリアはバグビーストを守る為に逃げた。それは戦士として良くないかも知らない。だが、これは大きな一歩だと同時に萊智は思っていた。

 

〜もしかしたら、バグビーストと戦わなくても良くなるかもしれない〜

 

その可能性の芽を摘むことは絶対にしたくない。

 

そしてこの場にいる誰もが同じ思いだ。

 

「そんな事…絶対にさせない」萊智は力強く言い放った。

 

「当然だ…メリア君は我々の仲間だ…そして僕達は彼女の判断を信じたい」続けて一犀が言う。

 

「…2人なら、そう言ってくれると信じていた。私も信じるよ、君達を」

 

「しかし…我々ならまだしも、貴女も長官に反対するのは立場上…」

 

「何、私はこの隊長という地位が欲しいから仕事をしている訳ではない。人々を、そして戦士達を守る為だ」彼らの心配に対して紅葉は覚悟を決めたという意志を見せつけた。

 

「それに、私は元々長官に嫌われている、これくらいの反発で隊長から降格する事なんてないよ」そう言って彼女は再び長官の元に皆の意思を伝えるべくその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「…!!」

 

メリアは、グリットの言葉に、何故か強く反論できなかった。前なら言えたはずだった…「私は人間、そんな事できない」と…

 

だが、今の彼女は誰がどう見てもバグビースト(電脳人)である事は自分が1番良くわかっていた。

 

何故そうなったか…それはパロットを戦士としてではなくバグビースト(電脳人)として助けたからだろう。

 

バグビースト(電脳人)だった頃の記憶はない…だが、身体に刻まれた遺伝子()がそうさせた。

 

「私は…!」メリアは生まれて初めて葛藤していた。人間として生きるべきか、バグビースト(電脳人)として生きるべきか…

 

「…まぁすぐに結論は求めない…しばらく待っているわ。いい答えを期待しているわ」グリットはそういうと姿をファルコンに変え目では捉えられないスピードで飛び去った。

 

 

「メリー…」パロットは彼女の隣に座った。彼も彼女が葛藤しているのは何となく感じていた。

 

彼女が電脳人として生きる道を選べば、自分達は一生、一緒に居られる…そう一瞬思った。

 

だが、彼はその考えを改めた。

 

『僕が好きなったメリーは…』

 

 

 

 

 

 

 

メリア達のいる研究施設の上にそびえ立つ漆黒の塔、そこに彼女達のアジトはあった。

 

そこにはボロボロになって帰還するコンドルの姿があった。彼が降り立った部屋にはピーコックともう1人、兵士がいた。

 

「二兎追うものは一兎も得ず、今の君にピッタリの言葉だな。」その兵士は彼の怪我を特に気にする様子もなく高らかに言った。

 

「ホーク…テメェどんな状況か分かってるのか!」コンドルはホークの胸ぐらを掴んだ。

 

「君が勝手に暴れた挙句、アウルとクロウが無駄死にした…間違ってないだろ?」ホークは彼を更に挑発する。その態度にコンドルは呆れたのか胸ぐらを離した。ホークは胸部の羽の飾りを直した。

 

「先程、グリット将軍がパロットとピジョンの捜索を中止しろと連絡があった」

 

「なんだと…裏切り者を放っておくのか?」

 

「…さぁ、あの方の考えは我々には分かり得ないものなのだろう」

 

「…しかし、2人を探しにデジタルセイバーの連中がまたやって来るのでは?」今まで黙っていたピーコックはようやく口を開いた。

 

「そうだな…?」コンドルはホークに対してどうするとは聞かなかった。プライドがそれを許さない。

 

「…まぁこちらから無用に攻める必要はない。脳ある鷹は爪を隠す…それが答えだ」ホークはそう言ってこの場を退散した。

 

「なんか意味が違う気がする…じゃなくて、とにかく俺らは次の戦いまで動く必要はなしか…」彼はそう呟くと部屋を続けて後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「今、彼女のGPSはずっと同じ場所で止まっているな」デジタルセイバーでは一犀と萊智がメリアのスマートライザーから位置を探し出した。

 

「…もしかして捕まっているんですかね…」萊智は不安な表情を浮かべた。

 

「…かも知れないな…だとすると時間がない。行こう」一犀はメリアのいる場所の地図を自身のスマートライザーに登録した。

 

「そうですね、メリアさん…そしてあのバグビーストも、俺達が助け出しましょう!」萊智も立ち上がり、再び電脳世界へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、メリアとパロットは無言の時間を過ごしていた。どちらも話す事なく、ずっと。

 

「…」

 

「…」

 

メリアはその間、ずっと思考を巡らせていた…自分はどうすればいいのか、誰を、何を守ればいいのか…

 

 

そして時間をかけた結果、彼女は答えをついに出さず思考を放棄した。

 

「…私、パロ君と一緒に居られるなら、バグビースト(電脳人)の味方になってもいいかな…」

 

彼女の頭の中には、沢山の想いがあった。人間として生きたい、萊智や一犀、紬葵とずっと一緒に居たい、バグビースト時代の友を見捨てなくない、パロットが酷い目に遭わせられるのは見たくない…

 

それなら、私が何もかも捨ててパロットを守ればいいと…

 

 

しかし、その考えに彼は到底納得できなかった。パロットは自分でも見せたことのない怒りをぶつけた。

 

「僕は、僕だけを守るメリーが好きになったんじゃない!僕が好きなメリーは…人間を守る戦士であり、同時に電脳人である僕も守ってくれる、お人好しなメリーだ!」そう言って彼は彼女を抱きしめた。彼の体毛が彼女を優しく包み込んだ。

 

「メリー、君は人間でも、電脳人でもない、戦士ピジョンだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グリット様、南西方向にデジタルセイバーの戦士2人が接近しています!」

 

彼女にそう知らせたのは、ビートルに似たバグビーストだった。装甲が少し薄くなっており、ツノも小さい。

 

「…そうか、この城に光学迷彩を…」グリットは彼にそう指示を出した。

 

「…ようやく、我々重鐵攻隊の出番か…」グリットの後ろにいたビートルが言い放った。

 

「いや、ここは私の部下に行かせる。お前の部隊は城門で待機していろ」

 

グリットはビートルにそう伝えると、すぐさまホーク、ピーコック、コンドルの3人を集めた。

 

「3人に戦士の相手は任せる。その間に私は別件で下の牢獄にいる。そこには大切な客人もいる、一歩も入れさせるな」

 

「了解しました」ピーコックは答える。

 

そして3人はデジタルセイバーを倒すべく飛び立った。

 

 

 

 

「さて…私は答えを聞くとしようか…」

 

 

 

 

 






次回、第23話 繋がる翼
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