仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第24話 共存の象徴の鳩

 

 

 

 

「私は、心を持つ、自由を求める者を守る戦士、デジタルライダーピジョンよ!変身!」

 

[Synchro UP!][Social Pigeon!]

 

「風の将ファルコン、その勝負、受けて立つ!」

 

「こい…デジタルライダーピジョン!」

 

 

 

 

 

 

ファルコンとピジョンは、目にも止まらぬ速さで距離を詰めた。槍杖とナイフの刃がぶつかり合う。金属の擦れ合う音が互いの耳を刺激する。

 

 

ナイフでは不利だと判断したピジョンは一旦距離を取るべく後方に攻撃を受け流した。

 

「一筋縄では行かないようね」

 

ファルコンはそう言って槍杖から光球を次々と放つ。ピジョンはそれらを特に苦戦する様子も見せず次々と避けていく。

 

「そんな攻撃で倒せるとでも?」ピジョンはナイフを腰のホルスターに収納しピジョンデバイスを召喚した。

 

そしてコンクリートの柱の後ろに隠れ弓を弾き、攻撃のタイミングを見計らい矢を放つ。

 

その矢はファルコンの胸部を捉えていたが、槍杖によって弾かれてしまった。

 

「それはこちらの台詞よ!」ファルコンは翼を広げ神速の勢いでピジョンの隠れているコンクリート柱ごと槍杖で貫いた。

 

刃はピジョンの右肩を掠った程度で致命傷は避けれた。

 

 

その時だった。赤い光と共に街の方から獣のような叫び声と建物が崩れる音が響いた。

 

「あそこには、ホーク達が…!」

 

そこには家一軒分は最低でもあるくらい胴体が大きな鳥の姿があった。鷹と孔雀と禿鷲(コンドル)が融合したような見た目の巨鳥は空へと飛び立った。

 

「何がどうなっている…!」

 

 

目の前でその光景を見ていたサイヴァー達は何がなんだがサッパリ分からなかった。

 

「…進化…とはまた違う…新たな形態…?」

 

「…とにかく、倒しましょう!」しかし巨鳥は空を縦横無尽に飛び回り、時々サイヴァー達に火球を放ってくる。

 

「…狙うなら、降りてきたタイミングだな」センスは右腕をイラストに変えた。

 

「なるほど…そういう手がありましたね」サイヴァーも何か察したのか右腕をカルキュレイトに変えた。

 

巨鳥はしばらく火球を放ち続け、そして遂にサイヴァー達に向かって風の力を纏いながら急降下を始めた。身体は全身炎で燃え盛り真紅に輝いていた。

 

 

サイヴァーは巨鳥から見て左側、センスは右側に立った。そして巨鳥が地面スレスレの所に差し掛かった時、2人はそれぞれ左腕、右腕を伸ばした。

 

巨鳥は再び空へ飛ぼうとしたが、それはできなかった。両脚を見るとそれぞれ『虹』と『蛇』が巻き付いていた。

 

縛られた巨鳥は上下左右に動き振り解こうとするが、2人はガッチリと締め付け巨鳥を離さなかった。

 

「大人しくしろ!」サイヴァーは右腕のカルキュレイトから数字を具現化させ、センスは左腕のサーチからレーダーを放射して攻撃する。

 

巨鳥は攻撃を喰らうたび悲鳴を上げるが、徐々に体力を消耗し始め動きが鈍くなり始めた。

 

「今だ!」[Blake finish!][Cyver critical!][Sense moving!]

 

2人はそれぞれ地面を強く蹴り上げジャンプした。そして巨鳥に向かってダブルキックを放つ。青と白のエネルギーを纏った蹴りで巨鳥の身体は限界を迎え、遂に爆散した。

 

 

「行きましょう…メリアさんの元へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピジョンとグリットの戦いは熾烈さを増していた。互いに一歩も譲らないその戦いは、未だに均衡し合い、どちらにも形勢は傾いていなかった。

 

ファルコンは持ち前の超速移動と刺突攻撃をを使い超高速で槍杖を振るう。

 

一方ピジョンはナイフ、弓と武器を使い分け身軽に動く。

 

2人の戦いは、互いに互いの体力を削り合う持久戦になっていた。

 

攻撃に体力を使いすぎたファルコンの動きは少し鈍くなっていたが、それはピジョンも同じだ。

 

どうすれば逆転できる…ピジョンは思考を巡らせる。今使える武器はナイフと弓…それだけしかない。弓は距離を詰められれば攻撃できず、かと言ってナイフでは決め手にかける…いっそ自分が武器にでもなれれば…!

 

 

「はあっ!!!!」ファルコン何再び超高速の刺突攻撃を繰り出した。

 

しかしピジョンは避けない。ファルコンはそれを気にせず突撃する…その時だった。腹部に猛烈な痛みを感じた。

 

気がつけば自身の身体は天井に叩きつけられていた。

 

「何が起きた…」

 

ピジョンの右腕を見ると、深紅の剛腕に変化していた。バスターモードだ。

 

「この拳で抵抗したのよ」ファルコンは地面に墜落し、全身を打った。だが、それでも立ち上がる。

 

「…これで終わらせる!」ファルコンはウイングパイルを投げ捨て、拳を構えた。

 

「…分かった」ピジョンはスマートライザーを操作した。[Pigeon twister!]

 

彼女は天井スレスレまで翼で飛び上がった。そして赤と白のねじれ合う二つのエフェクトを纏いファルコンに向かってキックを放つ。

 

ファルコンは最後の抵抗に光を纏った拳を前に突き出した。しかし、ピジョンのキックの前には無力だった。

 

均衡すらせず、一瞬でその蹴りはファルコンの身体を貫いた。

 

 

 

 

丁度そのタイミングでサイヴァー達もやってきた。彼らは彼女が勝利した所を見て一安心した。

 

ファルコンの身体は、いつの間にかグリットの姿に変わっていた。

 

「…死んでいない…?」グリットは、自分が息絶えたと錯覚していたが、現にその足で普通に立っていた。

 

「…貴女はまだ生きていてもらう。電脳人と、人間の共存を見届けてもらうまで…」

 

「何故…私を生かす…また貴女と戦うとは考えないのか?」

 

「だって、貴女は悪い人じゃないはず。私の仲間だったのだから…」

 

グリットはその言葉を聞いた瞬間、何故か頬を温かい液体が薄らと流れていた。

 

 

「やったね、メリー!」そこへパロットが近づいてきた。

 

「ありがとう、パロ君…貴方のお陰で勝てた」ピジョンは礼を述べると、彼は照れたのか頭を掻いた。

 

「ううん、僕がむしろお礼を言いたいぐらいだよ、ありがとう…」パロットはそう言った。

 

彼女は共存という道を開拓でき、これでみんなが自由になれる…そう思っていた…

 

 

「いやぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

突然グリットが悲鳴を上げた。そして地面に倒れ呻いていた。

 

「どうしたの?」ピジョンは彼女の身体を見ると戦慄した。

 

彼女の血管が紫色に変色し浮き上がっていた。

 

「これは…一体?」ピジョンが呟いた。

 

「毒…ね。私ももういらない、ということ、かしら…」グリットは苦しみながら答えた。

 

「話さないで…!」

 

「キュアを使えば…!」サイヴァーはキュアを展開して彼女を治療しようとした、しかし、その彼の目の前を黒い影が切り裂いた。

 

気がつくと自分の目は天井を向いていた。誰かに切り倒されたのだ。隣にはセンスも倒れていた。

 

 

「危ない!」黒い影は次にピジョンを狙っていた。サイヴァーは声を上げるが身体が動かない、金縛りのような状態に陥っていた。

 

黒い影の剣は、遂に切り裂いた…

 

 

 

…パロットを。

 

「パロ君…?」「よかった…無事で…」ピジョンを狙っていた剣を身体を張って止めたのはパロットだった。白い身体の一部が血の色に染まっていく。そして遂に力が抜けたのか倒れた。

 

「そんな…なんで!」ピジョンは今にも死にかけている2人を見つめることしかできなかった。

 

「…これも、天罰よ…スカーレット。いや、メリア。今の仲間、大切に…しな、さ…」毒に侵されながらもグリットはメリアに訴え、そしてこと切れてしまった…。

 

「グリット…!」

 

「メリー…恩返し、できてよかった、」次はパロットの番だ。彼も塞がらない傷口を抑えながら言う。

 

「…なんでそんな無茶するの…!」メリアは涙で顔を濡らしながら言う。

 

「…メリーだって、無茶、ばかりだ…いつか、死んじゃうよ、」

 

パロットは最期の力を振り絞ってメリアの手を握った。

 

「僕…みたいな、電脳人が、平和に、自由に、暮らせる…世界、を、作って…メ、リ…」パロットの握る力が無くなり、彼も息をしなくなってしまった。

 

それとほぼ同じ頃、サイヴァー達の金縛りが解け2人は立ち上がった。

 

「誰だ…こんな酷いことをする奴は…!」センスは静かに激昂した。

 

すると、メリアの後ろに続いている廊下に2人の影がある事に気がついた。一体は光が当たっていることで身体が見えていた。複数の足の造形、右腕には尻尾のような剣、それは蠍のバグビースト、スコーピオンだ。彼の毒でグリットはやられたようだ。

 

「貴様らが…貴様らが2人の命を!」サイヴァーは怒りに震え銃を構えた。

 

そこでもう一体の影が見えた。その影を見た瞬間だけ、彼は怒りを忘れてしまった。

 

色こそ見えなかったが、シンプルな体つき、四角い胸部の鎧、そしてスマホのように縦長な顔…紛れもなくサイヴァーと同じ姿だった。その男はペンシルが持っている剣を装備していた。

 

「サイヴァー…?」彼がそう呟いた頃には、2人の姿は影さえなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

メリアは2人の亡骸を見つめていた。その姿にサイヴァーとセンスはどう声をかければ良いか分からなかった。

 

しかし、メリアは突然立ち上がった。

 

「2人の為に、本当に平和で自由な世の中を作らないとね…」メリアは泣いていることを隠そうとしていたが声が震えていた。

 

「…なんで2人揃って、私に色々託すのかな…そう言うの託すくらいなら、生きてよ…」メリアは再び静かに泣き出した。

 

その彼女にセンスは声をかけた。

 

「行こう…」

 

その言葉に彼女は、ふと我を取り戻した。

 

「…そうだね、私には仲間がいるんだから…大丈夫、絶対に約束を果たすから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、メリアは2人の墓を電脳世界のとある場所に立てた。彼女は毎週、2人と話す為にその場所に赴いていた。

 

 

 

紅葉は今回の一件で役員達によって責任を負う流れになっていたが、それを長官が反故、一転して無罪放免となった為、彼女はまだ隊長を続けることになった。

 

 

最初の戦いの後行方不明になっていた紬葵は1週間後にデジタルセイバーに帰ってきていた。どうやら風邪を拗らせて寝込んでいたらしい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、長官は秘書と会話していた。

 

「長官、今回の判断はこれで正しいのですか?」

 

「…ああ、今回の一件で本来処罰を受けるべきはメリアだった。だがその彼女は実験台、簡単に始末するわけにはいかないのさ。それに、今は戦士だ。戦士の数が減るのも問題だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




風邪で1週間寝ていたと言う紬葵…果たして本当に風邪だったのだろうか?我々はその1週間を追跡することにした。

次回、第25話 ペンシル捜索24時
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