仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第4章
第25話 ペンシル捜索24時


 

 

 

 

東京から数多の電車を乗り継ぎ4時間、(紬葵)は目的地に着いた。

 

突然の出立には訳があった。

 

 

 

 

 

それは倉庫で見た在電の写真に起因する。在電によって蘇生させられた赤子、その名は『将平』だった。

 

 

将平、それは萊智の親友にして、3月に交通事故で亡くなった男。

 

私はふと、その事件について調べ始めた。まずは概要を知るべく警視庁に向かった。バグビースト関連の事件の疑いがあると言えば彼らは必ず資料をこちらに提供してくれる。権力濫用だろうが、今回の場合は仕方ないだろう。

 

差し出された資料は、いくつかの紙の束と映像証拠等が記録されているUSBメモリ。

紙の束の中には、事件現場の彼らの痛々しい亡骸をそのまま収めた現場写真や目撃証言などが載せられていた。最初の方のページには概要としてこう書かれていた。

 

3月2日午前10時ごろ井伊中高校近くの交差点にて、持病の発作を起こし意識が撹乱していた男性が運転する車が横断歩道を渡っていた飯山将平と花道麗香に衝突。2人は即死で、運転手も搬送先の病院で死亡。

 

文面だけで見ると、不慮の事故だった。と思う。

 

私は次にUSBを持ってきたpcに接続、データを読み込んだ。

 

フォルダには現場写真の他、ドライブレコーダーや付近の防犯カメラの映像が記録されていた。私は早速ドライブレコーダーの映像を再生した。

 

開始は事故が起こる1分前からだった。開始10秒から20秒は特に何事もなく走っていた。しかし、25秒あたりから突然呻き声が聞こえてきた。それに合わせて真っ直ぐ走っていた車が蛇行し始めた。50秒あたりの所で2人の人影が見えた。そのあと…

 

 

 

撥ねられる直前で動画を止めた。人が死ぬところなんて見たくない、というのも多少はあったのかもしれないが、少なくとも1番の理由ではない。私は動画を20秒のところまで戻し再び再生した。

 

25秒のところまで進むと再び動画を停止、20秒のところへ巻き戻し、再生した。

 

私はこの5秒に違和感を強く感じた。再び再生しその違和感が本当かどうか確かめる。

 

 

動画が23秒に差し掛かった所で動画を止めた。車の左手前にある街路樹の後ろに黒い人影があった。木の影に隠れている為黒く見えるのかもしれないと思った…だが、それにしては暗すぎる。

そしてその黒い人を通り過ぎた後、運転手は苦しみ出した。

 

私は他の視点がないか他の動画を見始めた。しかし、この動画のこの部分を撮ってるカメラはなかった。

 

黒い人がこの事件に関わっているとしても、何故彼を狙ったのかが全く分からない…。そもそもこれは誰なのか。

 

 

現地へ行けば分かるかもしれないと私は思った。

 

 

 

 

 

 

私は電車を降りて駅の南口から東方面へ歩き始めた。彼らが事故にあった交差点はこの先にあった。

 

駅から徒歩2、3分で現場に着いた。自分が歩いてみた限りでは見通しの良い直線道路だ。こんな所で事故なんて早々起きそうにない。

 

私は更に調べるべく進んだ。60mほど先に進むと黒い人が居たであろう街路樹にたどり着いた。しかし、特に何かおかしい点はなかった。時期が違うから影の見え方は分からないしかし、これ以上調べることはできないと感じた。

 

私が再び現場に戻ると、1人の白いカーディガンを着た女性が花を手向けていた。

 

彼女はしばらく目を閉じ手を合わせた。そして祈りを終えて立ち上がったその時、目が合ってしまった。

 

「…私に何か…?」彼女は私に問いかけた。私は一瞬どう受け答えしようか迷った。

 

「…飯山将平さんをご存知ですか?」思考を放棄したその答えに彼女は目を見開いた。

 

「将平は私の息子ですが…?」まさかの母親だった。しかし、彼とは顔がそんなに似ていない…父親似だったのだろうか…じゃなくて、これは好機だ。彼の過去を知ることが出来るかもしれない。

 

「少しお話しませんか」

 

 

 

私達はこうして近くの公園のベンチに腰掛けた。

 

「それで、私の息子に何か御用でしょうか?」彼女は私を怪しみながら聞いた。赤の他人から自分の息子の名前が出たら当然怪しむか。

 

「…実は私、探偵で貴女の息子さんが巻き込まれた事故について調べているんです」あー嘘ついちゃった。

 

「…依頼者は、どなたなのでしょうか?」

 

「…御定萊智さん…」あーまた嘘ついちゃった。ごめん萊智。

 

「…御定君が…」しかし彼の名前を出したことで彼女の疑いの目は徐々に薄れていった。

 

「…それで、調査のために彼の身辺を調査しているのですが、良ければ協力していただけませんか?」

 

彼女は私の嘘混じりの調査に協力すると頷いた。

 

「それで、まず将平さんはどちらで出生されたのですか?」

 

「確か、この近くの病院です。」確か…自分の子供の事なのにはっきりと覚えていない…

 

「そうですか、ではこの地で彼は生まれたと…」

 

「……はい…」答えがワンテンポ遅い…

 

しかし、いきなり「貴女の息子さんは一回死んでますよね」とか「将平さん本当は違う所で生まれたんじゃないんですか?」なんて聞けないし…

 

どうしたものかと行き詰まった。そんな中、私はふと手っ取り早い方法を思いついた。

 

「…在電博…という人物は知っていますか?」

 

「…存じ上げない方ですね…その方がどうかされましたか?」どうやら本当に知らないようだ。

 

「実はその人物が生まれたばかりの将平さんを抱いている写真が見つかったんです。」私は例の写真を見せた。

 

彼女はしばらく写真をまじまじと眺めたのち、口を開いた。

 

「…やはり、この方は存じ上げません。この子も将平じゃないと思います」やはり、彼の家族は在電とは面識がないようだ…という事はあの男が…

 

 

「…長居菅蔵という人物はご存知ですか?」

 

「その人は!」突然、彼女は驚いた。しかしすぐに平生を装い話を始めた。

 

「…私の、大学時代の教授でした。」

 

「…この方と将平さんは会ったことがありますか?」

 

「会ったことは…ないです。」彼女は立ち上がって私を見下ろした。

 

「さっきからなんですか、事件と関係ない話ばかり…迷惑なんですよ!」

 

彼女は帰ろうと足を進めようとした。

 

「待ってください!私は、彼が何故狙われたのか知らなければならないんです…あの時の事故は不慮の事故なんかではない…狙って起こされたものなんです」彼女は足を止め私の方を向いた。

 

「そんな出鱈目、信じられません…帰ってください…!」彼女は私の目の前から走って去ろうとした。

 

「…本当は、将平さんは貴女の息子さんではありませんよね…」その言葉に彼女は足を止めざる終えなかった。

 

 

「何故それを?」

 

それが私の結論だった。恐らく、彼は在電と紅葉さんの息子、それがなんらかの理由で育てられなくなった。それをみかねた長官が彼女達の元に将平さんを託した。真実を告げずに…

 

「…将平は、本当は私の息子ではありません。当時、私は妊娠が難しい身体でした。その為子供にも恵まれず、夫と頭を抱えていました。そんな時、教授はやってきたんです。将平を連れて。『両親が不慮の事故で亡くなってしまった彼を育ててくれないか』と」

 

やはり長官が絡んでいたのか…

 

「私達は彼の本当の両親は知りません、でも私達は本当の両親の様に育ててきました。そんな将平が誰かに狙われるなんて、信じられません。」

 

 

 

 

 

結局、将平が誰の子供であるか、そして何故狙われたのかは分からなかった。もっと時間をかける必要があるかもしれない。

 

私は2、3日現地に泊まり込みで調査を行ったが何も得られなかった。

 

 

 

その間にもメリアは仮面ライダーとして復帰したらしい。そんな彼女にどういう顔をして会えばいいのか、分からなかった。

 

そんな事を考えながら東京へ帰ってきた。

 

私は早速長官を問い詰めるべく本部に向かった。本部に到着し長官室に真っ先に向かった…しかし、部屋には人影がなかった。どうやらタイミング悪く外出中だったらしい。仕方なく私は戻る事にした。

 

 

 

そうして本部の玄関を出たその時だった。目の前の木の後ろに、あの黒い人が立っているのが見えた。

 

「貴様…!」私はすぐさま変身して剣を構えた。

 

黒い人は私に徐々に近づいた。それにつれて全容が見えてきた。

 

その姿は、サイヴァーそっくりだったが、全身が黒く染まっていて複眼もよく見えない。まるでフードを深く被っている人の様だった。

 

「貴方が、将平さんを狙った犯人…?」

 

「…を狙った…違うな。」彼はそう言うと剣を取り出し私に振り下ろした。咄嗟の攻撃に私はすぐさま回避した。

 

「…今日は忠告に来た。真実を知ろうとするな。ただひたすら電脳人と戦えばいい」そう言うと奴は影になって消えた。

 

 

 

「なんだったんだ…」私は変身を解いた。

 

「…まさか、長官が変身していた…のか?」

 

あの黒い戦士が誰なのか…それはまだ誰にも分からなかった…そして、その正体が後々私達に大きな影響を及ぼすことも分からなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




デジタルセイバーに戻ってきた紬葵、しかしメリアに負い目を感じていた彼女は果たして和解できるのだろうか…

次回、第26話 たとえ信念が違えど
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