「いよいよ、俺1人か…」
鎧は1人で玉座の間にいた。
「本気を出さざるおえない、か?」
「陛下…いつからそちらに?」
彼が玉座を見上げると、そこには彼女の姿があった。
「今、現れた所だ。それより、次の出撃は君に頼みたい。君と、君が従える軍隊に」
「承知致しました。私の心は常に陛下と共に」
そう言って鎧は部屋を出ていった。
スコーピオン撃破から数日後…
街はクリスマスの準備に大忙しだった。煌びやかな装飾がされたツリー、雪だるまを模した置物、サンタクロースの格好をして客引きをする人。
それらを横目に男は歩いていた。
「もうすぐか」
男が向かった先にあったのは、これから行われるクリスマスコンサートへの準備を行なっている会場だった。
「鮫は確か、この辺りだったはず」
意味深な事を呟くと、黒いスマートライザーを会場前の広場に向けた。カメラ越しに見るその景色は殆ど変わりがない…が、階段の付近だけは緑色のモヤが掛かっていた。
モヤの中心には、緑色のQRコードがあり彼はそれをカメラで読み取った。するとカメラに写っていた緑色のモヤは消え、なにも無くなってしまった。
「…後は、隼か…」
コードのリストを開いた彼はそう呟いた。そこには先ほど得た緑の他、黒と紫があった。
空いている箇所は3つ…
その日の夕方、萊智と紬葵は大荷物を抱えて店から出てきた。
「ありがとう、私の頼み事に付き合ってもらって」黄色のマフラーを羽織り、茶色のコートを着込んだ彼女は言った。
「それは別にいいんですけど、こんなに大量のおもちゃを一体どうするんですか?」どうやら彼は、彼女の荷物係を頼まれたようだ。
「…このおもちゃはみんな、施設の子供達に渡すんだよ。私が居たあの養護施設に」優しい笑みを浮かべながら紬葵は答えた。
「…そういう事なんですね」彼は善意の手伝いをしたと考えると心が温かくなった気がした。
「太刀筆さん、サンタクロースみたいですね」萊智は笑顔で言った。
「それを言うなら、君はトナカイだね」
2人は10個近いおもちゃを車に積み込むと紬葵は運転席、萊智は助手席に座った。
「この後、食事に行きませんか。最近この近くに美味しいラーメン屋ができたみたいですし」
「いいね、ちょうどラーメン食べたかったんだ」
彼の誘いに、彼女はあっさりとオッケーを出した。
ラーメン屋に入った2人は、カウンター席に座るや否や早速この店で1番人気のラーメンを注文した。
店内は会社帰りのサラリーマンで溢れかえって居た。純粋に夕食を摂るべく来た人、少し早い忘年会をする為に来た人、仕事の疲れを癒しに来た人。理由はどうあれ、この店の中で楽しんでいた。
「そういえば、君のクリスマスの予定は?」紬葵はふと萊智に聞いた。
「…無いですね…」少々悲しげに答えた。
「…私も同じ…」紬葵も同調した。
「一昨年までは智と過ごしてたんだけどね」
「俺も去年までは友達2人とクリスマス会してましたけどね」
しかし、どちらももう一緒に過ごす相手はこの世には居ない…そう思うと気分が重くなってきた。
「だったら今年は2人で過ごせばいいんじゃない?」そこへカウンター裏の調理台から熱々のラーメンを差し出す店主が言った。
俺が…太刀筆さんと?
と言う顔を2人はして居た。
私が…萊智くんと?
「2人はまだ若いんだ。俺みたいにラーメンしか話相手がいない訳じゃ無いんだからさ」
店主はそう言うと何事もなかったかのように別のお客の為にスープを掬い始めた。
「…それも悪く無いかもね」
「そうですね」
翌朝、この日は土曜だからか人通りが少ないが、いつも以上に張り詰めた空気が漂って居た。
幹線道路を封鎖するように立ち尽くすのは鎧と、カブトムシのような装甲を身につけたノイズの集団だ。彼らの目線の先にはデジタルセイバーより先に駆けつけて居た警察の特殊部隊が待ち構えて居た。
「貴様らの目的はなんだ!」1人の警察官がメガホンで聞く。
「目的はただ一つ、強き者と戦い勝利する事。貴様らは並の人間よりは強く見える、が今回の目的では無い…」
「つまりデジタルセイバー待ちということか」男は呟いた。
「ようやく来たようだな」
警察の特殊部隊が振り向くと、そこには既にゲーミング、コミックフォームに変身したサイヴァーとペンシルの姿があった。
「後は私達に任せて、一般人の避難を」
彼女はそう言うと鎧の方を向いた。
「新手の敵幹部ね」
「我が名は鎧、またの名を…ビートル!」鎧は姿をビートルバグビーストに変えた。
「
「望むところよ」ペンシルは剣と盾を構え走り出した。サイヴァーも彼女の後を追って走り出した。
その彼を遮るように、ダークは立ちはだかった。
「お前の相手は俺だ。同胞の仇だ」
ダークはペンシルの剣を取り出しサイヴァーに振り下ろした。彼は咄嗟に青い剣を呼び出し防いだ。
「こっちこそ…今までに巻き込まれた人達と…パロットとグリットの無念を晴らす!」サイヴァーは左手に銃を取り出し引き金を引いた。至近距離で放たれた銃撃にダークは後ろへ揺らめいた。
「…ならば!」ダークは黒いスマートライザーを操作し紫色のコードを映し出した。そしてそれをもう一度クリックすると、ダークの身体の後方から蠍の尻尾が現れた。
「あの尻尾…スコーピオンと同じ…!」ダークはサイヴァーに向かって尻尾を突き刺そうとする。寸前の所で避けた彼は左手の銃で応戦した。
しかし、ダークに攻撃は通用して居なかった。
ダークは更に緑色のコードを映し出した。すると、左腕に巨大な鮫が装着された。鮫の口からは水を模した弾丸を放つ。サイヴァーはそれを回避しながら迫る。そして左腕に剣を振り下ろす…が、ダークはそれを右腕の剣で防いだ。
「なんだと…!」攻撃が防がれ困惑する間にダークは背鰭を模した刃を利用した手刀でサイヴァーの脇腹を切り裂いた。
吹き飛ばされたサイヴァーは地面に倒れ、変身が解かれてしまった。
一方、ペンシルはビートルの装甲に剣を振り下ろした。
「甘いな…小娘!」装甲は甲高い音を響かせるだけで、攻撃が効いている様子は全くない。
ビートルはハルバードを体全体で大きく振りかぶった。
ペンシルは盾で受け止めようとした。しかし、コミックで攻撃が通らない相手の攻撃を喰らうのはまずいと感じとった。
そうこうしている内にビートルはハルバードを振り下ろした。しかし、そこにペンシルの姿はない。クロックの能力を使い寸前の所で脱出したのだ。
「逃げに徹するか…」
「第二ラウンドと言ってほしいな!」クロックを解除し、トランスファを起動すると、盾を投げ捨て二刀流の態勢をとった。
2つの剣をビートルに振り下ろす。しかしそれでも効き目がない。
「なるほど、防御を捨てるとは考えたな」
ビートルはペンシルを左腕で簡単に投げ飛ばした。
「だが、それでは勝てない」
ペンシルはふと後ろのサイヴァーの様子が気になり振り返った。
ダークは、鮫と蠍の能力を収納しサイヴァーが使う銃を構えた。
彼は今にも殺されそうになって居たのだ。
「…萊智!」彼女は声を上げて叫んだ。
「太刀筆…さん!」彼は薄れる意識の中聞こえた声に顔を上げた。
「なんだと…!」そう声を上げたのはダークだった。
「…萊智が、サイヴァーに…?」ダークは銃を捨てると、バツが悪いと感じたのかその場を後にした。
「興が冷めた、また出直すとしよう」
ペンシルは大群が消えたことを確認すると変身を解き萊智の元に駆け寄った。
次回、第29話 4人の最強戦士