仮面電脳戦記   作:津上幻夢

32 / 36
第31話 死者の話

 

 

 

「そうだ…そこまで調べていたとは」

 

 

 

「飯山将平、ヒューマンバグビーストだ」

 

 

 

 

「なんで…なんで将平が…それにバグビースト?」萊智は何が何だかサッパリ分からなかった。彼が何を言っているのか、そもそも将平は死んだ筈…

 

 

「俺は、あの交通事故の時に肉体だけ死んだ。精神だけの状態で彷徨っていた所を、亡骸だけの状態になっていたこの男の身体に入り込んだんだ」

 

そう言うと彼は再び智の姿に変わった。

 

「…お前は一体誰なんだ?」一犀が聞く。

 

「…俺は飯山将平であり、柿崎智である。そう言えば満足か?」彼はダークスマートライザーを起動させた。

 

「今の俺は、アイツの為の戦士、ダークだ…変身!」

 

[Server connection…miss][Rider Dark!]

 

彼の身体は漆黒の闇に包まれ、体の形はサイヴァーのように変化した。

闇の力を纏う戦士、ダークはゲーミングフォームの剣を召喚した。

 

「…アンタ、話し合う気はないわけ?」ピジョンは弓を構えた。

 

「俺の目的はお前達を倒し、アイツを…麗香を蘇らせる事。お前達とは共に歩めない」

 

「麗香を蘇らせるってどう言う事だよ、将平!」サイヴァーがダークに向かって叫んだ。

 

「そのままの意味だ。俺が目的を果たせば、アイツは帰ってくる…」

 

ダークは、彼のことを見つめた。

 

「俺は、できることならお前を倒したくない…だから手を引け、萊智」

 

「…そんな…」

 

「俺は…お前(萊智)アイツ(麗香)の3人で笑い合う人生を取り戻したい」ダークはそう強く言い切った。

 

「だったら、おかしいんじゃないのか…お前は親友との暮らしを取り戻したいと願っている。しかしこのままバグビーストの言いなりになっていれば、悪意あるバグビーストが支配する世の中になるんだぞ!」センスは彼の行動の矛盾点をついた。

 

「…俺は、バグビーストがこの世界を支配しようがどうでもいい…それで俺達の平和が訪れるならな…!」

 

ダークはそう言うと剣を構えてセンスの元へ走り出した。センスは槍で彼の攻撃を受け流し、突きの態勢に入った。しかし、それよりも早くダークは次の斬撃を繰り出していた。その攻撃はセンスを直撃、白銀のボディに傷を入れた。

 

その後方から矢を連射するピジョン、ダークは矢を全て無抵抗で受け止め近づいた。そして左腕に鮫を出現させ水砲で壁に吹き飛ばした。

 

ダークの後方からペンシルが剣を振り下ろす。彼はそれを隼の翼で飛翔して回避、蠍の尻尾で隙が生まれたペンシル向かって突き刺した。彼女は盾を使ったことで攻撃をなんとか回避した。

 

ダークは地上へ降りると、剣を捨て右腕に蜘蛛の爪を発現させた。そしてサイヴァーに向かって振り下ろす。

 

サイヴァーはそれを剣で受け止めた。

 

「…俺は、お前と戦えない…!」彼はそう言ってダークを押し倒そうとした。しかし、兜虫の力を脚に使っていたことで倒れず、むしろパワーの上がったタイキックを喰らってしまった。

 

「…俺は、お前が敵であろうと…切る。俺は萊智以上に麗香のことが大事だ。あの時俺が守れて居たら…俺がアイツのことを突き飛ばして居たら生きて居たんだ…」

 

あの時…交通事故の事だ…

 

ダークの脳裏には強く焼き付いている。様子のおかしい車に気づいた自分、それに気づかず前に進む麗香。

 

その彼女を追いかけようと前に出た…その時には既に車が寸前の所まで来ていた。

 

そして気がつけば、自分達は宙へ浮かんでいた。痛みを感じる余裕なんてなかった。何が起こったなんて分からなかった。

 

精神だけの状態になって、離脱した時に自分達を見て、初めて何が起こったのか自覚した。車に撥ねられたのだと…

 

 

 

 

「俺はこの力を手にした時に誓った…今度こそ、麗香を助けられるようなヒーローになると!」ダークはサイヴァーに向かって爪を振り下ろした。

 

サイヴァーは、その言葉に気付かされた…何がアイツを動かしているのか。

 

それは麗香への罪滅ぼしだけじゃない…

 

「…そうだったな…お前は」サイヴァーはその爪を剣で受け止めた。

 

「…お前の想い描くヒーローは…アイツの為だけのナイト様なのかよ!」そして、左手に装備した銃でダークの腹部に連続して射撃した。揺らめいた彼から距離をとって着地した。

 

「…だったら失望したよ…俺は、見知らぬ誰かを助けたいと言っていたお前のことが好きだった」

 

萊智は銃を構えた。

 

「…みんな、ここでケリをつけましょう」その言葉に3人は驚いた…覚悟が決まったと感じ取った…と言ってもいいだろう。

 

それぞれ、スマートライザーを取り外すと各々の武器に装着した。

 

「俺は、お前を全力で止める…この命を懸けて!」

 

それぞれのスマートライザーが一瞬、眩い光を放った。その光はそれぞれの武器の銃口、刃に宿る。

 

 

[Cyver shooting!]

 

[Pencil cutting!]

         [Device connection…]

[Pigeon flying!]

 

[Sense penetrating!]

 

 

流星群のように次々と放たれる光線が、海の荒波のように大きく波打つ光の衝撃波が、音速の域へ到達した戦闘機のような光の矢が、鳥類の嘴のように鋭い光の杭が、力を増す暗黒(ダーク)目掛けて放たれた。

 

 

 

「俺は…そんな簡単に折れない…」ダークは全ての力を右爪に集めた。鉤爪は黒く、そして巨大化した。

そして掛け声と共にその鉤爪を大きく振りかぶり、そして振り下ろした。

 

四つの光を、いとも簡単に…戦士共々切り裂いた。その衝撃で4人は力の暴走により爆発を起こした。

 

サイヴァー、ピジョン、センスの3人は地面に倒れ、変身が解けてしまった。

 

辛うじてペンシルは変身が解けなかったが、地面に膝をついており、息切れを起こしていた。

ダークは1人立ち尽くす彼女を見つめた。

 

追い討ちをかける事も考えた…しかし身体が動かない。

 

体力が限界なのか、それとももう一つの心がそうさせたのか…

 

 

ペンシルは気がつくと仲間を連れその場を離脱していた。クロックを発動させていたのだろう。

 

ダークはそのまま影になるようにその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回、第32話 ヒーロー再び
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。