仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第32話 ヒーロー再び

 

 

クリスマス翌日…

 

「聞いたよ、あの黒いライダーの正体…」

 

長官室に入ってきた紅葉に長居は口を開いた。

 

紅葉の後ろには、萊智と紬葵の姿もあった。

 

「君の息子が変身していたとはね…」

 

萊智は昨日紬葵からその話を聞いていた為、この場では特に驚く様子は見せなかった。

 

「それで…ダークの処遇はどうするんですか?」紅葉は恐る恐る聞いた。

 

「どうするもこうするも、バグビーストなのだから撲滅対象に他ならない。その対象が偶々君の息子だった、死んだ筈の友人だった、かつての戦友の亡霊だった…ただそれだけだ」

 

長居はそう言って深く腰掛けた…これ以上何も言うまいとした態度だ。

 

「待ってください…まだ話し合いの余地はあります。決断を早めないでください!」萊智は前のめりになって言い放った。

当然だ…友人である以上、どう足掻いてでも止めたい…そして彼に知らしめる…

 

 

「しかし、彼は幾度となく人々を陥れたバグビーストの仲間なのだよ、交渉する余地もない…」

 

長居はそう言って反論を切り捨てようとした…しかし、それを紅葉が止めた。

 

「…バグビーストの幹部と繋がっている可能性がある以上、ただ倒すのではなく、敢えて生かして情報を話させる…そう言った事もできるのではないでしょうか?」

 

「隊長…」自分の息子を物のような扱いをする彼女に、紬葵は切なさを感じた。

 

「…そうしたいと言うなら構わない…だが、後で何が起こったら…その時は君の責任だからな。今度こそ、その立場が…いや、この組織に居場所があるかどうか分からないぞ」長居はそう言うと「この後面会がある」と言って話を切り上げ部屋を後にした。

 

 

 

長官室を出た萊智は、2人に聞いた。

 

「俺がやろうとしている事は、間違いなんでしょうか?」

 

彼を…将平を味方に引き入れる事…

 

萊智は、長官が言うことが全て間違っているとは思えなかった。友人だとしても、悪事に手を貸した以上、この手で倒すべきなのか。それとも…

 

「間違ってる、かもしれないな」そう言ったのは紅葉だった。その発言に2人は耳を疑った。

 

「この世界、正しいか間違っているかを決めるのは何かをやる前じゃない。行動して、最後に今までを振り返った時に初めてそれが分かるんだ」

 

先頭を歩いていた彼女は立ち止まり、振り返った。

 

「お前達は、ただ今できることをすればいい…例えそれが間違っていたとしても、責任は私が取る…約束しよう」彼女の瞳は、覚悟の瞳になっていた。

 

その迫力に2人もまた圧倒され、そしてこの戦い、負けられないと強く感じた。

 

 

 

しかし、あれ以来ダークが…将平が姿を見せる事はなかった。萊智は、この緊迫した中で里帰りを中止しようと思った…だが他の3人の計らいで大晦日と元旦にだけ帰る事にした。

 

 

 

 

大晦日は、久々に顔を合わせた家族や親戚に大学の話をした…本当はライダーの話もしたかったが、一応秘密にすべき事、話すことなんて出来なかった。

 

それはつまり、将平の事を誰にも話せないと言う事だ。1人で秘密を抱え込む事がどれだけ苦しいのか、彼はそれを身をもって体感した。

 

そして、その秘密をずっと黙っていた紬葵や紅葉もまた辛かったのだろう…そう思った。

 

 

 

そんな事を考えていたら、気づくと年を越していた。家族は皆初詣に出掛けており、そのまま朝食を食べてくるだろうから10時くらいまで帰ってこない。

 

1人で自分の部屋に引き篭もっていた。これから先どうしようか…。

 

正直、眠る気分には到底慣れなかった。初詣に行く訳ではないが、自分の家を後にした。

 

向かった先は、2人が事故にあった場所…

 

 

事故現場には花束が置かれていた。それもまだ新しい…前に紬葵さんが来た時には将平の義母が花を手向けていたらしいが、それとは少し違う気がした。

 

彼は献花の前に座り、手を合わせた。

 

祈りに近かった…どうか、将平が元に戻りますように…麗香が助けてくれますように…

 

 

 

そしてその祈りは、一瞬にして届いた。

 

 

 

 

 

 

「萊智…?」そう呼びかける声に萊智は、顔を上げた。

 

「将平…!」そこに居たのは、紛れもなく彼だった。

 

「なんでここに?」萊智は飛び上がった。今、正に祈りが届いたのだと…

 

「…ここなら、お前が来ると思ったからだ」彼もまた会いたいと願っていたのか…萊智はそれを察した。

 

「…何か、話があるのか?」

 

「…決着をつけよう…俺と、お前達とで…明日の6時、前にお前達と戦った廃工場で待っている」

 

「待て…一つ条件がある」

 

なんだ、と将平は聞いた。

 

「俺達がもしお前に負けたら、バグビーストの事件からは手を引く…だが、もし俺達が勝てば、お前は俺に従ってくれ…」

 

「条件付きか…良いだろう」そう言うと、彼は夜の闇の中へ消えていった。そして萊智はそれを最後まで見届けた。

 

 

 

 

 

萊智は3人に今の話を連絡した。てっきり勝手に条件をつけた事を怒られると思った…しかし、実際は3人ともやる気だった。

 

「当然だ」「負ける気ないし」「もちろん、受けて立つわ」

 

そう言ってくれた事に萊智は嬉しかった。自分勝手な事ばかりしている自分について来てくれる…仲間というのは良いものだと、強く感じた。

 

 

 

 

 

2日…早朝、一足先に廃工場にやって来た萊智。しかし、それよりも早くそれよりも早く来ている人物がいた。

 

「太刀筆さん…?」

 

「おはよう…早いね」彼女は彼を見るや否や手を上げて挨拶した。

 

「…どうしても眠れなくて」萊智は、そう言った。

 

「私も…」

 

2人はそう言うと大きく欠伸をした。

 

「…私、正直貴方が居なかったら将平さんについて行ったかもしれない」

 

「どういう事ですか?」

 

「そのままの意味よ…もし、彼の言うように本当に彼女を蘇らせれるとしたら…私も蘇らせたいって思っちゃうわよ…」智の事を…彼女はそう心の中で続けた。本当は、忘れた方がいいのかもしれない…

 

「…でも、貴方が強い意志を示してくれたからこそ、それが間違っているんじゃないかと疑う事ができた。ありがとう…」

 

「…こちらこそ、俺がここまでやってこれたのは、紬葵やみんなのお陰です。むしろ、自分が感謝しないといけないです」

 

「それについては心配要らないさ」

 

「そーそ、私達もライ君には感謝してるよ」そこへ、遅れてやってきた一犀とメリア、これで4人揃った。

 

「…皆さん…後は将平だけか…」

 

「その必要は無さそうだよ…」一犀が指差した先には、彼の姿があった。

 

「全員集まったようだな…何人束になって掛かろうが、俺には勝てない」

 

「…今の俺たちなら、前のように負けはしない!」4人は、スマートライザーを構えた。

 

 

「「「「変身!!!!」」」」「変身」

 

 

[Server connection…miss][Rider Dark!]

 

将平は、漆黒に包まれた後、ダークへと姿を変えた。

 

一方、4人のデジタルライダーの姿は眩しい光に包まれていた。4人の影が見えなくなる程の光は徐々に収まるにつれ、新たな姿を見せた。

 

「…1人…?」光が収まったその場には、1人分の影しかない…身体はまるでサイヴァーのような姿をしており、顔もスマホ画面の中にサイヴァーの顔が映し出されていた。

 

しかし、胸部は他と大きく異なっていた。四つの小窓があり、左上は黒くなっており、他の3つの窓にはそれぞれペンシル、ピジョン、センスの胸部の模様が浮かんでいた。身体には銀、紫、黄、赤の四色のラインが迸っている。青の素体に、緑と橙の差し色が入った新たな戦士がそこに居た。

 

[System…All Clear][Cyve-Net-X(サイヴァネティック)

 

「…目線がやけに低いような…」

 

「というか、自由に動けないし…」

 

『…なんかみんなの声が下から聞こえてくる気が…』一犀、メリア、萊智の3人は違和感を感じてはいたが正解まで至らなかった。

 

もしかして…私達合体しちゃったんじゃない!?」紬葵の声で3人はようやく何が起こっているのか分かった。

 

『なんか変だけど…これが俺達の最終到達点…という事?』萊智はそう言った。

 

「…こい…萊智!」ダークは4人の合体に特に反応を示さなかった…それどころか、完全に戦闘態勢に入っていた。センスの槍を構えて突撃してきた。

 

「槍なら僕に任せたまえ!」

 

『任せたまえって変われるんですか!?』萊智がそう言っている間にもダークは寸前まで迫っていた。このままだとやられる…そう思う前に腕が動いていた。ムービーのスピアを構え攻撃を防いでいた。

 

『言っただろう?僕に任せたまえと…!–』サイヴァネティックの顔はサイヴァーからセンスのものに変わっていた。胸部は黒画面のところがセンスのマークの所に移り、新たにサイヴァーの画面が現れた。

 

サイヴァネティックはスピアでダークを弾き飛ばし、そのまま突き刺した。

 

後方へ寸前の所で回避したダークは新たにピジョンの弓を構え矢を次々と放った。

 

「次は私が行ってもいい?」一犀がいいよと言う前に、顔はピジョンのものに変わっていた。

 

『…これぐらい、当たらないよ』両手にソシアルのナイフを構え、背中に翼を広げた彼らは矢を掻い潜りダークの懐を切り裂いた。

 

ダークは弓を手放し、切られた箇所を押さえた。

 

「さっきから…感じたことのない痛みが…!」ダークはペンシルの剣を構え彼らに向かって走り出した。

 

「剣なら私が相手する」彼らの顔はペンシルに変わり、武器はゲーミングの青い剣とコミックの盾に変わった。

 

彼らはダークの剣を盾で受け止め、剣を振り下ろした。

 

「…何故…俺をそこまでして、仲間に引き入れようとする…」ダークの問いに答えたのは紬葵だった。

 

『貴方を見ていると、前の私を思い出すから…自分だけでどうにかしようとする。そんな貴方を放っておかないから…!』

 

「…黙れーー!!!」ダークは剣を捨てると、5種類の生物の力を一斉に解放した。そして前に彼らの必殺技を弾いたあの攻撃を繰り出そうとしていた。

 

「最後は俺が…」

 

『頼んだわよ』そう言うと再び最初と同じ萊智がメインの形態になった。

 

 

『終わりにしよう…将平!』

 

[Super Blake finish!][Cyve-Net-X・Rider Kick!]

 

彼らは空へ飛ぶと、両脚を突き出した。虹色に輝くオーラを纏ったその両脚をダークの闇の一撃に向かってぶつけた。

 

最初は均衡していた…しかし、徐々に闇が押され始めた。光は更に輝きを増し、遂に闇を打ち破った。

 

キックを貫かれたダークは変身が解除されその場に倒れそうになった。

 

その腕を彼らは引いた。

 

『…将平…約束、果たしてもらうぞ』

 

「そうだな…約束は絶対、だからな…」

 

将平は安心したのか、はたまたダメージで限界が来たのか、瞼をゆっくりと閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回、第33話 最後のバグビースト
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