仮面電脳戦記   作:津上幻夢

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第4話 真夜中の命狩り

 

 

 

「見つけた、下だ…。」

 

「…どこか入口を探す?」

 

「…高度が上がっている…近づい…避けろ!」

 

 

2人が地面を見下ろすと、そこにはカマキリを模したバグビースト、マンティス・バグビーストが剣を構える姿があった。

 

 

「姿を現したな…!」センスは左腕のサーチを解除、槍型の武器センスデバイスに一瞬にして持ち替えて見せた。

 

「ライダーか…丁度いい。退屈凌ぎにはなるだろう。」マンティス・バグビーストはカマキリの鎌を模した剣でセンスの槍を受け止める。

 

そこへ、剣型の武器ペンシルデバイスを持ったペンシルがマンティスの右側から剣の突きを放つ。

 

「見切られたか…!」

 

「それぐらいで、俺は殺せない…。」不気味で鳥肌が立つように暗い声で話すマンティスは、次はこちらの番だと言わんばかりに攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

「現れたようね。」その頃、ベースでは紅葉、萊智、メリアの3人が2人から送られてきた映像を見ていた。

 

「萊智、メリア、救援を。」紅葉は直様指示を出した。

 

「リョーカイ。」メリアはそういうとスマートライザーを構えた。そして自身の変身に使うアプリ『メール』を起動した。[Server connection…]

彼女は両腕を鳥が翼を広げたかのように開き、『START』させる。「変身!」[Rider Pigeon!]

彼女の背後に巨大で赤い封筒が現れ、彼女の身体を収納する。そしてその封筒は彼女の戦士としての姿を形取る。胸部には、メールアプリのアイコンが現れる。最後にどこからともなく飛んできた銀色の鳩が頭部のバイザーとして装着、彼女の姿は完全にピジョンへと変身を遂げた。

 

「分かりました。」萊智も彼女と同じようにスマートライザーを構え、アプリを起動させる。[Server connection…]

左腕を掲げ、そして右側で右腕とクロスさせ「変身」する。

水色のラインが彼の身体を包み込み、そしてサイヴァーへと変身させる。[Rider Cyver!]

 

「行こっか…」ピジョンはそう言うと、前にサイヴァーがここへ始めて来た時に通った扉を開け電脳世界へと向かう。サイヴァーもその後を追うように走って入っていった。

 

 

 

 

2人は、この前の雑居ビルのような建物の前に出た。

 

「そういえば、電脳世界の移動は『これ』使うと楽だよー。」そう言うと、ピジョンは自身のスマートライザーにあるマップアプリのアイコンを指差した。

 

どう言うことかは分からなかったが、サイヴァーはスマートライザーでマップアプリを起動した。[ride on motorcycle!]

 

すると、サイヴァーの目の前に、シルバーにブルーのラインが入った疾走感のあるスポーツバイクが現れた。

 

「マシンフォントカス、ハンドルの真ん中にスマホを立て掛ければナビになるよ。後一応言っておくけど、電脳世界で使えないから。それじゃ。」サイヴァーはスマートライザーをハンドルに装着、そしてフォントカスに乗り込んだ。そして顔を上げると、ピジョンは自身の身体を浮かせ空を飛んでいた。

 

「私は飛んで行った方が早いから、頑張って追いついてねー。」そう言い残して彼女は空高く飛んでいってしまった。

 

「そんなのアリかよ…!」そう愚痴を呟きながらもサイヴァーはバイクを発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、センスとペンシルはマンティスの攻撃にやや押されていた。

 

「これは背水の陣だな…。」マンティスから距離を取るべく下がったセンスはそう呟いた。

 

「陣って、2人しか居ないし…それに、ここで私達が引いたらアイツが何するか分かんないでしょ。」ペンシルは口調では余裕を見せているが、状況は全く良くない。

 

「…とにかくここは耐える。貴族として…華麗に戦って死守する。」彼は気合を入れ直すべく槍を構え直した。

 

「貴族なら、後ろで私に守られてなさい。」彼女はそう言うと新たなアプリを起動させた。左腕に装備されたその力は、『トランスファ』…乗り換えアプリの能力だ。肩にバスの先端、二の腕にタクシー、腕から手首には新幹線のような鎧が装着されている。そして左手に握られた剣は航空機を模している。まさに乗り物形態だ。

 

「レディは戦場に立つものではない。貴族ならば弱き者を盾にはしないさ。」センスは彼女の隣に並び立つ。

 

「そう…それなら足、引っ張らないでね。」彼女は、そう言うとマンティスに果敢に攻め込む。

 

マンティスは剣を構え、ペンシルの二刀流の攻撃に対して受けの姿勢を取る。ペンシルの強力な攻撃を最初は受け止めて見せたマンティス、しかし…

 

「まだまだ…!」彼女の増して行く力を感じて行くにつれ、徐々に劣勢へと追い込まれる。

 

「なんだと…」マンティスは、逆転しようと力を押し返す。

 

「目の前に集中しすぎだ…!」「何…!」マンティスが気づいた時にはセンスが死角から猛烈な槍の一撃を放っていた。

[Device connection…][Sense penetrating!]

自撮り棒型の槍、センスデバイスの口金にスマートライザーを装着し発動させた必殺技、センスペネトゥレイティングは紫色のオーラを纏い判断もできないような一瞬でマンティスに横槍を刺した。

 

「…ぐっここで負けられるか…!」

 

「…次の一撃で、地獄に送ってやるわ…!」ペンシルはそう言うと、スマートライザーをペンシルデバイスに装着した。[Device connection…][Pencil cutting!]

黄色に輝く剣で切り裂く必殺技、ペンシルカッティングがマンティスの胸部、腹部、足先と身体を辿るように2本の道を創り出した。

 

 

「逸楽もっ、ここまで…!」

 

槍に突かれ、2本の剣で切り裂かれたマンティスの身体は、爆炎に包まれ、地面に『倒れた』。

 

ペンシルは、左腕のトランスファの装甲を解除した。

 

 

 

 

 

「なーんだ、終わっちゃったんだ。」

ペンシルとセンスの目の前にピジョンが降り立った。

 

「…?あれ、終わってる。」更にその後を追って来たかのようにバイクに乗ったサイヴァーもやってきた。

 

「貴族である僕が戦ったんだ。勝って当然さ。」センスはそう自慢げに言うが、「私が居なかったらトドメは刺さなかったじゃない」とペンシルが隣で呟いた。

 

 

 

 

 

 

「マンティスにはもっと期待していたのだけど…残念だわ。」

 

今までの様子を見ていた『人物』はそう言った。ショートヘアーで翠の髪色が目立つ彼女は残念そうな顔をした。

 

「…いや、まだ終わりではないようですよ。」その後ろに立っていた金髪で腰まである長い髪を持つ女性が呟いた。

 

 

 

 

 

「…『死神』は、死して尚、蘇る。」

 

「…?様子がおかしいぞ。」その異変に最初に気づいたのはセンスだった。

しかし、気づいた時にはすでに死神の身体は起き上がっていた。ペンシルやセンスに付けられた傷はそのままで。

 

「…ゾンビってやつ?」ピジョンは気味悪そうにした。

 

すると、マンティスの体が、漆黒の輝きと共に変化を始めた。腹部あたりから全体が変化して、まるで本物のカマキリのように手足の数が6本へと増え、等身は成人男性の2倍程度に、そして今まで片手剣は一本だったが、二本に増え本物のカマキリのように逆手に持った。

 

「巨大化した…?」初めて見る光景にサイヴァーは息を呑んだ。

 

「…たまにある事ね。『進化』と私達は言ってるけど、死んでから復活するのは初めてだわ…とにかく倒すわよ!」ペンシルはそう言って剣を構えた。

 

ペンシルとセンスはそれぞれ攻撃を仕掛けるべくマンティス・バグビースト進化態に迫る。しかし、マンティスは両手に持った剣から放つ衝撃波で2人を地面に突き倒した。

 

そこへ弾丸と矢が激突する。どちらもマンティスの胴体に着弾したが、効いている様子は全くない。

 

「攻撃が効かない?」サイヴァーは銃を下げて呟く。

 

「多分、『急所』に当たってないからだと思う。そこを当てれば1発なんだけどね。」ピジョンは再びピジョンデバイスの弦を弾いて構えた。

 

「…ならば、調べるまで!」センスは先程探索に使ったサーチを再び使用する。

 

隙を見せたセンスに対してマンティスは攻撃を仕掛けるが、ペンシルが剣でそれを抑えて見せた。

 

「早く…調べなさい…!」苦しみながらペンシルが言う。

 

「分かっている!」センスは既に急所を捜索、そしてすぐに答えを出した。

 

「…左掌…そこだ!」センスはそう叫ぶと直様ペンシルの手助けに入り、共に攻撃を抑える。

 

 

「掌って…今アイツ剣を持ってるからアレをどうにかして離さないと…!」ピジョンは弦から手を離し矢を放つ。左手の甲にヒットするが、急所にはならなかった。やはり掌でないと…

 

 

「…サイヴァー、『カルキュレイト(電卓)』を使いなさい!」ペンシルが、ふと何かを思い出したかのようにそう訴えた。

 

「は、はい!」サイヴァーはそう言うと、スマートライザーで『カルキュレイト』を起動した。すると、右腕を覆う様な大きさの黒い電卓が現れた。右肩にはアプリのアイコンの様な装甲が装備されている。

電卓…すなわち計算能力を持つその装備の意図を感じ取ったサイヴァーは、直様『計算』を始める。

 

味方の動き、敵の動き、自分の動き、それら全てを一瞬にして電卓は判断する。

 

「メリアさん、俺のタイミングに合わせて奴の左手首に攻撃して下さい。」

 

「…分かった。」そう言うと、ピジョンはスマートライザーとピジョンデバイスを通信接続し、必殺技待機状態に入った。[Device connection…]

 

「ぐっ…もう耐えられない…!」「流石に…これ以上は…!」ペンシルとセンスの体力は既に限界を迎えていた。

 

「…後は俺が…!」サイヴァーは、自身の武器であるサイヴァーデバイスにスマートライザーを装着、そして必殺技待機状態に入る。[Device connection…]

 

「…今です!」[Pigeon flying!]サイヴァーの声が彼女の耳に入ってからコンマ1秒、ピジョンは深紅の巨大な矢を放つ必殺技、ピジョンフライングを奴の左手首に放った。

 

「ぐっ…!」

 

その攻撃は見事命中。装甲のない部分を刺されたことによって痛みを感じ咄嗟に左手の剣を離してしまった。

 

勢いが弱まった所を見逃さなかったセンスとペンシルはマンティスから離れた。

 

「…終わりだ…!」[Cyver shooting!]そして蒼き閃光、サイヴァーシューティングを放った。それとほぼ同じタイミングでマンティスは急所をサイヴァー側に見せた。

 

サイヴァーは、こうなる運命を感じとり、そのタイミングで引き金を引いていた。

 

 

蒼き閃光は奴の左掌を撃ち抜き、奴の体を爆散させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、ダメだったか…」翠髪の彼女は再び呟いた。

 

「…これ以上ここにいても無駄、帰りますよ。」金髪の彼女はそう言って翠髪の彼女を連れて姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いを終えた4人はデジタルセイバーへと帰還した。その時、現実世界では既に朝を迎える寸前だった。

 

「皆、ご苦労だった。特に進化態のペンシルの判断は良かった。」

紅葉は、紬葵に笑みを浮かべた。

 

「いえ、偶々思い出しただけで…」彼女は照れ隠しに頭を掻き乱した。

 

「…まぁ…彼の…君なら知っていて当然だっただろう。」

 

「ちょっと、変なこと言わないでよ!」「ツムツムならそれくらい直ぐに分かりそうだよね…カキピーの事を…」否定しようとした彼女の元へ、メリアが更に追い討ちをかけた。

 

3人が小競り合いを始めた様子を、萊智は、遠くから楽しそうに見つめていた。

 

しかし、その瞳にはどこか寂しさも持ち合わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、マンティスは討たれたのか。」深紅の髪を後ろで束ねた彼女はため息混じりの声で言った。

 

「…しかしマンティスのお陰で、我々の侵攻がし易くなりました。次はこの私『グリット』にお任せください。」グリットと名乗った金髪の少女は赤髪の前に平伏した。

 

「貴方にできるのかしら?」「ヒネノ。」グリットに対して半信半疑な翠髪の少女、ヒネノは赤髪の一言で堪えた。

 

 

「…その作戦、俺も加えてくれないか?」

 

「お前は…スパイダー?怪我は完治したのか?」グリットは闇から現れたスパイダー・バグビーストに聞いた。

 

「サイヴァーに付けられた傷はもう癒えた。次こそ、必ず勝つ。」そう彼は拳を握りしめた。」

 

 

 

 

 

 

 

 




死神事件を解決した萊智、そんな彼に新たな敵、そしてかつての敵の魔の手が迫る。

次回、第5話 貴族舌の鳥
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