異世界科っ! ~異世界を教える学校~   作:柴田柴犬

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今回、視点が結構変わります。
分かりにくかったらすいません
ついでにシリアスが結構多いです


来訪者

 またいつもの朝が来る。月奈が俺を叩き落しながらの起床のはずなのだが――

 

「おーい……えーいーじー! ……あれ?」

 

 耳に入って来る月奈の声が、戸惑っているのが分かる。月奈は静かに布団を(めく)る。

 俺は重たい(まぶた)を何とか開けようとすると、額にひんやりとした何かが触れる感触があった。

 

「むむっ!? おばさーん! 体温計ありますかー!」

 

 月奈が大声を上げながら階段を駆け下りていく。戻って来た月奈が俺の熱を測ると……。

 

「三十八度二分……。風邪ね。今日は学校休むこと!」

「うぅ……」

 

 何やら月奈は俺の母さんと話した後、学校へと向かって行った。しばらくして――

 

「私も今日はパートがあるから……、お粥は作っていくわ。ちゃんと薬も飲んでね」

 

 母さんの優しい言葉と共にドアが閉まる音がした。

 その瞬間、全身がだるくなり意識が遠退く。仕方ない。今日はもう寝ていよう。

 

 

 

 

 

 ◆

 放課後、わたしは部室へと向かった。すると、先生も先輩も先に来ていた。わたしの姿を見た途端、目を丸くして。

 

「……一人とは珍しいですね。何かありましたか?」

「ど、どうしたの!? 久能君とケンカでもしたの!?」

 

 わたしが一人で部室に来るのが余程ショッキングな出来事だったらしい。確かにそう思われてもおかしくはないけど。

 

「ああ……いえ、衛侍が風邪引いちゃって……今日は学校休んでます」

「そうですか……。今日の部活は無しですかね」

 

 確かに、この部活は主に衛侍が先生に指導をされている。つまり衛侍がいなければ部室にいるだけのただのお喋り会になってしまう。

 

「……お見舞いに行って良い?」

 

 武宮先輩が心配そうな表情で訊いてきてくれた。

 

「はい。もちろんですよ」

 

 わたしは笑顔で答える。すると先生が立ち上がり。

 

「じゃあ、行きましょう。……二人共、何故不思議そうな顔をしているのですか?」

「だって……先生、仕事があるんじゃ……」

「部活が無しになったなら、職員室で残った仕事をした方が良いと思います」

 

 わたしと先輩の意見が一致していたが先生は意にも介さずに。

 

「生徒の体調が悪いのですから、そんなことを気にする必要はないでしょう? それと、神咲さん……ご両親のどちらかはご在宅ですか?」

「え……、あ、はい。母はいるはずですけど?」

「久々にお会いしたくなりましたので、久能君のお見舞いの後、少しだけ寄らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「わたしは別に構いませんよ」

 

 確か、先生は約二十年前……、先生は異世界で三年過ごしたから……多分十七年くらい前に帰って来た時、わたしのお父さんが色々と事情聴取をしたり、帰ってきた後の手続きをしたりで、顔見知りだそうだ。わたしが生まれる前だから実感はないけど。

 

「ありがとうございます。では行きましょうか」

 

 こうして、三人揃って衛侍の家へと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 ◆

 何時間眠っただろうか。昼になってから母さんが作ってくれたお粥を食べて、また眠ってしまったから……、分からん。

 ベッドの近くにある時計を見ると、学校ではとっくに放課後になっている時間だ。体調も朝に比べたら格段に良くなってる。

 

 ま、今日はもうちょっと寝ていよう。

 そう思っていたら、下の階から階段を上がって来る足音が聞こえる。母さんのパートが終わるのはもう少ししてからの筈だ。

 

「神咲さん、この家の鍵を持ってるとは思わなかったわ」

「今日、衛侍が心配だからって……おばさん、衛侍のお母さんに渡されてて」

 

 そんな声が聞こえた後で、部屋のドアをノックする音が聞こえる。だが――

 

「二人共……少し待ってください! もし今ドアを開けて久能君が着替えていたりしたら、どうするつもりですか!?」

 

 先生がおかしな事を言いだしていた。

 

「……別に。全裸でいるわけでもなし。異世界のオークとかゴブリンとかので男の子のは見慣れているから、気にしません」

 

 先輩……そこはちょっと気にして下さい。

 

「んー。わたしもあんまり気にしないかな? 一応声は掛けるけど」

 

 お前の場合、本当に俺が全裸だったらその場で教科書入れてるリュックが飛んで来そうだ。

 

「くっ……。お二人共……、正気ですか!?  僕はラブコメ魔法を使っていないというのに……ラブコメの気配がする!?」

「先生!? またおかしなこと言わないで下さい!」

 

 もう我慢できずに俺が部屋のドアを勢いよく開けてしまった。

 

 現在、俺がベッドに腰かけて他の三人は床に座っている。

 

「でも、風邪もこじらせていない様で安心したわ」

「ええ、先輩も先生も、お見舞いありがとうございます」

 

 俺は改めて頭を下げる。すると先輩が何か興味を引くものを見つけてしまったらしい。

 

「……久能君? ね? アルバム見ていい? いい? いいでしょ!」

「せ、先輩? 何でそんなに目を輝かせているんですか?」

 

 先輩が俺の隣に来て勝手に部屋のアルバムを手に取る。そしてパラリとページを開くと……。

 

「可愛い~!!  小さい頃の二人って本当に可愛い~!」

 

 先輩、興奮して鼻息荒くなっているぞ。

 

「こほん……。武宮さん、その辺にしましょう。しかし……二人とも本当に小さな頃から一緒ですね」

 

 確かに……、月奈と一緒に写っていない写真の方が少ないんだよなあ。

 

「先生? どうしました?」

 

 ふと先生の顔を見ると、悲しい様な、それでいて懐かしんでいるような変な表情をしていた。

 

「いえ、何でもありません。では僕は神咲さんのお宅へお邪魔しますので、これで失礼しますね」

 

 そう言って部屋を出ようとする先生へ先輩が声を掛ける。

 

「先生、私も一緒にいって良いですか?」

「ええ……。構いませんが……」

 

 先生にとっても意外な事だったらしい。目を丸くして驚いていたがすぐに承諾してくれた。

 二人が部屋からいなくなった後、俺と月奈が二人きりになる。しばらく沈黙が続くが。

 

「ねえ? ホントに熱ない? 大丈夫?」

「んー。多分……」

「わたしが登校してから体温計った?」

「計ってない……」

 

 それを聞いた月奈は体温計とスポーツドリンクを取って来て俺に体温を測るように促してきた。

 

 五分後――

 

「三十六度五分……大丈夫だけど、今日はもう寝てたら? もう少ししたら、おばさんも帰ってくるだろうし……」

「だな。そうさせて貰うよ」

 

 俺は再び布団の中に潜り込む。すると、月奈が俺の頭を撫でながら。

 

「この子は~♪ 夜空に浮かぶ星に~♬ 愛された~♪」

 

 歌が聞こえる。歌詞は知らないはずなのに、メロディは聞き覚えがある。

 

「月奈……これって……」

「ん、ほら、部活に入った頃、先生がくれた歌のデータあったでしょ? あれって子守歌らしいから、こうすると眠れるかなって。頑張って訳したんだぞ。えっへん!」

「俺は子供か……。でも……頼む」

「うん。分かった」

 

 月奈の異世界子守歌を聞いて安らぎを感じながら、俺はゆっくりと眠りについた。

 

 

 

 

 

 ◆

 山科樹は神咲家へ足を運んでいた。生徒が風邪で休んでいたのでお見舞いついでに、昔世話になった人物にも会いたくなったためだ。だが、何故か、その隣には女子高生が一人。

 

「武宮さん……、僕に付いて来るなんて珍しいですね」

「二人の邪魔になったら悪いかなって思って」

 

 意外と気を使っていると驚く山科だったが、見舞いに行った家の隣家――『神咲』のプレートの掲げられた玄関前でインターホンを鳴らす。すると、家からエプロン姿の女性が姿を現した。

 

「あら! 山科君。ええと違うか……。山科先生、お久しぶりね」

「いえいえ、君付けで構いませんよ。神咲さんもお元気そうで何よりです」

「ささ、お茶でも飲んで行って頂戴。そっちの子は……武宮さんかな? 娘がお世話になってます」

 

 挨拶もそこそこに、二人は家に引き込まれてしまった。

 リビングに通され、世間話に華を咲かせている。

 

「あの時の子がもう先生してるなんて……、ほんと時間の流れって早いわよね~」

「ですね。僕も若い生徒たちの話に付いていけなくなる時がありますよ。ははは」

 

 武宮結季は、はっきり言えばこの場では部外者もいい所だが、少しだけ気になる事があった。

 

「あの……失礼でなければ……ですけど」

「あら? どうしたの?」

「神咲さん……、月奈さんは昔、近所の子供にからかわれていたって……、今の彼女を見てると信じられなくて」

 

 その問いに少しだけ困った顔をする月奈の母だったが。

 

「あの子ね……。私の実の娘じゃないのよ。私……若い頃に病気で……色々あってね」

 

 聞いてはいけない事を聞いてしまったかと後悔した結季だったが、話はまだ続いた。

 

「あの子がからかわれたのは、そのせいね。その度に泣いてたけど……、衛侍くんが庇ってくれてね。そのうち衛侍くん衛侍くんって後ろを付いて行くようになったっけ」

 

 懐かしむように話す月奈の母親の表情は穏やかなものだった。

 

「けど、あの子は私達夫婦にとっては本当の娘と変わらないわもの。でもそのうちお嫁に行っちゃうのかなあ。衛侍くんの所に」

 

 そんな世間話をしていると、隣家から歌声が聞こえて来ていた。山科も気付いたようで。

 

「これは……あの歌ですか……。本当に懐かしい。僕も月奈ちゃんが赤ちゃんの頃、よく歌ってあげていたんですけど……」

「けど、どうしたんですか? 先生……」

「僕が歌ってあげると、何故がギャン泣きしてしましまして、結局音声データの方を聞かせるという結果に……」

「先生……子守に向いてない……とか?」

「多分、僕だと違うってダメだしされてたんじゃないですかね。ははは」

 

 山科の返答に微妙な表情をする結季だった。

 

「ああ、もうこんな時間ですか。そろそろお暇します」

「今度はうちの旦那がいる時にいらっしゃい。うちの人も会いたがってるわよ」

「ええ。それはまたの機会に」

 

 そう言って、二人は帰路へとついた。

 

 

 

 

 

 ◆

 その数日後、俺は普段通りの学校生活を送っていたのだが、放課後部室についた途端、武宮先輩が神妙な面持で折れたシャープペンを見せて来た。

 

「先生……、何かがおかしいです。別段力を込めたわけでもないのに……パッキリ折れました」

「いや、先輩の力なら別に不思議なことじゃないんじゃ……」

「久能君? 私を怪力とか思っているのかしら? 地球じゃそこまでできないわよ!」

 

 先輩からのツッコミが飛んできていたが、先生が真剣な表情で先輩の全身を観察していた。

 

「武宮さん……。少し目を閉じて集中してみてください。()()()()()()()()()()

「えっ……!? はい。やってみます」

 

 先輩は目を閉じ、深呼吸して集中している。

 

「うそ……、何で!?」

 

 先輩は自身の変化に戸惑っていた。

 

「月奈……分かるか?」

「うーん? 何かいつもより温かい様な気はするけど……」

「俺には分からん」

 

 俺と月奈の問答など気にせずに、先生は顎に手を当て何やら考え始めた。

 

「これは……『道』が開きかけている? だが、召喚の気配があるわけじゃない。これではまるであの時と――」

 

 先生一人でブツブツ言いだしている。そして先生は何かを感じ取ったようで、校庭へと飛び出していた。

 

「来るっ!」

 

 そこには信じられない光景があった。空には巨大な魔法陣が展開され、それが眩いばかりの光を放っている。

 

「皆さん、僕から離れずに。念のため、学校敷地内全てに結界を貼っておきますから!」

「先生!? いきなり学園系異能力バトルでもする気ですか!? 言ってる事が分かりません!!」

「おそらく、異世界からの『道』が開いて、その世界の魔力がこの辺一帯に流入しています。魔力があるなら、魔法の使用も――」

 

 先生が真剣な顔で戦闘態勢に入っている。その口からは部活でよく聞いている異世界の言葉での詠唱。

 だが、俺が普段練習しているものよりも遥かに複雑だった。先生は魔法を展開し終えたらしく。

 

「これで、もしあちらが攻撃してきたとしても、被害は軽微のはずです。……あとは」

 

 あの魔法陣を展開している存在を確かめなければならないようだ。

 そして、魔法陣の中心部から光の柱が地面まで伸び、数人の人間がその場へと降り立っていた。

 彼らは自分達が降り立った場を一通り確認した後、一番近くにいた俺達に近づき。

 

「ワレワレハイセカイジンダ」

 

 まるで、宇宙人が自己紹介する様な発音で挨拶をしていた。

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