結構戦闘描写に苦労しました。
マエト君らしい戦いになってるといいなって思いながら、投稿します!
「しかし、本当にマエトは何者だったんだ?」
カイはアルンの街を歩きながら、そんなことを呟く。
「確かにフレンド登録したのに、フレンドリストから消えて、そもそもマエトってプレイヤーは存在しなかった。ヒースクリフに聞くべきだったな」
そんなことを思いながら歩いているとカイはあることに気づいた。
「ここは………何処だ?」
周りの建物はアルンにある建物だが、周りを囲う雰囲気が何か違うと察し、カイは警戒する。
そして、無意識に腰の刀に手を伸ばし、警戒する。
その時、近くの建物の影から人の気配を感じた。
カイは咄嗟に抜刀し、刀を向ける。
すると、建物の影から現れたその人物も、素早く剣を抜き、カイへと向ける。
互いの剣が、互いの首へと向けられる。
だが、剣が振るわれる事は無かった。
カイは、現れた相手の顔を見て動きを止めた。
そして、相手もカイを見て動きを止めた。
「マエト!?」
「カイさんじゃん」
その人物は、あの日SAOで出会た不思議な少年、マエトだった。
「久しぶりだな、マエト」
「カイさんも元気そうだね」
ベンチに座り、マエトと話をしてた。
「あの後から連絡が取れなくて、心配してたけど元気そうで何よりだ」
「それはおれもかな、いくらでも力になるって言ってくれたのにいざ連絡しようと思ったら連絡取れないんだもん」
「うっ……それは、すまん」
「なんて冗談だよ。あの後、カイさんに助けて貰おうって思ったことなんてないし、カイさんの名前がフレンドリストから消えてたのも偶然気づいただけだし」
マエトは、変わらないのんびりとした笑みで言う。
(ん?なんかマエトの奴、少し変わったか?)
カイは、マエトの笑みに前の様な暗い部分が見えないことに気づき、そう思った。
「あ、それよりさ、おれカイさんにあったらお願いしたいことあったんだ」
「ん?なんだ?」
「カイさん、おれと戦って」
真剣な表情と目で、マエトはカイにそう言う。
「それって
「うん。あの時はさ、おれカイさんの事
「………ああ、いいぞ。俺で良ければ喜んで」
カイはマエトからの申し出を快く受け入れ、
「《全損決着》でいいよな?」
「いいよー。あ、でも、魔法や空中戦は無しでいい?」
「いいけど、どうしてだ?」
「あの時の仕切り直しのつもりでやりたいからかな?」
「なるほどな。俺はいいぞ」
そう言って、カイは《全損決着》を指定し、マエトに
マエトはそれを早々に受諾すると、2人の間で10秒のカウントダウンが始まった。
マエトは鞘から片手剣を引き抜き、脱力して両腕をだらりと下げた。
対してカイは両足を前後に開いて腰を落し、居合いの構えをとった。
(あれ?そう言えば……)
減っていくカウントダウンを見つめながら、カイは気付いた。
(なんで誰も通り掛からないんだ?)
いつもなら多くのプレイヤーで賑わっているALO。
なのに、今はプレイヤーの姿は誰一人見えなかった。
いくら、通りから外れた路地裏と言え、誰も通りかからないのはおかしかった。
その瞬間、カウントが0になり、
人が居ないことに気づいたカイは、僅かに反応が遅れた。
それは致命的なミスだった。
マエトは動き出し、恐ろしいスピードでカイへと接近した。
カイが気付いた時には、既にマエトは跳躍し、カイの頭上を取っていた。
右手に握られた淡い紫色の刀身の片手剣、《ストラグラ》がカイのアバターの心臓部を、肩口から叩き斬る。
意識をマエトから外し、その隙を突かれた一撃。
躱すことも、防御も不可能。
そのはずだった。
「ふっ!」
カイは、刀の柄を持つ手を離し、握りしめる。
そして、マエトの剣が当たる寸前で拳を放った。
《体術》スキルだ。
元々、カイはSAOでは《体術》を組み込んだ戦いを得意としており、どんな体勢からでも《体術》スキルを使うことが出来る。
これにより、先に
カイは素早く刀を振るい、連撃を繰り出す。
だが、マエトはカイの猛攻をするりするりと躱していた。
(凄いな、アスナほどじゃないにしろ、速さにはそれなりに自信があったんだがな)
カイは、マエトの防御要らずの回避に驚くと同時に感心する。
(完全に隙を突けたと思ったのに、切り替えが速いな)
カイの攻撃を躱しながら、マエトは減った自身のHPを見る。
(対応が遅れながらも、あの反応速度……キリトさんやゆーちゃん程じゃないにしろ凄いや………)
マエトも、カイの反応速度に驚きと感心する。
カイとマエトは互いに見つめ合い、笑う。
それを合図に同時に走り出し、鍔競り合う。
マエトは《ストラグラ》と《シャドウリッパー》を交差させ、カイの刀《紅蓮》を受け止める。
だが、筋力値で優っているカイに圧される。
そこで、マエトは敢えて後ろに下がり、カイのバランスを崩すことにした。
「うおっ!?」
バランスを崩したカイは驚きを見せるも、そのまま一歩踏み出し、至近距離で突きを放つ。
(バランスを崩されながらも攻撃!?)
マエトもまた、カイに驚くもなんとか突きを受け流す。
カイは、突きを放った態勢のままマエトの後ろを取り、距離を取る。
「対人戦をしていただけあって、戦いなれてるな。マエト」
「カイさんも流石は《攻略組》。こんなに強い人と戦うのは、おれも久々だよ」
互いに笑い合いながらも、腹の内を探り合う。
互いに走り出し、打ち合う。
マエトは速さを生かし、また建物の壁も足場にし、全方位から高速かつ不規則に飛び回ってカイを死角から攻撃する。
だが、カイはその全ての攻撃に対応し、《体術》を織り交ぜた攻撃でマエトを攻撃する。
(《体術》を織り交ぜた攻撃、それに動き1つ1つから分かる。カイさんの戦い方は、対人戦法だ。でも、カイさんの性格から考えると、対人って言うよりは亜人型Modを想定した戦法かな?)
マエトの予想は正しく、実際、カイはSAOで戦っていたころは亜人型Modとの戦闘を得意としていた。
ほんの数分程度の打ち合いで、マエトはそれを理解した。
そこで、マエトはソードスキルを発動する。
《バーチカル》が発動し、カイの攻撃を弾く。
「うをっ!?」
「ふっ!」
カイが大勢を一瞬崩し、そこを狙って《スネークバイト》を使う。
速度特化の左から右、右から左の水平2連撃技に、カイは思わず驚く。
が、逆に自身も刀スキル《弧月》を使い、弾く。
互いにノックバックし、距離を取る。
(今のも見切るか……やっぱ一筋縄じゃいかないね)
(スゲー速さだな。2本の剣が左右両側から同時に攻撃したように見えたな………)
2人は、互いに相手の実力に感心した。
「そろそろ本気で行くよ!カイさん!!」
「俺も、ここからは全力だ!!マエト!!!」
二人は、再び全速力で駆け出す。
カイは《紅蓮》を腰だめに構える。
そして、地面スレスレの超低空姿勢になり、まるで弾丸のようにマエトへと接近する。
それに対し、マエトは剣を交差させ、防御の姿勢に入る。
カイは、その防御の上から、更に《体術》スキルの蹴りを放つ。
それにより、マエトは空中へと打ち上げられる。
しかし、マエトは空中で体勢を立て直すと、カイに向けて《シャドウリッパー》を投げ付ける。
「何!?」
突然の事に、カイは驚きつつも《紅蓮》で防ぐ。
だが、それこそがマエトの狙いだった。
マエトは、左手に持った《シャドウリッパー》を囮にし、カイが防いでる間に頭上から急接近した。
右手に握った《ストラグラ》で斬りかかり、カイの目を狙う。
(貰った!!)
マエトの攻撃を、カイは体を捻ることで何とか避けた。
(危なかった……)
カイが安堵するのも束の間、マエトはカイの目の前まで来ており、上空でキャッチした《シャドウリッパー》を振り下ろした。
カイは、咄嵯の判断でその場を飛び退くことで回避する。
だが、マエトは振り下ろされた《シャドウリッパー》を、そのまま横に薙ぎ払う。
カイ後ろに下がると同時にしゃがみ、それをやり過ごす。
マエトは、カイに向かって三枚刃ブーメランを投げる。
「はあっ!!」
カイは、《紅蓮》を縦に振るい、マエトの攻撃を弾いた。
そして、マエトに近付き、袈裟懸けに斬ろうとする。
だが、そこにマエトの姿は無かった。
(どこに行った!?)
マエトを探すカイの背後にマエトが現れ、無防備な背中に攻撃を放つ。
「くっ!?」
カイは、なんとか反応して《紅蓮》でガードするも、完全な不意打ちの為、無理な体勢でしか受け止めれず、体勢を崩す。
(その状態からなら、反撃は不可能!)
カイの武器は、パリィされ跳ね上がっている。
完全に無防備となったカイの心臓目掛け、マエトはとどめの一撃を放つ。
が、次の瞬間、マエトの頭部に衝撃が走る。
カイは刀で斬るのは無理と判断し、刀の柄頭でマエトの頭を殴りつけた。
ダメージ判定はないが、それでも時間を稼ぐには十分だった。
カイの刀がライトエフェクトを纏い、ソードスキルを放つ。
刀最上位剣技《散華》
これが決まれば、カイの勝ち。
しかし、マエトは頭を殴られながらもこの時を待っていたと言わんばかりの眼差しをカイへと向けていた。
そして、マエトの剣もライトエフェクトを纏い、カイへと攻撃した。
上から下へ斬り降ろし、下から上へ斬り上げ、左上から右下へ斬り降ろし、右下から左上へ斬り上げ、左下から右上へ斬り上げ、右上から左下への斬り降ろし、最後に1回転して6撃目と同じ軌道での
斬り降ろし。
自身のスキルを打ち消され、さらに強烈な斬撃を刀へと叩き込まれる。
(なんだ、このスキル!?)
カイは見たことないスキルに驚きを隠せなかった。
だが、すぐにそれがなんなのか分かった。
(そうか!OSSか!)
OSS《テアリング・バイト》
マエトが編み出した、《オリジナル・ソードスキル》にカイは驚愕する。
もっとも、《テアリング・バイト》は戦闘用と言うより武器破壊に特化している。
本来は、相手の武器の耐久値をそこそこ消耗させた後、わざと隙を見せてソードスキルを誘い、技の出始めもしくは出終わりの状態の武器を狙って叩き込むのが本来の使い方だ。
カイの刀はかなりの業物で、耐久値も高く、この
「これでおれの勝ち!」
マエトは勝利を確信し、最後の一撃を放つべく距離を詰める。
しかし、その表情はすぐに凍り付いた。
カイの瞳は闘志で燃えており、まだ勝負を諦めていなかった。
カイの左手がライトエフェクトを纏う。
(《体術》スキル!?いや、おれのHP残量から考えて、《体術》スキル程度で削り切れる量じゃない。いける!)
カイの左手とマエトの剣が交差し、マエトの剣の剣先が、カイの胸に刺さる。
(獲った!)
マエトは勝利を確信し、このまま心臓を一気に貫こうとする。
が、次の瞬間、自身の胸に衝撃を感じ動きを止める。
(なっ!?体が………!)
急に動かなくなったことに、マエトは驚きを見せる。
見ると、カイの拳はマエトの胸の中心を捕らえていた。
カイはそのまま、マエトを吹き飛ばし、《紫電一閃》を放つ。
刀が赤い一筋の光となり、マエトの心臓を貫く。
そして、マエトのHPは底を尽いた。
「はぁ~、なんか凄いの見た」
「これでも元《攻略組》だし、《焔の剣聖》なんて大層な二つ名も付けられたんだ。意地でも負けられないさ」
「《焔の剣聖》か………確かにあの攻撃見たら、その二つ名も頷けるねー」
マエトはそう言い、立ち上がる。
「最後のアレって何?」
「《拳術》スキルだよ」
《拳術》スキルとは、
ダメージに関しては専用装備がないと与えられないが、スタン効果は魅力的なのでカイは《拳術》スキルを習得した。
「そう言えば、そんなスキルあったっけ」
「最後の一撃、《体術》と思って油断しただろ?」
「うん、思いっきり《体術》だと思ってた。だまし討ちとかハッタリは、おれの十八番だと思ってたんだけどなぁ」
「戦いにおいて、だまし討ち・ハッタリ・ブラフは戦況を有利にするのに使えるからな」
カイは笑って答える。
「ありがとう、カイさん。お陰で、おれの心残りは無くなったよ」
「そうか。俺の方こそ、今のお前を見れて良かったよ。それに、あの頃と変わって表情が少し明るくなったな」
「ん?そうかな?」
「ああ、そうだよ」
「自分じゃよく分からないけど、カイさんがそう言うならそうなんだろうね。じゃあ、おれもう行くね」
マエトはカイにそう言って、路地裏から出て行こうとする。
「あ、マエト!」
カイはもう一度マエトとフレンド登録をしようとメニューウィンドウを開く。
が、フレンド申請を送ろうとした指の動きが止まる。
数秒程、黙考するとカイはフレンド申請を送るのを止めた。
マエトは、カイの行動に首を傾げる。
「元気でな」
「……うん、カイさんもね!」
マエトはカイに手を振って、歩き出す。
カイも、そんなマエトに手を振って、マエトとは逆方向に歩き出した。
(なんとなくだけど………マエトとはもう会えないだろうな)
カイはそんなことを思いながら、出口に向かう。
不思議と、どう行けば大通りに出られるか分かった。
(死ぬとか、ゲームの引退とか、そうじゃない。多分、俺とマエトが出会えたのは、茅場ですら予想できない奇跡に近い何かなんだろう)
マエトと会えないことに、寂しさを感じるが、その顔は笑っていた。
(まぁ、元気そうならそれでいいよな)
路地裏を出ると、変わらずそこは多くのプレイヤーで溢れていた。
まるで、先程の路地裏での静けさが嘘のように思える程だ。
「カイ!」
名前を呼ばれ振り返ると、そこにミトが居た。
「ミト、どうした?」
「どうしたじゃないわよ!ログイン状態なのに急にフレンド機能の追跡が使えなくなって、皆で探したのよ!」
「悪かったよ。ちょっと野暮用でさ」
「野暮用?」
「ああ、一度しか会えなかった友人とのな」
そう言い、カイは後ろを振り返りふっと笑う。
「キリト達の所に戻るか、ミト」
「あ、ちょっと!もう!」
詳しい事を教えないカイに、ミトは少し怒る。
そして、カイが見た方を見る。
そこには、反対側の大通りに繋がる狭い一本道しかなかった。
コラボ終了!
今回、コラボを了承して下さったMaetoさんには感謝です!
そして、この先にMaetoさんが書かれたストーリーを掲載します!
§アインクラッド第20層《ひだまりの森》
巨大カマキリ型モンスター《キラーマンティス》などが出没する森林エリアを、2人のプレイヤーが歩いていた。カイとミトだ。
時刻はまだ朝の6時を少し過ぎた頃。いつもは8時に起きる2人だが、この日はたまたま早く目が覚めてしまった。かと言って朝食をとるにはまだ少し早いということで、2人は散歩をしていた。
プレイヤーホームのある第22層の森の方が安全だし近いが、そっちはもう行き尽くしてしまい、他の場所にしてみようということで、2つ下の層にやってきたわけだ。
早朝の森ということでまだ少し薄暗いが、攻略組トップクラスの2人にとってはどうということはない。
時折《
それでも一応モンスターの
そのとき、
「カイ、今......」
足を止めたミトの短い言葉に、カイも素早く
「あぁ、俺も聞こえた。──悲鳴だ」
それなりに離れていたようだが、間違いない。男の太い悲鳴が、2人の耳に入ってきたのだ。
声のした方角におおよその見当をつけると、2人は飛び出した。
数秒後、索敵スキルに4つの反応があった。
ただしモンスターではない。全てプレイヤー反応だ。
「オレンジカーソルが3つに、グリーンカーソルが1つ!」
「くそっ!!」
毒吐くと、カイは一気に加速した。ミトもスピードを上げて、それに続く。
少しずつ、
数メートル先の比較的
「あいつか......!」
人影を
そう思った矢先、オレンジカーソルの男の首が斬り飛ばされた。
「は......?」
思わず間の抜けた声を
そのまま接近し、その光景を目の当たりにして、2人は絶句した。
両手に剣を装備した1人の小柄な少年が、2人の
ほぼ同時に、右手の青白い片刃剣で男の
風を裂いて飛んだ蒼刃は、背後から襲い掛かろうとしていたもう1人の男の胸に突き刺さった。
心臓と首──2つの急所を破壊された男のアバターを蹴って飛び出すと、少年は
鋭く閃いた紅刃が、男の腹を一文字に切り裂き、一気にHPを吹き飛ばす。
わずかにタイミングをずらして、2つのアバターが砕け散った。
無数のポリゴン片が舞う中、音もなく体を起こすと、少年は腰の後ろに交差して吊った
「......なんか用?」
不意に、少年がそう言った。呆然としていたカイとミトは、そこでようやくハッとした。
だが、目撃した今でもまだ信じられない。顔立ちは幼く、背もかなり低いこの少年が、犯罪者プレイヤーを3人も単独で殺したことが。
そう。
過去の経験のせいで殺人には人一倍
しかし、まだあどけなさの残る顔と声の中にある途方もない冷たさが、これを現実だと突き付けてくる。
そのとき、少年の顔からすっと冷たさが消えた。小さく「あ」と呟いて右手を持ち上げる。
「鎌使いのお姉さんだ。えーと......ミトさん、だっけ?」
不意に名前を呼ばれ、ミトは驚いた。隣のカイも、わずかに目を丸くする。
「ミト、知り合いなのか?」
「え、えっと......」
手をおとがいに当てて、必死に記憶を
うんうん
「あー、髪の色イジったから、ちょっと
少年の言葉を聞いた瞬間、当時の鮮明な記憶が
「あのときの......25層で私とアスナを助けてくれた、2人組の子!」
1年ほど前に、ミトはアスナと一緒に25層に鉱石アイテムを採掘しに行って、鉱石エレメンタルの無限湧きバグと結晶無効化エリアという2重の
そのとき、ミトと一緒にエレメンタルを
「前に、俺とキリトに話してくれたやつか?」
「そう!」
そんなやりとりをする2人に、少年はにゅっと右手を挙げて
「どーもどーも、マエトっていいます」
そう言ってのんびりした表情を浮かべる少年──マエトだが、そんな彼に
「えっと......まずは自己紹介しないとね。改めて、私はミト。こっちはカイ。私の......パートナーよ」
結婚しているため、本当なら夫と紹介したいところだが、そうすると話があらぬ方向に行きそうな気がしてやめた。
そんなミトの考えを知ってか知らずか、カイは普通に挨拶した。
「カイだ。ミトとアスナを助けれくれたんだってな。俺からも礼を言うよ、ありがとう」
「いえいえ。アスナさんは元気ー?」
のんびりと
「えぇ、アスナも元気にしてるわ。......それで、その......」
そこで少しだけ口ごもるが、ミトは意を決して訊ねた。
「あなた......さっき、プレイヤーをキルしてた、わよね......?」
「うん、殺した」
即答だった。
あまりにもあっさりとした返答に、ミトは寒気を覚えた。何とか平静を
「その......どうして、そんなことをしていたの? あと、あのときアスナを守ってくれていた、あなたの友達は? もうコンビは解消したの?」
言いながら、ミトは背中に冷たい汗が伝うのを感じた。
マエトの目が、どんどん冷たくなっていくような気がしたから。
小さく息を吐くと、マエトはぽつりとした声で言った。
「死んだよ。オレンジに襲われたおれを助けようとして、殺された」
急激に冷たさを増した声にゾッとしつつも、カイは何とか声を絞り出した。
「じゃあさっきのは......
しかし、マエトは事も無げに、恐ろしいことを言ってのけた。
「ベルを......相棒を殺した連中は、とっくの昔に殺したよ。さっきの連中は、襲ってきたから殺しただけ」
それを聞いて、カイとミトはもう何度目かも解らない寒気を覚えた。
今の口ぶり。そして先ほど見た──首、心臓、腹といった急所を正確に、
それも、どう
「何人、殺したんだ......?」
思わず訊ねたカイだが、マエトは平然と答えた。
「さっきの3人で82人かなー......そろそろ宿帰って寝たいんだけど、いい?」
「あ、あぁ......」
すっと音もなく歩き出したマエト。その装備を改めて見て、カイは顔をしかめた。
黒のレザーシャツに、ぴったりした同色のレザーパンツとロングブーツ。グレーのレザーアーマー、ダークブルーのフーデッドマント、黒のマフラー。
機動力と隠密性に特化した、どう見ても暗殺用の装備だ。
「ま、待って!」
不意に、ミトが叫んだ。振り向いたマエトの目に残る冷たさを感じながら、ミトは右手を振った。
鈴のような音を鳴らして開いたメニューウインドウを操作し、マエトにシステム窓を飛ばす。
フレンド申請だ。
「何かあったら連絡して。私で良ければ、力になるから」
ミトがそう言った直後、別のフレンド申請窓が飛んできた。こっちはカイからだ。
「ミトに頼みづらいこととかあったら、俺の方でもいいぞ」
そう言う2人にじっと視線を送ると、マエトは申請を受託した。カイとミトのフレンドリストに、【Maeto】の名前が追加される。
「んじゃ、お疲れー」
そう言うと、今度こそマエトは背を向けて歩き出した。
どんどん小さくなっていく背中を見送りながら、ミトは言った。
「カイ。このこと、アスナとキリトには......」
最後まで言う前に、カイはミトの想いを察知し、それに応じた。
「あぁ、言わないでおく」
「うん、お願い」
自分と友人を助けてくれた2人の恩人。
その片方が殺され、もう片方は人殺しになっていたなど、あまりにもショッキングだ。
いつかは知る日が来るかもしれないが、まだ知らないくていい。
あの白髪の少年が負った傷の深さを思い、2人は沈黙した。
その頃、マエトもまた、フレンドリストに目を通していた。
リスト最上部に表示された【Kai】と【Mito】の名前を見て、ため息を吐く。
脳裏には、年上と
『何かあったら連絡して。私で良ければ、力になるから』
だからマエトはそれを嬉しく、ありがたく思い、そして同時に──
「じゃーなんで......あのとき助けてくれなかったんだよ......」
底冷えするような声を
仮想の朝日が、層の外周の隙間から入り込んでくる。
また、1日が始まる。
以上で、今回のコラボは終了です!
次回からいよいよGGO編スタートします!