「さぁ、始めようぜ。骸骨ムカデ」
トバルは刀を抜刀し、スカルリーパーへと接近する。
「ふっ!」
素早く刀を振り抜き、スカルリーパーの鎌を弾くと空いた懐目掛け渾身の突きを放つ。
突きでスカルリーパーが仰け反ると、そのまま下を潜り、背後を取って振り向き様に一太刀。
スカルリーパーは、尾の先の槍でトバルを攻撃するが、トバルはそれを払って骨と骨の繋ぎ目に刀を刺す。
その瞬間、スカルリーパーは体を反転させ、鎌でトバルに斬り掛かる。
トバルは反撃しようと刀を抜こうとするも、深く刺し過ぎた為、中々抜けなかった。
「チッ!」
トバルは舌打ちをし、刀を離して攻撃を回避する。
武器を手放し、無防備となったトバルにスカルリーパーは鎌の連続攻撃を放つ。
鎌の連撃がトバルに襲い掛かり、HPを一気に刈り取る。
その瞬間、スカルリーパーの攻撃は全て弾かれ、そのまま顎を下から打ち上げるようにトバルの攻撃が一閃される。
そのトバルの手にはもう別の刀があった。
「おい、骸骨ムカデ。テメーはSAOのフロアボスだ。その力は強大で、あの時は俺も死を覚悟してボス戦に臨んでた。だがな、お前は所詮SAOの……剣の世界でのボス。ここはALO……剣と魔法の世界だ。剣だけで戦うと思ってるか?」
トバルが使ったのは《複製魔法》。
だが、その魔法を使う条件として、複製する武器のスキルを完全習得していないといけない。
トバルの刀スキルはSAOクリアの段階で、既に完全習得しており、ALOに来て真っ先にその魔法スキルを習得した。
「おらよ!」
トバルは手にした刀を再びスカルリーパーの骨と骨のつなぎ目に突き刺す。
突き刺すとそのまま刀を手放し、再び《複製魔法》で刀を作り、再び突き刺す。
唐突だが、トバルの所持スキルについて説明をする。
トバルはSAOでは鍛冶師として生活し、所持スキルは鍛冶関係のスキルが殆ど。
その中で唯一の戦闘スキルが刀だった。
つまり、トバルは刀以外の戦闘スキルを取っていない。
刀を使う為に必要な曲刀スキルも、刀スキルを習得してすぐに捨てた。
《武器防御》も《戦闘時回復》もない。
トバルは戦闘系スキルに圧迫され、鍛冶系スキルが習得できなくなるのを嫌がり、戦闘系スキルは刀だけにし、残り全てを鍛冶系スキルにしている。
更に、トバルのステータスはAGIにガン振りされており、服も布系だけにし極限にまで速さを追及し、回避という選択肢を取っている。
いくらレベルが高くても、それでは高レベルプレイヤーでも命を落としかねない。
実際、SAOの攻略組で速さに特化したプレイヤーでも《軽金属防具》スキルは習得してるし、キリトやカイは金属系防具には防御力が劣るも、《革防具》スキルを取得していた。
だが、トバルは革防具でもある程度の重量があり、その所為で速さが落ちるのを嫌がり、布装備だった。
一発でも攻撃を食らえば、即時撤退、あるいは一撃死。
そんな状態だからこそ、トバルは強かった。
事実、75層フロアボス戦で、トバルはスカルリーパーからの攻撃を一度も貰うことなく戦った。
驚異の速さを誇るトバルは、その補正もあって驚異の速さで刀を複製し、スカルリーパーの身体へと何本も素早く刀を突き刺していく。
「よし!」
とうとう100本目の刀をスカルリーパーへと突き刺し、トバルは跳躍してスカルリーパーから距離を取る。
「終わりだ」
その瞬間、トバルは手をスカルリーパーへと向ける。
そして、短いスペルを唱える。
すると、スカルリーパーに突き刺さっている刀が光り輝き、そして、爆発した。
何度も何度も爆発が起き、スカルリーパーが悲鳴を上げる。
「武器を使い捨てとする代わりにその武器のスペック以上のダメージを与える魔法、《武器爆破魔法》。《複製魔法》は武器を瞬時に作れるが、それで作り出されるのは登録した武器より遥かにスペックが劣る物。
そう言って、トバルは地面に倒れているスカルリーパーに近寄り、再び《複製魔法》で刀を出す。
「だが、いくら弱い武器でも100回の爆発ともなれば、少しは痛いだろ」
スカルリーパーはトバルを見上げるように顔を動かし、まるでトバルを睨みつける様に見上げる。
「終わりだ」
刀最上位剣技《散華》。
4連撃の斬撃がスカルリーパーの頭部に当たり、最後の1撃が振り下ろされる。
スカルリーパーの頭が両断され、スカルリーパーは短い悲鳴を上げ、そして、消滅した。
「囮になるつもりが、倒しちまったか………まぁ、倒しちまっても構わないよな」
トバルがスカルリーパーと戦ってる頃、ヒースクリフはホロウアバターと対峙していた。
「ふむ、100層ボスにとかなりの強さにしていたが、流石にこれは強すぎたかもしれないな」
そう言いながら、ヒースクリフはホロウアバターの攻撃を十字盾で防御する。
ホロウアバターはあらゆる武器属性に耐性を持っており、流石のヒースクリフも攻めあぐねいで居た。
「やはり一度、私自らの手で戦てみるべきだったか。この様なモンスターが実装されたとなれば、顰蹙は免れないだろうからね」
だが、攻めあぐねいでいても、ヒースクリフは余裕の表情を崩さす、黙々と十字剣で攻撃していた。
更に言うと、ホロウアバターの特殊攻撃を、発動前に悉く潰している。
強力なスキルが軒並み潰され、ホロウアバターは何処か焦ってる様な反応をする。
「ただのデータに感情があるとは思えないが、ユイ君やノア君の例もある。あの2人はAIではあるが、データにだって予想外のバグによって感情を持つこともあるだろう」
世間話をするようにヒースクリフは攻撃の手を止める。
「ところで、なぜ私が君の攻撃を発動前に潰せるか分かるかね?」
ヒースクリフの問いに、ホロウアバターは何故か動きを止める。
その行動が、まるでヒースクリフの問いに答えようとするが、答えが分からなく固まってる様にも見える。
「答えは、私がSAOの開発者だからさ」
その答えに、ホロウアバターは僅かに反応する。
「ソードスキルは私がデザインした物。その為、何処にどんな攻撃が飛んでくるのかが分かる。そして、大型モンスターも私がデザインした。だから、分かるのだよ。技の発動前の行動も、どのような攻撃なのかも」
それは至極当たり前の答えだった。
開発者が相手なのだから、開発者がデザインした攻撃が開発者に当たる訳がない。
その事に、ホロウアバターは小刻みに震える。
「少々卑怯だったかね?だが、私はSAOのラスボスだ。この程度の卑怯、笑って許して欲しい。仮にも私の前任の魔王なのだからね」
煽るような言い方にホロウアバターが、動き出す。
その動きは茅場がデザインした物ではなかった。
それは、須郷がデザインし、後から付け加えた物だった。
《光の終焉》
発動し直撃したプレイヤーに、麻痺状態、暗闇状態、
いくら開発者と言えども、自身の知らないスキルでは防ぎようがない。
動きの止まったヒースクリフに向かって、ホロウアバターが渾身の攻撃を出す。
「良い攻撃だったよ、ホロウアバター」
ホロウアバターの攻撃はヒースクリフに当たらず、ヒースクリフはそれを回避した。
「だが、残念だったね。彼らがソードスキルを使えるようにしたように、私もユニークスキル《神聖剣》が使えるのだよ。実を言うと、《神聖剣》には
そう言い、ヒースクリフは十字剣を構える。
「もし、私がキリト君やカイ君の様なまっとうなプレイヤーならこのような真似はしないだろう」
そう言い、ヒースクリフは最強の攻撃を放つ。
神聖剣最上位剣技《アカシック・アーマゲドン》
ホロウアバターは敗北し、その場に膝を付き、そして、消滅した。
「だが、私は魔王だからね。この様な卑怯な手も使うのさ」