「くそっ!どうしてこうなった!?」
須郷は今の状況に悪態を吐く。
現在、カイ、ミト、キリト、アスナの4人は須郷が召喚したモンスター群に阻まれ須郷へと辿り着けていなかった。
だが、須郷が召喚したモンスターは先程召喚した《スカルリーパー》や《ホロウアバター》と比べると大した脅威ではなかった。
《スカルリーパー》や《ホロウアバター》はかなり強力なモンスターでソレの同時召喚によって、サーバーに負担を掛け過ぎ、サーバーの処理速度が一時低下したため、今の須郷には下級、よくて中級程度のモンスターしか召喚できなかった。
そのモンスターの群れの中を、4人は着実に倒し、須郷へと近づいている。
(何故だ……何故なんだ!?)
頭の中で、原因を探る。
こうなった原因は明白だった。
SAOのサーバーをコピーした物を使用したことで、SAOと共通するスキルの熟練度が引き継がれた事
ALOをスキル制にしたことで、レベル上げが必要なかったこと。
そして、何よりキリトとミトを子供と侮り、喋り過ぎたこと。
それが一番の原因だった。
「ふざけるな……僕は、僕はこの世界の王にして神なんだ!こんなガキ共にやられていいわけがないんだよ!」
須郷は何が何でも自身の否を認めず、そう叫ぶ。
「こうなりゃ見せてやるよ!神の力って奴をな!」
須郷はあるスペルを唱える。
だが、それはこの世界で誰も耳にしたことのないスペルだった。
それは、須郷もといオベイロン専用の魔法だった。
魔法が唱え終わると、カイ達の前に鏡が現れ、カイ達の姿を映す。
カイ達は何かしらの防御魔法かと思い、攻撃の手を止める。
すると、鏡の中に映った自身が飛び出し、攻撃を仕掛けた。
「これは!?」
「くっくっくっ!それは《夢幻魔法》と言ってね、イベントボス専用魔法さ。その鏡に姿を映したプレイヤーを模したモンスターを生み出す。本来はただプレイヤーを模すだけの魔法だけど、僕の使う《夢幻魔法》は一味違う。召喚されるモンスターのステータスは君達より遥かに高く、また君たちの使用してるナーヴギアへと送られる電気信号をナーヴギアより先に感知し、行動を先読みする。言うなれば、君たちの行動を予知して戦う最強のモンスターさ。さぁ、やれお前たち!そいつらを殺すんだ!」
須郷は召喚された4体のモンスター《ホロウ・カイ》、《ホロウ・ミト》、《ホロウ・キリト》、《ホロウ・アスナ》に命令を下す。
4体の《ホロウ・モンスター》は、4人に襲い掛かる。
仕掛けられた攻撃に、4人は対応しようと武器を振るう。
だが、4体のモンスターはそれを予知し、回避や防御を行う。
「くっ!行動を読まれるのは厄介だな!」
「落ち着け、キリト!所詮はシステムが動かしてるだけだ!」
「なら、そこに勝機があるわね!」
「必ず勝とう!」
「必ず勝つね……ならこれならどうだい?」
そう言って須郷は、再度モンスターを召喚させる。
「いくら雑魚モンスターと言えども、この量相手に加え君らの《ホロウ・モンスター》。これは勝ち目がないね!存分に楽しませて貰うよ!」
水を得た魚の様に、須郷は高笑いをしてカイ達を見る。
4人は、互いに背中を預ける形で陣形を汲み、範囲技を使いながら雑魚モンスターを蹴散らす。
だが、雑魚モンスターに紛れて襲いに来る自身の《ホロウ・モンスター》の攻撃が厄介で、苦戦を強いられた
あまりの物量の差に、カイ達は再び窮地に襲われた。
雑魚とは言え目の前に広がる雑魚モンスター。
そして、自身の《ホロウ・モンスター》。
今までに体験したことのない戦闘に、4人は精神的に疲弊していく。
「しまっ!」
その時、《ホロウ・ミト》がミトの右肩に鎌を突き立てた。
「ミト!」
ミトを助けようとカイが動こうとすると、《ホロウ・カイ》がカイに向かって突きを放つ。
カイは刀で攻撃を受け流すも、受け流すと同時に足蹴りが放たれ、モロに食らってしまう。
「カイ!ミト!」
「くっ!数が多すぎる……!」
キリトとアスナも、《ホロウ・キリト》、《ホロウ・アスナ》と大量の雑魚モンスターの猛攻でHPをじわりじわりと減らしていく。
「ほらほら、どうしたのさ?必ず勝つんじゃなかったのかい?言うだけなら誰でも出来るよ?有言実行しないと!」
須郷は愉快そうに笑って、カイ達がやられていく様を見続ける。
「はあああああああああああああ!!」「やあああああああああああああ!!」
その時、2人分の男女の声が響き渡る。
そして、声が聞こえると同時に、迫モンスターが次々と倒されていった。
「な、なんだ!?」
須郷は何が起きたのか分からず、驚きの声を上げる。
声の主の2人は、雑魚モンスターを蹴散らしていき、カイ達の元へと辿り着く。
現れたのは、
「お待たせしました、父上、母上」
「私たちも戦いますよ、パパ、ママ」
カイとミトを父上、母上と呼び、キリトとアスナをパパ、ママと呼ぶ2人に、カイ達は思わず驚いた。
「ま、まさか……」「その呼び方って……」
「つ、つまり……」「嘘でしょ…………!」
カイ達4人は、その2人の名を叫んだ。
「「ノア!?」」「「ユイ(ちゃん)!?」」
「「はい!」」
名前を呼ばれ、高校生と見間違うほどに成長した
「その姿は……」
「一体何が起きてるの………」
「なんで成長してるんだ………」
「なんか色々あり過ぎだよ………」
困惑する4人を他所に、ノアとユイは笑い合い、何があったのかを説明した。
「パパ、ママ………」
「くっ!俺も一緒に戦えれば………」
カイ達の戦闘を見て、ノアは思わずそう呟く。
戦う機能のないナビゲーションピクシーの2人は、戦うカイ達をただ眺めることしか出来なかった。
「共に戦いたちと言う気持ちは理解できなくもないが、戦えぬものが言っても足手纏いになるだけだ」
そんな2人に、《ホロウアバター》を倒したヒースクリフが声を掛ける。
「もう……倒したのか………」
「正道とは言えないが、魔王だからね。卑怯な手で倒すぐらい大目に見てもらおう」
茶化す様に笑うヒースクリフは、カイ達を見る。
「《ホロウ・モンスター》か。鏡に映した相手を模したモンスターを召喚し、戦わせる。面白いモンスターだ。やはり、須郷君も天才の1人か。あのままでは、カイ君たちがやられるのも時間の問題だろう」
「あの、お願いです!パパとママたちを助けて下さい!」
ユイはヒースクリフに、4人の応援に行くように頼む。
「ふむ………確かに私が応援に行けばなんとかなるだろう。だが、それも一時しのぎにしかならない。須郷君の持つ権限を何とかしない限りね」
そう言うと、ノアとユイは悔しそうに俯く。
「そんな顔をすることはない。何とかしないといけないが、出来ないわけではないからね」
「「え?」」
「ノア君、ユイ君。私はこれから作戦の最終段階へと入る。そこでだ」
一拍間を置き、ヒースクリフはノアとユイを見る。
「君たちの父と母の為に、戦う気はあるかね?」
「茅場の奴が?」
「はい、茅場さんが私たちにプレイヤー権限を与えてくれました」
「そのお陰で、こうしてプレイヤーとして戦うことが出来ます」
そう言い、ノアとユイはモンスターを見る。
「露払いは俺とユイがします」
「パパとママ、カイさんとミトさんは《ホロウ・モンスター》をお願いします」
ノアは刀を抜き、ユイは
「ノア、今度は私がノアを守ります」
「なら、君の事は、俺が必ず守る。だから!」
「「一緒に行こう!」」
そして、2人は同時に駆け出しモンスターに攻撃を仕掛ける。
「何と言うか……随分とたくましくなっちゃったわね………」
「それが子供ってもんだろ?いずれは親の手を離れて生きて行くんだ。ノアもユイちゃんも立派になったな」
「何時までも子供だなんて思ってたらダメだね。でも、ノア君にならユイちゃんの事任せられるかも」
「あ、アスナ!流石にそれはちょっと早いんじゃないかな……!」
アスナのユイを任せれる発言に、キリトは動揺する。
「動揺するのもいいがキリト、道は開けたぞ」
カイはそう言って、前を見る。
雑魚モンスターの大半をノアとユイが引き受けた為、後は《ホロウ・モンスター》4体と僅かな雑魚モンスターの軍団のみ。
「ノアとユイちゃんが作ってくれた道筋、無駄には出来ないぞ」
「あの2人が頑張ってるんだもの。親である私たちも頑張らないと」
「顔向けできないよね」
「………そうだな。今はとにかく勝とう」
4人は頷き合い、それぞれの《ホロウ・モンスター》と対峙する。
「「「「お前なんかに負けてたまるか、偽物!」」」」