ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第29話 業火刀

「ノア!左後方から敵3です!」

 

「心得た!」

 

ユイからの言葉に、ノアはすぐさま目の前のモンスターを倒し、そのまま左後方から来たモンスター3体を倒す。

 

「ユイ、しゃがめ!」

 

ノアはモンスターを倒すと、そのまま跳ぶようにユイへと走る。

 

ユイは言われた通り、その場でしゃがむとユイの後ろから迫っていたモンスターを斬り倒す。

 

「ノア、ありがとうございます!」

 

「約束だからな、守ると!」

 

そう言い合いながら、2人は互いに武器を向け、刺突を放つ。

 

2人の刺突は2人の顔を横切り、そのまま背後の敵を同時に貫く。

 

貫き倒すと、すぐさま反転し、背中合わせになる。

 

「私も、ノアを守りますよ!」

 

「ああ、頼もしい限りだ!」

 

2人は笑い合うと、そのまま駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノアとユイがナイスコンビネーションでモンスターたちを倒している間、カイ達は《ホロウ・モンスター》と戦っていた。

 

雑魚モンスターの殆どをノアとユイが引き受けてくれたお陰で、さっきよりは戦い易くなり、回避や防御が上手くいっていた。

 

(戦い易いとはいえ、決定打に欠けるな)

 

カイの言う通り、ナーヴギアへと送られる電気信号をナーヴギアより先に感知されるため、カイ達の攻撃は全て防がれている。

 

一騎打ちではなく、各個撃破で倒す作戦も考えたが、《ホロウ・モンスター》達は常に1対1を取るように行動し、各個撃破も難しかった。

 

「カイ、このままだといずれ俺たちが負けるぞ」

 

「やっぱり動きを先読みされるのはキツイわ」

 

「向こうが先に動く分、こっちの方が不利だわ」

 

(動きの先読み……先に奴らが動く………!)

 

3人の会話を聞き、カイはあることを思いつく。

 

「3人とも、背中合わせで集まるぞ」

 

「カイ?」

 

「急にどうしたの?」

 

「分かった」

 

カイの言葉に、ミトとアスナは疑問を浮かべるが、キリトは瞬時に理解する。

 

大技のスキルを放ち、《ホロウ・キリト》が大きく下がるとすぐに後退する。

 

ミトとアスナもカイの言葉を信じ、それぞれの相手を下がらせ、中央に集まる。

 

「それでカイ、何か作戦があるんだろ?」

 

「ああ。確証も無い、殆ど思いつきだ。どうだ、やるか?」

 

「ああ、勿論だ」

 

相棒であるキリトは真っ先に頷く。

 

「それで、どんな作戦?」

 

「こうなったらとことんやろう!」

 

ミトとアスナも了承し、4人は作戦を開始する。

 

「ふんっ!何か策があるみたいだけど、どうせ無駄さ」

 

そんな様子を、須郷は鼻で笑う。

 

須郷の召喚した《ホロウ・モンスター》は、ステータスが強力なだけでなく使用するスキルもまたコピーした対象と同じものを使う。

 

そこに、ヒースクリフの行ったソードスキル及びユニークスキルの解放。

 

それにより、《ホロウ・モンスター》たちも強力なソードスキルとユニークスキルも使えるようになった。

 

(強力な攻撃に、一歩先に行動できるモンスター………安易にソードスキルだとかユニークスキルだとかを使えるようにしたのが間違いだったな、茅場!この勝負、僕の勝ちだ!)

 

「よし、行くぞ!」

 

「おう!」「ええ!」「うん!」

 

カイの言葉を合図に、全員が飛び出す。

 

その瞬間、須郷は勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「いけ、《ホロウ・モンスター》共!そいつらを殺せ!」

 

須郷が大声を上げる。

 

《ホロウ・モンスター》たちはカイ達の動きを先読みし、先にソードスキルを放つ。

 

だが、須郷は気付かなかった。

 

確かに、現状でカイ達が勝つ確率は低かった。

 

だが、それは低いだけで0ではなかった。

 

視野が狭く、カイ達を見下し、逆転出来ると言う可能性を無視したため、気が付かなかった。

 

全員の装備が変わっていることに。

 

カイの手にはキリトの愛剣《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》が。

 

キリトの手にはカイの愛刀《焔群》が。

 

ミトの手にはアスナの愛剣《ランベントライト》が。

 

アスナの手にはミトの愛鎌《イクシオンサイス》が。

 

お互いの相棒との武器を入れ替え、4人は攻撃する。

 

使用武器の違いによる攻撃変更のパターン変化により、《ホロウ・モンスター》たちの反応が僅かに遅れる。

 

その僅かな遅れが致命的だった。

 

カイの持つ2本の片手剣は、《ホロウ・カイ》の右目と脇腹を貫き、キリトの持つ刀は《ホロウ・キリト》の身体を頭上から斬り、ミトの持つ細剣は《ホロウ・ミト》の喉元を正確に貫き、アスナの持つ鎌は下から振り上げる遠心力を利用とした一撃によって《ホロウ・アスナ》の腹部を貫く。

 

4体の《ホロウ・モンスター》はモロに食らった攻撃によって吹き飛ばされる。

 

「キリト!」「カイ!」

 

「アスナ!」「ミト!」

 

4人が自分の相棒の名を叫ぶ。

 

カイとキリトはお互いの相棒目掛け、武器を投げる。

 

互いの武器が上空で交差し、本来の持ち主の手に収まる。

 

ミトとアスナも同様にして渡すが、アスナは筋力値の関係で地面を滑らせるようにしてミトへと武器を返す。

 

「「これで!」」「「終わりよ!」」

 

立ち上がろうとする《ホロウ・モンスター》目掛け、4人が渾身の一撃を放つ。

 

細剣スキル最上位技《フラッシング・ペネトレイター》により、アスナは刹那の閃光となり、《ホロウ・アスナ》の心臓を打ち抜いた。

 

両手鎌スキル最上位技《スカーレット・ネメシスロード》により、ミトは真紅の軌跡を描き、《ホロウ・ミト》の首を斬り落とす。

 

二刀流スキル最上位剣技《ジ・イクリプス》により、キリトは太陽コロナの如く噴出した超高速の27連撃を繰り出し、《ホロウ・キリト》の身体を斬り裂く。

 

業火刀スキル上位剣技《紅蓮燦爛》により、カイは骨すらも灰にする強烈な焔を放ち、《ホロウ・カイ》の身体を斬り、その身体を燃やした。

 

4体の《ホロウ・モンスター》を葬ったカイ達は、須郷へと視線を向ける。

 

「う、嘘だ……!強力なステータスに動きの先読み………さらに同じスキルの使用………!負ける理由がないだろ!?攻撃は、確実にこちらが先に出せたはずだ!それなのに、どうして!?」

 

「それは、所詮はシステムによって動くだけのモンスターだからだよ」

 

「自我のない人形な自分たちに私たちは負けないわ」

 

「むしろ、システムが動かしてるだけに戦い易かったぐらいよ」

 

「あまり人間を舐めるなよ。人の意志や想いは、時にシステムの力を上回るんだからな」

 

そう言い、カイは須郷に刀を向ける。

 

同時にミト、キリト、アスナも剣先を向ける。

 

「もう終わりだ、須郷」

 

「大人しくしなさい」

 

「もう逃げれないわよ」

 

「諦めて、全ての罪を認めるんだな」

 

「終わりだって?大人しくしろ?逃げられない?罪を………認めろだとぉ!!」

 

須郷は激昂する。

 

「何も終わってないさ!僕がこの世界の王である限り、神である限り終わりなんてない!僕の持つ権限さえあれば、君達なんてどうとでも出来る!大人しくする必要も、逃げる必要も………ましてや罪を認める必要だってないのさ!」

 

須郷は再び手を上げる。

 

「システムコマンド!ペインアブソーバ、レベル10から0に変更!」

 

須郷は、仮想世界での痛みのレベルを調整するペインアブソーバのレベルを最小値まで下げた。

 

「レベル3以下にすると現実の肉体にも影響が出る様だが、そんなの知ったこっちゃない!システムコマンド!《オール・ボスモンスター》ジェネレート!」

 

今度はかつてSAOに存在し、今ALOに存在するボス級のモンスター全てを召喚しようとする。

 

そして、周りにモンスターがポップする前兆のポリゴン塊が出ていた。

 

「この期に及んで!」

 

須郷の諦めの悪さに、キリトは舌打ちする。

 

「蹂躙だ!ぐちゃぐちゃにして殺してやる!さぁ、死ね!」

 

「いや、そこまでだ。システムログイン、ID《ヒースクリフ》。システムコマンド、管理者権限変更、ID《オベイロン》をレベル1に」

 

突如、ヒースクリフの声が響き、須郷の周りに展開されていた管理者用のメニューウィンドウが消失する。

 

「なっ!?」

 

「システムコマンド、モンスター出現停止」

 

ヒースクリフがそう言うと、ボスモンスターたちの召喚が停止し、そのままポリゴンの欠片になった散った。

 

「システムにハッキングし、管理者権限を奪おうかと思ったが、まさか私のIDが生きてるとはね。お陰で、労せずシステムの掌握は完了した」

 

「か、茅場ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

須郷は絶叫を上げ、茅場を睨みつける。

 

「何も反省しないとはな………少しでも罪を悔いていたら、少しだけなら慈悲をやろうかと思ったけど…………必要はないな」

 

そう言って、カイは《焔群》を構える。

 

「あ、あああああ…………!!」

 

《焔群》に纏わり付く焔に、須郷が恐怖し、腰を抜かす。

 

「た、助けてくれ!僕が悪かった!反省する!だから、見逃してくれ!」

 

須郷は、土下座をし命乞いをする。

 

ペインアブソーバーがレベル0の状態で、カイの一撃を食らったらどうなるかなど想像したくない程だった。

 

だが、カイは須郷を許す気も、見逃す気も無かった。

 

「あ、明日奈!頼む、君から説得してくれ!助けてくれたら、もう金輪際結城家には手を出さない!婚約も解消する!だから!」

 

アスナにも助けを求めるが、アスナはその声を無視し、聞かなかったことにする。

 

「き、キリト君!ミト君!き、君達とはお世辞にもいい出会いをしたとは言えない………でも、まだこれからだ!これからは、良い関係を築こう!だから……ね?」

 

キリトとミトにも助けを請うが、キリトは後ろを向き、アスナの傍へと移動する。

 

「………須郷、私はアンタを許さないから」

 

ミトは、地べたを這いつくばる須郷にそう言う。

 

「アンタの所為で………私はカイと離れ離れになったのよ。アンタに手を差し伸べない理由には、十分すぎる理由よね」

 

そう言い、ミトも須郷から離れる。

 

「か、茅場!いや、茅場先輩!」

 

今度は憎しみ恨んでいる対象のヒースクリフにまで命乞いをした。

 

「須郷君、悪いが私からの慈悲を期待しない事だ。私も、君に対してかなり怒りが沸いてるんだ」

 

ヒースクリフはそう言い、須郷から離れようとする。

 

「そうだった」

 

だが、須郷は何かを思い出したように振り向く。

 

「須郷君、最後に1つ、面白い事を教えよう」

 

「な、なに………?」

 

「実は、SAOには隠しステータスが存在していたのだよ」

 

ヒースクリフのその言葉に、須郷だけでなくミトもキリトもアスナも驚く。

 

「本来は、ステータス画面には現れない仕様だから、君たちが知らなくても無理はない。その隠しステータスは、一部を除いたモンスターを倒す……いや、殺すことで数値が上昇する。だが、その上昇値は微々たる物、例え1日100体のモンスターを狩ったとしても、数値上昇による変化は早々起らないだろう」

 

そこで、一拍置き、ヒースクリフは続きを話す。

 

「だが、一気にその数値を上げる方法がある」

 

「茅場、それはなんだ?」

 

キリトは勿体ぶる言い方をするヒースクリフに、尋ねる。

 

「………PKだよ」

 

PKの言葉に、カイを除き全員が反応する。

 

「プレイヤーを攻撃、あるいは殺す事でその数値は一気に急上昇し、一定値まで一気に貯まる。すると、プレイヤーカーソルが一般人(グリーン)から犯罪者(イエロー)になる」

 

「ま、まさか、その隠しステータスって…………」

 

「その通り………名を《カルマ値》。SAOにおいて一般人と犯罪者を分ける数値だ」

 

カルマ値と言う隠しステータス。

 

そんなものがあったことに、全員が驚く。

 

「《カルマ回復クエスト》は、カルマ値を減少させる為のクエストで、カルマ値の数値によって難易度は大きく変わる。ちなみに、放置でカーソルの色が戻るのも、時間経過によって数値が減少するからだ。まぁ、カルマ値が高すぎると回復にまではかなりの時間を要するだろうがね」

 

そう言い、ヒースクリフは須郷へと視線を戻す。

 

「須郷君、君がSAOのサーバーをコピーしたことで、このカルマ値も引き継がれている。ALOはPK推奨のゲームだから、犯罪者(イエロー)システムはないがカルマ値は存在する」

 

説明を続け、ヒースクリフはある画面を見せる。

 

「見たまえ、須郷君。これが、君の、妖精王《オベイロン》のカルマ値だ」

 

そう言って見せられたその数値に、須郷は目を引ん剥く勢いで見開く。

 

「こ、この数値は!?」

 

「ALOに使われてるカーディナル・システムのバージョンは少々古いが、それでもカーディナルだ。カーディナルは優秀でね、君が過去に行ってきた悪事もネット上で検索し、それを既存の法律に照らして君専用のカルマ値を設定していたのさ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

長々とカルマ値の説明をするヒースクリフに、アスナが口を挟む。

 

「カルマ値の話は分かりましたけど、その話が今と何の関係が………」

 

「本題はここからだ、アスナ君」

 

ヒースクリフは須郷へと向き直り、話を続ける。

 

「須郷君、業火の意味は分かるかね?」

 

「………は?」

 

「知らないなら、教えよう。業火とは、激しい炎や大火の例えに使われる。だが、もう1つ意味がある。……………地獄の罪人を苦しめる猛火と言う意味だ。ならば、《業火刀》がただの焔を纏うだけのスキルと思うかね?」

 

「…………ま、まさか!」

 

キリトが何かに気づき、声を上げる。

 

キリトだけでなく、ミトも、アスナも、そして、須郷も気づく。

 

「《業火刀》とは、《対人特攻》スキルではない。相手のカルマ値が高ければ高いほど、威力が上昇する《対(カルマ)特攻》スキルだ。そして、炎傷状態付与も実際は業火状態付与だ」

 

ふっと笑うヒースクリフに、須郷は顔を青ざめさせ、全身を震わせる。

 

「正直、カイ君とのデュエルの時は焦ったよ。SAOのカーディナル・システムは、私にも膨大な数値のカルマ値を設定したからね。お陰で、もしカイ君の《業火刀》のスキルが当たったら私の正体がバレると冷や冷やした」

 

その言葉に、ヒースクリフがカイとのデュエルの時に、何処か焦りを感じていたのはソレが理由だったのかとキリトは納得する。

 

「それで、須郷君。君は、300人のSAOをプレイヤーをVR世界に監禁し、非道な実験のための、実験動物として扱った。加えて、グランドクエストに関する詐欺罪、他にも会社が管理するサーバーの私的利用、カイ君の家族の殺害や君が過去に起こした悪事…………私程でないにしろ、君はかなりのカルマ値を有している」

 

「あ、ああ………!」

 

「おまけにペインアブソーバは今はレベル0。そこに、《業火刀》の《対(カルマ)特攻》。死なないだろうが、きっと死ぬほど辛く苦しい痛みが、現実でも君を襲うだろう」

 

「い、いやだあああああああああああああああああああ!」

 

「話は済んだか?」

 

「ひっ!?」

 

大人しく、ヒースクリフの話が終わるのを待っていたカイはようやくかと言いた気に刀を構える。

 

「須郷……」

 

「た、たしゅけて…………!ゆるして………!」

 

鼻水を垂れ流し、目から涙を流し、何度も許しを請う須郷。

 

だが、カイは止まらない。

 

「終わりだ」

 

《焔群》が今まで以上に膨大な炎に包まれ、振るわれる。

 

居合斬りが放たれ、そのまま反転からの斬り下ろし、斬り上げ、左右からの袈裟斬り、突き、突き刺したまま捻って刃を振り上げ、最後に渾身の力を籠め、頭上から叩き割る様に刀を振り下ろす。

 

業火刀スキル最上位剣技《業火》。

 

「うわああああああああああ!!?痛いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!たしゅけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!からだが!からだがあちゅいいいいいいいいいいいいい!!」

 

炎に包まれ、絶叫し、のたうち回る須郷。

 

「お前にはお似合いの最後だ。その痛みと熱を、忘れるなよ。忘れたら…………その時は、俺が思い出させてやる」

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」

 

その絶叫を最後に、須郷のHPは底を尽き、アバターが砕け散った。




㊗ALO完結。

ようやく、業火刀のスキルの本当の能力を明かせれました。

残ってる謎も、全部次回で説明し、ALO編は完結します。

ALO完結後は短編やら番外編とか書きつつ、プログレ版を投稿します。

GGO編は今しばらくお待ちください。

それでは、また次回
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