ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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エピローグ

ALO事件から4ヶ月の月日が経った。

 

現在、カイ達をはじめとしたSAO事件当時高校生以下だった未成年は、都立高の統廃合で空いた校舎を利用した学校、通称“帰還者学校”へと入学した。

 

入学して1ヶ月。

 

最初こそは、何処か遠慮気味に接していた生徒たちも、今では普通の学生の様に和気藹々とSAOでは味わえなかった学生生活を謳歌している。

 

そして、現在カイは自身が所属する教室で古典の授業を受けていた。

 

古典の文と訳が映し出されたELパネルを眺め、カイは手元のタブレットPCに内容を書き写す。

 

暫くすると、鐘の音のようなチャイムが流れ、授業の終わりを告げる。

 

「それでは、今日の授業はここまで。課題ファイル16と17を転送するから、来週までにアップロードしとくように。では、また来週」

 

初老の教師は、片手に資料を抱え、もう片方の手を腰に当ててゆっくりとした動きで教室を出ていく。

 

タブレットPCを操作し、ダウンロードされた課題を確認する。

 

確認が終わると、心の中で「量が多い」と呟き、タブレットPCの電源を落とし、鞄に放り込んで立ち上がる。

 

「伊緒、飯行こうぜ」

 

カイが立ち上がると、仲のいい友人がカイを昼食に誘う。

 

「悪いな。今日は先約があるんだ」

 

「ああ、なるほどな。羨ましいな、こんちくしょー!」

 

肩を軽く殴られ、カイは「痛いだろ」といい、肩を軽く殴り返す。

 

その後は、互いに笑い合い、「またな」と手を軽く振って別れる。

 

「少し遅くなったな」

 

スマホで時間を確認しつつ、足早に廊下を移動する。

 

そして、カイが辿り着いたのは、校舎の端っこにある部屋だった。

 

元は何かしらの部室の様だが、今は使われなく、また位置的にこの場所を訪れる生徒や教師もいない。

 

その部屋の扉を、カイはノックする。

 

3回ノックし、一拍間をおいて、再度3回ノック。

 

すると、ガチャッと鍵が開き、扉が開かれる。

 

「遅いよ、伊緒」

 

「悪い、少し友達に絡まれたんだ、深澄」

 

カイを出迎えたのはミトだった。

 

この部屋は、カイとミトの秘密の部屋でもある。

 

部屋に入り、置かれている安物のソファーに腰掛けると、ミトは置いてあった鞄から包を二つ取り出す。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとうな」

 

ミトから包を受け取り、カイは早速開ける。

 

「お、これってもしかして」

 

「そう、74層の安全地帯で食べたハンバーガー。明日奈と一緒に何とか再現しようって試行錯誤を繰り返して、やっとできた試作品1号よ」

 

「はは、懐かしいな。いただきます」

 

手を合わせ、カイは早速齧り付く。

 

2度、3度と租借を繰り返し、飲み込む。

 

「………どう?」

 

「うん、そうだな………味は大分近いけど、まだまだって感じかな」

 

「あちゃー……明日奈と作った時は似てると思ったけど、1人で作るとやっぱダメか」

 

ミトは悔しそうに溜息を吐く。

 

元々、リアルでのミトは料理をあまりしないらしいが、その腕は決して悪くはない。

 

だが、SAOでは《料理》スキルを完全習得していた為、SAOでの料理の腕を知っている者からしたら、その差は驚きである。

 

それでも、カイの為にこの4ヶ月必死に母親やアスナの指導の元、それなりのレベルにはなっていた。

 

「これでも十分に美味しいぞ」

 

「それでももっと上達しないと。でなきゃ、私自身が納得できない……伊緒の彼女として」

 

そう言うミトの顔は真っ赤になっていた。

 

ミトはこうして、唐突にこのような発言をする。

 

その度に、顔を真っ赤にして照れてる。

 

そんなミトを見てカイは、「照れるなら言わなきゃいいのに」と思う反面、「そんなミトも可愛い」と思っている。

 

「ありがとうな」

 

カイはミトの手を握ってお礼を言う。

 

「楽しみにしてるよ、またあの味が食べれるその日をな」

 

「……うん、期待してて」

 

「じゃあ、残りをさっさと食べよう。ゲーム、やるんだろ?」

 

「もちろん」

 

そう言い、2人は残りのハンバーガーを食べ進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、俺、納得がいきません」

 

カフェテリアの西側の窓際のテーブル。

 

そのテーブルに陣取っている4人のうちの1人の長髪の少年が呟く。

 

「どうして、俺には師匠が生きてること教えてくれなかったんですか、刀祢さん!」

 

そう言って、長髪の少年レオこと“獅子戸廉”が叫ぶ。

 

「れ、廉君!声が大きいって」

 

叫ぶ彼に、隣に座っている少女シリカこと“綾野珪子”が宥める。

 

「大丈夫よ。皆ご飯や話に夢中で、多少の大声じゃ聞こえないって」

 

そう言って、リズベットこと“篠崎里香”がいちごヨーグルトを飲み干しながら言う。

 

「別に好きで黙ってたわけじゃねぇよ。伊緒の奴からも言われただろ?情報漏洩防止のために、必要最低限の奴にしか自分が生きてるのは教えなかったって」

 

レオに説明するようにトバルこと“打鉄刀祢”は言う。

 

「俺、師匠の弟子なのに………!」

 

レオはALOでの救出作戦に当たって、カイの生存の事は知らされていなかった。

 

知らされぬままトバル経由で事情を知り、協力していた。

 

カイが生きてることを知ったのは、全てが終わった後だった。

 

「まぁ、別にいいじゃない。何はともあれ、みんな無事だったんだし」

 

「里香さん、そう言う貴女だって、師匠が生きてること知ってましたよね?」

 

「えっと………それは、まぁね、仕方ないんじゃないかしら?」

 

何を隠そう、リズもまたカイが生きてることを知ってた1人だった。

 

カイは、ALOがスキル制のPK推奨ゲームと知り、強力な武器が必要だと考えた。

 

その時、茅場からALOがSAOのサーバーのコピーを使用していることを思い出し、もしやと思って調べると、アイテムデータの中にキリト達の愛用した武器のデータを発見した。

 

そのデータを復元し、カイとキリトの武器(エリュシデータは除く)はトバルが、ミトとアスナの武器はリズが製作した物だったこともあり、カイはトバルとリズに頼んで、武器の製作を依頼した。

 

「はぁ~、俺ってもしかして師匠からの信頼ないのかな………」

 

自虐になり、テーブルに突っ伏すレオ。

 

「そう落ち込むなよ」

 

そんなレオを、トバルが励ます。

 

「そもそも、火妖精族(サラマンダー)達の説得をお前に頼もうって言いだしたのは伊緒だぞ」

 

「え?師匠が?」

 

その言葉に、レオが顔を上げる。

 

「ああ。レオの腕なら火妖精族(サラマンダー)達を説得することが出来る。俺の信頼する一番弟子なんだからなって言ってたぞ」

 

「一番弟子………!へへ……!」

 

一番弟子と言う言葉に、レオは思わず笑顔になる。

 

その笑顔に、シリカは「可愛い」と思い、リズは「チョロくない?」と思った。

 

「それにしても、刀祢さんと里香さんって優しいですよね」

 

すると、シリカが注文したエビピラフを食べながら言う。

 

「ああ、確かに。師匠に深澄さん、それに、和人さんと明日奈さんの4人を暫くは2人っきりで楽しませようって言いだした時は驚きましたよ」

 

レオも注文したカレーライスを食べながら言う。

 

「そりゃ、伊緒と深澄はリアルじゃ6年ぶりの再会なんだぞ?暫く2人っきりにしてやるのが普通ってもんだ」

 

トバルは、注文した定食を綺麗に平らげ、食後のお茶を啜りながら言う。

 

「そうよね。明日奈もALOじゃ辛い目にあってたのに、ずっと1人で頑張って耐えて来たんだもん。きっと和人に甘えたいだろうし、そっとしてあげたいのよ」

 

リズは飲み終えたいちごヨーグルトのパックを潰して言う。

 

「なんて言うか、里香さんと刀祢さん、お姉ちゃんとお兄ちゃんって感じだね」

 

「師匠が刀祢さんが優しい人だって言ってたの分かったよ」

 

レオとシリカは小声で言い合いながら、笑う。

 

「それで、お前たち今日来るのか?」

 

「オフ会、どうなのよ?」

 

笑みを浮かべながら、答えは分かり切っていることを聞いて来るトバルとリズに、レオとシリカも笑って答える。

 

「もちろん」

 

「行くに決まってますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、カイとミト、キリトとアスナ、そして、ジークとリーファの6人はオフ会の会場となってるエギルの店“ダイシー・カフェ”へと向かっていた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。本当にいいの?」

 

「関係ない俺たちまで参加してしまって………」

 

このオフ会はSAOプレイヤーたちのオフ会なので、ジークとリーファの2人が居るのはおかしいのだが、カイ達は折角だからとジークとリーファを誘った。

 

「いいに決まってるだろ?」

 

「2人は俺達に協力してくれた恩人だからな」

 

「そのお礼を兼ねてのお誘いよ」

 

「折角なんだから楽しんでいってよ」

 

カイ達にそう言われ、ジークとリーファは場違いなのではと思いながらも、4人の後を付いて行く。

 

店に着き、キリトが先頭に立って扉を開ける。

 

その瞬間、歓声、拍手、口笛、クラッカーを鳴らす音が一斉に響き渡る。

 

決して広いとは言えない店内に、沢山の人が入っており、その手には飲み物の入ったグラスがあった。

 

「俺達は遅刻してないぞ」

 

「主役は最後に登場するもんでしょ」

 

「実はお前たちには少し遅い時間を伝えといたんだよ。まぁ、取りあえず入れ」

 

トバルとリズの2人によって、6人は店の中へと入る。

 

そして、カイとミト、キリトとアスナの4人を即席の壇上へと誘導する。

 

「それでは!」

 

「お前ら、グラスを掲げろ!」

 

リズとトバルが全員にそう言う。

 

そして、全員がグラスを掲げると、声を揃えて言う。

 

『カイ、キリト、ミト、アスナ!SAOクリアおめでとう!!』

 

明らかに事前に打ち合わせされている行動に、カイとキリトは間抜け面を晒し、ミトとアスナも聞いてた話と違いぽかんとする。

 

このオフ会は、カイとキリト、トバルにリズ、そして、店主のエギルで企画されたものだが、カイとキリトに内緒で3人は、功労者の4人を労う慰労会でもあることにした。

 

カイとキリトの功績は言わずもがな、ミトとアスナもALOでの最終決戦では獅子奮迅の働きをし、見事未帰還者の救出に貢献した。

 

真の意味でSAOをクリアしたのは、紛れもなくカイ達4人の功績だと、トバルが言い、それにリズが賛同。

 

だからこそ、こうして4人を労うことにした。

 

唐突にスピーチをやらされたり、自己紹介などを終え、宴が始まる。

 

様々な人たちからの祝福を受け、カイとキリトはヘロヘロになりながらカウンター席に座る。

 

「エギル、バーボン、ロックで」

 

「なら、俺はウイスキーのストレート」

 

「何言ってんだよ、未成年コンビ」

 

そう言い、エギルは2人に烏龍茶を出す。

 

丁寧に、キリトのにはロックアイスを入れ、カイのはそのまま出す。

 

「それにしても、カオスだな」

 

「確かに」

 

後ろでバカ騒ぎをする連中を見つめ、カイとキリトは呆れた様に笑う。

 

女性陣に囲まれ頭を撫でられ可愛がられるレオ、そんなレオを見て不機嫌そうにするシリカ。

 

アルコールは飲んでない筈なのに酔った様にはしゃぐリズ、そんなリズを介抱するトバル。

 

酔ってディアベル塾歌を熱唱する元ディアベル塾卒業生(未成年除く)と、指揮をするディアベル。

 

完全に混沌としており、ここにいるメンバーがかつてSAOの中で命賭けで戦っていた歴戦の猛者たちとは信じられない光景だ。

 

「ま、これも全部SAOをクリアしたからこそだろうな」

 

カイはそう言い、グラスをキリトへと向ける。

 

「何はともあれ、お疲れ、相棒」

 

「お前もな、相棒」

 

カイとキリトはそう言葉を交わし、グラスをぶつけ合う。

 

「よう、エギル。俺には本物くれ」

 

そんな所に、クラインがやって来てエギルに酒を注文する。

 

「いいのか?これから会社に戻るんだろ?」

 

「その予定だったけど、無理矢理半休にしてもらったんだよ。だから、今日はもうオフだ」

 

そう言うクラインに、「しっかりしてるな」とエギルは言い、クラインに酒を提供する。

 

「キリトさん、カイさん」

 

すると、今度は元《アインクラッド解放軍》のギルドマスターのシンカーがやってくる。

 

「ユリエールさんと入籍したそうで。遅くなりましたけど、おめでとうございます。」

 

「俺からも、おめでとうございます」

 

「ありがとうございます。まだまだ、現実に慣れるので精一杯って感じですし、漸く仕事も軌道に乗って来た所ですけどね」

 

照れくさそうにシンカーは言い、席に座る。

 

「そう言えば、見てるっすよ!新生《MMOトゥデイ》!」

 

クラインがグラスを空にして、シンカーに言う。

 

大人2人で話が弾んでる所で、カイはエギルにあることを聞く。

 

「なぁ、エギル。アレはどうなった?」

 

「ああ、今、ミラーサーバがおよそ50……ダウンロード総数は10万、実際に稼働している大規模サーバが300ってところだな」

 

そう言い、ノートパソコンを取り出し、画面を見せる。

 

須郷の1件で、ALOを始めとしたVRMMOと言うジャンルは衰退の一途を辿っていた。

 

SAO事件の時は、あくまで茅場1人の起こした狂人の事件として例外的に扱われたが、須郷の所為でVRワールドが犯罪に利用されるのではと言う事から、完全に回復不能となり、ジャンルの衰退は確実の物となっていた。

 

そんな中で、ALOで茅場がカイに最後に託したプログラム、《世界の種子(ザ・シード)》が活躍した。

 

これは、VRMMORPG作成・制御用のフリーソフトで、これをダウンロードすれば、あとは回線のそこそこ太いサーバーを用意すれば誰でもVRMMOの世界が創れる。

 

これのおかげで社会的批判を受け、衰退しかけていたVRMMOが復活し、無くなるはずだったALOも別の会社に運営が任されることになった。

 

そして、《世界の種子(ザ・シード)》によってALO以外にも新しい世界が誕生した。

 

中小企業から個人に至るまで様々な人が運営者になり、次々と新しいVRMMOが生まれ、更にそれらは相互に接続もされるようになり、作ったキャラクターを他のゲームで使えるコンバートシステムなどもできた。

 

「私達は多分今、新しい世界の創生に立ち会っているんです。その世界を括るにしてもMMORPGという言葉は狭すぎる。《MMOトゥデイ》も新しい名前にしたいのですが、なかなか、これ、という単語が出てこないんですよ」

 

「う~~~む」

 

シンカーの言葉に、クラインが腕組して考え始めた。

 

「ギルドに《風林火山》なんて名前付ける奴のセンスには誰も期待してないぞ」

 

「なんだと!言っとくが、新生・風林火山には加入希望者が殺到中なんだぞ!」

 

「可愛い女の子がいるといいな」

 

「ぐっ……」

 

クラインが言葉に詰まり、その様子がおかしくカイとキリトはつい笑ってしまった。

 

「おい、二次会に予定変更は無いんだろうな?」

 

「ああ、今夜十一時にイグドラル・シティ集合だ」

 

「それで、アレは動くのか?」

 

「おうよ。新しいサーバ群を丸々一つ使ったらしいが、なんせ《伝説の城》だ。ユーザーもがっつんがっつん増えて、資金もがっぽりがっぽりだ」

 

「うまく行くといいな」

 

カイはそう呟き、残った烏龍茶を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漆黒の夜に包まれたALOの空を、リーファが飛んでいた。

 

今までなら飛翔力を気にして、効率よく飛ぶ方法を模索していたが、今のALOではそんなことを気にしなくてよくなった。

 

世界は一度崩壊し、新しく生まれ変わって、全ての妖精に等しく無限に飛べるようになった。

 

先週開かれた《アルヴヘイム横断レース》にて、リーファが1位で、カイとキリトの2人が僅差でキリトが2位、カイが3位となった。

 

多くの者がリベンジを誓い、こう言うイベント事で飛ぶのもリーファは悪くないと思った。

 

だが、それ以上に何も考えず、ただただ飛び続けることの方がリーファは好きだった。

 

飛ぶスピードはどんどん加速し、体感的に今までの最高速度へと到達した瞬間、リーファはその速度を維持したまま急上昇をした。

 

雲を突き抜け、月へと向かって飛ぶ。

 

だが、徐々にスピードは落ち、とうとう0になる。

 

その瞬間、リーファの身体はそのまま自由落下へと入り、地上へと落ちて行く。

 

「リーファ!」

 

ある程度落下すると、突如、体が引っ張られる感覚がリーファを襲った。

 

リーファの手を掴んだのは、ジークだった。

 

「全く、集合時間になっても来ないから心配したぞ」

 

「ジーク、ごめん。ありがとう」

 

翅を動かし、ホバリングしてジークから離れる。

 

「どうかしたのか?」

 

リーファが離れると、ジークはリーファにそう尋ねる。

 

「やっぱ、ジークには隠せないか」

 

リーファは困った笑みを浮かべ、話し出す。

 

「今日のオフ会さ。楽しかったよね」

 

「ああ。見ず知らずの俺達にも昔からの友人の様に話しかけて、輪に入れてくれた。あんな楽しいオフ会は初めてだ」

 

「うん、あたしも。………でもさ、やっぱり遠いよね」

 

リーファは悲しそうに言う。

 

「ALOがさ、より大きなVRMMO連結体(ネクサス)に参加するって計画知ってる?」

 

「ああ、小耳にはさんだ程度だが、手始めに月面を舞台にしたゲームと接続するらしいな」

 

「うん。だから、そうなったらあの月まで飛んで行けるようになるんだよ。それに、もっと多くのVRMMOと繋がって行って、それが一つの惑星として設定されて、惑星間を行き来する船も出来る。そうなったら、きっとどんな所にも行けるし、辿り着けるの。…………でも、お兄ちゃんたちの所には行けないよね」

 

今日参加したオフ会は、本当に楽しいものだった。

 

だが、同時にそこに参加している元SAOプレイヤー同士の絆を感じ取ってしまった。

 

アインクラッドで共に戦い、泣き、笑い、恋をした記憶は、アインクラッドが無くなった今も尚、全員の記憶の中で鮮やかに輝きを放っている。

 

それが、リーファにとって堪らなく悔しかった。

 

「………そうだな。キリトさん達にとってSAOでの2年間は、本物だ。そこで得た絆は、何物にも代えがたい代物だろう。だが、決して行けないことはないはずだ」

 

ジークはそう言うと、リーファの手を取る。

 

「ついて来てくれ」

 

「え!?ちょっと!?」

 

引っ張られるように暫く空を飛ぶと、アルヴヘイムの0時を知らせる鐘がなる。

 

鐘の音を聞き、ジークは急ブレーキをかける。

 

「わっ!?」

 

急に止まるので、リーファは思わずジークの背中にぶつかる様にして止まる。

 

「ちょっと、急に止まらないでよ!」

 

「す、すまない。急がないと思ってしまって………だが、間に合わなかったな」

 

そう言い、ジークは月の方向を見上げる。

 

ジークの視線を追い、リーファも月を見る。

 

月は満月だ。

 

そして、その満月は徐々に欠けはじめた。

 

リーファは月蝕かと思ったが良く見ると円形ではなく楔型をしていた。

 

それは、いくつもの薄い層が重なった一つの巨大な城だった。

 

「あ、あれって!?」

 

「SAOの舞台となった浮遊城《アインクラッド》。引き渡されたALOのデータの中にあったらしくて、それを多くの人の手によって復活したらしい」

 

ジークはアインクラッドを見つめ言う。

 

「今の俺達では、キリトさん達の絆には敵わないだろう。だが、今の俺達なら、かつてキリトさん達が辿った道を進める。そして、キリトさん達が見れなかった先を、一緒に見ることが出来る。ここから作って行こう、俺達とキリトさん達との絆を。それに………」

 

一拍間を置き、ジークはリーファを見る。

 

リーファもジークの方を見る。

 

「俺はあの城の頂上に行きたい。頂上に立って、ALO全土を眺めたいんだ。そして、その時、隣にリーファに居て欲しい」

 

「え?」

 

「リーファ、俺と共にあの城の頂上まで、飛んでくれないか?」

 

「………そうだね」

 

リーファは呆れた様に笑った。

 

「ジーク1人じゃ迷子になって、頂上になんて行けないしね」

 

「それは………そうかもな」

 

「仕方ないから、付いてって上げるよ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「こちらこそ」

 

互いに手を握り合って笑う。

 

その時、多くのプレイヤーたちが《アインクラッド》目掛けて飛んでくるのが見える。

 

その一団を見て、ジークとリーファは笑い合う。

 

「行こう、リーファ!」

 

「うん、ジーク!」

 

2人は手を繋いだまま、《アインクラッド》へと飛んだ。

 

カイ達と新しい絆を作る手始めに、新生《アインクラッド》に一番乗りして、出迎えてやろう。

 

そんな気持ちを持ち、2人の風妖精族(シルフ)は浮遊城の頂を目指し、夜の空を飛ぶ。




ALO完結です。

ここまでのご視聴ありがとうございます。

ちなみに、レオとトバルの名前の読みは、レオが“ししど れん” トバルが“うちがね とうや”です。

炎の剣聖の本編はここで一旦終了です。

今後は、アインクラッド編で書けなかった小話や、IF話、など様々な短編を書きつつ、プログレ版を書いていきます。

ある程度進んだら、GGO編に進みます。

一応マザーズ・ロザリオ編までは書くのでお楽しみに。
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