ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

111 / 132
第3話 アパートの隣人

とある学校から、1人の女生徒が出て来る。

 

生徒の名は、朝田詩乃。

 

GGOでは、《シノン》と言う名前でプレイをしている。

 

彼女の現実は高校生だ。

 

だが、シノンは好きで高校生をしているわけではない。

 

シノンの保護者は、祖父母だ。

 

父親は幼いころに事故で亡くなり、その影響で母親は心を病んでしまい、シノンを娘と認識できず歳の離れた妹の様に思ってしまっている。

 

その為、祖父母が保護者代わりとなり、その祖父母の願いもあって高校生になった。

 

シノンとしては、高校に進学せず就職するか、専門学校で就職のための訓練をするか望んだが、昔気質の祖父はそれを許さず、祖母もいい学校を卒業して、ちゃんとした家に嫁いで欲しい、そうでないと死んだ父親に申し訳が立たないと泣かれ、やむなく進学することにした。

 

「早く卒業したい………」

 

冷たい乾いた風が頬を撫で、マフラーを巻きなおしつつシノンはそう呟く。

 

そのまま現在1人暮らしをしているアパート近くの商店街へと向かい、本屋を覗き、文具店で消しゴムとノートを買い、残金から夕食の献立を考えていると、不意に細い路地から声を掛けられた。

 

「朝田ぁ」

 

そこには、シノンと同じ制服を着た女子生徒が三人居た。

 

その三人の顔を見るなり、シノンはうんざりとした表情をする。

 

「こっち来いよ」

 

「……何?」

 

横柄な仕草で、シノンを路地裏に来るように言う女子生徒に、シノンは従わずその場で用件を聞こうとする。

 

「いいからこっち来いよ」

 

すると、そのまま手首を掴まれ、路地裏に引きずり込まれる。

 

そのまま、商店街から見通せない路地の奥へと連れ込まれ、シノンは囲まれる。

 

「悪いんだけどさ、金貸してくんない?ちょっと遊び過ぎて、帰りの電車賃が無くなっちゃってさぁ。明日返すから、こんだけ貸して」

 

そう言い、リーダー格の女子生徒、遠藤は指を1本立てる。

 

100円でも1000円でもない、1万円だ。

 

明らかにおかしい金額に、シノンは溜息を吐きたくなった。

 

「そんなに持ってる訳ないじゃない」

 

「なら下ろしてきて」

 

遠藤とその仲間たちは、シノンの友達ではない。

 

一時期、シノンは彼女たちを友達と思ったこともあるが、実際はシノンが1人暮らしだと当たりを付けて接触してきただけだった。

 

最初こそは友達みたいに接してきてくれたが、次第に本性を現し始め、友達だろと迫り、家の合鍵を要求した。

 

シノンはおかしいと思いながらも、遠藤たちの言う通りにしていた。

 

そして、5月の末日。

 

夕方、自宅に帰宅したシノンが感じた、自分の部屋に誰かが居る気配だった。

 

耳を澄ませると、遠藤たちの声に交じって、数人の知らない男の声が聞こえた。

 

そこで、シノンは自分が良い様に利用されていたことに気づき、警察を呼んだ。

 

「知人だ」と言い張る遠藤と、「知らない人だ」と言い張るシノン。

 

話は平行線を辿ったが、警察は家主のシノンの言葉を受け入れ、遠藤たちは警察に連れて行かれた。

 

無論、合鍵も返却されたし、出費と思いながら鍵も付け替えた。

 

そして、すぐに遠藤たちはシノンに対して報復を行った。

 

どうしてシノンが1人暮らしをしているのかを調べ、シノンが暮らしていた田舎で5年前に起きた事件を調べ上げ、全校に暴露した。

 

そして、シノンは1人に戻った。

 

だが、シノンはそれでもいいと思った。

 

友達を欲しがるような弱い自分はいらない。

 

自分を救えるのは自分だけ。

 

1人でも強くないといけない。

 

そう思い、自分の周りの人間を敵だと思い、生きることにした。

 

「嫌よ。貴女達にお金を貸す気はない」

 

シノンは、ハッキリとそう告げた。

 

すると、遠藤は手をシノンへと向ける。

 

親指と人差し指を伸ばし、その形は銃に似ている。

 

それを向けられた瞬間、シノンの体は震え、両脚から力が失われ、動機が早くなり、耳鳴りが鳴り始める。

 

「ばぁん!」

 

遠藤が、そう叫んだ。

 

それにシノンは、一気に力が抜け、その場に座り込んでしまう。

 

吐き気がこみ上げて、思わず口を手で押さえる。

 

「気分悪いみたいだし、今持ってる分だけで勘弁してやるよ」

 

遠藤は笑いながら、シノンの鞄に手を伸ばした。

 

「ガキの分際で、恐喝なんてするもんじゃないぞ」

 

その時、1人の男の声が路地裏に響く。

 

遠藤たちは驚き、声がした方を見る。

 

そこには、買い物袋片手にスマホで、遠藤たちを撮影している男が立っていた。

 

「あ……尾田さん………」

 

シノンは顔面蒼白になりながらも、その男性を見て、その男性の名前を呟く。

 

「お前らの一部始終、このスマホに録画しといた。学校側にチクられたくなかったら、さっさと失せな。二度も、警察の厄介にはなりたくないだろ?」

 

尾田がそう言うと、遠藤たちは舌打ちをしてシノンには何もせずその場を去った。

 

それを見送り、尾田はシノンに近寄る。

 

「大丈夫か、朝田」

 

「はい……大丈夫です……ありがとうございます………」

 

男性の名は、尾田健之介。

 

シノンが住んでるアパートの隣に住んでる男性だ。

 

「無理すんな。顔色悪いぞ」

 

そう言い、尾田は買い物袋からコーラを取り出す。

 

「俺の持論だが、気分が悪い時は、冷たい炭酸飲むのが良いぞ?それとも、水の方が良かったか?」

 

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

 

シノンはもう一度お礼を言い、差し出されたコーラを受け取る。

 

その場で一口飲むと、気持ち悪かった感じが一気に消え、一息付けた。

 

「あの、本当にありがとうございます。これ、コーラの代金」

 

シノンは財布から、コーラー代を払おうとするがそれを尾田は制する。

 

「良いよ。俺が勝手にやったことだ。それに、ガキは大人の好意に甘えるもんだぞ」

 

「大人って……尾田さんまだ19歳じゃないですか」

 

「俺からすれば、高校生なんてガキも同じだ」

 

尾田の言葉に、シノンは思わず笑みを浮かべる。

 

そんなシノンの様子を見て、尾田は満足げに笑う。

 

「朝田さん………大丈夫だった?」

 

すると、シノンと尾田の2人に近寄って声を掛ける人が居た。

 

「新川君」

 

男の名は、新川恭二。

 

シノンの元クラスメイトで、シノンをGGOに誘った張本人で、《シュピーゲル》の名前でプレイをしている。

 

「知り合いか?」

 

「はい、友達です……」

 

「……そうか。なら、後はお友達に任せるとするよ」

 

尾田はそう言い、歩き出す。

 

「あの、尾田さん!本当にありがとうございます!」

 

シノンはもう一度尾田にお礼を言い、尾田は振り返らず、片手を上げて応える。

 

「えっと、朝田さん。あの人は?」

 

新川が、シノンにそう尋ねる。

 

「尾田さんだよ。私の部屋の隣に住んでる人」

 

シノンは笑みを浮かべてそう言う。

 

シノンにとって、周りの人物は敵かもしれない。

 

それでも、目の前にいる新川と、隣人の尾田、そしてGGOでの相棒《リヒター》。

 

この3人だけは、信頼している。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。