装備の調達を終えて、シノンの所に戻ると、シノンはカイとキリト、ミトに気づき、近寄って来る。
「終わった?」
「ええ、ばっちりよ」
ミトが手に持ったアタッシュケースをシノンに見せるように掲げる。
「そう。ねぇ、折角だし少しGGOを見て回らない?まだエントリーにまで時間はあるし」
シノンからの誘いに、カイ達は折角だからとシノンにGGO内を案内してもらうことにした。
四人は大通りに出ると、まず武器屋に向かう。
店内には様々な種類の銃や弾薬、それにアタッチメントなどが並んでいた。
「へぇ~、こんなにあるんだな……」
感心したように呟くカイの隣で、ミトも興味深げに商品を見つめている。
「こうしてみると、銃で戦うってのもいいかもね。バイト終わってからも、GGO続けようかしら」
「いいんじゃないか。俺も少し気に入りそうだし」
カイの言葉を聞いて、ミトは嬉しそうに笑う。
「それなら、一から自分で装備とか揃えたいわよね。その時は、手伝ってよね」
「勿論、喜んで」
楽しそうに笑い合う、カイとミトに、シノンはキリトに声を掛ける。
「ねぇ、もしかしてだけどあの2人って……」
「ああ、ご察しの通り、付き合ってるよ」
キリトの言葉を聞いたシノンは、納得するように微笑む。
「そっか……お似合いね」
そんなことを話しながら、シノンがあれこれと説明をする。
その時、キリトがある物に目を付ける。
「シノン、アレは?」
「あー、あれね。ちょっとしたギャンブルゲームよ。手前のゲートから入って、奥のNPCガンマンの銃撃を躱しながらどこまで近づけるか、ってゲームプレイ料金が500クレジットで、10mで1000、15mで2000クレジットの賞金。ガンマンに触ればいままでプレイヤーがつぎ込んだお金が全額バック」
「その額は…?」
「今は、30万ちょいみたい。だけどこのギャンブル、クリア出来ないし」
「なんでだ?」
不思議そうな顔をするキリトに、シノンは肩をすくめる。
「見ればわかるわ。ほら、今1人挑戦するわ」
シノンの言葉通り、3人連れの男の内の1人がゲート前に立ち、10人程のギャラリーが集まってきた。
カウントが行われ、数字が0になった瞬間に男はダッシュした。
しかし制動掛けて止まったかと思うと、妙な格好を取った。
すると男がポーズを取る前に頭や手、足があった場所にガンマンが放った弾丸が通った。
「今のは!?」
「まるで弾が飛んでくる場所が分かってる様な感じだった……」
「偶然、じゃないわよね?」
「ええ。弾を躱せたのは《
「「「《
聞きなれない単語に、3人は尋ね返す。
「敵から銃撃前の狙点を受けると敵側の視野に表示される《守備的システム・アシスト》。それで、自分に向かってくる弾丸を躱したりするの」
シノンの説明を聞き、3人は納得する。
その間に、男が7m地点に辿り着き、もう少しでプレイ料金の倍額を手に入れられる……と言う所で、ガンマンの動きが変化した。
銃撃に時差をつけるようになり、男はジャンプで回避したがバランスを崩したあと、立ち上がったところで撃たれて失敗となった。
その際に、ガンマンが嘲るかのように勝利の言葉を喚いた。
「こういうこと。左右に大きく動けないから、ほとんど一直線に突っ込まないといけない。おまけに、8mを超えるとインチキレベルの早撃ちに、リボルバーの癖にムチャクチャな高速リロードで3点バースト射撃。予測線が見える頃には、もう手遅れ。だから、クリアできないの」
「ふーん………なるほどね」
それを聞いたキリトは何かを考え、そして、そのゲームに挑戦した。
「あ!ちょっと!」
シノンは無謀だと、キリトを止めようとするが、シノンの声は届かず、キリトはゲームを始めた。
キリトの容姿も相俟って、先程よりも多くのギャラリーが集まる。
キリトはそれを無視し、金属バーが上がると同時にスタートをする。
キリトは、先程のプレイヤーと違い、動きながら最初の弾丸を躱す。
その動きに、ギャラリーが驚きの声を出す。
8mを超え、NPCガンマンがインチキ早撃ちを繰り出すも、キリトはこれも紙一重で躱し、進み続ける。
残り5mと言う所で、キリトはスライディングをする。
すると、さっきまでキリトの上半身があった所を、6発の弾丸が通る。
そして、とうとうガンマンに触れれる所まで来た瞬間、ガンマンの銃からレーザーが放たれた。
だが、直前でキリトは前ダッシュから、跳躍に変え、レーザーは当たらずに済んだ。
そして、ガンマンの前に降り立つと、そのまま革ベストにポンっと触れる。
「オーマイ、ガ―――――――ッ!」
絶叫と共にガンマンは頭を抱え地面に膝をつく。
同時に狂ったようなファンファーレが響く。
そして、ガンマンの背後のレンガが崩れ金貨がざらざらと流れてくる。
ゲームが終わってゲートから出る時には、いつの間にかギャラリーがさっきの倍以上増えており、皆が皆、口々に驚きの言葉や何者かなどと喋っている。
そんな中、カイとミトとシノンが傍によってきた。
「流石だな、キリト」
「相変わらず、出鱈目なことするわね」
「カイやミトにだって出来るだろ?」
3人が和やかに話している中、シノンはキリトに尋ねた。
「…あなたどんな反射神経してるの…? 最後のレーザー、あんな距離だと、回避なんて不可能に近いのに…」
「だって、これって弾道予測線を予測するゲームだろ?」
「だ、弾道予測線を、予測ぅ!?」
シノンは女の子らしい叫びが店内に響き渡り、ギャラリーも呆然と口を開いていた。
数分後、ようやく集まっていたギャラリーが散り、カイ達は《BoB》エントリーの為、《総督府》に向かうことにした。
だが………
「シノン!残り時間は!?」
「残り13分!エントリーには大体5分掛かるから、あと8分で着かないと!」
予想以上に、時間を食ってしまい4人は《総督府》に向かって走っていた。
「テレポートとか、瞬間的に移動する方ほとかはないのか!?」
「GGOにおいて、起きる瞬間移動現象はたった1つ…死んで蘇生ポイントに戻るだけ!このグロッケン地区の蘇生ポイントは総督府付近だけど、街中じゃHPは絶対に減らない!だからその手段は無理なの!」
カイの質問に、シノンが叫ぶように答える。
「とにかく今は走りましょう!」
ミトの言葉に、全員頷き、走る。
その時、4人の視界に一台のジープが止まる。
「やぁ、シノン、脚は要るかい?」
「リヒター!」
ジープに乗っていたのは、リヒターだった。
「早く乗って!エントリーまで時間がない!そちらの3人もどうぞ!」
「シノン、知り合いか!?」
「相棒よ!乗って!」
「なら、お言葉に甘えて!」
助手席に飛び乗るシノンを見て、キリトは後部座席に飛び乗る。
「助かる!」
「ありがとう!」
カイとミトも、リヒターに礼を言い後部座席に飛び乗る。
直後、アクセル全開で急発進したジープは猛スピードで大通りを突っ切り、《総督府》を目指す。