リヒターの運転するバギーのお陰で、カイ達は僅か3分と言う短い時間で《総督府》へと着いた。
「ありがとう、リヒター!」
「礼はいいから早くエントリーしてきて!」
「ええ!3人とも、こっち!」
リヒターへの礼もそこそこにし、カイ達はシノンの後に続く。
「そこの端末からエントリーできるから!やり方は分かる!」
「「「やってみる!」」」
3人同時にそう返事をし、端末に触れる。
すぐさまエントリー画面へと移動し、自身のキャラネームを入れる。
その後に、住所などのリアル情報を入力する場所があったが、そこでカイは手を止める。
リアル情報の入力は、自由で空欄でも虚偽情報でもいいそうだが、そうなると上位入賞プライズを入手することは出来ない。
カイ含め、ミトとキリトも上位入賞プライズは惜しかったが、今回の目的は《死銃》との接触、遊びではない。
カイはミトとキリトを見る。
すると、2人も同じ気持ちなのか、3人とも無言で頷く。
リアルの情報漏洩を少しでも防ぐ為に、カイ達はリアルに関するデータは全て空欄でエントリーした。
「3人共、終わった?」
「ああ、今終わった」
「俺も大丈夫だ」
「わたしもOKよ」
確認を取ってくるシノンに揃って答える。
「シノンのお陰で助かったよ」
「俺達だけだったら、間に合わなかったと思うし」
「ありがとう、シノン」
「い、いいよ、そんな…このゲームをやる人が増えてくれたら、私も嬉しいし」
3人からのお礼の言葉に、シノンは少し照れた様子を見せながら応えた。
するとキリトがメインメニューを開いて操作しだした。
「シノン、これは案内してくれた礼だ。受け取ってくれ」
そう言うと、キリトは先程のギャンブルゲームで手に入れた30万クレジットの半額15万クレジットをシノンへと渡した。
「え!?ちょ、ちょっと!別にお礼なんて!」
「いいからいいから、受け取ってくれ。それに、さっきの彼へのお礼も込みだからさ」
「そう言う訳だし、受け取ってやってくれ」
「人からの好意は素直に受け取る物よ」
「……うん、分かった。ありがたく頂戴するね」
3人に説得される形で、シノンは謝礼を受け取る。
「それで、3人の予選ブロックはどこだったの? 私はFの33番だけど…」
「俺はEの29番だな」
「俺もEブロックだな。Eの7番」
「私はDブロックの17番ね」
「俺とカイは同じブロックだな。これだと、俺とカイのどちらかしか本戦に進めないのか?」
トーナメント表を見て、キリトがそう言う。
「ちょっと待って………それは大丈夫そうね。カイとキリトの2人が当たるのは、勝ち残れたらって前提だけど決勝戦。予選の決勝まで進めたら本戦には出れるから」
「なるほど。なら、うまく行けば全員本戦参加か」
そう言ってカイは、キリトを見る。
「キリト、決勝で待ってるぞ」
「こちらこそ」
互いに不敵に笑い合い、拳をぶつけ合う。
そんな2人を呆れた様にミトは見る。
そんな中、シノンは自身の居るFブロックにいるプレイヤーの中に、知った名前を見つける。
《lynx》
(リンクス……山猫もFブロック………当たるのは決勝戦………本戦前に、前回のリベンジと行かせてもらうわ………!)
シノンは拳を強く握りしめ、リンクスへのリベンジを誓う。
「それじゃあ、予選の会場に行きましょ。ここの地下よ」
シノンは一先ず、リンクスへの怒りを胸に仕舞い、カイ達と地下へと向かうエレベータに乗った。
地下に着くと、参加者であろうプレイヤー達が多くいる。
陽気な者はおらず、みな一様に押し黙ったり、低く囁きを交わす程度だ。
「控室はこっちよ。そこで、戦闘服に着替えましょう」
シノンの案内で、控え室に向かう。
「男子はそっちで、女子はこっちよ」
「分かったわ。じゃあ、また後でね」
「ああ、後でな」
「じゃあ」
ミトに別れを告げ、カイはキリトと共に控え室に向かう。
「ちょ、ちょっと!」
すると、シノンが声を上げた。
「聞いてなかったの!女子はこっちよ!」
シノンはキリトを見ながらそう言う。
そこで、カイ達はハッとした。
そして、カイとミトは笑いを堪え、キリトはげんなりとする。
「え?ど。どうしたの?」
「シノン、言い忘れてたけどキリトは男よ」
ミトが笑いをこらえながら、シノンに言う。
「……え?」
「本当だぞ。ほら、キリト、証拠」
「カイ……ミト……、後で覚えてろよ……」
キリトはそう呟き、シノンにネームカードを見せる。
そこには、プレイヤーネームの《キリト》と、性別が書かれている。
「え?Male……え?男!?その顔で!?」
シノンが驚きの声を上げる。
そして、カイとミトは大爆笑した。
「悪かったって、そう怒るなよ」
「ほら、飲み物奢ってあげるから」
「飲み物一杯で許されると思ってるのかよ………」
不貞腐れるキリトを宥めながら、カイとミトは謝る。
「その……ごめんなさい。知らなかったとはいえ、女の子扱いして……一人称もてっきりそう言う子なんだと思ってて」
シノンは、素直にキリトに謝った。
「いや、俺の方こそちゃんと説明してなかったし、シノンは気にしないでくれ。だけど、カイとミト、お前らは許さない」
「だから悪かったって」
「ごめんごめん」
そんな3人のやり取りを見て、シノンは仲が良いんだなっと思う。
「取り敢えず、お詫びって訳じゃないけど予選について説明しとくわ」
シノンの説明によると、ドーム中央にあるホロパネル、そこに映っているカウントダウンが0になったら、エントリー者全員が予選1回戦の相手と2人だけで戦うフィールドに転送される。
フィールドは1km四方の正方形、地形と天候と時間はランダム、最低500m離れたところからスタート。
決着して勝者はこの待機エリア、敗者は1階ホールに転送、負けても武装のドロップはなく、勝った場合はその時点で次の対戦者が決まっていればすぐに2回戦、決まってなければ待機。
そして、予選決勝戦まで行くとその時点で本戦参加が決定。
「こんな所よ。他に聞きたい事はある?」
「大丈夫だ、ありがとう」
「俺もだ」
「私もよ」
カイ達の返答に満足そうにシノンは笑みを浮かべるとこう言った。
「折角だし、全員が本大会に残れる事を祈ってる。そして、その本選で貴方達にもう1つだけ、あることを教えるわ」
そう言い、シノンは3人を挑発的な目で見る。
「何を教えてくれるんだ?」
「敗北を告げる弾丸の味」
その言葉に、カイ達は驚くも、すぐに笑みを零す。
「ああ、楽しみにしてる」
「その時は、全力で挑むよ」
「挑発には乗る主義だし、望む所よ」
そう言う3人に、シノンも笑みを零す。
「遅かったじゃないか、シノン」
すると、1人の男性プレイヤーがシノンに声を掛けながら近づいて来る。
「てっきり来ないんじゃないかって心配して………えっと、この人たちは?」
「シュピーゲル。ちょっとした知り合いよ。皆、紹介するわ。彼はシュピーゲル。私のフレンドよ」
「あ、どうも。シュピーゲルです」
紹介されたシュピーゲルは、丁寧に頭を下げて挨拶する。
「どうも、俺はカイだ」
「私はミトよ」
「俺はキリト……言っておくと、男だからな」
キリトの自己紹介に、シュピーゲルは「え?」っと言葉を漏らし、カイとミト、そしてシノンは笑いを堪える。
「その容姿で男って事は、M9000番系のアバター?うわー、始めてみたなぁ」
シュピーゲルは、キリトのアバターを珍しそうに見る。
暫く見てると、思い出い出した様にシノンの方を向く。
「シノン、そう言えばリヒターは?一緒だと思ったんだけど?」
「そう言えば……何処に行ったのかしら?」
「そっか、リヒターにも激励したかったんだけどいないなら仕方ないか。シノン、僕の代わりにリヒターにも伝えてといて。「応援してる」って」
「ええ、分かったわ。でも、どうせここには来るんだろうし、待ってたら?」
「それがそうも行かなくてさ。これから、リアルの方で用事があるんだ。だから、激励だけしに来たんだ」
そう言い、シュピーゲルはカイ達も見る。
「それじゃあ、皆さんも頑張って下さい!それじゃあ!」
そう言い、シュピーゲルはログアウトした。
「彼は参加しないのか?」
カイは、シノンにそう尋ねる。
「ええ、そうなの。本人はステ振りを間違えたから、《BoB》は諦めるって言ってるの。AGI一極型でも、まだ戦えると思うのに」
シノンは残念そうに呟く。
「おーい、シノン」
またしてもシノンを呼ぶ声がした。
「リヒター!」
シノンは、リヒターが来たことに少し嬉しそうに声を弾ませる。
「ごめんごめん、レンタルバギーを返しに行ってて遅れちゃったよ。それで、皆はもうエントリーは終わったのかな?」
リヒターの質問に、カイ達は頷く。
「それじゃあ、改めて自己紹介と行こうか。俺はリヒター。シノンの相棒だよ」
「キリトだ、よろしく」
「俺はカイ。改めてになるけど、よろしく。それと、さっきはありがとうな」
「私はミト。こちらこそよろしく」
「うん、よろしく」
挨拶を終え、リヒターは笑う。
「それで、皆は何処のブロック?」
「私はFブロックよ」
「俺はEブロックだ」
「同じく」
「私はDブロックよ」
「あ、じゃあ俺と同じだね。俺もDブロックなんだ」
そう言い、リヒターはトーナメント表を見る。
「うん。どうやら、決勝で当たるみたいだ。その時はよろしく」
「ええ、こちらこそ。でも、手加減とかは要らないから」
「ああ、分かってる」
そう言って、互いに握手をする。
『大変お待たせしました。これより第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントを行います。エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン終了後に、予選第一回戦のフィールドに転送されます。幸運をお祈りします』
丁度アナウンスが鳴り響き、予選がもう間もなく始まることを告げる。
「それじゃあ、シノン。頑張ってね。本戦で会おう」
「ええ。あ、そうだ。シュピーゲルが頑張ってって言ってたわよ」
「そっか。なら、尚更頑張らないとな」
そう言い残し、リヒターは転送された。
「私もそろそろね。じゃあ、皆、本選で」
そして、シノンも転送された。
「カイ、待ってるから。キリトもね、ちゃんと勝ち残りなさいよ」
「ああ、必ず行くさ。予選Fブロック優勝者としてな」
「俺に勝つ気か、カイ?悪いが、俺が勝つ」
3人は、またしても笑い合い、そして、転送された。