ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第8話 忘れてた記憶

転送された場所は暗闇で、キリトは宙に浮いてる六角形パネルの上に立っている。

 

目の前に薄赤いホロウィンドウがあり《Kieito VS 餓丸》と表示があり、その下に[準備時間:58秒 フィールド:失われた古代寺院]とあった。

 

相手の名前を確認し、キリトはメインのフォトンソード《カゲミツG4》を2本と、サブの《FN・ファイブセブン》を装備する。

 

そして、黒いミリタリージャケットに防弾アーマー、黒いコンバットブーツ。

 

「よし!」

 

準備を整え終え、キリトは残り時間を確認するために顔を上げる。

 

すると、ちょうど残り時間が0になり、再度キリトの体を転送エフェクトが包む。

 

キリトは、陰鬱な黄昏の空の下に放り出された。

 

足元の枯草が風によって揺れ、すぐそばには古代の神殿の柱が立っていたり、倒れていたりしている。

 

まずキリトは手近な柱に体を預けつつ、周囲の様子を探る。

 

「相手は何処だ?」

 

当たりを見渡し、キリトは餓丸を探す。

 

キリトは、この勝負はとにかく相手よりも先に相手を見つけることが重要と考え、索敵を第一に行っている。

 

なんなら、このまま隠れ続け、相手がしびれを切らして出て来るのを襲撃する《待ち》の戦法を取ってもいいのだが、キリトの性には合わず、キリトは柱から飛び出した。

 

そのままダッシュで一番近い遺跡まで向かおうとする。

 

すると、待っていましたと言わんばかりに、キリトを銃撃が襲った。

 

キリトはそのままダッシュで駆け抜け、転がる様に遺跡の中へと滑り込む。

 

そして、入り口付近の壁を背に、銃撃があった方を確認する。

 

「見つけた」

 

キリトの視界には、アサルトライフルを構え、迷彩柄のフードを被った男が茂みの中に隠れているのを捕らえた。

 

「敵は見つけた。後は、どうやって斬るかだが………」

 

キリトは右手に握り締めたフォトンソードを見つめる。

 

敵の居場所が分かっても、キリトが接近し、光刃が届く前にハチの巣にされるのが分かり切っている。

 

「せめて銃弾を防げたら………」

 

そこまで考えて、キリトはふと気づく。

 

「待てよ………あれなら………」

 

数秒黙考し、キリトは動いた。

 

キリトは、両手でファイブセブンを構え、餓丸の居る所に発砲する。

 

餓丸は驚くも、キリトの射撃が出鱈目な事もあり下手に動かず、その場でじっとすることにした。

 

そして、銃声の数を数える。

 

キリトの銃はファイブセブンは装弾数が10発で、餓丸は一瞬見えた銃の形状から、キリトの銃がファイブセブンであることを見抜き、キリトがリロードをした瞬間が勝負と考えた。

 

(7……8……9……)

 

銃声をしっかりと数え、とうとう最後の1発が放たれる。

 

(10!)

 

キリトの銃が弾切れになった瞬間、餓丸は体を起こし、一気にケリを付けようとする。

 

その場でじっとしていた為、かなりキリトとの距離は詰められたがそれでもキリトの持つフォトンソードの刃が届くにはまだ距離がある。

 

(死ね!)

 

餓丸の銃が火を噴き、キリトに銃弾の雨を浴びせる。

 

すると、キリトはファイブセブンを仕舞うと、両腰にカラビナで吊っているマットブラック塗装とライトホワイト塗装の《カゲミツG4》を手に取る。

 

両手に持ったフォトンソードを起動させ、青い光刃と、緑の光刃が展開される。

 

そして、襲い来る弾丸の雨もフォトンソードの二刀流で弾いた。

 

キリトの剣捌きは凄まじく、まるで二振りの剣で踊っているかの様に見えた。

 

その動きに、餓丸は唖然とする。

 

「嘘だろ……!?」

 

キリトは更に速度を上げ、餓丸へと肉薄していく。

 

餓丸は、空になったマガジンを投げ捨て、新しいマガジンを装填する。

 

そして、腰だめで発砲しようとする。

 

「はああああああああ!!」

 

すると、キリトは緑の光刃のフォトンソードを、投げた。

 

回転しながら飛ぶフォトンソードは、そのまま餓丸の銃に当たり、銃を両断する。

 

「なっ!?」

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

銃を破壊されたことに、驚く餓丸に、キリトは容赦なく斬り掛かる。

 

それは、SAOにあった片手剣ソードスキルの上位剣技《ヴォーパル・ストライク》だった。

 

光の尾を引きながら繰り出される一撃は、餓丸の胸を貫き、HPを全て奪った。

 

「ぐあぁぁ!!」

 

餓丸はそのまま倒れ、ポリゴンとなって砕け散った。

 

「ふぅ……やっぱり思った通りだ。予測線があるなら、光剣で弾丸を防げる。それに、2本あるから片方を投げることも出来るし、これなら接近戦に持ち込める!」

 

そう言いつつ、キリトはフォトンソードをしまう。

 

その時、今までの癖で、フォトンソードを横に振ってから背中の鞘に収める動作をしてしまい、頭を掻く。

 

そして、体を転送エフェクトの青い光に包まれながら、キリトは待機エリアに戻った。

 

待機エリアに戻ると、先程と同じ壁際のボックス席にキリトは居た。

 

「転送した時と同じ位置に戻るのか」

 

そう呟き、キリトは辺りを見渡すが、カイとミトの姿は見えなかった。

 

まだ戦ってるか、一足先に2回戦を行ってるのかもと思い、キリトは辺りを見渡す。

 

すると、予選の戦闘を中継しているモニターがあるらしく、キリトはカイとミトの様子を、それとお世話になったシノンの様子を見ようとモニターに近付こうとする。

 

その時だった。

 

突然、キリトの前にボロマントを羽織り、不気味なマスクを被ったプレイヤーが現れた。

 

行き成り現れたソイツに、キリトは驚く。

 

「おまえ、本物、か?」

 

ボイス・エフェクターを使用しているらしく、声が少しおかしかったが、それが余計に不気味さを増長させていた。

 

「どういう……意味だ?」

 

「試合の、様子を、見た。剣を、使ったな」

 

「……ああ、別にルール違反じゃないだろ?」

 

「もう一度、訊く。お前は、本物、か?」

 

男の質問に、キリトは答えなかった。

 

すると、プレイヤーはメニューを開き、トーナメント表を見る。

 

そして、キリトの名前を確認した。

 

「この、名前、さらに、あの、剣捌き……、お前、本物、なのか?」

 

その言葉に、キリトは戦慄した。

 

(コイツは……俺の事を知ってる!SAOに居た頃の俺を……!)

 

思わず体が震え、キリトは無意識に右腕を左手で掴んだ。

 

相手がただのキリトと同じSAO生還者(サバイバー)なら、キリトもここまで怯えなかった。

 

だが、キリトは怯えた。

 

その時、男の手首が見えた。

 

青白い肌のそこには、棺桶のタトゥーがあり、蓋にはニタニタと笑う不気味な笑顔が書かれ、少し空いた蓋の隙間から白い骸骨の腕が出ていた。

 

(あのマーク……!)

 

それが、SAO最大にして最悪の存在、殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のもので、目の前の男が《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》に関係のある存在だと言うことに気づく。

 

「答えろ、お前は、本物の、キリトか?」

 

男は、再度同じことを問うた。

 

その問いに、キリトは答えれなかった。

 

冷や汗を流し、顔も強張る。

 

呼吸も早くなり、過呼吸の様になり出す。

 

「答える、気が、無いの、か?それとも、答えられない、理由が、あるの、か?」

 

何も言わないキリトに、男はぬるりと無音で下がった。

 

「もう、いい…。だが、名前を、騙った、偽物か……、本物、ならば…」

 

言葉を言い終わらない内に身を翻し、しかし確かな声で言い放った。

 

「……いつか、殺す…」

 

そして、男は消える様に去って行った。

 

男が去ると、キリトはフラフラとした足でボックス席に座り込む。

 

「はぁ……はぁ……」

 

息を荒げ、右手で頭を抱える。

 

(アイツは誰だ…?俺の知ってる奴か…?《討伐作戦》で生き残った《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のメンバー…?それなら、戦後処理中のどっかのタイミングで会話したと思うが………誰なんだ……?)

 

キリトは必死に考えるが、全く思い当たらなかった。

 

それもそのはず。

 

キリトはあの一件を忘れたい記憶として、あの日以降思い出さない様に過ごしてきたからだ。

 

(いや……もしかしたら、あのマントの下に居たのは………俺が殺した2人の内のどちらか……?)

 

《討伐作戦》で、キリトは2人の殺人者(レッド)を手に掛けた。

 

そして、キリトはその事すらも忘れようとしていた。

 

人を殺した罪悪感を思い出し、そして、殺した相手や殺し合いをした相手の顔と名前が思い出せない自分が許せなくなり、自己嫌悪に陥りそうになった。

 

「くそっ……!」

 

キリトは頭を掻きむしり、そのまま項垂れる。

 

「キリト!」

 

すると、行き成り声を掛けられキリトは顔を上げる。

 

そこにはカイが居た。

 

「キリト、大丈夫か?」

 

心配そうな表情でカイが言う。

 

「ああ……なんとかな」

 

キリトが力なく返事を返すと、カイはキリトの隣に座る。

 

「何かあったのか?」

 

「いや……ちょっとな。でも、大丈夫だ」

 

「大丈夫な訳ないだろ。お前、今自分がどんな表情してるか分かってないだろ?」

 

「えっ……?」

 

「幽霊でも見たかのような、そんな感じだぞ。何があったんだよ?」

 

「いや、何でもないよ。本当に、なんでもない」

 

キリトは無理矢理笑みを作り、そう言った。

 

「そうは見えないけどなぁ……まあ、話したくないなら話さなくて良い」

 

カイはそう言って、納得してない表情を作るが、今は何も聞かず、次の試合を待つ。

 

(カイには、教えれない……俺以上に、カイは《討伐作戦》のことなんて思い出したくない筈だ……)

 

《討伐作戦》で、カイは自身が忌み嫌う殺人を自ら犯してしまい、それで心が壊れかけ、自棄になり、6人の殺人者(レッド)を殺した。

 

まだ殺しのしたことない下っ端までも殺そうとし、相棒であるキリトに止められ、殺し合った。

 

そして、その最中、カイはミトを殺してしまった。

 

(カイには、あの時の事を思い出して欲しくない。俺1人で、片を付けないと………)

 

そう決意するキリトの目は、何処か暗い物へと変わっていた

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