ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

119 / 132
第11話 BoB本戦前

「……………」

 

「……………」

 

予選の翌日、カイはキリトの家を訪れていた。

 

「なるほど……《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のメンバーが死銃か……」

 

カイは、昨日のキリトの様子がおかしかった理由を尋ねに訪れると、キリトは素直にその事を話した。

 

「あ、ああ………俺の事を知ってる口ぶりだったし、それに、俺の使った技も知ってる感じだった。それに、手首にアイツらの証のタトゥーも」

 

「まさか、ここでアイツらと再会することになるとはな。と言うより」

 

カイは、鋭い目つきでキリトを見る。

 

「どうして直ぐに俺に言わなかった?死銃に接触された時点で、すぐにでも知らせるべきだろう?」

 

「それは……ごめん」

 

「………いや、違うな。まずは、お前に言うべきことがあるか」

 

そう言い、カイはキリトに頭を下げる。

 

「えっ!?」

 

突然の行動に驚くキリト。

 

「すまない。それと、ありがとう」

 

「いや、なんで伊緒が謝るんだよ!それに、礼も言われる筋合いは!」

 

「俺の事を想って言わなかったんだろ?」

 

カイの言葉に、キリトは黙り込む。

 

「《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦》は、正直な話、俺には最悪な思い出だ。嫌悪する殺人をして、自棄になって大勢殺して、殺しのしてない下っ端まで殺そうとして、挙句、お前を殺しかけた。そして、ミトを………!」

 

カイは拳を強く握りしめ、唇を噛む。

 

「伊緒、無理して思い出す必要なんて……!」

 

「そう思ったから、言わなかったんだろ?」

 

カイはキリトの目を見て続ける。

 

「俺に余計なことを思い出させない様にしようと、全部1人で背負い込んで、決着付けようとしたんだろう?」

 

「……」

 

「余計な心配かけたな。本当に、すまなかった、そして、ありがとう」

 

再び頭を下げたカイに対し、キリトは困った表情を浮かべながら頭を掻く。

 

「和人、お前の優しさは凄く嬉しい。だけど、俺はお前1人に無茶をしてほしくない。《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》がらみなら、俺も一緒に戦う。お前1人だけに、背負わせたくない。不安かもしれないが、もっと頼ってくれ」

 

「伊緒………分かったよ。一緒に戦ってくれるか、相棒?」

 

「当たり前だろ、相棒」

 

2人は互いに笑い合うと、固く握手を交わした。

 

「それで、死銃の正体に心当たりはあるか?」

 

「いや、悪いが思い出せない。戦後処理中のどっかのタイミングで会話したと思うんだが………」

 

「そうか……正体については、本戦の中で探ろう。シノンとリヒターの2人に、本戦参加者で初参加のプレイヤーを教えて貰えば、ある程度当たりは付けられるだろうし」

 

「ちょっと待ってくれ。カイは、死銃が本戦に来ると思ってるのか?」

 

「来るさ。死銃は間違いなく本戦に出てくる」

 

カイは確信を持って答える。

 

「根拠は?」

 

「相手が《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のメンバーで、尚且つキリトと言葉を交わした奴。なら、間違いなく幹部クラスだ。なら、プレイヤーとしては相当な腕だ。絶対に勝ち進んで、本戦に出るはずだ」

 

「でも、予選に参加してたか分からないぞ?あの場所に居たのも、獲物を探してるだけの可能性も……」

 

「菊岡から聞いた、死銃の声、憶えてるか?」

 

「あ、ああ……」

 

カイの質問に、キリトは戸惑いながらも肯定する。

 

「あの台詞、まるで自分の力を誇示し、恐怖を煽る様な物言いだった。それに、調べたんだが、コイツを見てくれ」

 

カイは、鞄からPCタブレットを取り出し、ある物をキリトに見せる。

 

「これは?」

 

「《死銃情報まとめサイト》の書き込みだ」

 

キリトは、そのサイトを閲覧すると、そこには様々な事が書き込まれていた。

 

「これ、情報って言うより、ただの賑やかしだな」

 

「ああ。誰一人、死銃が撃ったプレイヤーが本当に死んだと思ってないし、死銃が殺したとも思ってない。《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》がSAOで誕生した時、多くのプレイヤーが恐怖しただろ?そして、奴らはそれを楽しんでいた。で、死銃も同じことをしようとした。だが、実際GGO内は恐怖に怯える所か、本気にすらしてない。なら、多くの注目が集まる本戦で、死銃の力が本物だと言う事を証明しようとする。それが、俺の考えだ。どう思う?」

 

カイの話を聞いたキリトは少し考える素振りを見せると、顔を上げて答えを出す。

 

「なるほどな……俺もそう思うよ。アイツらは、そういう連中だ」

 

「よし、取り敢えずの方針は決まりだな」

 

そう言い、カイは立ち上がる。

 

「このことは、深澄に俺から伝える。じゃあ、和人。また後でな」

 

「ああ。よろしく頼む」

 

「任せろ」

 

そう言ってカイはキリトの家を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、死銃が《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の………」

 

キリトの家を後にし、カイはミトと待ち合わせをしていた喫茶店に向かい、ミトにキリトと話したことを伝えた。

 

「ああ。俺とキリトは、死銃が本戦に来ると仮定して、戦う。だから、深澄もそのつもりで」

 

「伊緒、無理してない?」

 

「ん?」

 

ミトの言葉に、カイは首を傾げる。

 

「死銃はもう2人も殺しをしてる……殺人は、伊緒にとって………もし無理してるなら、私と和人だけで「深澄」

 

カイは、ミトの手を取り握り締める。

 

「大丈夫だ」

 

「伊緒……」

 

「確かに、無理してないってハッキリとは言えないかもだが、俺は死銃を放置しておくことはできない。今ここで、奴を止めないと新たな犠牲者が出る。それは、食い止めないといけない。それに、その犠牲者が深澄や和人かと思うだけで、怖いんだよ。俺の知らないところで、大切な人が殺されるかもしれないって考えたら、怖くて仕方がないんだ。だから、俺は戦うよ」

 

そう言い、カイは優しく笑う。

 

「伊緒……分かった。なら私は、出来る限り伊緒の力になるわ」

 

「ありがとう、深澄。傍にいてくれるだけで、力になってくれてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むっかつく!あの山猫野郎!」

 

ガツンッ!とブランコの鉄柱を蹴り飛ばしシノンが怒りの声を上げる。

 

その様子を新川は苦笑いしながら眺める。

 

「朝田さんがそこまで怒るのって珍しいね」

 

「だって、まるで遊びだと言わんばかりに飄々としちゃってさ!本当に腹立つ!」

 

シノンは、山猫ことリンクスに対し怒りを露わにする。

 

「それにしても、初めてだよね。朝田さんが他人の事を色々言うの」

 

「そう?」

 

「うん。普段は他人に興味が無いって感じだし」

 

「………私、怒りっぽいのよ、これでも」

 

「そうなんだ」

 

新川はシノンを暫く見つめると、ブランコから身を乗り出した。

 

「じゃあさ、どっかのフィールドで待ち伏せて狩る?狙撃するなら、囮になるし、正面から戦うなら、協力するよ。腕のいいマシンガンナーなら二、三人呼べるし。ビームスタナー使ってMPKもいいかも」

 

嬉々とリンクスの殺し方を模索する新川にシノンは呆気にとられた。

 

「あ、そう言うんじゃないの。確かにムカつく奴だけど、罠への嵌め方とか、狙撃の腕とか、間違いなく一流なの。だから、同じ狙撃手として、正々堂々と狙撃で戦いたいの。昨日の戦いで、アイツの戦法も分かったし、幸いリベンジのチャンスはある。今度こそ、あの飄々とした顔を吹き飛ばしてやる」

 

そう言ってシノンは右手を拳銃の形にして、空に向ける。

 

「覚えてなさいよ。この借りは必ず倍にして返してやるんだから」

 

「朝田さん、それ大丈夫なの?」

 

「え?」

 

新川に言われてシノンは、自分の右手を見る。

 

指で拳銃の形を作っていることに驚き、慌てて右手を元に戻す。

 

そして、自分の鼓動を確かめると、ドキドキとしてはいるものの、いつもみたいな激しい動機ではないことに安堵する。

 

「怒ってるから平気みたい」

 

「……なんだか、心配だよ」

 

急に新川が呟いた。

 

「なんか、いつもの朝田さんらしくない。いつもの朝田さんはクールで、超然としててさ、僕みたいに学校から逃げ出さないで………強いんだよ。朝田さんは僕の理想なんだ。僕に出来ることなら何でもするよ。本大会では、応援しかできないから」

 

「………私は、強くないよ。現に今でも銃の写真を見ると発作が」

 

「シノンは違うじゃない。僕はシノンこそが本当の朝田さんだと思う。だから、いつか現実の朝田さんもシノンの様になれるよ。だから、心配なんだ。あんな男の事で、怒ったり、動揺してる朝田さんを見ると、だから、僕が、僕が力になるから」

 

そう言って新川は笑う。

 

「もっとも、リヒター程、力にはなれないと思うけどね」

 

「そんなこと……新川君には新川君だけにしかできないことがあるわよ。そもそも、GGOに新川君が誘ってくれなかったら、今の私はいないもの」

 

「そっかぁ」

 

新川は照れくさそうに笑う。

 

「それじゃあ、僕はもう行くよ。本戦、頑張ってね!」

 

そう言い、新川は公園を後にする。

 

それを見送り、シノンも自宅へと向かう。

 

「お、朝田」

 

「あ、尾田さん」

 

すると、丁度アパートの真下で、尾田と遭遇した。

 

彼は大きな段ボール箱を抱えていた。

 

「その荷物どうしたんですか?」

 

「いや、ついさっきそこで宅配便の兄ちゃんと鉢あってな。ばあちゃんちからの仕送りだ。米とか野菜とか色々入ってるぜ」

 

そう言って、尾田は段ボールを持ち直そうとする。

 

だが、かなりの重量があるのか、よろけてしまう。

 

「危ないですよ。手伝いますね」

 

そう言って、シノンは素早く反対側に回って、段ボールを持ち上げる。

 

「悪ぃな。助かる」

 

そのまま二人で階段を上り、尾田の部屋の前に着く。

 

「ありがとうな、朝田」

 

「いえ、いつもお世話になってますし」

 

「そうだ。少し持って行けよ」

 

そう言い、尾田は段ボールを開ける。

 

中にはぎっしりと食材が入っていた。

 

「うわー、こんなに沢山」

 

「ああ、俺一人じゃ食いきれんからな。好きなの持っていっていいぞ」

 

「でも、悪いですし」

 

「遠慮すんなって。ほら、これとか美味いぜ。ばあちゃんちの畑自慢のトマトだ」

 

そう言って、尾田は真っ赤に熟れたトマトを一つ取り出す。

 

「じゃあ、貰いますね」

 

「おう。あと、コレとコレも」

 

尾田は袋を取り出し、その中に色々と詰めて行く。

 

シノンは、両手一杯に食料を抱えることになった。

 

「なんて言うか、凄い量ですね……」

 

「ばあちゃんが張り切っててな。まあ、食費が浮くのはいいんだが……流石にこの量はな……一回食いきれなくて腐らせちまったことあるんだよ」

 

「なら、お婆さんに一言言えばいいんじゃ………」

 

「俺、ばあちゃんっ子だからさ。ばあちゃんからの好意を無下にできないんだよ……」

 

そう言い、尾田は遠い目になる。

 

祖母の事が本当に大事なのだろう。

 

「そうだ。もしよかったら、今後も貰ってくれないか?腐らせるよりは、朝田に食って貰う方が食材もいいだろうし、なにより、俺もばあちゃんの野菜を無駄にせずに済む」

 

「あ、はい。そういう事なら」

 

「ありがとな。よし、これでOKっと」

 

尾田は段ボールを閉じ、玄関の扉を開く。

 

「じゃあ、朝田。またな」

 

「はい、また。野菜、ありがとうございます」

 

「気にするなって」

 

そう言い残し、尾田は部屋へと戻っていく。

 

それを見届けて、シノンも自分の部屋へと入る。

 

扉の鍵とチェーンロックを掛けて、貰った食材を冷蔵庫へと仕舞い、購入しておいたミネラルウォーターとヨーグルトを飲食し、楽な服装に着替えてアミュスフィアを被った。

 

そして、あの魔法のキーワードを唱えた。

 

「リンク、スタート」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。