ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第12話 本戦開始前

第3回《BoB》開始まで、後2時間。

 

カイ達は、なるべく余裕をもってGGOにダイブするために、病院を訪れた。

 

「3人とも、いらっしゃい。早いわね」

 

前と同じ病室で、安岐が出迎えた。

 

「昨日みたいに時間に追われたくないんで」

 

「「同じく」」

 

キリトが理由を言い、カイとミトが同意する。

 

その姿に、安岐はくすくすと笑う。

 

「じゃあ、もうダイブする?」

 

「ええ、お願いします」

 

昨日と同じベッドに、カイとキリトが寝転がろうとすると、それをミトが止めた。

 

「和人、ちょっと待って」

 

「ん?どうした?」

 

「うん……その、ベッド代わって貰えない?」

 

「え?」

 

急にそう言いだすミトに、カイは驚く。

 

「少しでも、伊緒の傍に居たいの。お願い」

 

「ああ、いいぞ」

 

ミトの願いを、キリトは笑顔で了承し、カーテンで仕切られた方のベッドに移る。

 

「深澄、どうしたんだ?」

 

「伊緒が心配だから、少しでも近くに居たいの」

 

そう言うミトに、カイは照れ臭そうに笑う。

 

「なら、折角だしベッドくっ付けましょうか?」

 

すると、安岐はミトの気持ちを察し、カイとミトのベッドを近づける。

 

カイは上半身裸で、ミトはの方は上半身はブラのみとなり、くっつけられたベッドに横になる。

 

電極を張り付けられた後、ミトの体の上からシーツを掛けられる。

 

準備を終え居ると、カイは手を伸ばし、ミトの手を取る。

 

「伊緒?」

 

「少しでも近くに居たいんだろ?俺も同じ気持ちだし、折角だからこのまま手を繋いでダイブしよう」

 

「ええ、そうね」

 

2人は指を絡めるようにして、互いの手を握り合う。

 

それを見た安岐も微笑む。

 

「それじゃあ、3人とも。行ってらっしゃい」

 

「はい、また俺達の身体をお願いします」

 

3人はまた目を閉じる。

 

「「「リンク・スタート!」」」

 

そして、同時に、魔法のキーワードを唱えた。

 

昨日と違うのは、カイとミトは互いのぬくもりを感じながらダイブした事だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人は《SBCグロッケン》の北端、総督府タワーにほど近い路傍の一角に降り立った。

 

大会へのエントリーを済ませようと少し離れた総督府を目指して歩く。

 

すると、両側から幾つもの視線が3人に向けられる。

 

それもそのはず、3人はGGOでは珍しいタイプのアバターで、更に、銃の世界であるGGOで《フォトンソード》、《フォトンサイズ》、《サーベル》と言う、通称お飾りアイテムを使って、予選を勝ち抜いた。

 

加えて、カイとキリトの予選決勝戦は、誰もが目を釘付けにして、観戦していた。

 

しばらく歩くと、シノンとリヒターの姿が見えたので、3人は声を掛けた。

 

「シノン、リヒター。今日はよろしくな」

 

「やぁ、こちらこそよろしく」

 

「ええ、こちらこそよろしく」

 

シノンとリヒターは微笑んで挨拶をしてくれた。

 

「よぉ、お二人さん。今日はよろしく」

 

「よろしくね」

 

キリトとミトも続いて挨拶をする。

 

「ねぇ、シノン。良かったらなんだけど、本大会のこと教えてくれない?メールは読んだけど、一応確認ってことで…」

 

「構わないよ。それじゃあ、エントリーが済んだら、地下の酒場に行きましょ」

 

そのまま5人で本戦へのエントリーを済ませ、地下1階の酒場に向かった。

 

ブース席に腰を下ろし、各々飲み物を注文する。

 

カイはサイダー、ミトはオレンジジュース、キリトはジンジャエール、シノンはアイスコーヒー、リヒターはアイスコーヒーにバニラアイスをトッピングしたのを選んだ。

 

「それじゃ、メールにも書いてあったと思うけど説明させてもらうわね」

 

本選はバトルロイヤル制で参加者30人による同一マップでの遭遇戦となり、開始位置はランダムで他のプレイヤー達とは最低でも1000m離れ、本選のマップは直径10kmの円形で山あり森あり砂漠ありなどの複合ステージ。

 

参加者全員には『サテライト・スキャン端末』というアイテムが自動配布され、15分に1回は上空を監視衛星が通過するという設定で、その時全員の端末にマップ内の全プレイヤーの存在位置が送信される。

 

その時、輝点(ブリップ)に触れれば名前まで分かり、敗北した場合は大会中の情報のやり取りを防ぐ為にログアウトが出来ず、中継画面を観ながら決着がつくのを待つ、以上が主な内容であるそうだ。

 

「………こんな感じね。他に聞きたいことはある?」

 

「大丈夫よ。ありがとう、シノン」

 

「ああ、しっかりと理解できた。ありがとう」

 

「そう、なら良かったわ」

 

「で、なんだが、シノンとリヒター、2人に聞きたいことがもう1つあるんだ」

 

そう言うと、キリトは《BoB》本戦の参加者リストを取り出す。

 

「この中に、知らない名前は幾つある?」

 

シノンとリヒターは不思議そうな顔をしたか、了承して名簿を見る

 

「BoBは3回目だから、ほとんどは顔見知りね。初めてなのは、ここにいる貴方達を除くと、6人ね」

 

「名前は?」

 

「ん………《銃士X》と《ペイルライダー》、それと《J・B》に《スノウ》………これは《スティーブン》かな。綴りが間違ってるけど」

 

《Sterben》と書かれた名前を見て、シノンがそう言う。

 

「そして、最後は………この山猫野郎ね」

 

シノンは怒りを露わにして、リンクスの名を指差す。

 

「相当、苛ついてるんだね……」

 

シノンの隣に座るリヒターが、苦笑しながら言う。

 

「当たり前でしょ!この本戦で、今度こそリベンジしてやるんだから!」

 

シノンは鼻息荒く宣言する。

 

「う~ん………」

 

そんな中、カイは《Sterben》の名前を見て、唸っていた。

 

「カイ、どうしたの?」

 

「いや、俺の気にし過ぎかもしれないんだが、これドイツ語なんじゃないかって思ってさ」

 

「ドイツ語?」

 

「ドイツ語だと、何か意味でもあるのか?」

 

カイの隣に居たキリトも、尋ねて来る。

 

「……死って意味なんだよ」

 

カイがそう言うと、ミトとキリトは驚きの表情になって固まった。

 

「まさか、こいつなのか?」

 

「いや、分からない。もしかしたら、ただのスペルミスの可能性もあるし、偶然かも知れないからな……」

 

「一先ず、候補として頭の中に置いておきましょう」

 

ミトの言葉に、3人で頷き合う。

 

「ねぇ、何の話?」

 

「何かあったのかい?」

 

シノンとリヒターが、不思議そうに問いかけてくる。

 

「いや、なんでもない。ちょっとした俺達の因縁の話さ」

 

カイがそう言うとシノンさんはそれ以上何も聞いてこなかった。

 

「そろそろ行きましょう。装備の準備や点検の時間が無くなるわ」

 

シノンの言葉に従い、席を立ってエレベーターに乗り込む。

 

暫くするとシノンが口を開いた。

 

「貴方達にも、事情があるのは分かったわ。だけど、優勝するのは私よ。だから、本戦で貴方達と会ったら容赦はしない」

 

そして、今度はリヒターに向かって言う。

 

「リヒター、こっから先はパートナーじゃないわ。敵同士、手加減したら許さないわよ」

 

そう言うシノンに、カイ達は目を合わせて頷いた。

 

「ああ。その時が来たら容赦なく撃ってくれ。全力で、相手をする」

 

「俺らの事情に、シノンたちを巻き込むつもりはない。だから、全力で戦おう」

 

「それに、こっちも大会に参加する以上、優勝狙ってるから。そのつもりでね」

 

キリト、カイ、ミトの順に、好戦的な態度でシノンに言う。

 

「安心して。シノン相手に手加減はしないからさ」

 

最後にリヒターがそう言うと、シノンはわずかに笑い

 

「ありがとう」

 

そう言った。

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