ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第13話 死銃

《BoB》が始まって30分が経った。

 

カイは、ミトとキリトの2人と合流するために、フィールドを駆けていた。

 

「……おかしい」

 

カイは、2回目のスキャンで全プレイヤーの現在地を確認しながら、呟く。

 

「どうして、ステルベンがいないんだ?」

 

最初のサテライトスキャンと2回目のサテライトスキャン。

 

そのどちらでも、ステルベンの姿を認識できなかった。

 

存在する全ての光点をタップし、名前を捜したが、無かった。

 

「スキャンで見つからない場所に居るのか?取り敢えず、今は合流が先か」

 

マップを消し、動こうとした瞬間だった。

 

突然、カイの後頭部に何かが押し付けられた。

 

「動くな」

 

女の声で、そう告げられた。

 

銃口を押し付けられているのだ、と気付いた時にはもう遅かった。

 

「両手を頭に付けろ」

 

カイは言う通り、手を後ろに伸ばし、素早く振り返る。

 

相手の手を掴んでひねり、逆に銃を奪おうとする。

 

女襲撃者は奪われる前に、足をあげ、カイの手ごと銃を蹴る。

 

銃は高く舞い上がり、女襲撃者は銃を手にしようと手を上げる。

 

だが、その動きより先に、カイの右手が動いた。

 

腰に差したサーベルを抜き、一気に斬り掛かる。

 

しかし、刃が届く寸前、女襲撃者の左手が閃き、ナイフが飛んでくる。

 

咄嵯に身を屈め、ナイフを避ける。

 

同時に、右手で地面を掴み、体を回転させて回し蹴りを放つ。

 

女襲撃者もしゃがみ込んで避け、低い姿勢のままタックルを仕掛けてくる。

 

カイはそれを飛び越え、空中から女襲撃者に追撃する。

 

着地と同時に振り下ろした剣先は、僅かに届かない。

 

相手も体勢を整えており、バックステップで回避したからだ。

 

距離が離れた直後、女襲撃者は踏み込んできた。

 

カイは着地直後を狙われた為、そのまま地面に押し倒される。

 

女襲撃者はそのまま、手にした銃《モーゼルM712》をカイの額に押し付ける。

 

「死ねよ、寄生虫(パラサイト)野郎が」

 

「お前……!」

 

かつて、キリトの《ビーター》同様、嫌われ者の証として呼ばれていた自身の2つ名にカイは反応する。

 

女襲撃者はフードの下で、カイに対し憤怒の感情を向けて、口元を歪める。

 

人差し指が動き、引き金が引かれる。

 

「カイ!」

 

突如、横からミトが現れた。

 

女襲撃者は驚き、ミトが現れた方を見る。

 

一瞬、カイはフードの下から見える女襲撃者の口元が、歓喜を帯びているのが見えた。

 

だが、カイはすぐにそれを振り払い、女襲撃者を顔を殴る。

 

怯み、後退りした隙を突き、カイは立ち上がる。

 

「ミト!」

 

「ええ!」

 

カイとミトは、それぞれの銃《コルト・パイソン》と《ベレッタM92F》を抜き、女襲撃者に向かって発砲する。

 

女襲撃者は、数発身体に食らいながらも後ろに下がる。

 

そこで、カイとミトは弾が切れ、《サーベル》と《フォトンサイズ》を構える。

 

女襲撃者は何か迷うようなそぶりを見せるも、不利と判断したのかその場を離れた。

 

「……退いたか」

 

カイは安堵の溜息を吐き、サーベルを収める。

 

「カイ、大丈夫だった?」

 

「ああ、ミトのお陰でなんとかな」

 

そう言いながら、カイは首に治療キットを押し当て、HPを回復させる。

 

「さっきの女、誰なんだろ……」

 

「分からない。ただ、1つだけ分かることがある。あの女は、SAO生還者(サバイバー)だ」

 

カイの言葉を聞き、ミトは驚く。

 

「それ本当なの?」

 

「ああ。しかも、俺に恨みを持ってるのか寄生虫(パラサイト)野郎って言われたよ」

 

苦笑しながらカイは答えた。

 

「確かに、当時のカイなら恨まれても仕方ない状況だったけど……そんな今更」

 

「それより、今は死銃を追おう。さっきのスキャンで、ペイルライダーを見つけた。このまま行くと、鉄橋付近で戦いをするはずだ」

 

「分かったわ。行きましょう」

 

頷き合い、2人は走り出した。

 

鉄橋の様子が見える山岳側に着くと、そこには先客が居た。

 

「リヒター!」

 

名前を呼ぶと、リヒターは驚いたように《ベレッタM93R》を向けるも、相手がカイとミトと知ると、銃を下ろした。

 

「カイ、それにミトも。こんな所に何のようだい?まさか、2人で組んで俺を倒しに来た?」

 

「いや、違う。これから起きるだろう戦闘を見届けたいんだ」

 

「だから、それまで一時休戦と行かない?」

 

「………そうだね。俺としても、ここで戦って銃声を聞かれるのは嫌だし、その話に乗った」

 

リヒターは銃を仕舞い、カイとミトは隣に並ぶ。

 

「それで、誰の戦いを見に来たんだい?」

 

「ペイルライダーだ」

 

リヒターの質問に、カイが答える。

 

「もしかして、君たちの言ってた因縁に関する事かい?」

 

「そんな所よ」

 

「そうか………分かった」

 

リヒターは一先ず納得し、鉄橋を見る。

 

鉄橋では、ダインが伏射姿勢で銃を構えていた。

 

暫くすると森林側の鉄橋から青白い柄の迷彩スーツを着たプレイヤー《ペイルライダー》が現れた。

 

武器はショットガン。

 

本来なら弾が当たらないように、掩体から掩体へとダッシュして行くはずなのに、ペイルライダーはゆっくりとした足取りで、鉄橋に踏み入る。

 

ダインのアサルトライフルが火を噴くが、ペイルライダーは鉄橋を支えるワイヤーに左手のみでしがみつき、左手一本で昇り始めた。

 

ダインも後を追って撃つが、伏撃姿勢では狙いづらいのか、二度目の射撃が大きくズレた。

 

その隙にペイルライダーは、ワイヤーの反動を利用して、ロングジャンプをし、ダインとの距離をかなり詰めた。

 

「なるほど、STR型なのに装備を軽量にしたのは三次元機動力をブーストさせるためか。それに軽業(アクロバット)スキルも高そうだな」

 

リヒターはペイルライダーの戦いを見て、そう頷く。

 

ダインは三度銃を撃つがその攻撃もペイルライダーは、前転をするようにして躱す。

 

「なろっ!」

 

ダインの声が聞こえ、ダインは空のマガジンを交換しようとする。

 

だが、その前にペイルライダーの持つショットガンが発砲される。

 

撃たれたダインは大きく仰け反る。

 

だが、仰け反りながらもマガジンの交換を終わらせる。

 

そして、頬付けして撃とうする。

 

しかし、その前にペイルライダーは再び引き金を引く。

 

また、ダインは大きく仰け反り、体勢を崩した。

 

ペイルライダーは、もう目と鼻の先のダインに向かって、もう一度引き金を引き、残りのHPを全て奪った。

 

死体となったダインの体の上に、【Dead】の文字が浮かび上がる。

 

「ペイルライダー、強いな」

 

「ええ」

 

「死銃として考えるべき?」

 

「どうだろうな………俺的にはどうしてもステルベンが気になるんだが………」 

 

そんなことを考えていると、ペイルライダーの右肩に着弾エフェクトが閃く。

 

それと同時に、ペイルライダーはその場に倒れた。

 

「アイツ、どうしたんだ?」

 

「分からない。急に倒れたみたいだけど………」

 

「カイ、ミト。発砲音は聞こえた?」

 

「いや、聞こえなかった」

 

「私もよ」

 

「……なら、作動音の小さい光学ライフルかサプレッサ―を付けたライフルのどちらかで狙撃したのかな」

 

「ねぇ、リヒター。ペイルライダーの体に妙なライトエフェクトが出てるんだけど」

 

「ん?……あれは電磁スタン弾だね」

 

「何だ、それ?」

 

「当たった瞬間、電流を生み出し、対象を麻痺させる弾だよ。もっとも大口径のライフルでしか使えないし、おまけに一発一発が高い。対人向けより、大型Mob狩りに使われる。ま、この分なら後、数十秒で効果は消えるかな」

 

「なら、なんのために撃ったの?」

 

「………そういえばどうしてだろう?」

 

疑問に思ってると、鉄橋の鉄柱の陰から別のプレイヤーが現れた。

 

全身を覆う、濃い灰色のフードマント、ギリーマントという奴だ。

 

「いつからあそこに居た?」

 

カイは思わず声を上げた。

 

ミトも覚えてる限り、いつからあそこにプレイヤーがいたのか覚えてない。

 

まるで行き成り現れた感じだ。

 

そのプレイヤーの手には、かなりの大きさのライフルがあった。

 

「あれは、《サイレント・アサシン》!」

 

ライフルを見て、リヒターが叫ぶ。

 

「知ってるのか?」

 

「ああ、正式名称は《アキュラシー・インターナショナル・L115A3》。あれは人を狙撃するために作られたライフルだよ。最大射程距離2000m以上で、専用のサプレッサー付き。撃たれた奴は狙撃手の姿を見ることも無く、そして、音もなく殺される。故に《沈黙の暗殺者(サイレント・アサシン)》なんて呼ばれてる」

 

リヒターの説明を聞く中、そのプレイヤーはなめらかな足取りで、ペイルライダーに近づく。

 

そして、マントの中から一丁の銃を取り出した。

 

見た目がしょぼく、攻撃力が低そうに見える銃だった。

 

そう思ってる間に、そのプレイヤーは十字を切り、左手を握りに添える。

 

そして、引き金を引こうとした瞬間、カイはとてつもなく嫌な予感がした。

 

引き金が引かれる。

 

その瞬間、プレイヤーは体を大きく後ろに仰け反らせた。

 

その後、1発の弾丸がプレイヤーの胸元を僅かに掠め、後ろの地面に大穴を作った。

 

「今のは!?」

 

「恐らくシノンだ。この大会で、遠距離狙撃出来て、あれだけの威力が出せるのはシノンの《へカートⅡ》だけだ。でも、姿を見られない限り狙撃手の最初の一射は分からないはずなのに………」

 

リヒターが疑問を口にしていると、男は手にした拳銃でペイルライダーを撃ち抜いた。

 

だが、HPはあまり減らずに、まだ9割残ってる。

 

麻痺が解けたペイルライダーはバネのように飛び上がり、ショットガンを構える。

 

だが引き金を引く前に、ペイルライダーは、両ひざが崩れ落ち、体を右に傾け倒れた。

 

弱々しい動作で左手で胸を掴む。

 

その姿は、まるで苦しんでいるように見えた。

 

そのままペイルライダーは倒れ、体がノイズを思わせる不規則な光に包まれ消滅し、《DISCONNECTION》と文字が浮かび上がり、消えた。

 

ペイルライダーを撃ったプレイヤーは、戦闘の様子を中継しているバーチャル・カメラに向かって口を開く。

 

「俺と、この銃の、真の名は、《死銃》……《デス・ガン》だ」

 

冷たい無機質な奥に生々しい感情の歪みを押し込んだ声が響く。

 

「俺はいつか、貴様らの前にも、現れる。この銃で、本物の死を、もたらす。俺には、その力がある」

 

手にした銃が黒い銃は、怪しく光輝く。

「忘れるな。まだ(・・)終わっていない(・・・・・・・)何も(・・)終わって(・・・・)いない(・・・)

 

死銃はフードの下で、にやりと笑みの気配を盛らし、あのセリフを言う。

 

かつて、SAOを恐怖に陥れた、あのセリフを。

 

「イッツ・ショウ・タイム」

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