「ここで次のスキャンを回避しよう」
死銃たちを撒くと、カイたちは砂漠エリアにある洞窟に身を隠し、スキャンをやり過ごすことになった。
「そう言えば、どうして死銃はスキャンに映らず、そして、川も潜らないでシノンに接近出来たんだ?」
回復キットでHPを回復しながら、キリトが尋ねる。
「《メタマテリアル
まだ震えの治まらないシノンは洞窟の中で、蹲り、自身の身体を抱きしめながら言う。
「なるほどな。なら、ここは安全だろう。下は荒い砂だから足音が分かるし、足跡も残る。音に注意してれば大丈夫だな。リンクス、念のために洞窟内から周囲を警戒しておいてくれ」
「分かった」
カイに言われ、リンクスは洞窟から出ない程度の位置で、双眼鏡を使い、外を監視する。
「シノン、大丈夫か?」
カイはシノンの前でしゃがみ、目線を合わせて尋ねる。
「……大丈夫、とは言い難いかも」
「そうか……そんな状態でよく頑張ったな」
そう言い、カイはシノンに微笑む。
「ほら、回復しとけ」
シノンの分の回復キットを渡し、シノンはHPを回復させる。
「ねぇ、どうしてあの時、早く私の下に来れたの?」
回復していくHPを見ながら、シノンがカイに尋ねる。
「リンクスのお陰だ」
カイは、入り口で外を見張ってるリンクスを見る。
「《銃士X》の所へ向かう途中に、リンクスと会ってな。リンクスから、リヒターが死銃と思しき奴と接触していることを聞いて、急いで戻ったら案の定、シノンが撃たれる直前だった。後は知っての通りだ」
「……そっか」
それだけ言うと、シノンは再び黙り込んでしまう。
「リンクス、外の様子はどうだ?」
「近くに接近する人影はない。足跡も見えないし、奴らはここまで追って来れてないはずだ」
「なら、当面の間は大丈夫か」
そう言い、カイは銃の残弾とサーベルの耐久値を確認する。
「俺たちは行く。シノンはもう少しここで休んでろ」
立ち上がり、そう言うカイにシノンは驚く。
「え……アイツらと戦うの?」
「ああ、彼奴の銃や、装備、ステータス以上に彼奴自身の力が突き抜けてる。さっき逃げ切れたのも半分奇跡だ。これ以上、シノンを付き合わせるわけにはいかない」
「それもそうね。彼奴等にこの場所がバレてないなら、暫くは安全だし」
「元々は俺達の因縁みたいなものだしな。ここまでありがとうな、シノン」
カイ達3人からそう言われ、シノンは思った。
(この3人………どうしてこんなに強いんだろう……相手は、人を簡単に殺せるような奴なのに………どうして立ち向かえるの………)
そう思った瞬間、恐怖を押し黙らせ、シノンは口を開く。
「私、逃げない」
「え?」
「逃げない。隠れない。私も外に出て戦う」
横に置いてあって、《へカートⅡ》を手にし、シノンはそう言う。
「ダメだ。あいつに撃たれれば本当に死ぬかもしれないんだ。俺たちは近接戦闘タイプで、防御スキルも色々ある。だが、シノンは違う。姿を消せる死銃に零距離から不意打ちされたら危険は俺たちの比じゃない」
「死んでも構わない。………さっき、凄く怖かった。死ぬのが恐ろしかった。5年前の私より弱くなっていて、情けなくて、悲鳴を上げて………。でも、それじゃあ駄目なの。そんな私のまま生き続けるなら死んだ方がいい。もう、怯えて生きるのは疲れた」
「随分と様子が変わったな」
恐怖を押し込めて立ち上がろうとするシノンに、監視をしていたリンクスが言う。
「さっきまで怯えていた姿が嘘みたいだ………だが、所詮はハリボテ。簡単に壊れる見せかけの物だ」
シノンに近付き、リンクスはシノンの前に立ち塞がる。
「お前の本音を言ってみろよ。死んでも構わないってのは嘘だろ?」
「嘘なんかじゃ……無い。逃げて、怯えて死ぬぐらいなら、最後まで立ち向かって死ぬ。あの銃口に向かって死んでやる。別に付き合ってくれなんて言わない。1人でも戦える」
「1人で戦って、1人で死ぬ気か?」
「……そうね。それが、私の運命なのよ」
何処か諦めきったように言うシノン。
そんなシノンに、リンクスは前髪を掻き上げる様に撫で、溜息を溢す。
「そうかい……なら」
そう言うと、リンクスは腰のホルスターから《南部式大型自動拳銃》、通称《グランパ・ナンブ》を抜き、シノンの額に合わせる。
「ちょっ!?あなた!」
「お前!何を!?」
行き成りの行動に、ミトとキリトはリンクスに武器を向けようとするが、それをカイが制する。
「カイ!?」
「なんで止めるんだ!?」
「いいから黙ってみてろ」
そう言い、カイはリンクスとシノンを見る。
銃口を突き付けられたシノンは、思わずリンクスの目を見る。
そして、戦慄した。
自身を見つめるリンクスの目が、死銃と同じように見えた。
気が付けば、リンクスの手にした銃も《
呼吸が速くなり、目の焦点も合わなくなり始め、身体も震え出した。
「今この場で、死ぬか?」
「え……し……死……!」
「死んでも構わないんだろ?」
「そ、それは………!」
「話が違うって?死銃に撃たれて死ぬのは本望、それ以外で撃たれて死ぬのは御免ってか?くだらないな」
リンクスは吐き捨てる様に言い、笑う。
「この世に運命なんてもんは存在しない。あるのは、人のエゴさ。お前がどんな死に方を望もうと、俺の行動1つでお前の最期は決まる」
「あ……ああ……」
シノンは目を見開き、掠れた声を漏らす事しか出来なかった。
「キリト、それとミトだったか?お前たちはどうだ?これまでの人生、全てが自分の望んだものだったか?」
リンクスは、シノンに視線を向けたまま、キリトとミトに問い掛けた。
しかし、リンクスの問いにキリトとミトは答えれなかった。
「沈黙は是と捉えるぞ。分かったか?お前が強いと思ってるこいつらも、望んだ結果を得られ続けれなかったんだ」
「なら………どうしたらいいのよ………!」
すると、シノンは声を振り絞って、叫んだ。
「彼らが、私と同じ望んだ結果を得られなかったなら、私はどうしたらいいのよ!?カイもミトも、キリトも立ち向かおうとする力があるのに、私にはそれがない!私は……人殺しの私は、一生あの亡霊に怯えて、過ごすしか出来ないの!?」
シノンの言葉を聞き、リンクスは呆れた表情を浮かべた。
「まだ少しだが、ようやく本音を出したな」
リンクスは銃を下ろし、銃を持っていない手で頭を掻く。
「どうしたらいいか、だったな?簡単な事だ。この世が、人のエゴで回ってるって言うなら、お前もお前自身のエゴを貫けばいい」
「え?」
「お前はどうしたい?死銃相手に戦って死ぬのか?それとも………その銃と共に、
リンクスの言葉に、シノンは思わず《へカートⅡ》を見る。
「…………生きたい」
シノンの口から、そう言葉が漏れた。
「私は……弱いまま、怯えて、逃げ続けたくない………強くなって、胸を張って、堂々と生きて居たい…………!」
涙を流し、シノンはそう言った。
逃げて、怯えて死ぬぐらいなら、最後まで立ち向かって死にたいと言っていたシノンが、口にしたのは生きたいと言う言葉だった。
紛れもない、シノンの心からの本音だ。
「それでいいんだよ」
リンクスは、穏やかそうに笑い、シノンの頭に手を置く。
「他人のエゴに振り回されて生きて行くなんて、真っ平御免だろ?こっちだって多少のエゴを振りまいたって、誰も文句は言わねぇさ。それで、誰かが文句言うようなら、俺が言わせねぇ」
不敵に笑い、リンクスは言う。
「文句言う奴は、その口を片っ端から撃ち抜いて喋れなくしてやるよ」
リンクスの言葉を聞いて、シノンは笑った。
物騒ながらも、リンクスの言葉はシノンを思いやっての言葉だからだ。
「………ありがとう」
「俺が勝手にやることだ、気にすんな。ま、俺のエゴって奴だ。それに、ガキは大人の好意に甘えるもんだぞ」
「え?」
聞き覚えのある台詞に、シノンは思わず驚いた。
「それでこれからどうするよ、カイ?」
リンクスは《グランパ・ナンブ》を仕舞いながら、カイに尋ねる。
「そうだな。とりあえず、一旦全員の持ってる情報を出し合って、作戦を立てよう。ミト、キリトもそれでいいか?」
「あ、ああ、それはいいんだが…………」
「その前に、1つ聞かせて」
そして、ミトとキリトはリンクスを指差した。
「「なんでカイはソイツと親し気なのよ(なんだよ)!?」」
ミトとキリトは、同時にそう叫んだ。
「なんだよカイ、まだ言ってなかったのか?」
「そう言えば、言う時間なくて言ってなかったな。丁度いいし、今説明する」
カイはそう言って、リンクスを紹介する。
「名前は知ってるだろうけど、リンクス。俺の、
「どうも、カイの親友のリンクスだ」
「「……………………」」
「「親友ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」」