ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第19話 礼

「確かに、可能性としては高いな」

 

キリトの推理にリンクスはそう言う。

 

「だが、家はどうやって突き止める?住所が分からなければ、共犯者は殺すこともできないぞ」

 

「エントリーの時だ。エントリーの際、プレイヤーは端末を使って本名や、住所を入力する。その時に、後ろから覗き見たんだ。遠近エフェクトも、スコープや双眼鏡越しに見れば無効化できる」

 

「でも、そんなことしたらGMに突き出されてアカウント抹消されかねない。アメリカのゲームだからハラスメント関係はかなり対処が厳しいわよ」

 

「《メタマテリアル光歪曲迷(オプチカル・カモ)》………なるほど。そう言うことか」

 

リンクスはそれに気づき、にやりと笑う。

 

「ああ。もし、あのアイテムが街中でも使えるとしたら………総督府も薄暗いし、物陰で透明化したら誰も気づかないはずだ。そして、あとはスコープや双眼鏡で情報を盗み見る」

 

「とりあえず、情報を盗んだ方法は分かった。なら、家の鍵はどうだ?」

 

「《ゼクシード》も《薄塩たらこ》も1人暮らしよ。それも、セキュリティの甘い初期型の電子錠の古いアパート。住人はGGOにダイブ中で無防備。多少の知識があれば破るのは容易いだろうし、住人に気づかれる心配もないはずだわ」

 

「心不全は?」

 

「心不全の方も、何か薬品を使ったんだろう。体は発見が遅れて腐敗してたから、注射痕は見つけにくいだろうし、VRMMOプレイヤーが心臓発作で死ぬ例は少なくない。最初から、薬品での殺害と疑って掛からないと分からないだろう」

 

少しずつ真相が分かっていく中、リンクスは何かを考える。

 

「その推理、会ってるとしたら相当まずいな」

「え?」

 

「つまり、死銃のターゲットは住所が分かっていて、尚且つ一人暮らしのプレイヤーだ。そして、アイツ等はシノンを狙った」

 

「そうか!」

 

リンクスの言葉に、カイは声を上げる。

 

「シノンをあの銃で撃とうとしたってことは、今、シノンの側には死銃の共犯者がいる!」

 

「う、嘘……!?い、いや……嫌!」

 

シノンは恐怖から体を強張らせ、悲鳴を上げそうになる。

 

「落ち着け」

 

そんなシノンに、リンクスが声を掛ける。

 

「大丈夫だ。お前はまだ、死なない」

 

リンクスはまるで子供に言い聞かせるように、ゆっくりと言う。

 

「あの銃で撃たれない限り、共犯者は何もして来ない。それがアイツ等が決めたルールだ。むしろ、今この場で自動切断になんてなったらそれこそ危険だ。分かるな?」

 

「う、うん……」

 

「なら、ゆっくり呼吸をしろ。今は、落ち着け」

 

リンクスの言葉に、シノンはゆっくりと深呼吸をする。

 

「落ち着いたか?」

 

「……ええ、少しは」

 

少しばかり落ち着きを取り戻したシノンは、リンクス、カイ、ミト、キリトを見る。

 

「取り乱してごめんなさい。少し冷静じゃなかったわ」

 

「いや、無防備な自分の側に見知らぬ誰かがいるなんて、誰だって取り乱すさ」

 

「ともかく、共犯者に手を出させないためにも、死銃を倒す必要はあるな。それに、リヒターもだ」

 

「でも、敵は死銃だけじゃない。J・B、ジョニー・ブラックがいる」

 

「それだけじゃない。スノウ、彼女はコユキだった。私への歪んた執着に、カイへの憎悪。はっきり言ってかなり質が悪いわ」

 

「ジョニー・ブラックに、コユキ。どちらも一筋縄じゃ行かないな」

 

カイはそう言って、少し何かを考える。

 

「まさか………」

 

「カイ?」

 

何かに気づいたカイに、ミトは声を掛ける。

 

「いや、なんでもない。……それより、敵はそいつらだけじゃないじはずだ。他の参加者だってまだいる。大変な戦いになるだろうな」

 

「死銃にゲーム内での仲間もいる以上、残り6人になったら、奴1人を残して全員自殺するって手段も使えないか」

 

「それに、この洞窟に隠れてかなり時間が経ってるわ。勘のいいプレイヤーなら、私たちが衛星スキャンの届かないところにいるってのは分かってるだろうし、スキャンの届かない場所は限られてくる。いずれ見つかるわ」

 

「つまり、ここでの籠城ももう終わりってことだな」

 

そう言い、リンクスは《三八式歩兵銃》を担ぎなおし、立ち上がる。

 

「この先に、軍事工場跡地ってフィールドがある。高台も多く、狙撃手には絶好のポイントだ。おまけに中も入り組んでるし、会敵のリスクも低い。そこで待ち構えよう」

 

「そうだな。こちらから攻撃を仕掛けるよりは、向こうから来てもらう方が罠も張りやすいかもな」

 

カイも頷き、立ち上がる。

 

「シノン、このまま1人にする訳には行かないから一緒に来てくれ」

 

「ええ、元からそのつもりよ。奴を倒して……正々堂々と生きるんだから」

 

まだ体を震えさせているも、強い決意を胸にシノンも立ち上がる。

 

「よし。それじゃあ、シノンとリンクスで狙撃。俺とミト、キリトの3人で死銃たちを倒す。いいな?」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「了解だ」

 

「OKよ」

 

全員が頷き合い、洞窟から出る。

 

カイが先に出て、周囲の安全を確認すると、全員出てくるようにジェスチャーをする。

 

「なぁ、キリトとミト、だったか?」

 

すると、洞窟から出ようとする2人をリンクスが呼び止める。

 

「なんだ?」

 

「どうかした?」

 

「いや、今の内に礼を言っておこうと思ってな」

 

リンクスは2人をまっすぐ見つめ言う。

 

「アイツの過去、知ってるんだろ?………カイの奴、SAOから帰って来てから変わった。憑き物が落ちたって言うか、少なくともあいつ自身、過去と折り合いを付けれたんだと思う。お前らのお陰だ。アイツの親友として、礼を言いたい。カイの側にいてくれてありがとうな」

 

リンクスはそう言って、頭を下げる。

 

「ちょ、ちょっと……やめてよ……そんな頭を下げるなんて」

 

「そ、そうだぞ。それに、俺たちもカイには結構助けられたし、むしろそんなことしかできなくて申し訳ないって言うか」

 

「それでも、アイツには大きなキッカケだったんだ。だから、ありがとうな」

 

リンクスは優しく笑う。

 

「これからもアイツと仲良くしてやってくれ。それだけだ」

 

そう言い、リンクスは洞窟を出る。

 

「「……………」」

 

そんなリンクス見送り、ミトとキリトは息を吐く。

 

「なんか、カイとの仲の良さを見せつけられた気分だな」

 

「そうね。流石はカイの親友って所ね。カイの事、よく見てるわ」

 

「……言われなくても、カイは俺の相棒なんだ。相棒なら、当然のことだっての」

 

「そうね。私だってカイの彼女なんだから、言われなくても当然よ」

 

2人は笑い合い、3人の後を追うように洞窟から出た。

 

向かうは。軍事工場跡地…………決着の舞台だ

 

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