ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第20話 3人の所へ

アスナが、菊岡を呼んでから5分ほどで菊岡もといクリスハイトが来た。

 

ひょろっとした長身にマリンブルーの長髪、毒気の無い細面に銀縁の丸眼鏡を掛けた水妖精族(ウンディーネ)で、アスナと同じ魔法使い職だ。

 

「いや~遅くなってすまないね。これでも、セーブポイントから急いで飛んできたよ。ALOに速度制限があったら免停確実だ」

 

惚けたセリフを言うクリスハイトに、その場にいた全員がイラっとした

 

「クリスハイト、貴方が知ってること全部教えて」

 

雑談をする暇もなく、アスナはクリスハイトにそう切り出した。

 

「いや、知ってることって言っても、まず何から話せばいいのか」

 

誤魔化す気でいるクリスハイトに全員が苛立ちを見せた。

 

「ならその役は私達が引き受けます」

 

「この5分の間で情報収集は済んでます」

 

ノアとユイが現れ、いつもの笑顔ではなく厳しい表情をしてる。

 

そこから2人は、GGOと死銃の事件を解説し、それにより2人のプレイヤーが死んだこと、そして、先程死銃に撃たれたプレイヤー《ペイルライダー》が死んだことも説明した。

 

ネットに出回る情報や憶測などを引き出し、それを処理する能力と、正確な日本語にまとめ上げる言語化AIの完成度は圧巻だが、2人にはかなりの負荷が掛ったらしく、説明が終わると疲れたのか2人は互いに体を預け合うように寄りかかった。

 

アスナはお疲れ様と言って2人を手の平に乗せる。

 

「これは驚いたな。この短時間でそれだけの情報を集め、その結論を出すとは。どうたい君達、ラー……いや、《仮想課》でバイトしてみないかい?」

 

とぼけたように言うクリスハイトに全員が睨みつける。

 

「あ、いや、すまない。誤魔化すつもりはない。御チビさんたちの説明は事実だよ」

 

「じゃあ何か、クリスの旦那よ。テメェが彼奴らのバイトの依頼主だってんなら、テメェはそこに殺人事件の犯人がいると分かって彼奴らを送り出したってのか!?」

 

「落ち着けクライン。ここで、こいつを責めても何も変わらねぇだろ」

 

今にもカウンターから飛びかかりそうなクラインをトバルが制し抑える。

 

だが、やはりクリスハイトに対し怒りがあるらしく、刀を持つ手には力が入ってる。

 

「待ってくれ、クライン氏。殺人事件ではない。それが僕とキリト君とカイ君の三人でたっぷりと話し合って出した結論なんだ」

 

「どういうことだ?」

 

「考えてみたまえ。アミュスフィアはナーヴギアじゃない。あらゆるセーフティが設けられ脳には毛ほども傷を付けれない。ましてや直接機械と繋がってない心臓を止めるのは不可能だ。それが話し合った結論だ」

 

クリスハイトさんの冷静な結論にクラインは「んぬぬ……」と引き下がる。

 

「クリスハイト、死銃は私達と同じSAO生還者(サバイバー)よ」

 

「それは……本当かい?」

 

「名前までは分からないけど、それは確かよ。《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》所属だった殺人者(レッド)プレイヤー。当時のメンバーを全員リストアップして、自宅からGGOにログインしてるか、契約プロバイダに照会すれば「いや、すぐにはできない」

 

アスナが言い終わる前に、クリスハイトはそう言う。

 

「そんなことをしようとするなら、裁判所に令状を発行してもらう必要があるし、その手続きに時間もかかる。捜査当局への事情説明も必要だから、そんなすぐには無理だ」

 

クリスハイトは俯いて言う。

 

「結局はお役所仕事ってことか。めんどくせぇ……」

 

「トバル君の言うことはご尤もだ。だが、そうやって世の中は回ってるんだ。それに、仮にできたとしても、仮想課のデータベースにあるSAOプレイヤー諸君のデータは本名とキャラネーム、最終レベルぐらいだ。所属ギルドやSAOで何をしていたかまでは分からない。元《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》所属と言う情報だけで、現実の住所氏名を突き止めることはできない」

 

クリスハイトの言葉に、全員が沈痛な面持ちになる。

 

誰も、カイたちの援護にもいけないこの状況に、苛立ちと無力さを実感していた。

 

「バ……ッカ野郎どもが!!彼奴ら、水くせぇンだよ! 一言言ってくれりゃ、俺もどこにだってコンバートしたってのによ!!」

 

「師匠たちの事です……きっと、俺たちを危険な目に合わせないために黙ってたんだと思います。師匠もキリトさんも……そういう人です」

 

「他人が犠牲になるのは嫌がるくせに、自己犠牲は厭わない……本当に自分勝手にもほどがあるぞ……!」

 

クライン、レオ、トバルの3人は悔しさをにじませそう言う。

 

「クリスハイトさん、本当に何もできないんですか?」

 

ジークはクリスハイトにそう尋ねると、クリスハイトは首を横に振る。

 

「すまないが、こちらができることは何もない。僕にできたことなんて、GGO内部に協力者を送って、武器の提供をした事と、彼らの身体に危害が起きないように、常にモニタリングをしてるぐらいさ」

 

その言葉に、アスナが反応する。

 

「それって、貴方はキリト君たちが今どこからダイブしてるか知ってるってこと?」

 

「ああ。知ってるよ。というか、僕が用意したんだ。セキュリティは鉄板、モニタリングも盤石。そばに人もいるし、3人の現実身体の安全は保障「どこですか?」え?」

 

「3人は何処にいるんですか?」

 

「…………悪いが、教えられない。これでも、この話はかなり危険なんだ。ここまで話して挙げただけでも十分サービスだ」

 

「危険って………これだけ話したんだから、今更危険も無いでしょ!!」

 

「………とにかくこれ以上は教えれない」

 

そう言ってクリスハイトは立ち上がろうとする。

 

「待てよ」

 

だが、それをトバルが止めた。

 

「そうやって俺らを子ども扱いして、危険から遠ざけるのが正しいと思ってんのか?なら、随分と見くびられたもんだな!」

 

そう言うと、トバルは持っていた刀を抜き、クリスハイトに攻撃をする。

 

「うをっ!?」

 

クリスハイトは後ろに仰け反り、トバルの攻撃を躱すもそのまま後ろに倒れこむ。

 

その瞬間を逃さず、レオも動き、腰の短剣を抜いてクリスハイトの背後へと回り、組み付いて、ナイフを喉元に充てる。

 

「ちょっ!?まっ!?「待たねぇぞ」

 

何かを言いかけるクリスハイトに、トバルはドスの利いた声で、刀の切っ先を向ける。

 

「喋る気になれないなら、その気にさしてやろうか?死ななくても、恐怖を刻むことはできるぞ?」

 

「死ねない戦闘って、意外と精神的に疲れるし、恐怖の度合いも凄いんですよ」

 

トバルとレオの2人に脅され、更に周りのメンバーからのキツイ視線に、クリスハイトは溜息を吐く。

 

「わかった、降参だ。トラウマになってALOができなくなるのは僕も不本意だ。教えるよ」

 

クリスハイトがそう言い、トバルとレオは武器を下ろす。

 

「3人がいるのは千代田区お茶の水の病院、キリト君がリハビリで入院してた病院だ」

 

それを聞き、アスナは近いと思った。

 

キリトがリハビリ入院してた病院は、アスナがログインしてる《ダイシー・カフェ》からタクシーを使えば5分も掛からない。

 

「私、行ってくる。現実世界のキリト君たちの所に」

 

アスナはそう言って、ログアウトをしようとする。

 

「待てよ、1人で行く気か?」

 

だが、トバルがそれを止める。

 

「俺らも行くぞ」

 

そう言って、全員が立ち上がる。

 

「アイツ等が心配なのは、お前だけじゃねぇんだよ」

 

「そうよ。それに、何も言わずに勝手に行ったんだから、一言文句言わないと気が済まないってもんよ!」

 

「俺もです!師匠はいつもいつも、肝心なことを俺に話もしないで、1人で決めて…………今日と言う今日こそは許しませんから!」

 

「そこは、キリトさんとカイさんの優しさで、良い所だと思います。でも、やっぱりあたしたちに心配を掛けさせたんですから、そこは許しません!」

 

「私も!お兄ちゃんは大丈夫だとか言って、全然大丈夫じゃないし!妹として、ガツンッとお説教なんだから!」

 

「そう言う訳です。ここにいる全員、キリトさんとカイさん、それにミトさんにも言いたいことがあるんです。それなら、全員で向かうのが一番でしょう」

 

「俺も行くぞ!今度こそは、アイツ等に財布の中身が無くなるまで飯奢らせるぐらい、ド叱ってやるんだからな!」

 

トバル、リズ、レオ、シリカ、リーファ、ジーク、そして、クラインがそう言う。

 

そんな7人を見て、アスナは笑う。

 

「うん、わかった。全員で行こう。キリト君にカイ君、ミトにお説教よ!」

 

「「おう!」」「「「「はい!」」」」「ええ!」

 

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