ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第2話 最悪な誕生日と誕生の日

茅場晶彦

 

その名は、子供でも知っている人物だった。

 

SAOを作った天才ゲームデザイナーで量子物理学者、そして、ナ―ヴギアの基礎設計者でもある。

 

『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが無いことに気づいてると思う。それは、不具合ではなく《ソードアート・オンライン》本来の仕様である。諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームからログアウトすることはできない。また、外部の人間によってナ―ヴギアの停止、解除を試みられた場合、ナ―ヴギアが諸君の脳を破壊する』

 

「そ、そんなことできるわけがないよな……?」

 

「……おい、キリト。アイツが茅場晶彦本人かどうかはともかくとして、脳の破壊は可能か?」

 

「………可能だ。最新技術っていっても原理は電子レンジと同じ。出力さえあれば脳を蒸し焼きにすることもできる」

 

「で、でも、電源コードをいきなり抜けば…」

 

「ナ―ヴギアの重さの3割はバッテリセルだ。コードを抜いても無駄だ」

 

「そ、そんな…」

 

『10分間の外部電源切断、2時間のネットワーク回路切断、ナ―ヴギア本体のロック解除、または分解、破壊のいずれかによって脳破壊シークエンスが実行される。現時点で、警告を無視しナ―ヴギアの強制除装を試み、すでに、213名のプレイヤーがアインクラッドおよび現実世界から永久退場している』

 

213名と言う、人数の命が失われたと言うことに、カイは恐怖を感じた。

 

だが、それを面には出さず、平然を装い、茅場の言葉を待った。

 

『今、ありとあらゆる情報メディアによってこの状況は報道されている。ナ―ヴギアを装着したまま、2時間の回路切断猶予時間のうちに病院、施設に搬送される。現実の肉体は、厳重な介護体制のもとにおかれる。諸君には、安心してゲーム攻略に励んでほしい。さらに、《ソードアート・オンライン》はもうただのゲームではない。もう一つの現実だ。今後、ありとあらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、ナ―ヴギアによって脳を破壊される』

 

突きつけられた現実に、プレイヤーたちはどよめき出す。

 

『このゲームから解放される条件はただ一つ。アインクラッドの最上部、第100層に辿り着き最終ボスを倒すことだ。そうすれば、生き残ったプレイヤーは、全員、安全にログアウトされることを保証しよう』

 

プレイヤー達がどよめいていると茅場はまた口を開いた。

 

『最後に諸君にこれが現実である証拠を見せよう。アイテムストレージに私からのプレゼントがある。確認してくれたまえ』

 

カイがアイテムストレージを開くとそこに一つのアイテムがあった。

 

アイテム名:手鏡

 

《手鏡》と言う、茅場がプレゼントと言ったアイテムが気になり、カイはそれを調べた。

 

オブジェクト化し鏡を覗くと、そこにはカイが作った顔があった。

 

首をかしげていると、急に体を白い光が包んだ。

 

2.3秒経ち光が消えた。

 

何が起きたのか確認しようと、キリトに尋ねようとした瞬間、クラインが声を上げる。

 

「おめぇ、キリトか!?」

 

「お前、クラインか!?」

 

キリトとクラインの言葉に振り向くと、そこには見たことないキリトの顔と、見たことないクラインの顔があった。。

 

『諸君は、今なぜこのようなことをしたのか、と思っているだろう。大規模なテロでも身代金目的でもない。私の目的はすでに達成してる。この状況こそが私の最終目的なのだ。…以上で《ソードアート・オンライン》正式チュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る』

 

そう言って茅場の姿は空に同化していくように消えた。

 

しばしの静寂の後、広場に絶叫が響いた。

 

全員が口々に罵詈雑言を言い、騒ぎ立てる。

 

「クライン、こっちだ!カイもこっちに来い!」

 

キリトに呼ばれ、カイたちは路地裏に移動する。

 

「もし、茅場の言葉が本当なら、この街を出ないといけない。俺は次の村へと向かう。カイ、クライン、お前たちも来い」 

 

「え?」

 

「この世界で生き残るには、ひたすら自分を強化しなければならない。VRMMOが提供するリソース、つまり俺達が得られる金や経験値には限りがある“はじまりの街”周辺のフィールドはすぐに狩りつくされるだろう。効率よく進めるには、拠点を次の村に移した方がいい。俺は安全な道も危険なポイントも全て知ってるから、レベル1だったとしても、安全に辿り着けれる」

 

「なるほどな。わかった、俺はキリトに従うぜ」

 

「で、でもよぉ………俺、このゲーム、他のゲームでダチになった連中と徹夜して買ったんだ。そのダチ達、多分まだあの広場にいるんだ。置いては行けねぇ」

 

クラインの言葉に、キリトは何も言えなくなった。

 

クラインはVRゲーム初心者。

 

カイはVRゲーム経験はあるものの、SAOは初心者。

 

カイとクラインの二人だけなら、キリト一人でもフォローができたが、そこに、さらにクラインの友たちも加わるとなると、キリト一人では守り切るのが難しい。

 

「キリト、これ以上おめぇに世話になるのはいけねぇよな。だから、俺の事は気にせず、次の村へ行ってくれ」

 

「クライン……」

 

「これでも、前のゲームじゃギルドリーダーだったんだ。教わったテクでなんとかやってやるさ」

 

「……そうか。なら、ここでお別れだな。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ」

 

「おう!」

 

「……じゃあな。カイ、行こう」

 

「ああ。クライン、すまない。無事でいろよな」

 

カイはキリトに付いて行くと決め、クラインに謝罪する。

 

キリトとカイは、クラインに別れを告げ、町の出口へと向かおうとする。

 

「………キリト!カイ!」

 

すると、クラインが二人を呼び止め、二人は振り向く。

 

「キリト、お前って、案外かわいい顔してるんだな!結構好みだぜ!カイもアバターの方より、ずっとイケメンじゃねぇかよ、羨ましいぜ!」

 

クラインは親指を立てて、二人に笑い掛ける。

 

「お前こそ、その野武士ヅラの方がずっと似合ってるよ!」

 

「お前の顔も、最高にイカしてるよ!」

 

キリトとカイも、笑顔でそう返し、そして、走り出した。

 

後ろを振り返らず。

 

キリトはクラインを置いてったことに罪悪感を感じた。

 

自分が生き残るために、誰かを犠牲にした。

 

そんな気持ちが、心の中に残っていた。

 

「キリト!敵が来たぞ!」

 

カイの目の先には、モンスターがポップする前兆のポリゴン塊が出ていた。

 

キリトは素早く剣を抜く。

 

キリトは飛び出し、向かってくる狼型のモンスターにソードスキルを放つ。

 

モンスターはそれにやられ、四散する。

 

が、もう一体のモンスターはカイを狙った。

 

「カイ!そっちに行ったぞ!」

 

「任せろ!」

 

カイもソードスキルを発動し、モンスターに攻撃を仕掛ける。

 

だが、放った《リーパー》をモンスターは躱した。

 

「なっ!?」

 

躱されたことにカイは驚き、さらに、ソードスキル発動後の硬直で動けなかった。

 

モンスターはそんなカイの首に噛み付く。

 

「ぐあっ!?」

 

そのまま押し倒され、その拍子に曲刀も落としてしまう。

 

「こ、この離れろ!」

 

手を使い、なんとか押しのけようとするも上手くいかず、カイのHPはじりじりと減っていく。

 

(まずい!HPがもう………!)

 

HPがレッドになった瞬間、カイは恐怖した。

 

『HPがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、ナ―ヴギアによって脳を破壊される』

 

茅場の声が何度も頭の中で再生する。

 

(嫌だ!死にたくない!)

 

「離れろおおおおおおおお!!」

 

悲鳴に近い叫びをあげる。

 

「カイ!」

 

もう少しでHPが0になる瞬間、キリトの応援が間に合い、モンスターが消滅する。

 

「カイ!大丈夫か!?」

 

「あ、ああ………なんとか………」

 

カイは数ドットしか残っていないHPを見つめ、震えた。

 

(俺は………今、死に近づいていた………!嘘だろ………!)

 

「カイ!しっかりしろ!ポーションだ!回復をしろ!」

 

「あ、ああ………」

 

キリトからHP回復ポーションを渡され、勢いよく飲む。

 

HPがじわじわと回復し、HPバーの色がグリーンになったのを見て、カイは安堵の溜息を吐く。

 

「カイ…………本当大丈夫か?」

 

キリトは不安そうにカイに尋ねる。

 

「ああ……大丈夫、だと思う。ポーション、ありがとうな」

 

カイはふらふらと立ち上がり、自身の武器を回収する。

 

「…………カイ、無理して付いてこなくてもいいんだぞ」

 

「………キリト?」

 

「今ので分かったと思うけど、圏外フィールドは危険が伴うんだ。今は幸い、俺の攻撃が間に合ったからいいけど、次も間に合う保証はない」

 

キリトは申し訳なさそうに言う。

 

「だから、始まりの町に残っても」

 

「ふざけんなよ」

 

キリトの言葉に、カイは静かに怒る。

 

「確かに、俺は今死にかけたさ。本気で怖かった。生まれて初めて、死を感じた。本音を言えば、戦いたくなんてない。でも、お前は戦い続けるんだろ」

 

カイはキリトを真っすぐ見つめて言う。

 

「お前だけに背負わせて、俺一人のうのうと生きるなんて、そんなの認められるかよ!それにな、この世界でできた最初の友達を見捨てるなんて俺にはできねぇ!」

 

「カイ………!」

 

「戦うぜ、キリト。俺は戦う。お前と一緒に、このくそったれなゲーム終わらせて、茅場の奴をぶん殴る!よくも人様の誕生日を最悪な日にしてくれたなってな!」

 

先程の恐怖の色は消え失せ、快活にニヤッと笑うカイ。

 

そんなカイに、キリトも思わず笑みを浮かべた。

 

「ああ、そうだな。俺も、気持ちは同じだ。一緒にゲームクリアして、茅場を殴ろう!」

 

「おうよ!」

 

そう言うと、キリトはウインドウを出し、カイにパーティーの申請をする。

 

「カイ、それを受け入れたら俺たちはパーティーだ。一緒に戦う覚悟、あるか?」

 

「もちろんだ!」

 

カイはそう言い、パーティー申請を承認する。

 

「よし、行くぞカイ!」

 

「ああ、行こうぜキリト!」

 

そう言い、二人は再び走り出した。

 

こうして、神里伊緒の誕生日は最悪な日となり、カイと言う一人の剣士が生まれたのであった。

 

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