デスゲーム初日の夜。
カイとキリトの二人は《ホルンカ》と言う村へと到着していた。
そこでキリトはあるクエストを受けようとしており、現在パートナーであるカイはそれに協力することになった。
そのクエストとは、《森の秘薬》と言い、ホルンカの西の森にいる《リトルネペント》と呼ばれるモンスターからドロップする《胚珠》を持っていくというもので、持っていくと報酬で第3層の終盤まで使える剣と交換して貰える。
「しかし、正式版で報酬が増えるとはな」
キリトの言う通り、このクエストで得られる報酬は《アニールブレード》と呼ばれる片手剣なのだが、正式版になるに伴って報酬武器が選べるようになっていた。
その中に、《アニールシミター》と言う名の、曲刀があった。
「いいじゃねぇか。俺もキリトも武装の強化ができるなら、それに越したことはないだろ?」
「それはそうなんだが、少し厳しくなるぞ」
「そうなのか?」
「まぁ、どの道、俺もカイも序盤の武器だとこの先キツイから、それなりに性能のいい武器に変える必要があったしちょうどいいと思うか」
二人で村の道具屋に向かい、HP回復ポーションや解毒ポーションを買い込み、それを分けてから、二人は西の森へと向かった。
「カイ、いいか?《胚珠》をドロップするのは花付きの《リトルネペント》だ。出現率は1%以下だが、通常のを倒し続けることで出現率が上がる」
「レベル上げにも打ってつけってわけか」
「ああ。でも、一番気を付けてほしいことがある。実付きの《リトルネペント》は攻撃しないでくれ」
「どうしてだ?」
「実付きを倒すと、実が割れて、嫌な臭いのする煙をまき散らすんだ。毒性とかはないんだけど、その煙は周囲の《リトルネペント》を引き寄せるんだ」
「マジかよ」
キリトの説明に、カイは戦慄する。
「ああ。β時代は、それを知らずに実付きを狩って、煙をまき散らしてしまって、周囲の敵が集まったんだ。そして、レベル2~3の4人パーティーが全滅した。だから、実付きへの攻撃はダメだ。一応、実を割らないようにする戦い方もあるが、それより戦わない方が楽だ」
「あ、ああ、分かった」
カイは頷き言う。
「でも、そこまで脅威でもないから安心してくれ。亜人型Mobと違ってソードスキルは使わないし、能力面も攻撃寄りだから防御が薄い。数を狩るには打って付けだ」
「なるほど。なら、気を付けるのは実付きだけだな」
「そういうことだ」
西の森に到着すると、早速二人の視界に《リトルネペント》が現れる。
「よし、行くぞ。奴の攻撃方法はツルでの薙ぎ払いに突き。それと口からの溶解液だ。モーションに注意してくれ」
「了解」
最後の確認を終え、二人は武器を構え走り出した。
「なぁキリト」
「ん?どうした?」
「俺の見間違いじゃなければ、奥のアレ、花付きじゃないか?」
「なに!?」
カイに言われ、キリトは奥の方を見つめる。
そこには確かに花付きがいた。
「花付きだ!幸先いいぞ!」
「よし!なら、早速狩るぞ!」
「ああ!」
カイとキリトは同時に走り出し、キリトは《スラント》を使い、《リトルネペント》のHPを二割削る。
そこにすかさず、カイが《リーパー》で斬り裂く。
それで《リトルネペント》のHPは残り5割以下になる。
「はああああああああ!」
最後に、キリトが《ホリゾンダル》でトドメを刺し、《リトルネペント》倒す。
そのまま二人で、花付きにも取り掛かり、速攻で倒した。
「よし!《胚珠》ドロップ!」
花付きからドロップした《胚珠》を手にキリトが声を上げる。
「これで後は1つだな」
「この調子なら残り1個もすぐだな」
「よし、ガンガン行こうぜ!」
「出ないな」
「驚くほどにな」
最初に花付きの《リトルネペント》が出てから20分近く戦い続け、《リトルネペント》を20体ほど倒すも、花付きの《リトルネペント》は1体も出なかった。
それでも経験値は溜まるので二人は狩り続けた。
そして、21匹目を倒した瞬間、二人の聴覚にファンファーレが聞こえた。
「お、レベル上がった」
「やったな」
「お互いにな」
互いに笑い合い、手に入れたスキルポイントを振る。
キリトは筋力に1、敏捷に2振り、カイは筋力に2、敏捷に1振る。
「さて、続きと行くか」
「いや、それよりカイ。この《胚珠》を持って、《アニールシミター》と交換して来い」
そう言い、キリトはアイテムストレージから《胚珠》を取り出す。
「どうしてだ?」
「このまま戦い続けても時間がかかる。なら、武器を性能のいいのにして狩りの効率を上げるんだ」
「なら、俺よりキリトの方がいいんじゃないか?」
「最初に花付きを見つけたのはカイだろ。俺はまだいいから」
そう言ってキリトは、強引に《胚珠》をカイの手に握らせる。
「そうか。なら、お言葉に甘えるよ」
「ああ。でも、なるべく急いでくれよな。俺はこの辺りで狩り続けてるから、座標忘れるなよ」
「分かってるよ、ありがとうな」
カイはキリトに礼を言い、《胚珠》を手に《ホルンカ》へと戻った。
キリトと別れた後、カイは20分掛けて《ホルンカ》へと戻った。
「戻るのに時間が掛かったな。キリトは無事か?」
左上隅にあるキリトのHPバーを確認すると、多少の減りはあるものの、HPはまだグリーンだった。
「まだ大丈夫だな。早く武器をもらうか」
最初にキリトと共に訪れた民家に行き、扉を開ける。
頭上に!がある女性NPCに近寄り、カイは声を掛ける。
「持ってきました。《胚珠》です」
ストレージから《胚珠》を取り差し出す。
すると、NPCは喜び、感謝し、《胚珠》を受け取る。
そして、それと同時にカイの前にメッセージウィンドウが現れる。
『報酬の武器を選択してください』
・アニールブレード
・アニールシミター
・アニールサイス
・アニールランス
報酬として提示されてる武器の中から、カイは迷わず《アニールシミター》を選択する。
選択すると、NPCは部屋にある大きなチェストから赤鞘に収められた剣を持ってくる。
「ありがとうございます」
カイはお礼を言い、民家を後にする。
早速、手に入れた《アニールシミター》を装備する。
「おお……感じが全然違う」
ちょっとした感動を覚え、カイは数秒無言になる。
「って、こんなことしてる場合じゃない!早くキリトの所に向かわないと!」
《アニールシミター》を鞘に戻し、速足で東の森へと向かう。
森に入り10分が経過した。
「あれ?キリトは何処だ?」
カイはキリトと別れた座標まで来たものの、キリトの姿は見えず辺りを見渡す。
「座標間違えたか?」
メモしていた座標と現在地を確認するも、間違ってはいない。
「何処に行ったんだ?」
パァァァン!
その時、凄まじい破裂音が森に響く。
「今のは!?」
カイは嫌な予感がしつつも、破裂音が聞こえた方へと向かう。
すると、そこには30を超える数の《リトルネペント》に囲まれるキリトがいた。
キリトは自身の筋力値を使ってソードスキルの威力を上げるシステム外スキルを使い、 《ホリゾンタル》で《リトルネペント》を一撃で倒していた。
だが、それでも限界があった。
とうとう背後を取られ、《リトルネペント》のツタがキリトの背中を狙う。
「キリトオォォォ!!」
カイはすぐさま《アニールシミター》を抜き、《リーパー》を発動する。
《アニールシミター》は《リトルネペント》のツタを斬る。
「うおおおおおおっ!!」
そして、すかさず《フェル・クレセント》を発動し、《リトルネペント》を倒す。
「すまない、キリト!遅くなった!」
「カイ!来てくれて良かった!」
「一体何があったんだ!お前に限って、実付きを攻撃するとは思えないぞ!」
「訳は後で話す!今はこの状況を切り抜ける!手貸してくれ!」
「了解だ!」
互いの死角となってる部分をカバーしつつ、ソードスキル発動後の硬直を補い合い、カイとキリトの二人は夥しい数の《リトルネペント》を倒した。
「……倒し切ったか」
「………みたいだな」
お互いに疲労が見え隠れし、思わずその場に座り込む。
「それで……何があったんだ?」
「……………ちょっとこっちに来てくれ」
カイがキリトに案内されたのは、近くの茂みだった。
そして、そこには《スモールソード》と《
「コペルの物だ」
「コペル?」
「お前と別れた後、出会ったんだ」
そこからキリトは話し始めた。
コペルとは、お互いに素性を明かしてはいないが、お互いが元βテスターであるのは分かっており、《胚珠》ドロップの為に一緒に《リトルネペント》を狩ろうと言われ、その提案にキリトは乗った。
そして、30分ほど狩りまわって、ようやく花付きが現れるも、近くに実付きもいた。
そこで、コペルが実付きのタゲを取り、キリトが花付きを倒すことになった。
作戦は首尾よく生き、キリトは見事《胚珠》をゲットした。
その直後、コペルはわざと実付きの実を割り、大量の《リトルネペント》を誘き寄せた。
「な、なんでそんなことを…………!」
「俺が手に入れた《胚珠》が欲しかったんだと思う。装備してるアイテムや、ポーチに入れたアイテムはプレイヤーが死ぬとその場に残るからな」
キリトの言葉に、カイは驚き何も言えなかった。
HPが0になったら現実でも死ぬかもしれないこの世界で、その様な暴挙に出る者がいるとは思いたくなかったからだ。
「コペルは、《リトルネペント》に俺を殺させ、残った《胚珠》を手にクエストをクリアしようとしたんだ。……………でも、あいつは一つミスを犯した」
「ミス?」
「
コペルはそのスキルを使って、《リトルネペント》をやり過ごそうとしていた。
「キリト、その
「
「………そういうことか」
キリトの言ってたミスを理解し、カイは落ちてる剣と盾を見る。
「生き残りたかったんだろうな……」
「おそらくな」
そう言い、キリトはコペルの剣を、近くの木の根元に差し、先程の《リトルネペント》の大軍を倒した際にドロップした《胚珠》を取り出す。
「お前の取り分だ、コペル」
そう言い、キリトは立ち上がる。
「行こう、カイ」
「………ああ」
二人は無言で森を抜け、民家へと戻った。
民家に入って数分後、キリトが戻ってくる。
「カイ」
「ん?」
民家から出てきたキリトは、カイの方を真っすぐ見つめる。
「絶対にクリアするぞ」
「………ああ、勿論だ」
改めて、ゲームクリアを決意し、カイとキリトは《ホルンカ》を後にした。
次回は、時間が飛び、いよいよヒロインが登場します。