「ミト、スイッチ!」
「はああああ!」
《トールバーナ》の街からさほど離れていないフィールドで、カイはモンスターの攻撃をいなしカウンター攻撃をする。
それによって態勢が崩れたモンスターにミトが鎌で斬りかかる。
それによりモンスターは絶叫を上げ消滅する。
「ナイス、ミト」
「カイもね」
互いにハイタッチをして、労う。
「アスナ、スイッチ!」
「やああああああ!」
キリトとアスナもスイッチの練習を行い、モンスターを倒す。
「ナイス《リニア―》だ。でも、今のはオーバーキルだ」
「オーバーキル?」
「敵のHPの残量に対して与ダメージが多すぎるって事さ」
「多いいと、何か問題なの?」
「デメリットがあるわけじゃないけど、ソードスキルは集中力が必要だ。使いすぎると、精神的な消耗が激しいし、何よりもし攻撃をかわされたりしたら、スキル発動後の硬直で身動きが取れず、その隙に攻撃をくらう。だから、敵の残りHPが少しなら、通常攻撃で十分倒せる」
キリトの説明に、アスナは「なるほど」っと呟き、ミトは「そう言えば、その辺の説明とかしてなかった」と言い、カイは「オーバーキルはダメね、了解了解」と言った。
「さて、連携の方は大体いいだろ。あとは本番になるが、この調子なら大丈夫だ」
キリトが剣を戻しそう言い、全員が武器を仕舞う。
「ねぇ、仮にも明日は互いの命を預け合う仲なんだし、一緒に食事しない?」
すると、ミトがカイとキリトを食事に誘った。
「この前助けてもらったお礼に奢るわ」
「いや、でもそれは………」
「お礼はいつかするって言ったでしょ。こうしてパーティー組めたのも何かの縁だし、行きましょう」
アスナからもそう言われ、カイとキリトは顔を見合う。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ご馳走になるよ」
4人で食事することになり、街へ戻る。
「それにしても、久々にお風呂入りたいな~」
街は戻る道中、アスナが突然そんなことを呟いた。
「アスナ……それは言わない約束でしょ?」
するとミトはうんざりしたように言う。
「そうだけど、もう一ヶ月なんだよ?仮想のお湯でもいいから、頭から爪先まで温まりたい」
「それ言われると、こっちまで入りたくなるじゃん」
そう言って、ミトとアスナの2人は溜息を吐く。
「風呂入りたいのか?」
そんな二人に、カイがそう尋ねる。
「仮想世界だからお風呂に入らなくても大丈夫ってのは分かるけど、気分的にね」
「死ぬつもりはないけど、もし死ぬとしてもひとっ風呂浴びたいって気持ちはあるわ」
風呂が恋しいらしく、二人はまた溜息を吐く。
「風呂ならあるぞ」
「「………え?」」
カイの言葉に、二人は聞き返す。
「俺とキリトで、借りてる部屋に風呂あるんだよ」
「ちょ、ちょっと待って!どういうこと!?」
「この町の三軒の宿屋に、そんなものなかったけど!?」
ミトとアスナは興奮気味に訪ねてくる。
「えっとだな、INNってのは最安値で泊まれるって意味なんだよ、低層フロアだと。だから、探せばコルを払って借りれる部屋は割とあるんだ」
キリトは押され気味に言う。
「「……………して」」
「「え?」」
「「お風呂貸して!!」」
ミトとアスナの二人は、大声でカイとキリトにそう言った。
「凄い………本当にお風呂だ……」
「部屋も広いし、これで私たちの借りてた宿屋と30コル差って安過ぎる…………」
カイとキリトが借りてる、二階建ての農家の母屋で、一階にはNPC農家の一家がおり、二人は二階を使わせてもらっている。
一ヶ月ぶりに見る浴槽に、ミトもアスナも目が釘付けだった。
「えっと、それじゃあごゆっくり」
「逆上せない様に気を付けてな」
カイとキリトはその場を去り、浴室のドアを閉める。
「あ、ミト。この扉ってカギは………」
「あー、無理じゃないかな?この部屋借りてるのはあの二人だし」
試しにミトがドアノブをタップするも鍵がかかった様な気配はなかった。
「まぁ、貸してもらってる身分なんだし、ここはあの二人を信じましょう」
「そうだね。それにしても………一ヵ月ぶりのお風呂だぁ!」
久々のお風呂にアスナは歓喜し、いそいそと装備を外していく。
「はしゃぎ過ぎだっての」
アスナを落ち着かせるように言うミトだが、ミトも内心は一ヵ月ぶりの入浴に内心ワクワクしていた。
装備をすべて外し、完全な無防備状態になった二人は、すぐにでも湯船に浸かりたい衝動を抑え、体をお湯で流す。
お湯が肌を流れるのを感じ、二人はそのまま湯船へと浸かる。
「ああ……この感じ、懐かしくて涙出そう………」
「今なら泣いてもいいよ………」
「泣かないよ~…………」
一ヵ月ぶりの入浴に、二人は完全にリラックスし、お湯を堪能する。
「ねぇ、ミト」
「ん?何?」
「相談したいことって、何?」
連携の練習前に言ってたことを思い出し、ミトは少し間を置き話始める。
「昔さ、小学生の時、一年ぐらい毎日一緒に遊んでた友達がいたの」
「そうだったの?」
「ええ。その子も、すごくゲームが上手くて、すぐに仲良くなれた。休みの日も、お互いに予定がなければ遊んでた。本当に……大切な友達だったんだ………」
「その子は今、どうしてるの?」
「分かんない。ある日急に公園に来なくなってそれっきり。その子の名前も家の場所も聞いてないから、逢いに行くこともできないでさ…………」
「名前も知らなかったの?」
「うん。殆どプレイヤーネームで呼び合ってたからね。…………その子のプレイヤーネーム……《カイ》って言うの」
「カイって、まさかその子って!」
「分からない……
「だったら聞いた方がいいんじゃない?間違ってたら間違ってたで済むことだし。それに、もし同じカイ君なら良かったじゃない」
アスナの言うことはもっともだった。
別人だったとしても、間違いだったで済む話。
そう、別人ならそれだけで済む話だった。
「もし………もしカイだったら?」
「え?」
「もし、彼が本当にカイで、あの日、来なかった理由が……居なくなった理由が……私の所為だったら…………」
もし、カイがカイ本人だったらミトはあの日カイが来なかった理由を聞きたいと思っている。
だが、もしその理由が自分の所為だったらと思うと怖かった。
「昔の友達に言われたの。私はゲームが上手いから、下手な人の気持ちが分からないんだって。だから、一緒にゲームしたくない、楽しくないって。もし、カイもそう思って私の前から居なくなったんだとしたら………怖くて、聞けないよ…………」
普段のミトからは想像できない程に弱気になっており、アスナは驚いた。
「なんか……驚いたな」
「え?何が?」
「ミトにも女の子らしい悩みがあるんだって」
「……それ、どういう意味?」
ジト目で見つめてくるミトに、アスナは噴き出す。
「ごめんごめん、悪気があるわけじゃないから」
そう前置きをし、アスナは優しい目でミトを見る。
「大丈夫だと思うよ。もしカイ君が、ミトの言うカイ君だったとしてもミトと居るのが詰まらないから会わなくなった訳じゃないと思うから」
「………なんでそう思うの?」
「だって、今日の連携の練習で、カイ君とミト、凄く息が合ってたよ?」
「あれは……カイが、私が戦い易い様に立ち回ってくれたからで」
「会って間もないのにそこまで考えてくれるのは優しい人だよ、きっと」
有無も言わさないアスナの言葉に、ミトは思わず押し黙った。
「それに、こう見えて人を見る目はあるって自信があるんだ。だからさ、信じてよ、私の事と、カイ君の事を」
「………そうね、分かった。信じてあげる」
「それじゃあ、お風呂から上がったら早速聞きなさい」
「え、いや、それはちょっと……心の準備が……」
「大丈夫、私にいい考えがあるから」
アスナは楽しそうな笑みを浮かべ、ミトに作戦を話した。
ミトが宿屋以外の泊まれる家を知らなかった理由は、そもそもβテストの時は宿屋は基本ログアウトするための場所なので、知る必要がなかった的な感じです。
一緒にお風呂に入るミトとアスナ。
アスナが授けた作戦とはいかに?
次回もお楽しみに