ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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本編を書かないといけないのに、ノートパソコンの寿命で、書きかけ作品をサルベージできるまでお待ちください。


バレンタイン編

「明日奈……どうしよう………」

 

ミトが絶望した表情で、アスナに泣きそうになりながら問いかける。

 

だが、アスナは答えられなかった。

 

難しい表情をしながら、目の前のソレを見る。

 

「私、知らなかった………」

 

思わず顔を手で覆い、ミトは声を震わせる。

 

「こんな………こんな!」

 

とうとう涙声になり、ミトはしゃがみ込んだ。

 

「チョコ作りが難しいなんて、知らなかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は2月13日。

 

所謂、バレンタインデー前日。

 

ミトは恋人であるカイに手作りチョコを渡そうと考えた。

 

それを聞いたアスナはと言うと

 

(え?大丈夫かな?)

 

っと思った。

 

手作りチョコなんて、チョコを溶かして、型に入れて固めれば出来る、と思われがちだが、それは間違いだ。

 

チョコを溶かす時点から難しいともいえる。

 

一般的に、チョコを溶かす時は湯煎をして溶かす。

 

この時に、チョコの中に水分が入ったり、溶かすチョコが少なかったり、チョコの温度が上がり過ぎたりすると、コンクリートのような硬さのチョコが出来てしまう。

 

更に、型に入れる際にも、肝心の型が奇麗じゃないと、表面が綺麗に仕上がらない原因にもなる。

 

加えて、市販のチョコは加工には向いていない。

 

市販のチョコはそのままおいしく食べられるように作られており、カカオ以外にも香料や植物油脂など、多くの原料が含まれている。

 

その為、チョコ菓子を作る時は、調理前提で作られていて、尚且つ加工し易い、製菓用チョコを買わないといけない。

 

ただ溶かして固めるだけではない。

 

その工程だけでもかなりの技術を要するのだ。

 

料理が得意なアスナは、そのことを危惧してミトが1人でチョコ作りできるのか不安だった。

 

だが、最近ではミトの料理の腕は成長しており、レシピ通りにやれば大丈夫だと思い、温かい声援を送った。

 

その結果、ミトはバレンタイン前日になってアスナに泣きついた。

 

「深澄、まだ1日あるから頑張ろう。私も手伝うから」

 

「あ゛り゛が゛と゛う゛!」

 

涙声になりながら、ミトはアスナに感謝した。

 

「とりあえず、何で失敗したのか確認したいし、1回、深澄のやり方を見せて」

 

「うん、分かった」

 

ミトの家に集合し、アスナとミトはエプロン姿で台所に立つ。

 

「じゃあ、まずチョコを溶かすわね」

 

そう言い、ミトは製菓用のチョコを取り出す。

 

(あ、よかった。ちゃんと製菓用だ)

 

アスナはミトがちゃんと製菓用のチョコを使ってることに、ホッとした。

 

だが、次の瞬間思わず絶句した。

 

何故なら、ミトはフライパンを取り出し、火にかけた。

 

「……………え?」

 

まさかの行動に、アスナは思わず唖然とする。

 

そんなアスナを無視し、ミトは温めたフライパンに、製菓用チョコをそのまま入れた。

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

アスナの声が裏返った。

 

チョコを直接フライパンに入れたことに、驚いたからだ。

 

「ど、どうしたの明日奈?いきなり大きな声で叫んで……」

 

声を上げたアスナに、ミトは驚くも、アスナは急いでコンロの火を消し、ミトの頭を叩いた。

 

「いったぁ!な、何すんのよ!」

 

「何すんのよじゃないでしょ!チョコを直火で溶かしたら、美味しくなくなるから!」

 

「えぇ!?そうなの!?」

 

ミトは本気で驚いた。

 

アスナは頭を抱えて、ため息をつく。

 

「はぁ……。あのね、深澄。普通は温めたボウルの中にチョコを入れて、溶かすんだよ?チョコに直接火をかけるなんてしないの」

 

「そ、そうなんだ……知らなかった……」

 

ミトは心底落ち込んだ様子を見せた。

 

「とにかく、一番の失敗理由が分かった気がするし、ここから頑張ろう」

 

「うん、ありがとう明日奈」

 

こうして、アスナの指導の元、ミトは再びチョコ作りを始めた。

 

お湯を張ったボウルに、刻んだ製菓用チョコを入れたボウルを付けてゆっくりと溶かしていく。

 

「チョコは温度が30度以上になると味が落ちちゃうから、こうしてゆっくりと溶かしていくの。だから、直火に掛けるのなんて以ての外。論外。分かった?」

 

「はい……すみませんでした……」

 

アスナに叱られ、ミトは縮こまる。

 

「で、こうして溶け終わったら、次はテンパリングするよ」

 

「テンパリング?」

 

「チョコの温度調整をする作業だよ。ただ溶かしたチョコを、冷やして固めるとツヤがなくて見栄えも悪いし、口溶けも悪くなるの。そこで、チョコの温度を調節して、仕上げる。それがテンパリング」

 

「へー。そんなことまでやるんだ」

 

「溶かしたチョコを、水を張ったボウルで冷まして、冷まし終えたら、また湯煎で温度を上げる。この時に、チョコの温度が低すぎたり、高すぎたりしたらダメ。かなり繊細な作業だし、どこかの段階で温度調整を失敗すると固まらないから、気をつけてね」

 

「は、はい……」

 

アスナの厳しい指導の元、ミトはチョコ作りを続ける。

 

そして、テンパリングを終え、いよいよ最後の工程。

 

型にチョコを流し込み、冷蔵庫で固めるだけだ。

 

「良い、深澄。ただ型に流すだけだと思わないでね。チョコを固める型が、少しでも濡れてたりするとアウトだから。埃だってNG。事前に型がしっかり洗って、乾燥させておくこと。さらに、無水タイプのアルコールをガーゼか布巾にしみ込ませて、拭けば更に良し」

 

「は、はい……」

 

アスナの指示通り、チョコを型に流し終え、ミト達は冷蔵庫に入れた。

 

「これで終わり。後は待つだけだよ」

 

「やったー!やっと出来たー!」

 

喜びを爆発させ、ミトはガッツポーズをした。

 

その姿を見て、アスナも微笑む。

 

「良かったね、深澄」

 

「うん!明日奈のおかげだよ!」

 

「そんなことないよ。深澄が頑張った結果だよ」

 

「うぅん。明日奈がいなかったら、私多分、この工程で失敗していたと思う。本当にありがとう」

 

「そうだね。チョコを直火で溶かそうとする時点で、大問題だもん」

 

「うっ……」

 

アスナはジト目でミトを見る。

 

ミトは何も言い返せなかった。

 

「さてと、じゃあ、もう帰るね。深澄、また明日ね」

 

「うん!今日はありがとう!」

 

そう言って、アスナはミトの家を出た。

 

(ふぅ……。とりあえず、一安心かな?)

 

アスナを見送り、ミトは一息つく。

 

「しかし、チョコ作り侮ってたなぁ」

 

そう呟きながら、ミトは台所の片付けを始める。

 

「あんなに難しいなんて、思わなかった。けど、ちゃんと作れてよかった」

 

ミトは嬉しそうに笑みを浮かべながら、後片づけを続けた。

 

だが、そこでふとあることが思い浮かんだ。

 

「………でも、あのチョコって、私が作ったって言えるのかな?」

 

ミトは少し不安になった。

 

アスナに教えてもらい、なんとか完成したが、アスナがいなきゃ完成しなかっただろう。

 

なんなら、湯煎からテンパリングまでアスナが手伝ってくれた。

 

ミト自身がしたことは、チョコを刻むことと、型に入れて冷蔵庫に入れること。

 

「……なんか、自分で作った実感がない……」

 

ミトは複雑な気持ちを抱いた。

 

だが、すぐに首を横に振る。

 

「ううん。私が作ったら、変な味になっちゃうし、見た目も悪くなる。伊緒には美味しいチョコ上げたいから、これでいいのよ!」

 

自分に言い聞かせるように、ミトは叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ミトは作ったチョコを鞄に入れ、通学した。

 

教室に着くと、アスナがさっそく声を掛けてくる。

 

「深澄、おはよう」

 

「おはよう、明日奈」

 

挨拶を交わした後、アスナはミトに尋ねる。

 

「ねぇ、伊緒君にはいつ渡すの?」

 

「うん、今日のお昼にいつもの所で会うからその時に渡すつもり」

 

「そっか。うまくいくといいね」

 

「うん。ありがと」

 

アスナの言葉を聞き、ミトは何処かぎこちない笑顔で返した。

 

そして、昼休みの時間。

 

ミトは、鞄を手にカイとの集合場所に向かおうとした。

 

その途中、階段で屯している男子生徒の会話が耳に入った。

 

「なぁ、お前らさ、チョコ貰うなら誰から貰いたい?」

 

「それって、うちの学校でか?」

 

「あぁ」

 

「俺は結城さんから欲しいな」

 

「俺も!」

 

「分かるなぁ。結城さん、美人だし料理も上手って評判だからなぁ」

 

その声に、ミトは聞き覚えがあった。

 

その男子生徒たちは、ミトとアスナのクラスメイトだ。

 

だが、ミトもアスナもそこまで親しい訳ではなく、授業の関係で少し話をした程度の関係だ。

 

「俺は綾野ちゃんかなぁ。俺、SAOに居た頃から竜使いのファンでさ」

 

「おいおい、ここではSAOの話は禁句だろ?」

 

「あぁ、そうだった。悪い」

 

「まぁ、でも、確かに綾野ちゃんは可愛いし、あんな子からチョコ貰ったら嬉しいよな」

 

「だよなぁ」

 

「俺は、篠崎かな」

 

「篠崎ってマジ?あいつ、俺苦手なんだよな」

 

「いや、でもアイツ、意外と人気あるんだぜ?物怖じしない性格で、そこが良いって奴が多いんだよ」

 

「つまり、お前もそこが良いってタイプなのか」

 

「うるせぇ」

 

そんなやり取りを耳にしたミトは、出て行き辛くなった。

 

アスナもシリカもリズも、ミトの友人。

 

その友人が話題の中心なので、なんだか気まずかった。

 

「なぁ、兎沢はどう思う?」

 

すると、1人の男子生徒がそう言った。

 

自分の名前が出るとは思わず、ミトは驚く。

 

「兎沢かぁ」

 

「アイツ、結城さんとは違った系統で美人だよな」

 

「わかるわー。スラッとしてるし、大人っぽい感じがするよな」

 

「結城さんが可愛い寄りの美人なら、兎沢はカッコいい寄りの美人だな」

 

「胸も意外と大きいし」

 

「顔は整っているし、スタイルもいいからチョコ欲しがる男は多そうだな」

 

男子生徒たちは、わいわいと話が盛り上がり始める。

 

「でも、今言ったメンツ、全員彼氏持ちなんだよな………」

 

「それな」

 

「あーあ、羨ましいよなぁ」

 

1人がため息混じりに言うと、他の面々は同意するかのように大きくため息をついた。

 

「きっと、手作りチョコとか貰ってんだぜ」

 

「俺も、人生で一度でいいから女子からの手作りチョコが欲しい」

 

「やっぱり本命チョコは違うんだろうな」

 

「そりゃそうだろ。男なら、一度は憧れるシチュエーションだし」

 

「だよなぁ」

 

「けど、現実は厳しいよな」

 

「全く持ってその通り。世の中、不公平過ぎる」

 

男子生徒たちはは肩を落としながら、深いため息をつく。

 

(やっぱり男って、バレンタインにはチョコが欲しいもんなんだ。なら、伊緒も喜んでくれるよね)

 

話を聞きながら、ミトはカイにチョコを、それも手作りチョコを渡すのは間違いではないと確信し、少しだけ胸の中にあった不安を拭えれた。

 

「でもさ、この間、調理実習あったじゃん」

 

すると、1人の男子がそう言いだした。

 

「ああ、あったな」

 

「俺さ、兎沢の隣の班だったんだけど、兎沢の作った料理、お世辞にも美味そうには見えなかったんだよ」

 

「は?どういうことだ?」

 

「いや、別に味が酷いとかさ、見た目が悪いわけじゃないんだ。ただ、なんかこう……パッとしないと言うか……」

 

「なんだそりゃ」

 

「でさ、試しに俺の所の班と、料理交換したんだけど、案の定って言うか微妙だったんだ」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ。だから、もし兎沢から手作りチョコを貰っても、あんまり期待出来ないかもなって思うんだよ」

 

男子生徒の言葉に、ミトはショックを隠せなかった。

 

「いや、でも、頑張って作ってくれたことは嬉しいだろ?不味くても、微妙でも、自分の為に一生懸命作ってくれたってのは最高の付加価値だろ?」

 

「そりゃ、1回や2回なら嬉しいけど、それが毎年続くって思うと結構憂鬱じゃね?」

 

「うーん……それはそうかもしれないな……」

 

「不味いチョコを毎年貰うぐらいなら、市販の方がマシだって思っちまうかも」

 

「そうか……。確かに、一理ある」

 

男子生徒の言葉に、ミトは悔しそうに唇を噛み締めた。

 

そして、男子たちの前に堂々と姿を出す。

 

ミトの登場に、男子たちは驚く。

 

「ごめん、そこ通りたいんだけどどいてくれる?」

 

ミトは階段を使いたいことを伝える。

 

「お、おお、悪いな」

 

男子たちは慌てて道を開けると、ミトはそのまま階段を下っていく。

 

(……なぁ、さっきの話聞かれてたかな?)

 

(いや、多分大丈夫だろ。兎沢普通にしてるし)

 

(そうだよな。聞こえてたら、あんなに平然としてる訳ないか)

 

(それもそっか。なら、大丈夫か)

 

男子たちは小声で話しながら、ミトが通り過ぎるのを見送る。

 

男子たちを通り過ぎ、ミトは男子たちを振り返ると、笑顔で口を開く。

 

「そうだ。良いこと教えてあげるわね」

 

「お、おう。何?」

 

ミトの口調が変わったことに戸惑いながら、男子は返事をする。

 

「貴方達がそんなこと心配しなくても、貴方たちがチョコを貰えることなんて一生無いから安心して」

 

良い笑顔でそう言い放ち、、男子たちは心を言葉のナイフで突き刺され、しばらくその場に立ち尽くしていた。

 

ミトは、そんな男子たちに一矢報いると、急ぎ足でカイとの待ち合わせ場所の部屋に向かう。

 

3回ノックし、一拍間をおいて、再度3回ノック。

 

すると、ガチャッと鍵が開き、扉が開かれる。

 

「遅かったな、深澄。なにかあったか?」

 

「う、うん、ちょっとね。まぁ、大したことじゃないから」

 

ミトはカイの質問に答えると、カイと一緒に部屋に入る。

 

いつものようにソファーに座り、カイと隣り合わせになる。

 

いつものように2人で弁当を食べ、他愛のない話をする。

 

そして、最後にミトはカイにチョコを渡すことにした。

 

「ねぇ、伊緒。今日がバレンタインなのは知ってるよね?」

 

「ああ、そうだな。それで、深澄は俺にチョコをくれるのか?」

 

「うん。そのつもり」

 

ミトは鞄から小さな包みを取り出し、カイに渡す。

 

「はい。私から伊緒へのチョコ。受け取ってね」

 

「ありがとう。開けても?」

 

「うん。いいよ」

 

カイは丁寧にラッピングを解き、中身を取り出す。

 

「おお、これは美味そうだな」

 

「うん、味は大丈夫だと思うよ」

 

「さっそく食べてもいいのか?」

 

「もちろん!」

 

カイはチョコを一つ取り出し、口に運ぶ。

 

「どう?美味しい?」

 

「あぁ、凄く美味いぞ」

 

「よかったぁ」

 

ミトはホッとした表情を浮かべ、笑みをこぼす。

 

「けど、これ深澄が作ったのじゃないよな?」

 

「え!?」

 

ミトはギクリとする。

 

まさかバレるとは思ってもいなかったからだ。

 

「どうして分かったの?」

 

「どれだけ深澄の料理食ってると思ってるんだ?お前が作ったかそうじゃないかなんてすぐに分かるっての。大方、明日奈に手伝ってもらった感じだろ?」

 

「……正解」

 

ミトは観念したように、素直に白状した。

 

「ごめん、確かに料理の腕は上がってるけど、まだお菓子作りができるほどじゃなくて………」

 

「別に謝るなって。深澄からチョコが貰えただけで嬉しいからさ」

 

「……ホント?」

 

「あぁ、本当だ」

 

「……そっか」

 

カイの優しい声色に、ミトは頬を赤く染める。

 

「でも、もし来年もあるなら来年は深澄が1人で作ったのくれると嬉しいけどな」

 

「………実はさ。もう1つあるの、チョコ」

 

すると、ミトはそう言って鞄からもう1つのチョコを出す。。

 

「……はい!これ、私の気持ちだから受け取って!!」

 

恥ずかしさを誤魔化すかのように大きな声で叫ぶと、手に持っていた箱を差し出す。

 

差し出された箱を見て、カイは驚きながらも受け取る。

 

「これって、もしかして……」

 

カイは恐る恐る尋ねる。

 

すると、ミトは顔を真っ赤にしながらも答えた。

 

「うん、そうだよ。伊緒の為に、私が1人で作った手作りチョコ」

 

そう言うと、ミトは視線を外す。

 

「最初はさ、自分で作ったの上げようと思ったの。でも、失敗して明日奈に泣きついて、なんとか美味しく出来たけど、殆ど明日奈にやってもらってそれって自分の手作りって言えるのかなって思ったらさ、なんか自信無くしちゃって」

 

ミトは申し訳なさそうに語る。

 

「それで、もう一度最初から1人で作ったんだけど………あまり上手く出来なくて………」

 

ミトにそう言われ、カイは箱を開ける。

 

そこには、不格好な形のチョコがあった。

 

形は歪で、表面が白くなっていた。

 

「味見したら、硬いし、くちどけ悪いし、舌触りも悪いし、香りも風味も悪いしで、驚くほど美味しくなくて…………ごめん!やっぱ、それなし!」

 

ミトはそう言うと、チョコを取り返そうとする。

 

だが、カイはチョコを取られまいと、ミトから遠ざける。

 

「ダメだ。このチョコは絶対に渡さない」

 

「なんでよ!!そんな不味いチョコ要らないでしょ!?」

 

「誰が不味いって言った?俺はまだ食ってないぞ」

 

「ダメ!こんなの絶対不味いって!」

 

「深澄が作ってくれたんだろ?だったら、不味いわけがない」

 

カイはそう断言すると、チョコを口に入れる。

 

ミトはその様子を黙って見ていた。

 

すると、カイは顔をしかめ、首を傾げる。

 

「やっぱり不味いんじゃん!」

 

「まぁ……上手くはないな」

 

「ほらね?だからさ、無理して食べなくたって……」

 

「でもな、俺は好きだ」

 

カイの言葉に、ミトは驚いたような顔を見せる。

 

「え?だって、不味いんでしょ?」

 

「いや、確かに味は不味い。だけど、深澄が一生懸命作ってくれたんだろ?」

 

「う、うん」

 

「だったら、美味いとか、美味くないとか関係ない。深澄が作ったチョコなんだからな」

 

「で、でも……」

 

「それに、ここで諦める深澄じゃないだろ?」

 

カイはニヤッと笑い、もう一口チョコを齧る。

 

すると、ミトは暫く唖然とするも、カイと同じようにニヤッと笑う。

 

「当たり前でしょ?来年は、最高に美味しいチョコ作ってあげるから」

 

「ああ、期待してるよ」

 

そう言いながら、ミトとカイはお互いに笑い合った。

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