ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第10話 フロアボス討伐

ミトは新しい武器《アニールサイズ》によって、コボルドロードは動きを止めた。

 

さらに、カイが投げた投げナイフで片目も負傷し、数秒は視界が封じられている。

 

「間に合ってよかった」

 

カイはようやく回復しきったHPを見つめ、三人と合流する。

 

「無茶にも程があるんじゃないのか?」

 

キリトはHP回復ポーションを飲み言う。

 

「と言うより、武器を投げ飛ばすとか何考えてるの?もう少しで私に当たるところだったし」

 

アスナは先程のカイの行動に少しご立腹だった。

 

「ちゃんと当たらないように考えて投げたよ」

 

「だとしても危険よ。一歩間違えれば、カイも危険なのに」

 

ミトは新しい鎌を手にカイに忠告する。

 

「悪かった。次からは気を付ける………。それで、こっからどうする?」

 

《アニールシミター》を抜き、カイはコボルドロードを見る。

 

コボルドロードは復活し、カイ達を睨みつけ、咆哮を上げる。

 

レイドパーティーメンバーのHPの回復は殆ど終わっているが、士気が絶望的だった。

 

前情報と違うボスの使用武器、更に新たに出現した番兵(センチネル)、そして、指揮官のディアベル一時離脱。

 

それにより、前線は崩壊寸前。

 

数十秒もたてば、完全に崩壊し、死亡者が出る。

 

「このままじゃまずい。なんとかして立て直さないと」

 

「でも、どうしたら………」

 

生半可な指示では、余計に混乱させることになる。

 

その為、何か短く、強烈な一言を言わなければならない。

 

その時だった。

 

「全員、ちゅうううううううううもおおおおおおおおおおおおおく!!」

 

ディアベルが、ボス部屋全体に響き渡る声を出した。

 

その声に全員が驚き、混乱する声が消える。

 

どう言うわけか、コボルドロードも驚き、動きが止まったように見える。

 

「これより、第1層フロアボス討伐作戦、最後の指示を伝える!」

 

そう言うと、ディアベルはゆっくりとした足取りで、キリトの隣に立ち、キリトの肩に手を置いた。

 

「現時刻をもって、前線指揮を俺から彼に移行する!彼の指示の下、ボスを倒せ!」

 

ディアベルが出した指示に、周りは一瞬困惑する。

 

ここまでボスと戦ってこれたのは、ディアベルの指示があったからだ。

 

その指揮権を急にキリトに任せられる。

 

不安が出ないのがおかしかった。

 

「俺は従うぞ!」

 

最初に賛成の声を上げたのは、エギルだった。

 

「それに、彼にはボスのスキルの知識がある!ディアベルがそう言うなら、それに従うまでだ!」

 

エギルが賛同した事で、他のプレイヤーたちの不安は一気に消え、消えかけていた士気は再び盛り返した。

 

「キリトさん、ここからは貴方に全てを任せる。指揮、頼めるか?」

 

「………この状態で断れると思ってるのか?」

 

キリトは乾いた声で笑い、立ち上がる。

 

「奴を包囲すると、範囲攻撃が来る!B隊は無理にスキルを迎え撃たないで、防御に徹しろ!」

 

「了解!」

 

指示をもらったエギルはB隊のメンバーを引き連れ、コボルドロードの攻撃を防ぐ。

 

「D隊はB隊に向かおうとする番兵(センチネル)を引き離してくれ!引き離したら、E隊と協力し撃破!F隊は、D隊、E隊の支援!A隊はB隊のリカバリーができるように、ボスのパターンをよく見てくれ!C隊は合図と共に全力攻撃!合図はディアベルに一任する!ディアベル、行けると思ったら全力でソードスキルを叩きこんでくれ!G隊はC隊の支援に!クソ運営(茅場晶彦)に目にもの見せてやれ!」

 

「「「「「運営ザマァ!!」」」」」

 

キリトの指示に全員が従い、着実にコボルドロードにダメージを与えていく。

 

その時、コボルドロードのHPが赤くなった瞬間、一人のプレイヤーが足をもつれさせてコボルドロードを囲む形になってしまった。

 

「まずい!範囲攻撃が来るぞ!」

 

キリトが叫ぶも、既にコボルドロードが《旋車》を使おうと動作に入ろうとした。

 

「間に合え!」

 

キリトが飛び出し、《ソニックリープ》を使い、コボルドロードが《旋車》を出すのを妨害した。

 

そして、コボルドロードは、人型モンスター特有のバットステータスの《転倒》状態になった。

 

「今だ!C隊、全力攻撃!」

 

ディアベルの合図でC隊全員が、ほぼ同時に縦斬り系のソードスキルを放つ。

 

コボルドロードのHPががりがりと削られた。

 

後一回当てれば倒せるのにコボルドロードは立ち上がり、攻撃の動作に入った。

 

「くっ、削り切れなった!」

 

ディアベルは悔しそうに歯ぎしりする。

 

硬直により、C隊は動けなかった。

 

「アスナ、カイ、ミト!!一気に行くぞ!!」

 

キリトの掛け声で、4人は一気に駆け出した。

 

キリトとカイの二人が同時にソードスキル《スラント》と《リーパー》を発動し、コボルドロードの武器を跳ね上げる。

 

そこにミトとアスナが、渾身のソードスキルをコボルドロードの無防備な左脇腹に、突き刺した。

 

コボルドロードの残り僅かなHPはみるみるとなくなり、1ドット残った。

 

コボルドロードは口端から涎を垂らし、獰猛な笑みをミトとアスナに向ける。

 

ミトとアスナは戦慄した。

 

そして、二人に向け刀が振り下ろされる。

 

アスナは思わず目を瞑り、ミトはアスナを守ろうと防御態勢に入る。

 

だが、ミトが攻撃を受け止めるよりも早く、カイとキリトが互いの剣を重ね合わし、攻撃を防いだ。

 

「おい、獣、何処見てんだ?」

 

「うちのお嬢様方に!」

 

同時に剣を跳ね上げ、弾く。

 

「「色目使ってんじゃねぇ!!」」

 

カイの《フェル・クレセント》とキリトの《バーチカルアーク》が炸裂する。

 

ほぼ同時に当たられた攻撃は、コボルドロードの僅か1ドットのHPを削るには過剰過ぎた。

 

だが、ミトとアスナを狙ったコボルドロードをカイとキリトは許さず、渾身の一撃をもってコボルドロードを葬った。

 

HPが0になり、コボルドロードは顔を天井に向けて高く吠え、両手から刀を落とした。

 

そして、イルファング・ザ・コボルドロードは幾千のガラス片のように散った。

 

後方にいたセンチネルも儚く四散した。

 

こうしてデスゲーム開始から1ヵ月、アインクラッド第1層が攻略された。

 


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