ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第11話 ビーター

コボルドロードが消え、周りには静寂が漂った。

 

誰もが緊張に包まれた。

 

もしかしたら、βテストの時と違うところがあるかもしれない。

 

だが、何も起こらない。

 

そしたら、急に目の前に獲得経験値と分配されたコルが表示された。

 

それを見て確信した。

 

勝った。

 

まわりもそれを見たらしく歓声を上げた。

 

「お疲れ様」

 

カイの横にいたミトがそう言ってきた。

 

「ああ、ミトもな」

 

そう言い、二人は拳をぶつけ合う。

 

「ん?なんだこれ?」

 

その時、カイは自身のメッセージウィンドウに書かれたある物に目が言った。

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんか変なものが………《アシストボーナス》?」

 

メッセージウィンドウには、カイが取得した経験値と、自動分配されたコル、獲得アイテムが記入されており、その一番下に《Assist Bonus》と書かれ、その下に《コート・オブ・スカーレット》と言う名のアイテムがあった。

 

「ああ、それはLA(ラストアタック)を取ったプレイヤーに貢献したプレイヤーに与えられるボーナスよ。大体はLA(ラストアタック)を取ったプレイヤーの前にボスにダメージを与えたプレイヤーに贈られるわ」

 

「なるほど。つまり、俺はキリトがLA(ラストアタック)を取れるようにお膳立てしたって訳か」

 

メッセージウィンドウを消すと同時に、ディアベルがカイの下にやってきた。

 

「カイさん、お陰でボスを討伐できた。ありがとう」

 

「礼ならキリトに頼む。一番頑張ったのはアイツだ。それにディアベル、ナイス指揮だった。特に最後キリトに指揮権を渡したところとかな」

 

LA(ラストアタック)に拘ってはいけない。そう思ったんだ。それに………彼になら今後の攻略組を任せられると思ってな」

 

「攻略組?」

 

「ああ、今考えた。今後も全プレイヤーの先頭に立ち、率先してフロア攻略をする者たち、《攻略組》……いい名だろ?」

 

ディアベルは得意の騎士スマイルでそう言う。

 

「なるほど、いい名前だ。………でも、任せられるってどういう事だ?」

 

「………これから、俺の本当の作戦を行うんだ。カイさん、それに、ミトさん」

 

ディアベルはカイとミトの二人を見て、最後にエギルたちB隊にもみくちゃにされてるキリトとそれを見て笑ってるアスナを見て、まだ背後で勝利の余韻に浸る攻略組を見る。

 

「君たちと共に戦えたことは、俺の一生の誇りだ。ありがとう」

 

意味が分からず、カイもミトも首を傾げる。

 

その時だった。

 

「なんでだよ!」

 

誰かが叫んだ。

 

叫んだのはディアベルのパーティーメンバーのシミター使い《リンド》だった。

 

「なんで………なんでディアベルさんのことを見殺しにしようとしたんだ!」

 

そう叫ぶリンドの後ろには、他のパーティーメンバーがおり、その残りのパーティーメンバーもキリトに対し憎悪を向けていた。

 

「見殺しだって?」

 

何のことかわからず、キリトは尋ね返した。

 

「そうだろ!攻略本と情報が違ってたのに、アンタはボスが使うスキルのことを知ってた!それを、ディアベルさんに伝えてたら危険な目にあうこともなかった!」

 

その叫びに、周りのプレイヤーたちも次々と疑問の声を上げ始めた。

 

LA(ラストアタック)、それによるボーナスアイテムが狙いだったんだ。アンタはソレが欲しくて、ディアベルさんにボスのスキルを隠してた。そうだろ、元βテスターさん」

 

何処からかそんな言葉が聞こえた。

 

元βテスターの言葉に、周りがさらに騒ぎ出す。

 

「ちょっと待って!」

 

そんな中、アスナが声を上げた。

 

「β時代の情報は私達も攻略本で得ていたわ。あのボスの情報について大きな差はなかったはず。ただβ時代と同じだと思い込んだ私達が窮地に陥りそうになった時、彼はもっと先で得ていた知識を応用して教えてくれた。そう考えるのが自然じゃない?」

 

「俺もそう思う。それに、攻略本には情報はあくまでβ時代の物で、正式版とは差異があると注意もあった。俺たちはその注意を忘れ、偵察戦を怠った。彼に感謝こそすれ、批難するのは違うだろ」

 

エギルも声を上げ、エギルのパーティーメンバーも賛同する。

 

「いいや違うね、アルゴとかいう情報屋とそいつはグルだったんだ。元βテスター同士共謀して、善意のふりをして俺達を騙して、自分たちだけ美味しいところを掠め取っていこうとしたんだ」

 

話が悪い流れになっていく。

 

そんな中、ディアベルはカイに言葉を掛けた。

 

「これが俺の最後の作戦だ。カイさん、それじゃあ」

 

カイに別れを告げ、ディアベルが前に出た。

 

「皆、待ってくれ!」

 

ディアベルの登場に全員が静かになる。

 

「キリトさんは何も悪くないんだ!悪いのは、全部俺なんだ!」

 

「な、なに言ってるんだよディアベルさん!ディアベルさんは何も悪くないだろ!?悪いのは、情報を隠していたそこの元βテスターで!」

 

「違うんだ。悪いのは俺だ。俺は………!」

 

ディアベルの口から自身が元βテスターであると明かされそうになる。

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

 

その時、笑い声が響きわたった。

 

「元βテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないで貰おうか。いいか。SAOのCBT(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。受かった1000人のプレイヤーで何人、本物のMMOゲーマーがいたと思う?殆どが、レべリングも知らない初心者だった。あんたらの方が100倍マシだぜ。だが、俺は違う」

 

キリトの言葉に皆が驚きを隠せなかった。

 

「俺はβテストの時、誰も到達できなかった層まで到達し、刀スキルのことを知った。

他にもいろんな情報を知っている。アルゴなんか話にならないぐらいにな」

 

そう言い、キリトはディアベルを見る。

 

「ディアベル、お前は良く働いてくれたよ。元βテスターである俺の言葉を全部鵜吞みにしてくれたことで俺は無事LA(ラストアタック)が取れた。でも、もう茶番はおしまいだ。精々死なない様に頑張ってくれ、ビギナーさん」

 

キリトがこうまでして、自身への憎悪値(ヘイト)を稼ぐのは、元βテスターを守るためだった。

 

このまま行けば、元βテスターの吊し上げが始まる。

 

そうなれば、攻略組は元βテスター達とビギナー達で二つに分かれ、攻略処では無くなる。

 

だからこそ、キリトは情報を独占する悪の元βテスターを演じることにした。

 

そして、キリトの作戦は、奇しくもディアベルが行おうとしたことだった。

 

「ふざけるな!やっぱりお前が悪いんじゃないか!」

 

「この最低野郎!」

 

「そんなのチートじゃねーかよ!!」

 

「そうだ!βテスターのチーターだからビーターだ!」

 

「……ビーターか。いいな、それ。使わしてもらおう。俺は《ビーター》だ。これからは、元βテスターと一緒にしないでもらおうか」

 

キリトはLAB(ラストアタックボーナス)のアイテム、《コート・オブ・ミッドナイト》と言う黒い裾の長いコートを身に纏う。

 

「第2層の転移門は俺が有効化(アクティベート)しといてやるよ。町までフィールドを少し歩くからな。初見のModに殺される覚悟があるなら、ついてきてもいいぜ」

 

そう言ってキリトは踵を返して、第2層へ続く階段へと向かう。

 

「それじゃあ、行くとするか」

 

すると、カイは平然とキリトの隣へと向かい、一緒に第2層へと向かおうとする。

 

「なっ!?」

 

カイの行動に、キリトは思わず驚く。

 

「お、おい!お前、何してるんだよ!」

 

すると、リンドがまたしても叫ぶ。

 

「何って、自分の相棒が第2層に向かうんだから、一緒に行くのは当たり前だろ?」

 

「分かってるのか!そいつはビーターなんだぞ!最低の屑野郎だぞ!」

 

「………それがどうした?」

 

カイは獰猛な笑みを浮かべ、リンドを見る。

 

「こいつが薄汚い、最低の屑野郎だったとしても、強いことには変わりない。言っただろ?俺は強い奴は大歓迎なんだよ」

 

そう言い、カイはAB(アシストボーナス)で手に入れた《コート・オブ・スカーレット》を身に纏った。

 

「な……なんだよ……それ………!」

 

「《コート・オブ・スカーレット》…………今の戦闘で手に入れた……AB(アシストボーナス)でな」

 

「ア、 アシスト、ボーナス………?」

 

LA(ラストアタック)を取ったプレイヤーに貢献したプレイヤーに与えられるボーナス。俺は、最初からコレが目当てでにコイツに近寄ったんだよ」

 

カイの言葉に、その場の全員が驚く。

 

「それじゃあ………お前も、ボスが刀スキルを使うこと知ってたのか!」

 

「自分が強くなりたいからって、俺たちに黙ってたのかよ!」

 

「悪いな……俺は、強くなりたいんだ。強くなるには、強い奴の傍にいるのが一番手っ取り早いからな」

 

キリトに向けられていた憎悪が、今度はカイにも向けられる。

 

「行こうぜ、ビーターさんよ」

 

「あ、ああ、そうだな」

 

キリトの肩を軽く叩いて、カイは先に歩き出し、キリトも隣に並ぶように歩き出す。




アシストボーナスは、完全にオリジナルで考えました。

プログレッシブのコミック版だと、ディアベルは「いざと言う時、自分の代役を任せられる人間が一人はいる。それはリーダーなんかじゃなく、生贄(スケープゴート)だ」と言ってたので、ここのディアベルは本来はLAを横取りする卑怯な元βテスターをして、元βテスターを守り、ビギナーとの不和を解消するつもりだったことにしてます。
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