ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第13話 月夜の黒猫団

2023年4月8日 第11層《タフト》

 

そこにある酒場である一団が集まっていた。

 

「それでは、我ら《月夜の黒猫団》に乾杯!」

 

『乾杯!』

 

「そして、命の恩人キリトさんとカイさんに、乾杯!」

 

『乾杯!』

 

「えっと……乾杯……」

 

「おう、乾杯」

 

おずおずとグラスを差し出すキリトに対し、カイは普段と変わらぬ様子でグラスを差し出す。

 

何故キリトとカイが、最前線から離れたこの場所で、彼ら《月夜の黒猫団》と一緒にいるのかと言うと、武器の素材となるアイテム収集の為だった。

 

二時間ほどで必要なアイテムの収集を終えた二人は、最前線に戻ろうとした時、このギルドに出会った。

 

パーティー構成が槍使い2人に棍使いが1人、短剣使い1人、メイス使い1人で前衛ができるのが1人しかいなかった。

 

おまけに、モンスター達に囲まれていて危険な状態だった。

 

そんな中、カイは真っ先に飛び出し、彼らを守った。

 

カイに続いてキリトも飛び出し、剣を抜いた。

 

相手はつい先ほどまで戦っていた武装したゴブリンの集団で、カイとキリトの実力なら、全力でソードスキルを放てば簡単に倒せるレベルだった。

 

だが、キリトは後ろにいる彼らの視線が怖かった。

 

ハイレベルプレイヤーが下層の狩場を荒らすのは決して褒められることではない。

 

一応必要アイテムの収集の為と言う理由があるが、物事は人の捉え方にもよって変わる。

 

もし、彼らが二人を非マナープレイヤーとして上層ギルドに報告されれば吊し上げられ、新聞の非マナープレイヤーリストに名前が載ってしまう。

 

それを避ける為にも、キリトは本来の実力を隠し、下位ソードスキルだけで対処しようとした。

 

だが、カイは違った。

 

カイは即座に上位ソードスキルを使い、ゴブリンを蹴散らした。

 

その光景に、キリトは背後の視線を気にしつつも上位ソードスキルを使って、カイのフォローに回った。

 

ゴブリンを蹴散らした後、彼らはお礼を言ってきた。

 

その後、出口まで一緒に着いて行き、更にはお礼に食事をご馳走するとまで言われ、こうして同じテーブルで食事を取っている。

 

「今日は助けてくれてありがとな」

 

「サンキュー」

 

「ありがとう。本当にありがとう」

 

お礼の言葉を言われて少し照れ臭くなっていると、ギルドのリーダーである棍使いのケイタが話しかける。

 

「あの~、キリトさん、カイさん。失礼ですかレベルの方はいくつぐらいなんですか?」

 

その質問に、キリトは言い淀む。

 

「レベルなら、俺が39でキリトは40だ」

 

あっさりと自身のレベルを、そして、キリトのレベルを話すカイに、キリトは驚く。

 

「39に40!?まさか、お二人は攻略組の方なんですか!?」

 

「ああ、一応な。後、敬語使わなくてもいいぞ。見た感じ歳も近そうだしな」

 

「あ、そうでs………そうか。じゃあ、カイ、キリト、物は相談なんだけど、戦闘のコーチを頼めないか?」

 

「「コーチ?」」

 

ケイタの頼みに二人は聞き返す。

 

「僕たちのパーティー、前衛ができるのがメイス使いのテツオだけで、前衛が危ないんだよ。それで、コイツ」

 

そう言ってケイタは、ギルドの紅一点の少女を前に出す。

 

「サチっていうんだけど槍から盾持ちの片手剣に変更させようと思ってるんだ。でも、勝手がわからなくてさ。だから、サチに片手剣の使い方や俺たちに戦闘のレクチャーして欲しいんだ。報酬も払うし、どうかな?」

 

「俺は構わないぞ」

 

「ちょっカイ!」

 

あっさりと引き受けようとするカイに、キリトは慌てる。

 

「ただその前に、お前たちに言っておくことがある」

 

カイの言葉に全員が首を傾ける。

 

「俺とキリトは、《ビーター》だ。正しくは、キリトが《ビーター》で、俺はそれに付き纏う《寄生者(パラサイト)》だ」

 

寄生者(パラサイト)》とは、カイに付けられた渾名で、《ビーター》にくっ付いて美味しい思いをしてると言うことから付けられた。

 

「《ビーター》って、あの《ビーター》か?」

 

「情報屋も知らない情報を独占してるって言うあの?」

 

「《寄生者(パラサイト)》も聞いたことある。《ビーター》にくっ付いて美味しい思いしてる屑野郎だって」

 

「ああ、そうだ。俺たちから教えを乞うってのは、お前たち全員《ビーター》と《寄生虫(パラサイト)》の弟子になるってことも同じだ。それでもいいのか?悪評ってのは広まるのが早いぞ」

 

カイがそう言うと、ケイタたちは静かになった。

 

キリトは罵倒されると思い、身構えた。

 

「なんて言うか………驚いたな」

 

「そうだな」

 

「あまりいい噂聞かないから、どんなに酷い奴らなのかって思ったけど、全然普通じゃないか」

 

「むしろ良い人たちだな。俺たちのこと助けてくれたし」

 

「噂って宛にならないって言うけど本当だね」

 

ワイワイと口々にそう言い出すケイタたちにキリトは驚く。

 

「えっと、俺が言うのも変だけど、そう簡単に信じてもいいのか?君らを騙すために演技してるのかもしれないぞ?」

 

キリトは恐る恐るそう言う。

 

「まぁ、確かにその可能性もあるかもしれないけど、僕たちが二人に助けられたのは事実だし………何より僕たちは噂より、実際に見て感じたことの方を信じるよ」

 

ケイタの言葉に、他のメンバーも頷く。

 

「だってさ。キリト、どうする?俺は構わないぞ」

 

「………それじゃあ。コーチの件、引き受けるよ」

 

そして、彼ら《月夜の黒猫団》は二人を喜んで迎えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約1ヵ月がたった。

 

《月夜の黒猫団》は徐々に力を上げ最前線の7層分下でも十分に戦えるまでになった。

 

「ふ~ん、じゃあ、1ヶ月あまり最前線に顔出して無かったのもそのギルドの人たちに戦闘のレクチャーしてたからだったのね」

 

「ああ、凄い連中だよ。もしかしたら、近いうちに《攻略組》の一員として戦いに参加するかもな」

 

カイはミトと久々に会い、最前線から離れた第2層の主街区《ウルバス》にある隠れた店に居た。

 

「それにしても、態々ミトと会うためにこんな所まで来ないといけないとはな」

 

「だから、私は別に気にしないって」

 

「ミトが良くても、周りが良くないだろ?なんせ、あの名高い《血盟騎士団》の第二副団長なんだからな。そんな人が《寄生者(パラサイト)》なんかと居たらどんな噂されるか」

 

そう言い、カイはミトの服装を見る。

 

ミトの服装は、最初の頃と変わり白と赤を基調とした制服の上から白のマントを羽織っている。

 

《血盟騎士団》とは、25層のボス戦で突如現れた新興ギルドの名で、圧倒的な力を持っており《アインクラッド解放軍》、通称《ALF》を壊滅させたボスを初参加ながら犠牲者を一人も出さずに攻略した。

 

《血盟騎士団》団長の《ヒースクリフ》は、《神聖剣》と言う発現方法が分からず、取得者も彼以外にいないスキル、《ユニークスキル》を有しており、その圧倒的な防御力と攻撃力により、全プレイヤー中最強とまで言われている。

 

そんなギルドの第二副団長のミトは、元々の容姿も相まってアインクラッド内では有名人となっている。

 

そして、第一副団長のアスナもまた同様の理由で有名人となってる。

 

更にはアスナには《閃光》、ミトには《死線》と言う二つ名がある。

 

そんな有名人と《寄生者(パラサイト)》が密会しているとなれば、一大スキャンダルになる。

 

ミトの今後も考え、カイはミトと会う時は最前線から離れたこの場所で待ち合わせをしている。

 

「カイのことをそう言う人なんて攻略組にはもう殆どいないでしょ。言うのは、《聖竜連合》のリンドや古参メンバーぐらいじゃない」

 

「だとしても、火種は少ない方がいい」

 

そう言い、カイは注文したコーヒーを飲む。

 

「ふ~ん………そう言って、また私から離れるんだ」

 

「ぶっ!?」

 

その言葉にカイは思わずコーヒーを吹き出す。

 

「折角再会できたのに、カイはあの手この手で私のこと避けるし………やっぱり私の事嫌いなんだ………」

 

俯き、涙声になるミト。

 

「ち、違う!ミトの事を嫌いになるわけないだろ!俺はただミトにあらぬ噂が立って肩身の狭い思いをさせたくないだけで!」

 

カイが必死に弁明するも、ミトは俯いたまま肩を震わせる。

 

「くっ………くくっ……!」

 

そして、俯くミトから笑い声が聞こえた。

 

「………ミト、お前」

 

「ぷっ!あはははははははは!また引っ掛かった!相変わらず、カイは噓泣きに弱いわね!」

 

「お前……!」

 

目の前で爆笑するミトに、カイは怒りが沸き拳を握る。

 

「大丈夫。カイが何を考えてるかぐらい分かってるから」

 

「…………ったく!マジ嘘泣きとか止めろよ」

 

「ごめんごめん、お詫びに奢るから《トレンブル・ショートケーキ》食べましょう」

 

「あんなバカ高いケーキ、奢らせられるか。割り勘でいい」

 

そう言い、二人は《トレンブル・ショートケーキ》を二等分にして食し、互いの相方の愚痴や最近の出来事など、取り留めのない話をした。

 

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